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2023年9月1日金曜日

『知中論 ー 理不尽な国の7つの論理』(安田峰俊、星海社新書、2014)を読んで、 国内の不満解消に日本を利用する中国共産党主導の「反日活動」の背景には何があるのかを考える

 
本日(2023年9月1日)は、関東大震災からちょうど100年にあたる。ということで、本来ならこの件について書くべきだろうが、いままさに旬の問題である「処理水問題」について書いておこう。

福島第一原発から排出される「処理水」の海洋放出にかんする問題だが、「処理水問題」は「汚染水」だ、日本政府の行動がけしからんなどというつもりはない。まったく問題がないとは言わないが、問題は日本ではない。中国共産党こそ問題の根源にある

この問題の中国政府(≓ 中国共産党)による政治利用と、その容認のもとに行われている民間の中国人たちによる「日本叩き」という悪しき言動についてである。

デマの拡散、フェイク情報の捏造とその拡散、日本の関連機関や民間企業などに対する迷惑電話による攻撃、日本産の魚類の不買運動・・。

まさか、さすがに中国政府が科学的な意味を理解できないというわけではあるまい。「処理水」が科学的にみて、それほど大きな問題ではないことを知っていて、そのうえで日本攻撃を行っているのである。政治目的なのである。だからこそ、かえって悪辣なのである。

コロナ後の中国国内の経済悪化にともなう不満のガス抜きだと指摘されているが、国内問題への対処のために日本をだしにするのはやめてもらいたい。怒りとウンザリ感を感じているのは、わたしだけではないだろう。


■問題の構図は「尖閣問題」とおなじ。中国人の内在的ロジックとは?

この構図は、2012年9月11日の「尖閣国有化」が誘発した、中国国内の激しい抗議活動と反日暴動と構造的にはまったくおなじである。

そんなとき、冷静になるためにはこの本を読んだらいいだろう。『知中論 ー 理不尽な国の7つの論理』(安田峰俊、星海社新書、2014)である。積ん読のままだったこの本を今回はじめて読んだ。

「親中」でも、ましてや「媚中」などではなく、しかも「嫌中」でもない。それが「知中」である。「知中」という、このマインドセットが重要だ。なによりも「知る」につとめることである。

そのためには、ビジネス関係なら中国の政治経済も社会も熟知したコオロギ先生の YouTube での解説が参考になるが、それ以外を含めてはなんといってもエネルギッシュなヤスダ氏の言説に説得力があるといっていいだろう。

研究者並の学識をもったジャーナリストの安田氏は、コロナ以降は中国での現地取材が困難なため、在日ベトナム人など日本国内の外国人問題を中心に健筆を振るっているが、10年前は中国国内での比較的自由な取材活動も可能だったのである。

本書の内容をごく簡単に要約してしまえば、中国人には中国人なりのロジックとうものがある、ということだ。「内在的論理」である。日本側がいくら正論を述べようと、いっこうに通じないのはそのためなのだ。逆もまた然り、であることは言うまでもない。

「理不尽な国の7つの論理」は、目次では問いの形で示されている。

第1章 中国はなぜ『覇権主義』になったのか? 
第2章 尖閣諸島は誰のものか? 
第3章 反日デモは今後も起きるのか 
第4章 習近平は何者なのか 
第5章 靖国参拝はなぜ非難されるのか 
第6章 少数民族問題はなぜ激化しているのか 
第7章 日本人はなぜ中国に腹が立つのか 


2023年8月に始まった今回の「処理水問題」が11年前と違うのは、中国国内の経済状況が当時より、さらに大幅に悪化していることである。リーマンショック後の世界経済を中国が主導して回復させたのは、もう遠い昔の話だ。

長年にわたってささやかれていたが、ひたすら問題を先送りにしてきた「不動産バブル」の破綻がついに始まり、デフレ経済に突入しつつある中国経済の「日本化」が懸念されているだけでなく、若年層の失業率が20%を超え(・・実質的には40%を超えているようだ)、経済悪化にともなう社会不安が増大しつつある。

この状況に対して、権威主義体制の習近平政権は、国内引き締め以外の方法をもたないようで、それがさらなる閉塞感を生み出している。


■尖閣をめぐる問題はボーダーレスであった「海域世界」が背景に

『知中論 ー 理不尽な国の7つの論理』は、最初から最後まで面白く読ませてくれる有益で有用な内容の本だが、圧巻は著者の大学院時代の研究テーマをベースにした、「第2章」の尖閣漁民のマインドにかんする考察である。

