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2021年3月20日土曜日

書評『統一教会と私 ー 挫折、幻滅、そして希望。』(仲正昌樹、論創社、2020)ー 同世代の人物の「自分史」が興味深い

 
『統一教会と私-挫折、幻滅、そして希望。』(仲正昌樹、論創社、2020)を読んだ。ドイツ思想を中心にした思想史研究者の自分史ともいうべき回想録。昨年12月にでた新刊だ。  

18歳の大学入学とほぼ同時に統一教会に入会し、20歳台に11年半に及ぶ入信生活を送ったのち脱会して研究者の道に進む。その間の体験と苦労、その後の人生にもつきまとう偏見と差別につい冷静に分析した記録

ただし、自分ですべてを書き下ろしたのではないという。担当編集者に著者の専門を踏まえた質問をしてもらい、その問いに答える形で語ったものを編集して再構成してもらったものだ。 

自分で自分を語るとどうしても主観的な性格が強くなりすぎるので、自己弁護や自己韜晦、あるいは逆に自己否定になるのを防ぐためにそうしたようだが、他者の視点が入っていることはポジティブに働いているといっていいだろう。 

とはいえ、担当編集者が引き出した著者の「自分史」は、「中の人」であった著者ならではのリアルな描写が読ませるのだ。


■なぜ私はこの本を読んだのか-異質なキャンパスライフを送った同世代への関心

この本を読んだ理由はいくつかある。まず、新興宗教の体験手記はさまざまあるが、統一教会の信者だった人の記録があまりないこと。先日のことだが、著者による思想家としてのドラッカーについて書いた本を興味深く読んだことがある。

しかも、1963年2月生まれの著者と私とは同学年(*私は1962年12月生まれ)であることも大きい。著者の「自分史」を読むことは、私にとっては「同時代体験」を一部でも追体験することになるからだ。 

著者の仲正氏は広島県呉市出身で、1981年に地元の県立高校から現役で東大理科一類に合格後、しばらくしてキャンパスで「原理研」に勧誘されて、そのまま統一教会の入信生活に入っている。 

いまはもまったくそんな状況ではないだろうが、1981年当時、キャンパスでは「原理研」の存在は大きかった。ましてや「原理」といえば、「統一教会」という恐ろしい新興宗教で、悪の代名詞のように語られていたものだった。霊感商法や、桜田淳子で有名になった集団結婚がメディアをつうじて一般化する前でも、すでにそうだったのだ。 

私が入学した一橋大学の前期課程は、東京都小平市にある小平キャンパスであったが、そのすぐ近くにも、原理研の学生が共同生活を行う「ホーム」があった。 

というのは、私の知り合いにも原理研に入ったいた者がいて、なんとか脱会させようと説得したこともあったから、そのからみで知っていたのだ。(*だが、この本を読んでから、それはまったく無意味なことであるだけでなく、本人にとってはまったくもって余計なお世話だったのだな、と感じるようになった)。 

地方出身の著者は、東大の駒場寮が「左翼の巣窟」であることを知らずに入寮してしまい、そこから脱出するために、原理研の誘いに応じてついていってしまったようだ。著者の場合は大学には合格したものの、優秀な同級生の存在に自信を喪失し、自分の居場所を求めていたことが動機だったようだ。 日本の最高峰である東大の場合、よくある話なのだろう。

私も前期課程の2年間は寮生活を体験しているが、幸いなことに一橋の場合は、東大とは違って、キャンパスも学生寮も、左翼や新左翼に牛耳られてはいなかった。早稲田や法政のような(京大もそうだったようだ)立て看だらけのキャンパスでもなかった。 

当時は「五月病」というものがよくいわれており、受験を終えて大学に入学して開放感を味わったものの、方向性を見失って無気力に陥ってしまう学生が少なくなかった。 

たしかに、こういう状態に陥ってしまうと、なかなかそんな無気力状態から抜けられなくなるものだ。だから、多くの学生は「居場所」を求めて、なんらかの部活やサークルなどに所属するようになる。あるいは弁護士や会計士などの資格試験を目指して勉強会に入り、禁欲的な生活を送る者もいる。いずれにせよ「居場所」を見つけることで精神的な「安心感」を得ることになる。

東大生の著者の場合は、原理研に入って「居場所」を見つけたようであり、それはそれで良かったのではないかという印象を受けた。

著者自身も、自分自身の体験をことさら否定したりはしない。過去は過去として変えようがないだけでなく、その組織のなかで本人なりの自己成長を遂げているからである。ただし、最終的に脱会しており、その後は無縁となっている。 

私の場合は、そもそもが文化系サークル嫌いでカネもないので、学生寮に住みながら体育会合気道部に入部し、ほとんど寮と道場の往復で過ごしていた。キャンパス内からまったく出ない日がほとんどであった。朝昼晩の三食はすべて寮で食べていた。寮は当時は4人部屋であった。 

一橋大学の場合は、「クラチャン」(*クラスチャンピオンシップの略)というボートレースがあって新入生が全員参加することになっている。これを機会に体育会に入部する学生が少なくない。財界がうるさく言う前は、クラブ活動が学生生活の中核にあった。

同時期に大学に入学しても、じつに「特異な大学生活」を送っていた者がいたことを知るのは興味深い世の中の出来事は共通していても、誰にとっても自分の身の回りの生活は大きく異なるのである。


■「世代論」には意味がある

それでも、著者と私は、同時代、同世代の人間なのだなと感じるものがある「世代論」には意味があるわけだ。

思想や宗教、そして「1980年代という時代」について考えてみたい人には、興味深い内容の本になっている。1980年代後半はいわゆる「バブル時代」であったが、そんな時代にあっても、著者のような生き方をしていた人もいたわけなのだ。とはいえ、冷戦構造の崩壊が著者自身の人生にも転換を迫ることになった。 

文章も平易でわかりやすい。著者に対しては好き嫌いがあるだろうが、そんな人もいるのだと思って読めばよいのではないだろうか。万人向けの本でないが、関心のある人には一読を薦めたいと思う。
 




目 次
序章 消せない記憶 
第1章 広島県呉市 
第2章 統一教会との出会い
第3章 原理研究会と左翼
第4章 信仰の日々
第5章 疑念のはじまり
第6章 脱会
第7章 宗教を考える
終章 体験としての統一教会
あとがき


著者プロフィール
仲正昌樹(なかまさ・まさき)
1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は、『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。著書に『集中講義! 日本の現代思想』、『集中講義! アメリカ現代思想』(以上、NHKブックス)、『今こそアーレントを読み直す』、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』(以上、講談社現代新書)、『〈戦後思想〉入門講義』、『マルクス入門講義』(以上、作品社)ほか多数。


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