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2024年8月10日土曜日

おお、グレコローマン! ローマ皇帝マルクス・アウレリウスも青年時代にレスリングでカラダを鍛えていたのだ



オリンピックにはほとんど関心がないので結果しかみていないが、「馬術で92年ぶりにメダル!」とか、そういう話題はすばらしいと思って反応する。 

そして、レスリングの「グレコローマンスタイルで40年ぶりに金メダル」という情報に反応した。 40年ぶりもさることながら「グレコローマン」に反応するのだ。

「グレコローマン」は、フリースタイルとは違って、腰から下は攻撃してはいけないスタイルのレスリングのことだ。 

その「グレコローマン」(Greco-Roman)とは、ギリシア風かつローマ風ということ。バロック時代の画家エル・グレコ(El  Greco)のグレコ。つまりグレコローマンとは、古代ギリシアや古代ローマで行われていたレスリングのことだ。 


『超訳 自省録 エッセンシャル版』なら「078 疑いや憎しみをもたずにスタンスをとる」を参照。  

こういうとき電子書籍はすぐ検索できるのがいいね。みなさんもぜひ『超訳 自省録 エッセンシャル版』でご確認いただきたく。 

ちなみに、グレコローマンスタイルのレスリングは、古代の総合格闘技パンクラティオンとは別物ですよ。


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2021年8月9日月曜日

2021年に開催された「TOKYO 2020」を振り返る-「ホスト国」の日本は「無観客開催」によって結果として「フェアネス」を貫いた!

(「TOKYO2020」のメダル獲得数 Wikipediaより)

2021年7月23日から17日間にわたって開催された「TOKYO 2020」を振り返ってみよう。

結論としては、「ホスト国」(=開催国)の日本は、結果としてではあるが、「フェアネス」を貫いたといっていいのではないだろうか。

「オリンピック TOKYO 2020」が閉幕した。日本のメダルラッシュ(総合3位)と躍進、しかも新型コロナウイルス感染拡大の同時進行の17日間であった。 

開催中止、あるいは来年に再延長でもよかったのではないかと個人的には思っている。だが、それでも「1年遅れの開催」で、しかも「無観客開催」となった。 

個人的には、「無観客開催」となったことは、あくまでも結果としてではあるが、意外にも、大いに評価すべきであると考えている。なぜなら、これによって「ホスト国の日本」は「フェアネス」を貫くことができたからだ。 

そうでなくても、「アウェイ」開催に対して「ホスト国」が有利になるのは理の当然だ。しかも、この状態で、海外からの入国制限を行ったうえで日本人観客のみ入れるとなったら、外国人選手の立場からすればフェアであるとは言い難い。大会関係者を除いて、観客の9割以上が日本人という異常な状態となっていたからだ。

誤審問題がヒートアップした可能性があることは、近隣諸国の反応をみれば明かであると言うべきだろう。SNSを中心にした誹謗中傷では済まなかった可能性もある。 

つまり、ホスト国の日本が、無観客開催でこれだけの成果を出すことができたということが素晴らしいのだ。そう評価すべきではないだろうか。 

言うまでもなく、今回の「TOKYO2020」は、開催前に問題噴出となった。ギリギリのところでイベントそのものは、関係者の献身的な努力で、かろうじて最後までオペレートすることができた。 

「人権問題」をはじめ、日本社会が抱えるさまざまな「闇」が明かにされたが、こんな機会でもなければ顕在化すことはなかっただろう。そう考えれば、日本再生のためにチャンスをもらったと前向きに捉えるべきではないかもしれない。 

「記録か、記憶か?」という問いがある。好成績を叩き出した「記録」もさることながら、結果としては、さまざまな意味で「記憶」に残るオリンピックになったことは間違いない。

前回の1964年大会は、「戦後復興」ということで、高度成長への道筋をつけたことに意義があり、これが韓国や中国にも「モデル」として採用されたくらいだが、おそらく今後はオリンピック熱は大きく減退していくことだろう。50年後にオリンピックが開催されているかどか不透明になってきたかもしれない。

♪ 東京でやる五輪は これが最後ねと さみしそうに 君がつぶやく

イルカの「なごり雪」をもじって、こんなことをくちずさんでしまう人もいるかもしれない。

とはあれ、今回の「TOKYO2020」を 後世にどう語りつぐか、それは日本国民のそれぞれにとっての課題となる。マスコミによる世論誘導を離れた、ノンフィクション作家たちの仕事を楽しみにしている。 


