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2023年12月24日日曜日

書評『何度でもリセット ― 元コンサル僧侶が教える 「会社軸」から「自分軸」へ転換する マインドセット』(安永雄彦、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2023)― 異色のキャリアをもつ変革リーダーによる自己啓発書

 


異色のキャリアをもつ変革リーダーによる自己啓発書だ。出版から即 amazon では「ベストセラー1位」である。 

著者の安永氏(・・安永師というべきかな)は、銀行員から「キャリアチェンジ」して、転職コンサルタントに転身し、その後エグゼグティブ・サーチ会社の経営者を経て、築地本願寺の改革に携わり、現在は京都の西本願寺の代表役員として本寺改革に従事されている方。 

浄土真宗の僧籍を取得したのは経営者時代で、通信教育を受講されたとのこと。お寺の出身ではない異色の僧侶であり、しかも組織変革リーダーとしてのキャリアは一貫している。 

じつは安永氏には、仏教界に転身する前のエグゼクティブ・サーチ時代に、個人的にお世話になっている。最終的にわたしが転職ではなく、独立を決意したのは、安永氏が背中を押してくれたからだ。 

その安永氏が、その後は築地本願寺の改革で実績をあげて、各種メディアで取り上げられていることは、ビジネスパーソンなら知っている人も少なくないだろう。 

ところが、ご縁をいただいた当時は、まさか、その後そんなキャリアチェンジをされるとは知るよしもなかった。しかも、拙著『言志四録 心を磨く言葉』につづいて、この12月におなじ出版社から新刊を出版されることを知った。それが本書『何度でもリセット』である。 

なんという「奇縁」であることか! しかも、京都府出身のわたしのほうは母方の祖母が西本願寺の「門徒」であり、父方の祖父が徳島で浄土宗のお寺にいたことこともあり、「凡夫」(ぼんぷ)として、浄土系仏教にはそれなりに通じている。その意味では「仏縁」というべきかもしれない。 

とはいえ、本書は仏教どころか、浄土真宗がらみの説法は、ほとんどないので心配無用だ。あくまでも仕事がアイデンティティにならざるをえない現代人のための人生論であり、キャリア論である。いや、それこそ現代人のための「法話」というべきか。 

「失敗・逆境・恐れこそ第二・第三のキャリアチャンス」と帯にある。まさにそのとおりだなと、数度にわたる自分自身の「リセット人生」を省みても実感する。 キャリアを「リセット」すると、それにともなって人間関係も「リセット」される。古い人脈が甦ることもある。

会社員として、このまま組織のままにとどまっていていいのか、そんな思いを抱いている人にすすめたい本だ。きっと一歩踏み出すため、背中を押してくれることだろう。 「リセット」は、けっして悪いことではない。

「キャリアチェンジ」というものは、一歩踏み出してしまえば、なんとかなるものだ。もちろん、それが山あり谷ありの、たとえ楽な道ではないにしても。 


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目 次 
はじめに 
第1章 仕事で自分をなくしていませんか? 
第2章 会社軸から自分軸を取り戻したイギリス時代 
第3章 「自分の軸」を見つける 
第4章 「自分の軸」を活かす 
第5章 「自分の軸」を守る 
第6章 失敗や逆境に負けない自分になる 
第7章 あるがままに「凡夫」として生きる 
おわりに 


著者プロフィール
安永雄彦(やすなが・ゆうひこ)
1954年東京生まれ、開成高校、慶応義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院博士研究課程修了(経営学専攻)、三和銀行(現三菱UFJ銀行)、米系大手人材コンサルティング会社ラッセル・レイノルズ社を経て、経営幹部人材の人材サーチコンサルティング会社島本パートナーズ社長(現会長)。 2005年に得度し浄土真宗本願寺派僧侶となる。2015年7月より築地本願寺代表役員宗(しゅう)務(む)長(ちょう)として僧侶組織のトップとして法務に従事するとともに、寺院の運営管理や首都圏での個人を対象にした新しいかたちの伝道活動に従事し伝統寺院の改革を主導。2022年8月より京都の浄土真宗本願寺派本山である西本願寺の代表役員執行(しゅぎょう)長(ちょう)として本山の改革に従事中。グロービス経営大学院大学専任教授。経済同友会会員。元武蔵野大学学外理事(現顧問)。龍谷大学理事。 著書に、『日本型プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)、『築地本願寺の経営学』(東洋経済新報社)。 (出版社サイトより)


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2010年10月6日水曜日

書評『日本型プロフェッショナルの条件 ― アメリカ的論理思考では問題は解決できない』(安永雄彦、ダイヤモンド社、2009)― 30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを説いたビジネス法話集


■30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを説いたビジネス法話集■

 エグゼクティブサーチのプロフェッショナルが書いた、ワンランク上を目指す30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを懇切丁寧に説いた本である。 

