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2022年7月29日金曜日

書評『ヒルビリー・エレジー ーアメリカの繁栄から取り残された白人たち』(J.D. ヴァンス、関根光宏/山田文訳、光文社、2017) ー なぜ「貧困の無限ループ」からの脱出は困難をきわめるのか?

 
トランプ大統領が誕生した2016年(就任は2017年)に大きな話題になった『ヒルビリー・エレジー ーアメリカの繁栄から取り残された白人たち』(J.D. ヴァンス、関根光宏/山田文訳、光文社、2017)を読んだ。  

出版当時は無名の弁護士が書いた半生記だが、なぜトランプ大統領は「ラストベルト」と呼ばれる製造業が衰退した地帯に生きる白人たちから支持されたのかという、アメリカの「上級国民」たちにはまったく理解できない理由がわかる本だとして、話題になっていたのである。日本でも翻訳が出たのはそのためだ。 

「ヒルビリー」(hillbilly)とは、北はニューヨーク州から南はケンタッキー州あたりまである「アパラチア山脈」に居住する住民たちのことだ。 

スコッツ=アイリッシュという、スコットランドからアイルランド北部に移住した白人たちが、貧困のためさらにアメリカまで移住してきた。その末裔たちである。 

肉体労働者のため「レッドネック」(redneck)と呼ばれたり、白人のクズを意味する「ホワイト・トラッシュ」(white trash)と呼ばれて見下されてきた。 

人間関係において伝統的な価値観をもちつづける社会でありながら、アルコール中毒、薬物中毒が蔓延、家族関係も破綻している。政府から無料で支給されるフードスタンプに依存して、勤労意欲もなくして自堕落な生活を送っている人もけっして少なくない。そもそも勉強することに価値をおかない社会でもある。 

世代を越えて「貧困の無限ループ」が繰り返されているのである。そんなヒルビリー社会に生まれ育った著者の半生記が本書の内容だ。 



著者もまた、母親が配偶者をとっかえひっかえするような想像を絶する状況のなか、なんとか高校卒業までサバイブしてきた人だ。


米海兵隊に志願して4年間を勤め上げたことで規律を内面化して人生を立て直し、社会性を身につけたうえで無償で学べるGIビルによって大学教育を受け、最終的には東部の名門ロースクールを卒業(・・所得が低いから無償の奨学金の対象になる!)して、ヒルビリー社会から脱出することに成功した。 

とはいえ、著者のケースは、きわめて希有なものだと言わねばなるまい。成功するための社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)、つまり人的ネットワークをもたない貧困層の苦労が、いかに大きなものであることか。 

読んでいて、これは日本でいえばマンガ家のサイバラ(=西原理恵子)の貧乏脱出記のマンガのようなものだなと思った。貧困の無限ループから脱出するのは、抜け出すのだという強い意志と、偶然のチャンスをものにすることができなくてはならない。 

著者の場合は、強烈な個性の持ち主であった祖母による理解と保護があったからこそ、そんな状況から脱出できたのだが、読んでいて漱石の『坊ちゃん』を思い出した主人公と女中の清(きよ)との関係に似ていなくはないからだ。 

出版から5年もたっていて、トランプ氏も前大統領となっている現在、すでに旬の話題ではないが、いまでも読む価値は大いにあると思った。この問題はアメリカ社会特有のものでありながら、アメリカだけの問題ではないからだ。文庫化されたのも、そのためだろう。   

子ども時代に安全、安心な環境を確保すること。これなくしては、貧困の無限ループから脱出できない。著者自身、脱出に成功したあとも、子ども時代のトラウマに苦しめられる日々を過ごしている。 

人生を根本的に変えるのは、きわめて困難な課題である。本人の強い意志が必要だが、それだけでは十分ではないのだ。 




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