映画『市民K』(2019年、英米)を amazon prime video で視聴。偶然このドキュメント映画の存在を知った。こういう出会いがあるから面白い。amazonオリジナル作品だ。128分。音声は英語とロシア語で日本語字幕つき。
『市民K』というと、かのオーソン・ウェルズの名作『市民ケイン』を想起するタイトルだが、原題の Citizen K の "K" とは Khodorkovsky の K だ。ミハイール・ホドロコフスキーである。
ホドロコフスキーは、現代ロシアの重要人物の一人だが、日本ではあまり知られていないかもしれない。ソ連崩壊をフルに活用して急速に頭角を現したユダヤ系の企業家で、2000年代半ばまで石油会社ユコスを率いていたオリガルヒ(=寡占企業家)の1人だった。
大成功した大富豪だが、一線を越えて政治の世界に足を踏み入れたため、辛酸をなめることになる。
エリツィンの後継者となったプーチンの強権的手法と対立、ついに逮捕され、10年近くにわたって中国国境近くのシベリアの監獄で過ごすことになった。
ソチ冬期オリンピック(2014年)開催の前にようやく釈放されたのは、国際世論を気にしていたプーチンによる意志決定だ。反体制派の覆面の女性ロックグループのプッシー・ライオットも同時に釈放されている。
ロシア国外に脱出して拠点をロンドンに移したホドロコフスキーは、没収を免れた豊富な資金力をバックに国外から「反プーチン」の民主化運動を支援している。民主主義活動家のナワルヌイの支援も行っている。
監獄の10年間で精神的に鍛えぬかれた彼は、けっしてブレることのない人物となった。この点は評価すべきであろう。
逮捕収監後のホドルコフスキーの人生は、19世紀ロシアの革命家たちのコースを、そのままなぞっているかのような印象さえ受ける。ロシアの革命に身を投じた者にはユダヤ系が少なくなかったことも、その印象を強くするものがあるといえよう。
そんな "K" ことホドルコフスキーの半生を、1991年12月のソ連崩壊後のロシア現代史として描いたドキュメンタリー映画である。
もちろん、英米アングロサクソン好みの「反プーチン」の立場から製作されているので、当然のことながらバイアスがかかっているが、現代ロシアの30年を2時間に圧縮して見ることのできる内容である。たいへん興味深いものであった。
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