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2023年8月31日木曜日

映画『ケロッグ博士』(1994年、米国)を公開30年後にはじめて視聴した ー 実話をもとにしたこのコメディは傑作であり快作だ!

 
映画『ケロッグ博士』(1994年、米国)を amazon prime video ではじめて視聴した。このコメディは傑作だ。いや快作というべきか。爆笑につぐ爆笑の2時間であった。

と同時に、米国の菜食主義(ベジタリアニズム)の歴史を考えるうえで、きわめて重要な人物を取り上げた映画でもある。健康へのオブセッションを笑いに変えた快作である。

19世紀後半から20世紀前半にかけてのドイツ発の「生活改革運動」を扱った『裸のヘッセ』と『踊る裸体生活』を読んでいたら、ケロッグ博士の名前がでてくる。

おお、あのコーンフレークのケロッグのことか! ケロッグ博士もまたベジタリアンで、医者としてサナトリウムを運営していたのか、と。この時代のサナトリウムは、日本で連想するような結核療養所だけでなく、生活習慣全般の改善を行うリゾートタイプの治療施設であった。

しばらくしてから、そういえば「ケロッグ博士」とかいうタイトルの映画があったな、と思い出してネットで調べてみた。

なんと『ケロッグ博士』は、1994年に日本公開されているというではないか。いまから30年近く前のことにある。

映画の中身も確認せず、視聴もしていなかったのは、バブル崩壊のなかハリウッド映画への関心を失っていたためかもしれない。米国留学から帰国して2年後のことだったのだが、ビデオを借りまくって韓国映画ばかり見ていたのだった。




というわけで、 amazon prime video でさっそく視聴したわけだが、ブリジット・フォンダが助演女優として出演していたのか! 

わたしが大好きな『リトル・ブッダ』の翌年の作品ということになる。夫婦でサナトリウムに滞在するためにミシガン州のバトルクリークにやってくる設定である。ブリジット・フォンダは、わたしが好きな女優のひとりだったが、映画に出なくなって久しい。

それにしても、ケロッグ博士を演じているのがアンソニー・ホプキンズとは! 

どうしても『羊たちの沈黙』のレクター博士の印象が強いのだが、おなじく強烈なキャラであるとはいえ、ケロッグ博士はレクター博士とはまったく違う。とはいえ、この映画でもまさに快演というべき演技である。

ケロッグ博士と彼が経営していたサナトリウムは、ミシガン州のバトルクリークにあった。

この設定じたいは実話に基づくようだが、基本的に小説が原作なので、登場人物の多くはフィクションであろう。


■ケロッグ博士と彼が経営していたサナトリウム

さて、ケロッグ博士とは、あのコーンフレークのケロッグの生みの親である。

フルネームは、ジョン・ハーヴィー・ケロッグ(John Harvey Kellogg)。1852年に生まれ、亡くなったのは1943年。みずから考案した「健康法」の実践者だけあって89歳の長命を保ったわけだ。


(実物のケロッグ博士 Wikipediaより)


シリアルは彼が経営するサナトリウムでの療食食として開発されたものだ。このほか、ピーナッツバターも彼の発明である。

ケロッグ社の本社がミシガン州のバトルクリークにあるのは、サナトリウムがバトルクリークにあったからだ。ケロッグ社の経営は、のちにサナトリウムから独立した、弟のウィル・キース・ケロッグが行うことになる。




オリジナルの英語版タイトルは、The Road to Wellville(ウェルヴィルへの道)。日本語でいえば、「幸福村」あるいは「健康村」といったニュアンスか? 

「健康リゾート」というべきであろう。クアハウス(Kurhaus)やリトリート(Retreat)、あるいはスパ(Spa)とよばれているものだ。長期滞在型の療養施設である。

時代設定は1907年。20世紀初頭であり、おそらく当時の米国はドイツが発祥の「生活改革運動」の影響下にあるのだろう。

映画の後半には Dr. Spitzvogel なるドイツ出身で女性に性感マッサージを行う医師が登場したり、男性が股間に装着するドイツ製の精力増強マシン(?)が登場するのは、そういった背景を暗示しているためか。これらの点については、調べてみたい。