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2021年3月18日木曜日

沢木耕太郎氏の傑作ノンフィクション『オリンピア-ナチスの森で』を手引きにレニ・リーフェンシュタールの『オリンピック二部作』を視聴し「1936年ベルリン・オリンピック」について考えてみる(2021年3月)


「2020年東京オリンピック」は「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)のため1年延期となった。延期されたものの、2021年の開催も危ぶまれている。開催されても無観客、あるいは開催されないかもしれない。 

「近代オリンピック」自体、商業主義に汚染されて、本来のスポーツ精神の行方もあやしくなっている。こう言われるようになって久しい。もはやオリンピックそのものが形骸化への道へと転落しつつあるのではないか、と。 

古代ギリシアにおいても、オリンピックは消滅している。始めあれば、終わりあり。それが世の中の理(ことわり)というものだ。すべて常ならず。無常である。
  
「2020年東京オリンピック大会」は、その「終わりの象徴」的存在となりそうだ。 日本は「1940年大会」は開催返上している。二度あることは三度ある。オリンピックが大きな話題になることは、今後すくなくとも21世紀の日本ではもうないだろう。


■『オリンピア-ナチスの森で』(沢木耕太郎)

こんな機会を逃したら、もうこの本を読むことはないかもしれない。そう思って『オリンピア-ナチスの森で』(沢木耕太郎、集英社文庫、2007)を読むことにした。  

2007年に文庫版を購入してから、読む機会を逸したままとなっていたのだ。昨年2020年に読むべきだったのだが、延期となってしまい読書の機会も延期となった。 

ノンフィクション作家の沢木耕太郎氏の本はすべて読んだわけではないが、個人的には1960年前後を扱った『テロルの夏』が最高傑作だと考えている。この『オリンピア-ナチスの森で』は、それよりさらに前の1936年を扱っている。 

沢木氏が最初にこのテーマを取り上げたのが1976年で、オリンピック日本代表団のメンバーへのインタビューを行っている。「1936年ベルリン・オリンピック」から40年後になるが、ギリギリ間に合ったといえよう。

単行本として製作されたのが1998年で、「1936年ベルリン・オリンピック」から62年後となる。ベルリン・オリンピック自体は、現在からすでに85年も前の歴史上の出来事となって久しい。 

知られざるエピソードがふんだんに紹介されているだけでなく、ベルリン大会から始まった「聖火リレー」はナチスの進軍ルートの事前調査、といういまだに流布しているオリンピック伝説が、ことごとく覆される。 


■映画『オリンピア 二部作』の監督レニ・リーフェンシュタール

なんといっても白眉は、序章と終章で全面的に取り上げられているレニ・リーフェンシュタール(1902~2004年)へのインタビューであろう。  

記録映画『オリンピア 二部作』(=『民族の祭典』と『美の祭典』)の監督であるレニは102歳まで生きたが、インタビュー当時は90歳であったにもかかわらず、映画製作にかんしての細部に至るまでの迫真のやりとりが、じつに興味深い。 

レニ・リーフェンシュタールについては、彼女の人生を振り返った記録映画『レニ』は日本で公開された1993年に映画館で見ている。彼女の人生と作品の数々が日本でも大いに話題になったことがあって、私もどっぷり浸かったことがある。

そのときはまだ本人が存命だった。彼女の『自伝』も読んでいる。写真集『ヌバ』も所有している。美しい肉体賛美は、三島由紀夫に通じるものがある。

レニの代表作の1つが、1934年ナチス党大会の記録映画『意志の勝利』で、この30年間で何度も繰り返し視聴している。映画は何度も繰り返し視聴している。 

ナチスへの関与のため「戦後」は、映画製作の現場から遠ざけられていたなか、圧倒的な迫力をもつ写真集『ヌバ』で再登場、まさに表現するために生まれてきたような強烈な個性の持ち主であったレニ。 

そんな彼女の代表作ともいえるのが『オリンピア』(1938年公開)であった。1939年に第2次世界大戦が始まる前に公開され、世界中で大きな賞賛を受けた映画だ。 

沢木耕太郎の『オリンピア-ナチスの森で』で、細部にわたって検証される『オリンピア』だが、じつは完全な記録映画ではなかった。ナチスの宣伝映画でもなかった。あくまでも「美」を追求する表現者であるレニの作品であったというべきなのだ、と。 

