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2023年12月10日日曜日

映画『AIR/エア』(2023年、米国)を視聴 ー 「エア・ジョーダン」誕生物語というビジネスものサクセスストーリーであり、80年代テイストたっぷりのヒューマンドラマ

 

気になっていた AMAZON ORIGINAL の映画『AIR/エア』(2023年、米国)を amazon prime video で視聴した。これは間違いなくすばらしい映画だ。

崖っぷちからの起死回生を描いたビジネスものサクセスストーリーであり、80年代テイスト満載。しかも、なぜか不思議に感動的なヒューマンドラマなのだ。

「エア・ジョーダン」誕生物語である。NIKE(ナイキ)のバスケットボールシューズである。マイケル・ジョーダンである。

現在では押しも押されぬスポーツ関連メーカーとして、誰一人として知らぬ者のいないNIKEだが、1984年当時はバスケットボールシューズ部門は売り上げ不振で存亡の崖っぷちに追い込まれていた。

マーケティングの観点から、どのアスリートに広告予算をつぎ込むか。それが問題であった。

マット・デイモン演じる主人公は、当時まだ21歳だったマイケル・ジョーダンのたぐいまれな非凡な才能に惚れ込み、かれ1人に全予算をつぎ込むことを決意。マイケルのポテンシャルに賭けたのである。もちろん失敗したら本人は失職覚悟である。

なんとか、創業経営者のフィル・ナイトをなんとか説得することに成功する。フィル・ナイトは、監督のベン・アフレック自身が演じている。




1984年当時は、1964年にNIKEが創業してから20年目株式公開によって経営の自由がききにくくなっていた。そんな状態で、創業経営者自身のナイトも、創業時の起業家精神を取り戻すかのような大きな賭けにでたのだ。ランニングと瞑想によってリスクテークを決意したのである。

問題は、マイケル・ジョーダン本人は、ドイツのアディダスと契約したがっていたことだ。

ADIDAS(アディダス)でも、CONVERSE(コンバース)でもなく、NIKE(ナイキ)が契約を勝ち取るためにはどうしたらいいか、アドバイスを求めてLAに飛び、オレゴンに戻って考えに考える主人公。たまたま自宅で見ていたTV番組もヒントのひとつになる。

自分自身の「内面の声」に従う形で、エージェントの頭越しにマイケルの両親、とくにカギを握っていた母親に直接アタックすることを決意、西海岸のオレゴンから東海岸のノースキャロライナへと向かい・・・。




最後がどうなったか、ネタバレを気にする必要はないだろう。それはもう「エア・ジョーダン」誕生物語である。結論は最初からわかっている。40年後から回想しているわけだから。

とはいえ、そこに至るまでのプロセスと人間ドラマが、ハラハラドキドキの内容で、最後まで見る者の心をつかんではなさない

チーム一丸となって、徹夜してつくったプレゼン資料。速攻でデザイナーがつくりあげた「エア・ジョーダン」の試作品。主人公の即興による感動的なスピーチによるプレゼンを経て、最終的にNIKEが契約を勝ち取るに至り、めでたしめでたしとなる。

しかも、「エア・ジョーダン」が出発点となって、アスリート個人の名前が価値を生み出す、知財ビジネスの面からも画期的なブレークスルーとなったのである。

「エア・ジョーダン」が爆発的なヒットになって、NIKE自身も大成長させたことは言うまでもない。スポーツシューズの世界は一変してしまった。

1984年といえば、映画が公開された2023年のいまからすでに40年前である。

この映画じたいも80年代テイストたっぷりで懐かしい。実写フィルムは写真などもふんだんにつかわれている。

1963年生まれのマイケル・ジョーダンとほぼ同年齢で、おなじ時代を過ごしたわたしのような人間にとっては、なおさらである。この40年の人生を振り返るような映画なのだ。

米国はレーガン時代。1984年といえばオーウェルの『1984年』。アップル社のマッキントッシュPCのCMに象徴される時代だ。

けっして問題がなかった時代ではなかった。とはいえ、分断状態にある米国社会の現状から振り返ると、なんだか牧歌的ですらあるのが不思議だ。誰もがまだ前向きだった「古き良き時代」なんてフレーズを想起してしまう。




