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2023年8月14日月曜日

書評『習近平が狙う「米一極から多極化へ」ー 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(遠藤誉、ビジネス社、2023)ー 「第2のCIA]とよばれる「NED」の活動を「見える化」した労作だが・・

 

「第2のCIA]とよばれる「NED」の活動を見える化した労作で読み応えがある。

事実関係の探索にかんしては大いに敬意を示したいが、意見にはかならずしも賛同はしない。その意味ではクリティカルな読み方が必要な本だ。


■「第2のCIA]とされる「NED](全米民主主義基金)

「NED」は、National Endowment for Democracy の略である。日本では「全米民主主義基金」とよばれている。

米国の政策の根幹になっている「他国の民主化を支援」が名目だが、冷戦時代のレーガン政権時代の1983年に設立されたことが示しているように、反共を目的とし、共産主義体制を倒すことをミッションにした基金である。

ソ連崩壊後は、中東欧やアラブ諸国での「カラー革命」を陰で主導し、最後の共産党政権である中国共産党がターゲットに設定されてゆく。

公式には「民間非営利」として設立された基金だが、実際の出資者は米国議会であり、米国の政策を代替しているのである。したがって、米国議会への報告義務があり、会計報告は年次報告で開示される。

著者は、この NED を公開資料からその活動を一覧表として「見える化」することに成功した。この点は大いに評価すべきだろう。

だが思うのは、そもそも第2次大戦後の米国のやってきたことはそういうものであって、わたしは共産主義体制を倒すという理念には賛成である。まさにレーガン政権時代に高校時代と大学時代を過ごしたわたしは、個人的には現在にいたるまで一貫して反共思想をもっている。

もちろん、その方法論は問題にされるべきであるが、権威主義体制の維持強化に賛成する気にはまったくなれない。

中国共産党によるチベット、ウイグル、南モンゴルなど少数民族への弾圧、香港など漢民族マイノリティへの弾圧など、とうてい容認できるものではない。


■著者の 「グローバルサウス論」には異議あり

中国になびく国が、いわゆる「グローバルサウス」に多いとよく言われる。

南半球のアフリカと南米を中心としたグローバルサウスには、世界人口の85%が居住しているといっても、そのすべてが中国共産党を支持しているわけではない。この点は間違えてはならない。

グローバルサウスの政治指導者たちが中国を支持しているのは、中国共産党の理念に賛同しているからではないいずれも生き残りのために「自国ファースト」を余儀なくされているからだ。どの国も余裕がなくなっているのだ。

しかも、グローバルサウスに属する多くの国々は、国民生活を犠牲にしてエリート層が富を独占する体制であり、権威主義体制をとる政権にとっては都合がいいからだ。著者はこの点をオミットしているのではないか? 

グローバルサウス諸国を十把一絡げに捉えるべきではない。かつての「第三世界」論の焼き直しのように思えてならないのだ。著者も先祖返りしてしまったようだ。「第三世界」を擁護した論者の多くは「反米主義」者であった。


■「性悪説」の「荀子」を指導原理にしている習近平

習近平が心酔しているという荀子は、毛沢東も心酔していたらしい。習近平は、「性悪説」の「荀子」を指導原理にしているのである。この点は、本書で大いに勉強になる点だ。

荀子のフレーズである「兵不血刃」は、血を流すことなく戦いに勝つという意味だ。孫子の「戦わずして勝つ」に似ているが、より強烈なニュアンスと謀略も辞さない姿勢が際立っている



著者の原体験である「長春チャーズ」は「兵不血刃」の実行例であるとする。この説明は大いに説得力がある。いわば兵糧攻めで一般人を餓死させた中国共産党の作戦である。武器を用いて血を流すことなく、中国国民党を屈服させたのであった。

だが、たとえ習近平が「兵不血刃」にもとづいて、軍事的な「台湾侵略」を実行しないとしても、その内容はきわめて苛烈なものであることを想定すべきだ。ハッキングである。ニセ情報による世論誘導である。兵糧攻めである。

だが、最後の最後の手段であるラストリゾートとしての軍事オプションも想定しておくのは当然だと考えるべきだ。その点は著者には同意しない。


たとえ「台湾有事を創り出すのは(第2の)CIAだ!」としても、現実的な対応が必要だ

「台湾有事を創り出すのは(第2の)CIAだ!」と著者はいう。そのとおりだろう。あえて否定する必要もない。


現実に台湾への軍事侵攻が実行されたらどうするのだ? われわれは現実的な対応を迫られるのは当然ではないか!

フランス大統領のマクロンの言動は、なんとか米国とは一線を画したいという願望の表れである。それは、ド・ゴール由来の「フランス病」の再発というべきであって、そのような曲芸はとうてい日本が真似すべきものではない。

著者が願望するのは、米国のやり方と一線を画すということだ。だがそのためには、常識的に考えて、それには日米同盟も解消して完全に手を切る覚悟も必要だろう。

その実現可能性は現時点ではきわめて小さいし、現在の日本が置かれている国際状況からいっても無理筋である。

結論としては、「第2のCIA]とよばれる「NED」の活動を見える化した労作として大いに評価するが、わたしとしては著者の結論には賛成しかねるということだ。

読者はそういうつもりで読むべきであろう。批判的な読書法であるクリティカル・リーディングが求められるとはそういう意味だ。




目 次
序章 世界制覇を巡る米CIAと習近平「兵不血刃」の攻防 
第1章 習近平ウクライナ戦争「和平案」は地殻変動のプロローグ
第2章 中国が招いた中東和解外交雪崩が地殻変動を起こす
第3章 「アメリカに追従するな!」― 訪中したマクロン仏大統領の爆弾発言 
第4章 毛沢東と習近平を魅了した荀子哲理「兵不血刃」 
第5章 台湾問題の真相と台湾民意 
第6章 台湾有事はCIAが創り出す! 
終章 「アメリカ脳」から脱出しないと日本は戦争に巻き込まれる 


著者プロフィール
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
中国問題グローバル研究所所長。 1941(昭和16)年中国吉林省長春市生まれ。国共内戦を決した「長春包囲戦」を経験し、1953年に帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授(元物理工学系所属)、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。 著書に、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)、『「中国製造2025」の衝撃-習近平はいま何を目論んでいるのか-』(遠藤誉、PHP、2019)など多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)




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