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2010年2月8日月曜日

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!




日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」-問題は製造業だけではない!

 「リーマンショック」発生から1年以上たったが、製造業にとっては、その後に発生した「トヨタショック」のほうがはるかにダメージは大きかった。

 「トヨタショック」とは、トヨタの売り上げが北米を中心に大幅にダウンし、とくに関連部品メーカーに与えた大ショックのことだ。今後も、円高傾向が続けば、量産型の製造業が日本で存続可能かどうか、その答えはおのずから出ることだろう。

 しかもまた、品質問題と大量リコールにともなう「第二のトヨタショック」は、日本の製造業の基盤が揺らぎ始めていることを示している。

 日本の製造業の何が問題なのか、ここで一度キチンと検証しておくことが必要だ。検証は多方面からなされることが必要だが、科学技術の観点からの分析による本書は、その試みの一つである。

 著者は、評論家でも、経済学者でも、ジャーナリストではない。機械設計においてもっとも重要な要素技術にかかわる「制御理論」の研究者である。この立場から、技術と科学の関係が根本的に変化した「第三の科学革命」について考察し、付加価値をつくりだす要素がハードではなくソフトウェアになった時代の技術開発について、現状の日本が抱える問題について診断を行っている。

 中国やインドを初めとするアジア諸国からの追い上げが激しくなる現在、日本が「ものつくり」で生きていくためにはどこに活路を見いだすべきなのか。単なる組み立て(=アセンブリー)など労働集約型産業は間違いなく日本からは消えてゆくだろう。すでに「世界の工場」となった中国は、単なる労働集約型産業から脱し、さらに高度な製造業へとシフトを始めている。

 日本の製造業は、先端技術のキャッチアップではなく、先端技術分野においてブレークスルー技術を開発していかなくてはならない。そのためには、いままで世の中に存在しない、「目に見えないもの」を見えるようにすることが必要であり、著者のいう「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」が必要である。

 しかしながら残念なことに、この三点セットは、これまで日本人がもっとも軽視し、しかも弱い部分である。「匠」(たくみ)や「技」(わざ)などの「暗黙知」を過度に重視し、「形式知」であるシステム思考を軽視してきたツケが回ってきたのか・・・

 「ものつくり」そのものではなく、「ものつくり神話」を批判する著者の問題指摘は正しい。とはいえ、問題点の指摘と大きな方向性を示しただけに終わっているような印象もうけないではない。著者による診断では、教育そのものを抜本的に見直さない限り日本の製造業に未来はないからなのだが、教育の効果がすぐにはでないことを考えると・・・

 読んで元気の出る本ではないかもしれない。しかし、冷静な現状認識をもたないかぎり真の問題解決にはつながらない。そのための診断書の一つとして、製造業だけでなく、日本の未来を真剣に考えているすべての人、とくに教育関係者には一読をすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」-問題は製造業だけではない!」投稿掲載(2010年2月5日)






<書評への付記>

 このブログに一番最初に書いた記事は、2009年5月4日に執筆して投稿した「円安バブル崩壊」というものである。その直前まで、機械部品関連の会社にいた私は、「リーマンショック」と「トヨタショック」の直撃をくらった。そんな渦中に書いたのが、上記の記事である。

 それから1年近くたつが、基本的な認識を変える必要はなさそうだ。しかしそれは、ある意味では日本にとっては幸せなことではない。

 さらに今回激震をともなってダメージとなるのが、「第二のトヨタショック」とでもいうべき、大量リコール問題である。これにトップ経営層による対外コミュニケーション不足が、とくに米国を中心とした海外でバッシングを引き起こしている。

 こと問題が、トヨタの代名詞であった高い品質のそのものにかかわるものだけだけに、ブランド失墜のみならず、製造業の「ものつくり」の基礎が崩れつつあるのではないか、という強烈な危機感を感じているのは私だけではないはずだ。


 この本は、「円安バブル崩壊」というブログ記事を書いたあとに読んだものだが、あらためて書評に仕立てたうえで紹介することとした。日本の「ものつくり」に根強く存在する「ものつくり神話」を批判したものだからだ。「すりあわせ型」生産による「匠」と「技」にしがみつき、ある種の退行現象をみせている日本人に対して、これでいいのかという疑問を感じるためだ。もちろん「匠」と「技」が悪いのではない。名人芸に依存した「ものつくり」では、時代を超えて前に進むことは不可能である。

