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2023年8月27日日曜日

書評『中国哲学史 ー 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』(中島隆博、中公新書、2022)ー 西からやってきた「外来思想」との対決と変容から考える中国哲学史

 
この本は面白かった。じつに面白かった。中国関連の本でこれほど知的に面白く、最初から最後まで読ませ本はなかなかない。わたしのように中国を専門としない人間こそ読むべき本だろう。

3000年の中国哲学の通史を、全世界的な流れのなかに位置づけて、その起源から現代までコンパクトな形でまとめあげた本だからだ。新書版の形にまとめあげるのが大変な作業であったことが「あとがき」に記されているが、その苦労がしのばれる。

というのも、『中国哲学史 ー 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』というタイトルにもあるように、教科書にも登場する諸子百家や朱子学は別にして、現代の「新儒家」まで中国3000年の哲学史を通史の形にまとめあげるのは、大きな軸となるストーリーが必要だからだ。その軸となるものを見つけ出し確定することは、狭い意味の専門家の範囲を越えた仕事である。

冒頭で「中国哲学」は「哲学」かという問いがなされている。これは一般読者向けというよりも、哲学研究者からの批判を想定したものであろう。というのは、「哲学は古代ギリシアから始まった」とされているからだ。

だが、インド哲学と中国哲学は、当然のことながら「哲学」であるといっていい。それぞれ自前の哲学思想があるからだ。孔子による儒学や、老荘思想といった自前の哲学を生み出してきたのは中国である。

とはいえ、中国哲学も外部からの影響をまったく受けていないわけではない

影響というよりも、むしろきわめて強力な「外来思想」との対決と受容が「中国哲学史」の大きなテーマであることは、目次をみればよくわかることだ。

それは著者によって「パラダイムシフト」と表現されている。それ以前と以後で思考の枠組、つまりパラダイムそのものに大きな変化がもたらされているのである。

21章ある構成のなかに「パラダイムシフト」とされるものは3つある。「仏教」と「キリスト教」そして「西欧近代」の3つである。

第9章 仏教との対決 ー パラダイムシフト1
第14章 キリスト教との対決 ー パラダイムシフト2
第17章 西洋近代との対決 ー パラダイムシフト3

「仏教」は2世紀にインドから、「キリスト教」は16世紀にカトリックの宣教が、そして19世紀には「西洋近代」が、中国に多大なインパクトをもたらしたのである。

いずれも中国からみたら、西からやってきた異質で、きわめて強力な「外来思想」である。

具体的な内容については、本文を読むのがいちばんだが、仏教とにかんしては対決と変容から(受容すなわち禅仏教のような中国化とそれへの反発)生まれたのが「朱子学」を中心とした「宋学」でありキリスト教にかんしては中国における対決と受容そして排斥の成果は、日本人は主として漢籍をつうじて取り入れてきた。

日本思想史を考えるにあたっても、中国の状況をしておかなくてはならないのである。


■西洋近代の影響以降の東アジアにおける中国の位置づけ

三番目の「西洋近代」には、プロテスタントのキリスト教、米国を含めた西洋世界からの近代思想の流入があげられる。禁教政策をとっていた日本に先行して、租借地において英米の宣教師による宣教活動と聖書の漢訳が行われ、幕末の日本に漢訳聖書が持ち込まれることになった。

だが、それ以外の近代思想にかんしては、むしろ逆転して、日本での受容との成果が中国に流入する形になっている。明治維新後の日本が積極的かつ猛烈に西洋そのものを吸収したからだ。西洋で生まれた概念語は、日本であらたにつくられた漢字語として表現されることになり、自由や社会などの概念語は中国に逆輸入されることになった。

最終章で解説される、現代中国の「新儒家」の思想は、読者としては新鮮な印象を受けた。21世紀における儒教復興。西洋近代思想との対決後の儒教復興。現代にかんしては、専門家のあいだは別として、中国独自の思想の流れが日本で紹介されることがあまりない。知らないことを知るのはよいことだ。

西洋世界もまた中国哲学のインパクトを受けてきたことに留意する必要があろう。キリスト教布教がキッカケとなって、17世紀以降には中国哲学が西洋にもたされたのである。西洋の啓蒙思想には中国哲学の影響がある。影響というものは一方的なものではなく相互関係なのである。

世界がグローバル化した結果、古代の中国哲学は日本など東アジアに限らず、すでに世界の共有財産であるといっていい。それだけでなく、パラダイムシフト以降の中国哲学の軌跡についても知っておくことが重要であると、本書を通読してあらためて感じた。




目 次
まえがき
はじめに ー 中国哲学史を書くとはどういうことか
第1章 中国哲学史の起源
第2章 孔子 ― 異様な異邦人
第3章 正しさとは何か
第4章 孟子、荀子、荘子 ー 変化の哲学
第5章 礼とは何か
 コラム1 『孫子』ー 配置の哲学
第6章 『老子』『韓非子』『淮南子』ー 政治哲学とユートピア
第7章 董仲舒、王充 ー 帝国の哲学
第8章 王弼、郭象 ー 無の形而上学
第9章 仏教との対決 ー パラダイムシフト1
第10章 『詩経』から『文心雕龍』へ ー 文の哲学
第11章 韓愈ーミメーシスと歴史性
第12章 朱熹と朱子学 ー 新儒学の挑戦
第13章 陽明学 ー 誰もが聖人になれる
第14章 キリスト教との対決 ー パラダイムシフト2
第15章 西洋は中国をどう見たのか1 ー 17~18世紀
第16章 戴震-考証学の時代
第17章 西洋近代との対決 ー パラダイムシフト3
第18章 胡適と近代中国学の成立 ー 啓蒙と宗教
第19章 現代新儒家の挑戦 ー 儒教と西洋哲学の融合へ
第20章 西洋は中国をどう見たのか2 ー 20世紀
第21章 普遍論争 ー 21世紀
おわりに
あとがき
参考文献
中国哲学史 関連年表
人名索引

著者プロフィール
中島隆博(なかじま・たかひろ)
1964年生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科中国哲学専攻博士課程中途退学。中国哲学・世界哲学研究者。東京大学大学院総合文化研究科准教授、東京大学東洋文化研究所准教授を経て、2014年より東京大学東洋文化研究所教授、2020年より東京大学東アジア藝文書院院長。著書『共生のプラクシス―国家と宗教』(東京大学出版会、第25回和辻哲郎文化賞)ほか。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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