なるほど、そういう見方もあるのだなと、久々に映画『オリンピア』を視聴してみることにした。全部を通して見たことがなかったからだ。


■『オリンピア 二部作』を見る

映画『オリンピア』は二部作として構成されている。それぞれ『民族の祭典』は111分、『美の祭典』は89分だ。あわせて200分である。3時間弱の長尺である。

第1部『民族の祭典』の冒頭の20分を越えるシーンは、紀元前の古代ギリシアと1936年当時の現代ドイツをつなぐものだ。アテネのアクロポリスから始まり、聖火リレーがバルカン半島を通ってオリンピック会場までリレーされるシーンは、「オリンピックの思想」を美しい映像として表現したものだ。 

日本選手の活躍するシーンが多い。選手たちの筋肉の躍動が美しいだけでない。選手たちの表情もいい。また日本人観客の表情もいい1936年当時の日本人がそこにある。 

「円盤投げ」から始まる、古代ギリシアに由来する陸上競技でまとめた第1部『民族の祭典』圧巻は、なんといってもマラソンだろう。植民地であった朝鮮半島出身のランナー孫基禎が金メダルを獲得するのだが、表彰台に立った孫の背後に翻る日の丸、流される「君が代」には、複雑な思いを感ぜざるをえない。 

棒高跳びのシーンは、じつは競技そのものではなく、撮り直したものだということは、『オリンピア-ナチスの森で』で初めて知った。記録そのものではないというのは、そういうことだ。マラソンでも映像を反転させて使用しているシーンもあることを知り、実際に確かめて見たが、まさにその通りだった。 

第2部『美の祭典』の圧巻は、なんといってもダイビング(=跳びこみ)。モノクロであるが、空を飛ぶ肉体は、ほんとに美しい。 肉体がもっとも美しく表現されるアングルを駆使したスタイルは、現在に至るまで踏襲されている。

沢木耕太郎の『オリンピア-ナチスの森で』は、レニの『オリンピア』のいい副読本になっている。そういう読み方も可能だ。


■近代オリンピックの行方

沢木耕太郎氏の『オリンピア』は、5部作の予定だったのだという。だが、完成したのは『オリンピア-ナチスの森で』だけである。それほど入魂の仕事なのである。1つの作品を完成させることは、それだけ大変なのだ。 

文庫版の「あとがき」(2007年)で沢木耕太郎氏はこう書いている。「2020年東京オリンピック大会」」の開催が決定される以前のものだ。


オリンピックのサマーゲームは、(・・中略・・)2004年に行われた「アテネ大会」で近代オリンピックはひとつの円環を閉じてしまったような気がしてなりません。 その思いは、次の時代のオリンピックがこれまでよりも印象的な大会になることはあまりないのではないかという危惧を抱かせます。たとえ東京で二度目の大会が開かれたとしても、1964年のオリンピック以上のものにはなりえないでしょう。 


日本だけでなく、世界がオリンピックに熱中するようなことは、もうないのかもしれない。

その意味でも、「1936年ベルリン・オリンピック大会」や「1964年東京オリンピック大会」は、それ自体が大きな意味をもつ近代史の一コマだったのである。








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2020年3月23日月曜日

『幻の東京オリンピック ― 1940年大会 招致から返上まで』(橋本一夫、講談社学術文庫、2014)で「幻の大会」となった80年前の東京オリンピックについて知る



2020年東京オリンピック大会が開催されるのかどうか、気が気でない人も少なくないだろう。

予定どおり開催されるなら、オリンピックは7月24日から8月9日まで、パラリンピックは8月25日から9月6日までの予定だ。

だが、突然やってきた「不可抗力」によって、開催が微妙になってきている。中国湖南省武漢で発生した新型コロナウイルスが、ついにパンデミック(=世界的な感染爆発)となってしまったからだ。感染拡大を防止するためには、「濃厚接触」を避けなくてはならない。その意味では大規模イベントの開催は自粛する必要があるからだ。

はたして開催決定のギリギリの期限である5月末までに世界的なパンデミックは終息するのか?・・・

オリンピックは「中止」か? それとも「延期」か? 「延期」だとしたら年内か、それとも来年か、再来年か??(*)


(*注)この文章を書いている時点ではこのような状態だったが、2020年3月24日に安倍首相がIOC委員長との電話会談の結果、1年以内に延期で決定した。だだし、具体的なスケジュールについては現段階では未確定である(2020年3月25日 記す)


そんなときだからこそ、過去を振り返ってみる必要があるだろう。そこで、『幻の東京オリンピック-1940年大会 招致から返上まで』(橋本一夫、講談社学術文庫、2014)という本を読んでみた。 

