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2010年2月13日土曜日

『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)という本の活用法について




2008年9月の「リーマンショック」発生からすでに約1年半近く、そして民主党のオバマ大統領が就任してからすでに1年たった。

 『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)が出版されたのは2009年4月であるが、いまこの時点で取り上げるのは、米国の金融はすでに健全性と収益性を取り戻しつつあるという議論がでてきているからである。

 もちろん、前政権が政権終了直前に金融業界に多大な資本注入してから脱出したという背景があるが、少なくとも大手金融機関が2009年会計年度(・・米国は12月30日末を会計年度とする企業が圧倒的多数)に、黒字を計上しているというのは事実である。米国の経済の底は2009年9月で、二番底はなさそうだという見解もすでにでているようだ。

 致命的なダメージを受けているのはむしろ欧州のほうで、先週からギリシアの国家財政危機問題がニュースになっているが、ポルトガル、スペインも時間の問題だという。統一通貨ユーロが果たしてもつのかどうか。欧州はさらなる苦境に陥りつつあるといえる。

 こうした状況において、とくに「健忘症の日本人」(・・もちろん私も含め)に、「リーマンショック」とは何だったのか、背後にうごめいていたプレイヤーたちが誰であったのかを忘れないことは重要だ。

 その意味では、この本は読んで非常に面白い。統計データをわかりやすく図表化して掲載されているので理解を助けてくれるし(・・プレゼン用の資料のようで理解しやすい)、米国の新聞に掲載された政治マンガ(Cartoon)の解説が情報量豊富で非常に面白い。
 

 さてもう一つ、この本を取りあげる理由は、ここにきてオバマ大統領が支持率を大きく低下させていることだ。CHANGE をキーワードに選出されたオバマ大統領だが、鳴り物入りで取り組んだ「医療制度改革」は完全に骨抜きと化し、内政にかんしては大幅な軌道修正を開始しているように見えることだ。

 米国人の期待を大幅に裏切っているという事実は、期待度が高かっただけに、失望の度合いもまた大きいということである。支持率回復のために、何かとんでもないことをやらかす可能性がないとはいえない。

 こういう観点からは、本書の「第2章 誰がこのような世界を創りだしたか」に書かれた内容が、実に面白い情報を提供してくれる。

 まず、オバマ政権を支える経済スタッフの筆頭が、ローレンス・サマーズであることだ。彼は、ロバート・ルービンと並んで、クリントン政権の経済政策を一手に握り、金融緩和をなしくずしに実行してきた張本人である(P.118-128)。そしてFED(Federal Reserve Board:連邦準備制度・・日本では FRB というが、米国では FED フェッド という)長官であったアラン・グリーンスパン。この3人がみなユダヤ系であることはいうまでもない。現在の FED 長官のバーナンキも同様にユダヤ系である。

 そして同じく第2章の、オバマの「シカゴ人脈のミステリー」(P.154~163)。誰がオバマを担ぎ出したのか、誰が資金源となっているのか、ここらへんの事情がわかってくると、そもそもオバマが何をするべく期待されて登場したのかがわかってくる。

 その意味では本書は資料として読む価値のある内容といえる。本書の情報をもとに自分で調べてみればよい。たとえば、オバマを支えるシカゴ人脈の一人である女性実業家ペニー・プリツカー(Penny Pritzker)は、ユダヤ系財閥プリツカー家の一員とのことだ。こういう情報は有用でありがたい。


 しかしながら、広瀬 隆はあいかわらず批判一点張りで、しかも主張する内容が限りなく「陰謀史観」に近いので、どうしても距離を置きたくなってしまう。この点にかんしては、このブログでは、書評『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)で触れたとおりである。すべてをロスチャイルドで説明しようとする姿勢は、本書においても健在である。

 帯には「ソ連共産主義崩壊から20年、今度はアメリカ資本主義が瓦解!」というキャッチコピーが書かれているが、前半は歴史的事実だとしても、後半の認識は正しくないのではないか。むしろ今回の金融危機を契機に、アメリカの金融資本主義はさらに強化されるのではないだろうか?

 「100年に一度の危機?」なんて誰がいいだしたのか知らないが、あまり鵜呑みにしないほうがいいようだ。今回の金融危機は、資本主義が健全性を保つための自動調整システムが働いたと考えるべきかもしれない。

 おそらく、この調整プロセスをつうじて、米国ではさらなる「富の集中」と「格差拡大」が同時並行的に進行しながら、米国全体にかんしては国力が増大していくこととなるのではないだろうか。これにかんしては、書評『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)を参照。「富の集中」は米国史を一貫している原理である。中産階層崩壊後は1930年以前の世界に戻るということなのだろうか。

 また、米国の金融支配力、決済通貨支配力が、そう簡単には衰えるとは考えにくい。米国に取って替わって覇権をとれる国が出現すると考えるのは、時期尚早である。  

 また「500年単位の歴史」で考えれば、過去500年のあいだ「世界システム」を主導してきた欧州の没落がさらに決定的となり、次の500年の「世界システム」が、予見しうる将来においては米国主導で動いてゆく(・・もちろん500年つづくかどうかはわからない)であろうことが確実になったといえるのではないか? 


