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2013年12月1日日曜日

書評 『海賊党の思想-フリーダウンロードと液体民主主義-』(浜本隆志、白水社、2013)-なぜドイツで海賊党なのか?



「海賊党」(Piraten Partei)の存在は、NHK BS1の番組「BS ドキュメンタリーWAVE」でみてはじめて知った。番組名は、「活躍!ドイツ海賊党~ネット世代の政治のゆくえ~」、2013年3月8日の放送である(・・わたしが見たのはその再放送)。

不思議なネーミングだなと思ったが、内容についてそれ以上調べてみることはしていなかった。そんななかで出版されたのが本書である。

本書はその「海賊党」について、発祥地のスウェーデンよりも活発化しているドイツについて取り上げて、詳細に分析を加えている。


「海賊党」はフリーダウンロードを主張する

「海賊党」という不思議な響きをもつネーミングだが、いわゆる海賊版などの海賊行為(piracy)の礼讃ではなく、フリーダウンロードを主張することからきているようだ。間接民主制の欠点を双方向のインターネットの直接民主制によって補完するムーブメントとして掲げているのが「液体民主主義」。

「液体民主主義」とは、直接民主主義と間接民主主義の欠点を補い、両者を融合させたものだそうだ。ドイツ語で Flüssigs Demokratie 英語だと liquid democracy のこと。英語でリキッド・デモクラシーというとなんとなくわかったような気がしてくる。

民意をただしく政策に反映させるために直接民主主義と間接民主主義の欠点を補うのは、政策提言をインターネットをつうじてオープン化し、党員だけでなく一般市民からのレスポンスをテスト投票という形でフィードバックさせる取り組みだ。双方向のインターネットの直接民主制によって補完するムーブメントだが、ネット世代ならではの発想といえるだろう。

フリーダウンロードは、知的財産権(IP)をめぐる攻防においてのイシューである。著作権、特許、ソフトウェア、独占とフェアユース(=公共の福利)、知的財産権のオープン化などがかかわってくる問題である。

ドイツ海賊党のフェイスブック・ページを閲覧すると、カバー画像は以下のようになっている。




一瞬、奇異な感じを受けるが、「この動画に関連付けられていた YouTube アカウントは、著作権侵害に関する第三者通報が複数寄せられたため削除されました」という表示が出てくる際のものだ。

お目当ての映像を YouTube で閲覧しようと思ったら、この表示がでてガッカリする思いをした人は数限りなくいるはずだ。ドイツ海賊党はこの表示をパロっているわけだ(笑)。画像の右下には Let's fix copyright (著作権を直そう)というスローガンと海賊党のロゴがある。

フリーとフリーダウンロードは21世紀にはじまった問題ではない。すでにドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンは1935年に「複製技術時代」という論文で、写真という当時すでに市民権を得ていた芸術にかんして「複製」の問題に深く切り込んでいる。

わたしはベンヤミンのこの論文は1980年代前半に読んだが、問題の本質に深く迫ったその内容には大いに感心したことを覚えている。

模倣と独創、イノベーションとフリーコピーという問題は、インターネット時代になってからはさらに本質的な問題として考えなくてはならないものだ。

ここでは詳述しないが、イノベーションが既存の情報の組み換えだるという点から考えても、フリーダウンロードを一方的に断罪することがナンセンスであることは言うまでもないだろう。


「偽造品取引の防止に関する協定(ACTA)」とネット規制の懸念

本書によれば、「海賊党という運動」は、じつは日本が中心となって立案した国際条約「偽造品取引の防止に関する協定(ACTA)」への反対運動だという。

「偽造品取引の防止に関する協定(ACTA)」には、著作権侵害と思われるケースに対し、著作者の告訴がなくても摘発できるとする条文などが盛り込まれているらしい。つまり当事者による親告罪ではないのだ。この協定の条文が厳格に適用されれば、大幅なネット規制につながりかねないと懸念されている。

「偽造品取引の防止に関する協定(ACTA)」は、日本では偽ブランド品などを取り締まるための条約と理解されており大きな問題となっていない。わたしも言われてはじめて気がついたが、どうも情報公開にかんする敏感さにかんしては、日本人とドイツ人の感覚は真逆の関係にあるようだ。

同じように第二次大戦中には情報統制状態を体験しているにかかわらず、基本的に個人主義のドイツ人と、個人主義の基盤の脆弱な日本人との感覚の違いかもしれない。これは、先月末に日本の国会で可決された「特定秘密保護法案」に対する一般人の無関心ぶりにも表れている。

本書が出版されたあと、ロシアに亡命中の米国NSAの元職員のエドワード・スノーデン氏が公開した PRISM(プリズム)という米国NSAの監視ネットワークが明るみになった。

最近あきらかになたのは、米国のNSC(国家安全保障局)がドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していたという事実だ。旧東ドイツの秘密警察・情報機関シュタージの盗聴世界のなかで生き抜いてきたメルケル氏にとっては、まさに悪夢の再来ともいうべき事態であろう。

「監視社会」と「開かれた社会」、そのどちらが望ましいが言うまでもないが、しかしながら家族の安全や国防上の安全という議論になったとき、議論のシロクロを明確に言い切れる人はそう多くあるまい。


ドイツからヨーロッパ全域へ

海賊党は、とくにドイツ北西部が活動の中心であるという。

ドイツ北西部は個人を信仰を基盤においたプロテスタント地域であり、しかもフランスに近い地域である。ドイツはおおざっぱにいって北部のプロテスタント地域と南部のカトリック地域に分類される。だから、海賊党はドイツ北西部が活動の中心なのであろう。