いまから80年前の1940年に開催されるはずだった「東京オリムピック」はIOC(国際オリンピック委員会)への開催権の「返上」によって「中止」となったのである。現在に至るまで、唯一の「幻のオリンピック」となってしまったのである。

1940年(昭和15年)は皇紀2600年であった。この祝典にあわせてオリンピックを誘致したいという構想が生まれ、国際親善のオリンピック理念との齟齬を残したまま、構想は実現へと向かう。

紆余曲折を経るなか、ムッソリーニの協力によってローマ開催を取り下げてもらい、1936年のベルリン大会を成功させたヒトラーの後押しで、1940年大会の誘致に成功した日本国と東京市。その後、日独伊三国同盟が締結される。

東京オリンピック開催にあわせて、ベルリン大会以上にテレビ中継を実現したいというNHKの強い思いが、テレビの研究開発に拍車をかける。

だが、組織委員会の不統一やボタンの掛け違いなどで、会場施設建設が遅々として進まないなか、1937年の「盧溝橋事件」が発端となった「日中戦争」勃発が最終的にとどめを刺すことになった。

「国家総動員体制」が導入され、陸軍は現役将校を馬術競技に参加させないと表明、建設に必要な資材や物資もまた「重要物資需給計画」によって、とくに建設に不可欠な鉄材の調達が困難となる。

結局、追い込まれた状況で、当時はオリンピックの所管官庁であった厚生省が開催の「返上」を決定し、内外に向けて告知、組織委員会は否応なく開催断念を受け入れざるをえなくなる。

そして、東京のかわりにフィンランドのヘルシンキで開催されることになったが、1939年に第2次世界大戦が勃発したことで、大会そのものが流れてしまう。

今回2020年も新型コロナウイルスというパンデミックの状況のなかにある。前々回1940年は日中戦争から大戦前夜にあった。ともに世界中が「戦争状態」のなか、はたして予定どおりの開催は可能か? おそらく、日本政府もIOCも、それぞれぎりぎりの決断を迫られ、虚々実々のせめぎ合いの最中であろう。

しかも、2020年現在、1984年のロサンゼルス大会以降の巨大ビジネス化によって、米国の放送業界という巨大利害関係者の意向も大きく左右する状況だ。さまざまな利害関係者のあいだで神経戦という状態であろう。

1940年の東京オリンピックは開催返上40年後の1980年のモスクワ大会は西側諸国がボイコットそれから40年後の2020年東京大会はいかに? 

どうやら、オリンピックは40年ごとに大きな節目となるらしい。ある種のジンクスというべきか。

どういう結果になるかはさておき、オリンピックという巨大イベントは、ただ単にスポーツの競技大会をいう枠を越えて、国際政治そのものと密接にからみあった存在だということを、あらためて痛感するのだ。

 「オリンピックには魔物がいる」と、大会で敗れ去りメダルを逃した有力選手がよく口にするが、「オリンピックそのものが魔物」なのだなと、この本を読んでいて思った。





目 次 

第1章 オリンピックを東京に-市長永田秀次郎の夢 
 紀元二千六百年を記念して
 腰の重い体育協会
 ロサンゼルスの青い空
 満州国は参加できるのか
 ムソリーニの好意
 オスロ総会の舞台裏 
第2章 招致実現に向けて-ヒトラーも協力 
 ベルリン大会を前に
 IOC会長の変心
 東京招致に成功
 ナチス・オリンピック
 日本選手団騒動 
第3章 戦火ただようなかで-問題山積の開催準備 
 難航した組織委員会の発足
 テレビ中継をめざして
 メーンスタジアムはどこに
 日中戦争勃発
 対立と苦悩の組織委員会
 四面楚歌のカイロ総会 
第4章 オリンピックの火は消えた-ついに大会を返上 
 雄大な聖火リレー計画
 着工できない競技場
 東京大会ボイコットへ
 国策に敗れたオリンピック
 空白の祝祭 
学術文庫版のあとがき
主要参考・引用文献


<ブログ内関連記事>

JBPressの連載コラム第71回は、「「建国記念の日」はいつ2月11日に決まったのか?- 「歴史」と「神話」はイコールではない」(2020年2月11日)

書評 『民警』(猪瀬直樹、扶桑社、2016)-オリンピックという大規模イベントを「警備」という観点から見る

「東京オリンピック」(2020年)が、56年前の「東京オリンピック」(1964年)と根本的に異なること

書評 『東京劣化ー地方以上に劇的な首都の人口問題-』(松谷明彦、PHP新書、2015)-東京オリンピック後がこわい東京。東京脱出のすすめ!?