 「日本は米国をモデルとすべきではない」という、広瀬 隆だけでなく多くの論者による主張には、部分的には賛成である。格差社会が進みすぎると日本の国力が全体として弱体化することにつながってしまう。格差社会にかんしては、米国を「反面教師」にしなければならないことは多い。

 しかし一方では、付加価値をつくりだす要素がハードではなくソフトウェアになった現在、イノベーションを起こす人材の育成が最大の課題である。この点に関しては米国には大いに学ばねばならない新しいイノベーションがITや金融も含めて、ほとんどすべて米国発であることは、誰も否定できないのは事実である。

 しかも、米国の社会システムの方が日本よりも、イノベーション人材を生み出しやすいものであることが否定できない。突出した個人を抜擢し、飛び級で大学に入学させ、予算もバンバンつけるという天才の発掘&養成システム。富の創出は突出した個人に依存する米国型システムが有効性が高いことは否定できない。

 果たして日本に米国のようなイノベーション人材養成は可能か?しかし格差拡大は好ましくない・・・。バランスの取りがたい、実に悩ましい問題である。


 こういう本を読んで、米国を批判したところで、あまり生産的とはいえないのではないか。重要なのは、たとえ自分の好みの著者ではなくても、本を批判的に読んうえで「いいとこ取り」することである。

 これは、自分のアタマで考えて、自分で行動するためには必須のスキルといえよう。





PS 2014年1月の追記

この記事を書いたのはいまから約4年前だが、それにしてもオバマ大統領の劣化ぶりがひどい。いや最初から弁説が巧みな弁護士に過ぎなかったというべきだろうか。

第二期目に入った瞬間からすでに「レイムダック」状態が急速に進行している。この大統領がまだ3年も在籍しているかと思うと、日本国民の立場からいってウンザリとしかいいようがない。

ユダヤ系のベン・バーナンキ(Ben Bernanke)FRB議長の後任となるジャネット・イエレン(Janet Louise Yellen)は女性初のFRB議長となるが、彼女もまたユダヤ系の経済学者である。民主党であろうが共和党であろうが関係なく、この流れは続いている。

この4年間のあいだには2011年3月11日のいわゆる「3-11」があった。広瀬隆の本来のフィールドである原発関連でふたたび脚光を浴びたことも記しておかねばなるまい。

改行を増やして読みやすくしました。内容にはいっさい手を入れてません。

(2014年1月15日 記す)



PS2 プリツカー賞について

「建築界のノーベル賞」ともいわれる「プリツカー賞」(The Pritzker Architecture Prize)というものがある。

日本人建築家も丹下健三(1987年)から始まって、安藤忠雄(1995年)だけでなく、2010年代に入ってからは、妹島和世と西沢立衛(2010年)、伊東豊雄(2013年)、坂茂(2014年)と立て続けに受賞しており、建築界以外でも知られる賞となっている。

wikipedia日本語版の情報を引用しておこう。

1979年にアメリカ人実業家でハイアットの事実上の創業者であるジェイ・プリツカーと妻のシンディによって設立された。「建築を通じて人類や環境に一貫した意義深い貢献をしてきた」存命の建築家を対象とする。国籍・人種・思想・信条を問わず、原則として一年に一人表彰している。副賞として10万ドルとブロンズのメダルが授与される。

プリツカーはシカゴのプリツカー・ファミリーのこと。アシュケナージ系のユダヤ系実業家ファミリーのことである。

書評のなかでも触れているが、「オバマを支えるシカゴ人脈の一人である女性実業家ペニー・プリツカー(Penny Pritzker)は、ユダヤ系財閥プリツカー家の一員」である。

ペニー・プリツカーは、二期目のオバマ政権で2013年6月以降、商務長官(United States Secretary of Commerce)をつとめている。全米で263番目の金持ち(2011年度)、全米でもっともパワフルな女性100人の一人。日本語でいえばコネ、英語でいえば political appointee というやつだろう。

こういう重要な人物について、2014年4月2日現在 wikipedia日本語版の情報はない。日本人の情報感度の低さを反映しているというべきか。

建築と資本主義シカゴ人脈とオバマなど、さまざまな意味で注目しておく必要がある。

(2014年4月2日 記す)




<参考記事>
Feeble growth in the euro zone:The sick men of Europe
A lack of demand in the euro area explains why its economy is hardly growing
 Feb 12th 2010 | From The Economist online


<ブログ関連記事>

書評 『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)-アメリカの本質を知りたいという人には、私はこの一冊をイチオシとして推薦したい

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年3月号の特集「オバマ大統領就任から1年 貧困大国の真実」(責任編集・堤 未果)を読む

映画 『ウォール・ストリート』(Wall Street : Money Never Sleeps) を見て、23年ぶりの続編に思うこと   

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

マイケル・ムーアの最新作 『キャピタリズム』をみて、資本主義に対するカトリック教会の態度について考える

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む

書評 『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)-エッセイストでドイツ文学者による『物語 ロスチャイルド家の歴史』

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む

書評 『終わりなき危機-君はグローバリゼーションの真実を見たか-』(水野和夫、日本経済新聞出版社、2011)-西欧主導の近代資本主義500年の歴史は終わり、「長い21世紀」を生き抜かねばならない

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている 

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

書評 『ブーメラン-欧州から恐慌が返ってくる-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文藝春秋社、2012)-欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「欧州比較国民性論」とその教訓

スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む
・・広瀬隆という人はもともと「反原発」論者としてデビューした人。やや「煽り系」」ではあるが

書評 『やっぱりドルは強い』(中北 徹、朝日新書、2013)-「アメリカの衰退」という俗論にまどわされないために、「決済通貨」「媒介通貨」「基軸通貨」「覇権通貨」としての米ドルに注目すべし

(2014年1月15日、8月13日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)









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