海賊党は党派性をともなわないが、傾向としては左派の運動であることは明らかだ。

インターネットをつうじて草の根で拡がる運動であり、すでにヨーロッパ全域に拡がっているという。これはイタリアの左派から始まったスローフード運動にも似ているかもしれない。

海賊党が今後どうなるのかは現時点ではなんともいえない。海賊党にはシングル・イシュー政治の欠点があるからだ。だが、緑の党も最初はそうであったことを考えれば、今後どのような方向で進んでいくのかは未知数であるといっていいかもしれない。

フラット化、透明性、ユビキタス、匿名性(アノニマス)という問題はインターネット時代ならではのものである。こういう問題を提起し体現している海賊党という存在は、けっして黙殺していいとは思わない。

民主主義を正しく機能させるための実験的な試みとしての関心は、左派とか右派とか中道かとかには関係なく試みられるべきではないだろうか。

海賊党の問題提起の思想とその背景を知るために、本書を読むことをすすめたい。





目 次

はじめに
 第1章 発祥の地スウェーデンで起きたこと
  [1-1]スウェーデン海賊党の設立
  [1-2]スウェーデン海賊党の主張
 第2章 海賊党出現の歴史的背景
  [2-1]ヨーロッパにおける「海賊」と諷刺精神
  [2-2]「エーデルワイス海賊団」の夢
  [2-3]自由への希求-ゲシュタポとシュタージへの反抗
 第3章 ドイツ海賊党の台頭
  [3-1]党員数の急増
  [3-2]「五%条項」を突破-ベルリンとザールラントの地方選挙結果
  [3-3]誰が海賊党を支持しているのか
  [3-4]支持者は何を望んでいるのか
  [3-5]連戦連勝-シュレースヴィヒ=ホルシュタインとノルトライン=ヴェストファーレンの選挙結果
  [3-6]海賊党のポジション
 第4章 ドイツ海賊党の主張
  [4-1]「液体民主主義」
  [4-2]著作権の制限とフリーダウンロード
  [4-3]特許権の制限と廃止
  [4-4]情報公開
  [4-5]プライヴァシーの保護とセキュリティー
  [4-6]ベーシック・インカムの導入──左派への舵とり
 第5章 デジタル社会とヨーロッパの政治
  [5-1]インターネット普及の内実
  [5-2]反ACTAの狼煙
  [5-3]国境を越える海賊党
  [5-4]ヨーロッパ議会と海賊党
  [5-5]イタリアの「五つ星運動」と海賊党
 第6章 海賊党の思想
  [6-1]メディアと権力
  [6-2]弱者であるネットユーザーの擁護
  [6-3]双方向の政治ガバナンスを目指して
  [6-4]コピーとシミュラークル文化
  [6-5]海賊党の特性──フラット化、透明性、ユビキタス化
  [6-6]匿名性(アノニマス)という両刃の剣
 第7章 海賊党の行方
  [7-1]失速したドイツ海賊党
  [7-2]海賊党に未来はあるか
  [7-3]二〇一三年のドイツ国政選挙と一四年のヨーロッパ議会議員選挙
  [7-4]ネット投票という方法
 第8章 日本のネット事情と日本海賊党
  [8-1]マスメディアからソーシャルメディアへ
  [8-2]ネット選挙解禁へ
  [8-3]日本海賊党の立ち上げ
  [8-4]ネット社会と双方向政治文化の構築
あとがき/参考文献

著者プロフィール

浜本隆志(はまもと・たかし)
1944年、香川県生まれ。関西大学文学部教授、ワイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。ドイツ文化論、比較文化論、博士(文学)。ドイツ文化にかんする著書多数。



<関連サイト>

ドイツ海賊党(Piraten Partei) 公式サイト(ドイツ語)

ドイツ海賊党(Piraten Partei) フェイスブックページ(ドイツ語)

Pirate Parties International (wikipedia英語版)

「活躍!ドイツ海賊党~ネット世代の政治のゆくえ~」(Dailymotion にアップされている動画 NHK BS1の番組「BS ドキュメンタリーWAVE」で2013年3月8日に放送)



<ブログ内関連記事>

インターネットと「ソーシャル」、「フリー」の思想

書評 『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』(クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説、高橋則明訳、日本放送出版協会、2009)

「アラブの春」を引き起こした「ソーシャル・ネットワーク革命」の原型はルターによる「宗教改革」であった!?

書評 『ネット大国 中国-言論をめぐる攻防-』(遠藤 誉、岩波新書、2011)-「網民」の大半を占める80后、90后が変える中国

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)-「無極性時代のパワー」であるウィキリークスと創始者アサンジは「時代の申し子」だ

書評 『アラブ諸国の情報統制-インターネット・コントロールの政治学-』(山本達也、慶應義塾大学出版会、2008)

『動員の革命』(津田大介)と 『中東民衆の真実』(田原 牧)で、SNS とリアル世界の「つながり」を考える


民主主義のあり方

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために
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書評 『自民党憲法改正草案にダメ出し食らわす!』(小林節+伊藤真、合同出版、2013)-「主権在民」という理念を無視した自民党憲法草案に断固NOを!

「主権在民」!-日本国憲法発布から64年目にあたる本日(2011年5月3日)に思うこと


ドイツという風土

本の紹介 『阿呆船』(ゼバスチャン・ブラント、尾崎盛景訳、現代思潮社、新装版 2002年 原版 1968)

映画 『バーダー・マインホフ-理想の果てに-』を見て考えたこと
・・ドイツ赤軍という新左翼テロリスト集団の全盛期から袋小路にはまって自滅していくまでの軌跡

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?

映画 『善き人のためのソナタ』(ドイツ、2006)-いまから30年前の1984年、東ドイツではすでに「監視社会」の原型が完成していた

(2014年6月27日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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