ベン・アフレック監督の『アルゴ』を視聴したために、amazon prime video でおすすめされたようだが、これはほんとにいい映画だった。見てよかった。

『アルゴ』が1979年を描いた映画なら、『AIR/エア』は1984年を描いた映画である。時代の「空気」を再現する能力がすばらしい

監督のベン・アフレックだけでなく、主演のマット・デイモンも製作に参加している。さすが、ハリウッドきっての知性派だけあって、シナリオの選択眼がすぐれている。ちなみこの二人は幼なじみとのことだ。


PS 視聴にあたっての注意

amazon prime video では、この映画は日本語吹き替え版がデフォルトになっているので、自分で設定を変えて、「英語音声/日本語字幕」にして視聴することをすすめる。もちろん、それ以外の多言語の選択も可能である。




<ブログ内関連記事>

■ベン・アフレック監督・出演作

・・アルゴの主人公も、たまたま自宅で見ていたTV番組がヒントのひとつになる。ベン・アフレック監督ならではか


■マット・デイモン出演作







・・マット・デイモンは『インターステラ』に出演


・・アパルトヘイト廃止後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップ大会を描いた映画


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2010年6月12日土曜日

書評『W杯に群がる男たち-巨大サッカービジネスの闇』(田崎健太、(新潮文庫、2010 単行本初版 2006)-全世界にまたがるサッカービジネスの舞台裏を描いたノンフィクション




欧州を中心に、全世界にまたがるサッカービジネスの舞台裏を描いたノンフィクション

 欧州を中心に全世界にまたがるサッカービジネスの舞台裏を、FIFA、UEFA、電通、アディダスといった組織や企業と、個性豊かなアクの強い登場人物たちとその人脈を中心にして描いたスポーツビジネス分野のノンフィクションである。

 南米大陸ブラジルのアベランジェが、なぜFIFA会長として、欧州中心のサッカー界でのし上がることができたのか。この問いに対する著者の探求から始まる本書は、欧州、南米、北米、アフリカ、アジアと、現在ではすべての大陸にまたがる巨大ビジネスと化したサッカー界が、いかなる構造となっているか、そのなかでプレイヤーとしての日本の存在がいかなるものであるのか、を知ることができる内容になっている。

 善戦してきたとはいえ力(ちから)及ばずというのが、偽らざる日本の姿であろうか。ピッチの上だけではなく、舞台裏でもそれは変わらなかったのである。

 私にとってもっとも興味深かったのは、この欧州中心のビジネスのなかに、なぜ、そしていかにして日本の電通が食い込み得たのかについて、その経緯を詳しく知ることができたことだ。

 登場人物たちが展開する権力闘争は、オリンピックもそうだが、限りなく密室政治に近い様相を示している。理事に選出され、インサイダーに成らない限り、情報を得ることができないという閉鎖的な世界。ビジネスにおけるポリティクスという観点からも面白いノンフィクションであった。

 2010年6月にはFIFAワールドカップ南アフリカ大会が始まるが、巨大ビジネスと化したサッカービジネスの行方については、ぜひ著者による続編を読んでみたい。


<初出情報>

■bk1書評「欧州を中心に、全世界にまたがるサッカービジネスの舞台裏を描いたノンフィクション」投稿掲載(2010年6月10日)
■amazon書評「欧州を中心に、全世界にまたがるサッカービジネスの舞台裏を描いたノンフィクション」投稿掲載(2010年6月10日)





PS FIFAの汚職構造についにメス

FIFA、"陽気な小悪党"が生んだ汚職の構造 なぜ14人の関係者が起訴されたのか (玉木正之:スポーツ評論家、東洋経済オンライン、2015年6月22日)
・・「サッカー界の総本山は、うわさどおりの伏魔殿だった。国際サッカー連盟(FIFA)のことである。事の発端は5月27日、米司法省が現職の副会長を含むFIFA関係者やマーケティング会社幹部など計14人を、贈収賄などの罪で起訴したことだ。同月29日の会長選で5選を果たしたゼップ・ブラッター会長は捜査対象に含まれていないが、6月2日に突如辞意を表明。その後も、捜査当局が関係先の家宅捜索に入るなど、事態は今も動いている。」

(2015年6月22日 項目新設)



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