それは前近代の清末、とくに中国南部における「械闘」(かいとう)にかんする研究と、実際に現地における聞き取り調査によるフィールドワークをもとにしたものだ。

「械闘」とは、明清時代以降の中国において発生した、集団同士が武器を持って殴り合う私闘のことで、日本のそれとは比較しようがないほど暴力的で破壊的なものだ。大量の死者が発生することもあったらしい。古老たちから興味深い話を引き出しているが、台湾映画の『セデック・バレ 二部作』(2011年)で描かれた「首狩り族」とよばれた先住民の世界だけではないのだな、と。

著者は、尖閣で問題をおこした船長の出身地である潮州の村落も訪問している。

その地域の漁民たちのメンタリティは、そもそこが国境など関係ないボーダーレスな海域で活動していた海洋民であること、そのメンタリティは「陸に上がった海賊」(=倭寇)にほかならないと指摘している。

なによりも「力」がものをいう世界であり、「義」を重んじる「水滸伝」の世界の住人のようなメンタリティである。


■「現在」を理解するためには歴史の知識が有用だ

そして、「第5章」の秦檜(しんかい)について。これはきわめて重要な事例である。

いまから900年前の12世紀のことであるが、北方の異民族との関係をめぐっての、和平を主張した秦檜と徹底抗戦を主張した岳飛との対立が、現在まで尾を引いているのである。

現在なお中国人のあいだで絶大な人気をほこる岳飛。その壮大な廟の前に置かれた、ひざまづいて頭を垂れる秦檜夫妻の像。

わたしも、たまたま杭州には行ったことがあり、岳飛廟も訪問しているが、さすがに秦檜の像の周りには鉄柵がめぐらしてあって、直接的な狼藉行為は禁止されていた。とはいえ、像が撤去される気配はまったくない。

執念深いというか、凝り固まっているというか、日本人にはまったく理解しがたい中国人のメンタリティである。それはそういうことなので、そうだと受け止めるしかないのである

つまり、中国人の「内在的ロジック」を前にしては、いくらわれわれが考えるような正論を主張しようが、いっさい通用しないのである。まったく聞く耳をもたないのである。

とくに圧倒的多数を占める人民たちは、統治する主体が中国共産党であろうがなかろうが、前近代的メンタリティを持ち続けているのである。


圧倒的多数の「情弱」たちを操る一握りの「上級国民」という構図

著者はつかっていないが、日本語の文脈でいえば「情弱」というべき存在である。

「情弱」とは情報弱者の略だが、言われるがままに情報を受け取り、真相を知ろうと努力しないだけでなく、ファクトベースで判断する知的訓練など受けていない人たちのことだ。思い込みで動くので、感情がいとも簡単に論理を超えてしまう。困った人たちである。

そんな圧倒的多数の「情弱」たちを操る一握りの「上級国民」という構図が、現在の中国である。いや、有史以来この構図が変わっていないというべきだろう。

しかも、国内問題への対処のために民衆をけしかけ排外的な行動をとらせることは、19世紀末の「義和団事件」以来の「伝統」と化しているのである。民衆の暴力的な力を利用して排外的な姿勢を示し、それが行き過ぎると民衆を抑圧する側に回る

大学教育を受けた人間を「知識階層」とすれば、すでに2億人を超えたという。これだけでも日本の人口を超えるわけだが、中国の人口14億人から見たら、ファクトベースで冷静な判ができない人間が12億人もいることになる。当然のことながら、これは誇張した数字であり、もちろん例外はあろう。とはいえ、ため息をつかざるをえない。

国内問題のガス抜きにつかわれる日本としては迷惑以外の何物でもないが、日本としては主張すべきことは主張したうえで、オーストラリアのようにWTO提訴も含めて世界中で仲間づくりを推進し、暴発しない程度に中国を締め上げて孤立させるのがベストポリシーということになる。

中国共産党がやっていることは、ことごとく「意図せざる結果」をもたらしている日本国内で「反中」世論が増大するだけでなく、国際的に中国批判が拡大する結果をもたらすことになろう。ブーメランである。それにしても、まったくもって「学習能力」のない、内向きの人たちだな、と。

「親中」でも「嫌中」でもなく「知中」であるべきだとはいえ、中国というのがやっかいな隣人であることには変わりない。もちろん、中国を知るという行為は今後もつづけていかなくてはならない。





著者プロフィール
安田峰俊(やすだ・みねとし)
ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了(中国近現代史)。『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。他に『さいはての中国』(小学館新書)、『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ)、『「低度」外国人材』(KADOKAWA)、『中国 vs. 世界』(PHP新書)など著書多数。(本データはこの最新刊の著書に掲載されていたもの)


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