 「モジュール型」生産のアンチテーゼである「すりあわせ型」を、日本の「ものつくり」の根幹だと勘違いしただけでなく、日本企業でかつては非常に有効に働いていた「暗黙知」による経営を、日本の経営学者によって過分なまでに礼賛されて、これでいいのだと勘違いしてきた、とくに製造業分野の日本の大企業。経営学者たちの学説を、自分たちの都合のいいように解釈し、自己正当化を図ってきたこれら大企業の慢心。

 これがビジネス界で言説として流通することによって、発生し定着した「負のスパイラル効果」といっていいのではないか。


 「モジュール型」生産で大きく後から追い上げてくる、中国をはじめとする新興国の「ものつくり」企業群に対抗していうためのは、「暗黙知」に安住することなく、「暗黙知」を「形式知」に徹底的に変換していくことが求められる。これが、これからの時代に必要なものなのだ。

 「形式知」への転換能力は、日本人の「言語力」そのものにかかわるものだともいえるだろう。日本人のある世代以上のあいだで通じ合っていた「あうんの呼吸」は、日本国内ですら通用せず、深刻なコミュニケーション問題を引き起こしている。いわんや海外の異文化経営においておや、だ。

 本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)で、日本人とユダヤ人の共通点と相違点について書いた際、似ている面が多いが、根本的に異なるのは、ユダヤ人が徹底した論理思考であることだと指摘した。「目に見えないもの」を「見えるもの」とする技術開発、この分野においては、日本人の弱点はすでに致命的な弱点となりつつある。

 とくに「言語力」を強化することは、すべての日本人にとって喫緊(きっきん)の課題である。この弱点を克服しない限り、たとえ日本人が世界に誇れる優位性をもっていたとしても、世界のなかで「名誉ある地位」を締めることは不可能となっていくだろう。
 
 とはいえ、教育の効果がでるには時間がかかる。ため息をつきたくなる現状だが、けっして絶望してはならない。勇気をもって立ち向かわなくてはなるまい。






目 次 

序章 日本型ものつくりの限界
第1章 先端技術を生み出した二つの科学革命
第2章 太平洋戦争もうひとつの敗因
第3章 システム思考が根付かない戦後日本
第4章 しのびよる「ものつくり敗戦」
終章 「匠の呪縛」からの脱却―コトつくりへ

著者プロフィール

木村英紀(きむら・ひでのり)
理化学研究所BSI‐トヨタ連携センター長。1970年東京大学大学院工学系博士課程修了、工学博士。大阪大学基礎工学部助手、工学部教授、東京大学大学院工学系研究科、同大学院新領域創成科学研究科教授などを経て、2001年より理化学研究所生物制御システム研究室チームリーダ。横断型基幹科学技術研究団体連合会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判にした。あらたに<ブログ内関連記事>を新設した。2014年時点でも、価値ある内容の本である。逆にいえば、この5年ではたして改革が実行されたのかどうか疑問ではあるが・・・ (2014年8月18日 記す)



<ブログ内関連記事>

「円安バブル崩壊」(2009年5月4日)
・・このブログでいちばん最初に投稿した記事で、野口悠紀雄の『世界経済危機-日本の罪と罰-』 ( ダイヤモンド社、2009)を踏まえた所感を述べている


ものつくり関連

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ


「見えないもの」を「見える化」するのが科学的発見と理論化

書評 『ヨーロッパ思想を読み解く-何が近代科学を生んだか-』(古田博司、ちくま新書、2014)-「向こう側の哲学」という「新哲学」

『形を読む-生物の形態をめぐって-』(養老孟司、培風館、1986)は、「見える形」から「見えないもの」をあぶり出す解剖学者・養老孟司の思想の原点

最近ふたたび復活した世界的大数学者・岡潔(おか・きよし)を文庫本で読んで、数学について考えてみる

書評 『「大発見」の思考法-iPS細胞 vs. 素粒子-』(山中伸弥 / 益川敏英、文春新書、2011)-人生には何一つムダなことなどない!

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!
・・「「発見」というものは、たいていまったく突然にやってくるのである」(梅棹忠夫)


言語力と論理力アップのために

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

書評 『外国語を身につけるための日本語レッスン』(三森ゆりか、白水社、2003)-日本語の「言語技術」の訓練こそ「急がば回れ」の外国語学習法!

書評 『言葉にして伝える技術-ソムリエの表現力-』(田崎真也、祥伝社新書、2010)

(2014年8月18日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)






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