滝川クリステルがフランス語でプレゼンした理由


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2020年3月21日土曜日

書評『民警』(猪瀬直樹、扶桑社、2016)― オリンピックという大規模イベントを「警備」という観点から見る



ノンフィクション作家・猪瀬直樹氏の『民警』(扶桑社、2016)を読んだ。

「民警」とは、民間警備会社の警備員のことだ。著者の造語だろう。公権力の担い手で法執行官である警察を補完する存在だ。

元東京都知事の猪瀬氏は、副知事時代に東京オリンピックの誘致に奔走したが、その経験が本書を生んだといえよう。というのは、2020年東京オリンピックでは、セキュリティ要員として、警察官2万1千人、消防・緊急隊6千人のほか、民間警備員が1万4千人が動員される計画になっているからだ。

都知事辞職を余儀なくされた猪瀬氏の作家復帰第1作がこのテーマになったのは、東京都知事として、ソフト面での計画立案に関わっていたからだろう。それにしても、いい着眼点ではないか。

パンデミックとなった新型コロナウイルスの影響で、2020年東京オリンピックがスケジュールどおり開催される可能性がかなり低くなっているが、とはいえ「中止」にならない限り、「延期」という形で開催される可能性は高い(*)


(*注)この文章を書いている時点ではこのような状態だったが、2020年3月24日に安倍首相がIOC委員長との電話会談の結果、1年以内に延期で決定した。だだし、具体的なスケジュールについては現段階では未確定である(2020年3月25日 記す)


オリンピックに参加するのは選手だけではない。もちろん、観客の存在抜きに大規模イベントは成り立たないが、安全で安心な開催を支えるのが警察官や民間警備員の存在だ。

本書のキモは、日本の民間警備会社の二強であるセコム(旧 日本警備保障)とALSOK(綜合警備保障)の出自と現在に至る軌跡の交錯だろう。この2社は、ともに1964年東京オリンピックの前後に誕生した会社だ。東京オリンピックという大規模イベントが民間警備会社の誕生の契機となったのだ。

セコムがまったくあたらしいマーケットを日本で開拓した民間企業であるのに対し、ALSOKは元警察官僚が官僚の総力をあげて立ち上げた会社だ。民と官。この出自の違いが、現在にも大きな影響を与えているというストーリー展開が興味深い。本書は、知られざる日本現代裏面史でもある。

2020年東京オリンピックの開催がどうなるかは別にして、こういう観点からオリンピックを考えるのも意味あることだろう。






目 次
序章 遂行 
  「官」の隙間を埋める "民警" とは? 
 2020東京五輪、テロへの不安 80%
  1964年の古戦場 
第1章 勃興 
 「社会システム産業」その発端 
 吉田茂が背を押した綜合警備保障創業 
 湧き出した日本版 CIA 構想 
第2章 失墜 
 権力闘争に屈した「使命感」 
 内調の崩壊、雲散霧消 
第3章 萌芽 
 日本初の警備会社を興した二人の若者 
 価値観の転換、少年期の終戦体験 
 終戦三日後に暗殺された神父の謎 
第4章 反発 
 進駐軍への嫌悪 
 家業への抵抗、独立心 
第5章 開拓 
 「警備業」という新しい産業 
 民間警備業の礎、ピンカートン探偵社 
第6章 五輪 
 東京五輪の準備と選手村警備 
 ライシャワー刺傷事件が落とした影 
 『ザ・ガードマン』の恩恵 
第7章 交錯 
 初代内閣調査室長の思惑 
 労働争議、学生運動の高まり 
 急成長、不祥事頻発す 
第8章 膨張 
 機械警備転換への必然 
 連続射殺犯・永山則夫 
 反社の参入、「必要悪」 
終章 光明 
 民間刑務所の可能性 
 ITの進展 
 見えないテロリスト 
 110番から119番の世界へ 

『民警』執筆の背景 
あとがき 
参考文献 


<ブログ内関連記事>

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ①

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『戦争・天皇・国家-近代化150年を問い直す-』(猪瀬直樹・田原総一郎、角川新書、2015)-「日米関係150年」の歴史で考えなければ日本という国を理解することはできない

書評 『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹、中公文庫、2010、単行本初版 1983)-いまから70年前の1941年8月16日、日本はすでに敗れていた!

書評 『東條英機 処刑の日-アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」-』(猪瀬直樹、文春文庫、2011 単行本初版 2009)-精神の深いレベルで傷を抱えている日本と日本人を象徴する天皇陛下


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