ケロッグ博士が設立し個人経営していた「健康リゾート」は、正確には「サニタリウム」となっている。「バトルクリーク・サニタリウム」(Battle Creek Sanitarium)である。英語のつづりは sanitarium であり、このほうが sanitary からの類推がききやすい。


(バトルクリーク・サニタリウム全景の絵はがき Wikipediaより)


療養所では、「代替療法」(オルタナティブ・メディスン)が実践されていた。

発明家でもあったケロッグ博士が考案した、電気コイル治療、高圧電気風呂、マッサージベルトなどの治療法は、100年以上たった現在から顧みたら、医学的根拠に乏しい奇妙きてれつでへんてこなものが多い。ありのままを忠実に再現すると、はからずしてコメディになってしまうというわけだ。

まあ、具体的なことは映画を直接見てもらえばいいが、ホメオパシーやホリスティック医療として、現在も行われている治療法も、もちろんある。

(実践されていた「呼吸法」 Wikipediaより)


肉を食べるなという菜食主義。タバコもアルコールカラダに悪いから禁酒禁煙カラダに悪いからという理由で療養所ではセックスも不可で、夫婦であっても寝室は別となっていた。もちろんマスターベーションも禁止

そして、呼吸法(breathing exercise: in and out)の実践。

また、治療法としての浣腸(enema)をこよなく愛していたらしい。大腸洗浄である。その前提として、よく噛んで食べること(fletcherize)が奨励されていた。消化をよくするためである。

そういえば、もうだいぶ前のことになるが、タイはチェンマイの療養リゾート施設 Tao Garden で一連の代替医療を受けたことがあったのを思い出した。滞在客の大半は欧米の白人ばかりだった。

その意味では、たとえ東洋文明の影響を受けていても、菜食主義や代替医療はあくまでも西洋文明の一部なのである。


■菜食主義はセブンスデー・アドバンティスト教会の教義から

どうやら、こういった主義主張は「セブンスデー・アドバンティスト教会」の教義から来ているらしい。ケロッグ博士は、この教会の信者であり、草創期の重要なメンバーであったのだ。

セブンスデー・アドベンチスト教会(Seventh-day Adventist Church:SDA)は、19世紀後半の米国で生まれたプロテスタントの一派である。

「セブンスデー」とは週の第7日目のことで、日曜日ではなく土曜日が安息日となる。「アドベンチスト」(Adventist)は、キリストの再臨(Advent)を待ち望む者のことを意味している。

菜食主義をもちこんだのは、創始者のエレン・ホワイトだという。「セブンスデー・アドバンティスト教会」は、米国における菜食主義の歴史において、きわめて重要な位置づけにあるわけだ。

調べてみると、「セブンスデー・アドバンティスト教会」は、Sanitarium Health and Wellbeing Company という会社を所有しているようだ。オーストラリアとニュージーランドで営業しているようだ。

日本では三育フーズ」がベジタリアン・フードの製造・販売を行っている。ウェブサイトには、「三育フーズは穀物・卵乳菜食のポリシーを掲げ、植物たんぱく食品、ゴマ加工品などを製造しております」とある。

「卵乳菜食」にかんしては、ウェブサイトに掲載された「企業理念」にはこうある。

三育フーズは卵乳菜食を提唱しています。それは動物性原料の栄養成分が健康に及ぼす影響だけでなく、農薬などの環境汚染による影響が植物連鎖の面から考えて植物性原料よりも大きいと考えられ、さらに狂牛病など動物に発症した病気が食物からよりも人間に移りやすいなどの理由によります。但し、動物性の食品を全く摂取しないとビタミンB12が不足する可能性があり、必要に応じて摂取すべきであるとの学説があります。その為、吟味した卵・乳製品を原料とした商品も提供しています。


なるほど、これなら実践可能だろう。正直いって完全なベジタリアンであるヴィーガンの実践は、究極の理想だとしても、実践はきわめてむずかしいから。

(1910年代のケロッグ社の広告 Wikipediaより)


朝食にシリアルに牛乳をかけて食べるライフスタイルは、日本で定着してから久しいが、そんな背景があったのだな、と。ケロッグ博士まで連想することはあっても、さすがに宗教的背景など、まず意識することなどない。

映画『ケロッグ博士』は、爆笑につぐ爆笑のコメディ映画であるが、この映画の背景を知るとさらに知的に楽しめるのである。




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