地方で生きている「自閉スペクトラム症」(ASD)の子どもが、なぜその土地の方言をはなさずに、アニメなどの視聴で習得した共通語でしゃべるのか、その謎を解くことで、人間とことばとの関係を「社会的関係性」の観点からさぐった研究成果を1冊にまとめたものだ。
研究のきっかけと動機が面白い。帯にもあるように「夫婦喧嘩が発端の研究」である。著者の専門は障害児心理の大学教授、妻は臨床発達心理士。
「自閉症の子どもは津軽弁を話さない」という、臨床発達心理士の妻が現場観察から得た経験則は、はたしてほんとうか、もしそうだとしたらそれはなぜか、を探求した10年に及ぶ研究だ。 仮説をたてては検証し、またあらたな仮説をたてては検証を繰り返し、最終的に試論という形で結論に至る。それが科学(的研究)というものである。
「意図」をキーワードに、言語を社会的相互作用のなかで捉えることで、なぜ自閉症児がアニメなどから習得した共通語をつかい、方言をつかわないかが解明されるのだが、結論もさることながら、結論にいたるプロセスが興味深いのだ。
言語の社会的機能についての考察を深めながら、コミュニケーションの本質について考え、どうじに自閉スペクトラム症(ASD)についての理解も深まる内容。この本を読んで、はじめてASDについて、多少は知ることができた。
「ですます調」をつかってわかりやすく書いているが、専門的な内容に踏み込んでいる専門書である。専門書であっても、こういう書き方もあるのだな、という感想をもった。
目 次発端第1章 自閉症は津軽弁をしゃべんねっきゃ第2章 北東北調査第3章 全国調査第4章 方言とは第5章 解釈仮説の検証第6章 方言の社会的機能説第7章 ASD幼児の方言使用第8章 ASDの言語的特徴と原因論第9章 家族の真似とテレビの真似第10章 ことばと社会的認知の関係第11章 かず君の場合第12章 社会的機能仮説再考第13章 方言を話すASD第14章 「行きます」第15章 コミュニケーションと意図おわりに引用・参考文献謝辞文庫版あとがき
著者プロフィール松本敏治(まつもと・としはる)1957年生まれ。博士(教育学)。公認心理師、特別支援教育スーパーバイザー、臨床発達心理士。1987年、北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。1999年、博士号取得(教育学)。2003~2016年9月、弘前大学教授。2011~2014年、弘前大学教育学部附属特別支援学校長。2014~2016年9月、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長。2016年10より、教育心理支援教室・研究所『ガジュマルつがる』代表。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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