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2022年12月12日月曜日

書評『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』(トーマス・ラッポルト、赤根桃子訳、飛鳥新社、2018)ー 起業家を経て投資家へ。その根底にあるのは哲学で鍛えられた思考能力


先日イーロン・マスクにかんする本を読んで、ようやく大いに納得したが、さらに納得感を得たいのでピーター・ティールにかんする本を読む。投資家として「スペースX」を最初から支えてきたのがピーター・ティールだ。 

そもそも、イーロン・マスクのようにツイートを連発したりするような派手な人ではないので、マスコミの取り上げかたもそれほど大きなわけではない。 

近年もっとも注目を浴びたのは、民主党支持が多数派のシリコンバレーでは、数少ないトランプ大統領支持者で、大統領就任後には政権移行チームに抜擢されたことだろう。 

そんなこともあって、断片的な記事をつうじて、イメージを形成してきたにすぎない。すべての権威からの自由を信念とする「リバタリアン」であることは、比較的知られていることであろう。リバタリアンを徹底している点にかんしては、イーロン・マスクの比ではない。 


原題は、Peter Thiel: Facebook, PayPal, Palantir - Wie Peter Thiel die Welt revolutioniert - Die Biography(直訳すれば、『ピーター・ティール ー フェイスブック、ペイパル、パランティア。ピーター・ティールは、いかに世界を革命してきたかー伝記』)である。 


世界最初の評伝は、ドイツ人著者によってドイツで出版されたのがこの本。1歳で米国に移住してきた移民二世のピーター・ティールは、ドイツ語も堪能のようだ。 

この本を読んでわかったのは、絵に描いたようなエリートコースを歩んできたが、「競争」そのもののバカバカしさに嫌気がさして、そこから脱出した人間であることだ。 

西海岸の名門スタンフォード大学で哲学を専攻したあとは、スタンフォードのロースクールを卒業し、ニューヨークの弁護士事務所で働き、その後は金融の世界で働いていたという。

「競争する負け犬」になるなというフレーズが興味深い。 ピーター・ティールの信念であるようだ。

「競争ではなく独占」という信念は、決済サービス PayPal(ペイパル)の起業と成功で実証したわけだが、その信念の出発点は、大学学部時代の哲学専攻時代に弟子として大いに影響を受けた、フランスの思想家ルネ・ジラールにあるという。この点が大いに興味深い。 

ペイパル時代に培った仲間関係が、いわゆる「ペイパル・マフィア」と世間ではいわれているものだが、イーロン・マスクもまた、それに連なる人脈の一人ということになる。 

起業家としてのペイパル成功後は、もっぱら投資家として活動しているが、その投資哲学も興味深い

基本的に逆張り(=コントラリアン)だが、彼自身の著書のタイトルにあるように『ZERO to ONE』となるような事業であることが条件である。

リバタリアンでコントラリアン。これがピーター・ティールを理解するための、もっとも簡潔な表現かもしれない。


 誰もが注目しなかったときにマーク・ザッカーバーグの Facebook事業に投資し、現在に至るまで支えてきたのもピーター・ティールだ。さきにふれたスペースXもまたおなじ。このほか、ビッグデータ分析を先取りしたパランティアなど、先見性と超長期の姿勢が、その真骨頂であるのだろう。 

興味深いのは、この本の著者が、ティールの投資姿勢を、かの有名なウォーレン・バフェットのそれと比較していることだ。 結論からいったら、テクノロジー関連という点を除けば、ティールとバフェットがよく似ていることだ。

自分が熟知している分野で逆張りで集中的に投資する。この姿勢は、わたしにはアンドリュー・カーネギーの投資と事業経営に対する姿勢にも似ているように思われる。 

とにかく、これほどの思考力をもった人間は、ビジネス界にはなかなかいないだろう。その秘密の一端でも知りたいと思うのは、ある意味では当然ではないだろうか。賛同者も多いが、批判者も多い存在である。 その点も盟友のイーロン・マスクとおなじである。


愛読書の1冊が哲学者フランシス・ベーコンのユートピア小説『ニュー・アトランティス』
というのも興味深い。 マスクが推奨するのが『フランクリン自伝』であるのと比べてみるのも興味深いではないか。

ドイツ人がドイツ語で書いた本の日本語訳であるので、訳文はこなれているが、あまり読みやすい本ではない。とはいえ、ピーター・ティールのアタマのなかを、すこしだけだが垣間見ることができたような気持ちになった。 




目次
はじめに なぜ世界は「この男」に注目するのか? 
第1章 はじまりの地、スタンフォード大学
第2章 「競争する負け犬」になるな ー 挫折からのペイパル創業
第3章 常識はずれの起業・経営戦略 ー ペイパル、パランティアはなぜ成功したのか?
第4章 持論を発信する ー『ゼロ・トゥ・ワン』と『多様性の神話』スキャンダル 
第5章 成功のカギは「逆張り思考」ー スタートアップの10ルール
第6章 ティールの投資術 ー なぜ彼の投資は成功するのか? 
第7章 テクノロジーを権力から解放せよ ー ティールのリバタリアン思想
第8章 影のアメリカ大統領? ― トランプ政権を操る
第9章 ティールの未来戦略 ー 教育、宇宙、長寿に賭ける
おわりに テクノロジーがひらく自由な未来へ
訳者あとがき
原注


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