 著者が教鞭をとるビジネススクールでの授業で、最後の5分間で話す「法話」がことのほか好評らしい。さすが50歳台で、失敗もふくめて、酸いも甘いもかみ分けた、人生経験を積んだビジネスマンだからこそ説得力があるのだろう。

 いわゆるビジネススキルといった狭い範囲の話ではなく、ビジネスをつうじて、人としてどう生きて行くべきかを、著者の豊富なビジネス経験と浄土真宗の僧侶という立場も踏まえて説かれた「ビジネス法話集」を一書としてまとめあげたものだ。

 こう書くと、「なんだ、お坊さんの説法か」、という印象を抱くかもしれないが、著者はもともと日本の都市銀行の銀行員としてキャリアを始めた人で、1980年代後半の英国勤務時代に「プロフェッショナル」とは何かと思い知らされ、その道を目指したという。

 人材関係のプロフェッショナルとしての独立後に、自分探しの旅のなかで仏教に出会い、出家したという変わった経歴の持ち主である。もちろん、現在でもスーツを着てネクタイを締めた、第一線のビジネスマンとして活躍、心の内面の世界と現実世界の処世を両立させながら、ユング心理学でいう「個性化」の道を歩いている人である。

 プロフェッショナルといっても、いわゆる弁護士や会計士などの狭い意味の専門家を意味しているわけではない。組織内部で組織の論理との葛藤を経験しながらも、「個性化」を貫いて組織の論理を越えて生きていける、信頼される一流のビジネスパーソンを目指す読者が想定されている。なによりも「内発的動機づけ」が重要なのである。

 米国流のポジティブシンキングの成功哲学では割り切れない、人生の矛楯や明暗。矛楯や明暗が存在するのは、ビジネスでも人生でも当たり前。そんななかで、ありのままの自分を知り、そしてそれを正面から受け止め、目前の課題に地道に取り組むこと。これこそが、30歳代以上のビジンスパーソンが、人間として成長するための急がば回れの早道であり、王道なのだ。

 現状から一歩踏み出し、ワンランク上を目指し、一流のビジネスパーソンになるために本当に重要なことだ。最後に引用されたスティーブン・ジョブスの卒業スピーチの、著者による解釈はかみしめるべきものがある。

 ぜひ著者の「ビジネス法話」に耳を傾ける心の余裕が欲しいものである。


<初出情報>

■bk1書評「30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを説いたビジネス法話集」投稿掲載(2010年8月24日)
■amazon書評「30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを説いたビジネス法話集」投稿掲載(2010年8月24日)




目 次

序章 日本モデルのビジネス・プロフェッショナルの条件
第1章 ヘッドハンターから見た一流の条件
第2章 比較優位の世界で生きる術
第3章 自分を活かすには仕組みを知らなければならない
第4章 多様な視点―概念化
第5章 多様な視点―抽象化
第6章 葛藤を乗り越え現実に対応する
第7章 覚悟を決めて実行する力
第8章 後悔しないキャリアの作り方と生き方
第9章 内面世界を充実させるには


著者プロフィール

安永雄彦(やすなが・ゆうひこ)

エグゼクティブ・サーチを行う株式会社島本パートナーズ代表取締役。慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院博士課程修了(経営学専攻)。三和銀行、ラッセルレイノルズを経て現職。グロービス経営大学院大学教授(人材マネジメント論)、国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ(CPCC)、浄土真宗本願寺派僧侶(教師)、早稲田大学商学部元講師、事業再生実務家協会会員、社団法人経済同友会会員など多様な顔を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<書評への付記>

 「現在でもスーツを着てネクタイを締めた、第一線のビジネスマンとして活躍」と書いたのは、著者の安永氏とは面識があるからだが、グロービス経営大学院大学での「法話」ライブは一度も聞いたことはない。

 お坊さんだということは、安永氏を紹介してくれた私の友人からは聞いていた。現役のビジネスマンであり、スキンヘッドではない。僧衣を着ている姿も拝見したことはない。

 私のビジネス人生の岐路において、その選択にあたって貴重なアドバイスをいただいたこともあり、ここで紹介することとした次第である。 

 「第一線のビジネスマンであって、しかも・・・」というのがすごいのである。

 「できる人」でかつ「できた人」、というのはなかなか同一人物のなかでは両立しがたいものだ。その生きた見本のような人である、といっておこう。

 本書じたいが「法話集」なのである。といっても、けっして抹香臭い話はない。むしろ、「ビジネス人生論」といったほうがいいかもしれない。



<関連サイト>

スティーブン・ジョブスのスタンフォード大学卒業スピーチ(YouTube 日本語字幕付き)
・・ぜひ直接味わって欲しい、すでに「伝説のスピーチ」


<ブログ内関連記事>

書評 『ユダヤ人エグゼクティブ「魂の朝礼」-たった5分で生き方が変わる!-』(アラン・ルーリー、峯村利哉訳、徳間書店、2010)
・・不動産コンサルティング会社のエグゼクティブでユダヤ教のラビによる、毎週月曜日の朝礼でハナされたの5分間の法話




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