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2017年8月5日土曜日

映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2016年、米国)を見てきた(2017年8月4日)ー ビジネスパーソンなら絶対に見るべき「生きたケーススタディ」


映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2016年、米国)を有楽町の角川シネマで見てきた(2017年8月4日)。この映画はじつに面白い。ビジネスパーソンなら絶対に見るべきだ。

マクドナルドの「ファウンダー」(=創業者)であるアメリカ人起業家レイ・クロックの伝記映画である。エンターテインメント作品としての完成度は高く、ものすごい密度の濃い内容で、あっというまに115分がたってしまう。

起業家のレイ・クロックは「フランチャイズ」の仕組みをつかって、マクドナルドを米国全体に急拡大させ、さらには世界全体に拡大して「帝国」を築いた人だ。

映画のタイトルである「ファウンダー」とはレイ・クロックのことを指している。だが、最初のアイデアそのものは彼自身のものではなかった。

1954年、なんと52歳(!)のとき、セールス活動をつうじて偶然知ったのが、南カリフォルニアのサン・バーナデイーノでマクドナルド兄弟が経営するハンンバーガーショップ。直観的にピンときた彼は、セールス中の中西部から西海岸までクルマを飛ばす。思い立ったら即行動なのだ。

徹底的にムダを排除した効率的な運営と、合理的なセルフサービスでコスト削減と高品質を両立させているコンセプトに驚く。しかも、1954年時点でハンバーガーはアメリカ国内でもポピュラーではなかったのだ。

マクドナルド兄弟が追求していたのは、徹底した「標準化」だ。動作研究による合理的な導線設計。まさにアメリカを世界最強の製造業立国に押し上げた「テイラー主義」の精神であり、量産体制を確立したフォーディズムのサービス産業への応用だ。1929年の大恐慌後を経て、兄弟がたどりついたコンセプトである。

それが「原石」であることをただちに認識し、そこにビジネスチャンスを見いだしたレイ・クロックは、マクドナルド兄弟を熱心に口説き落として、フランチャイズ拡大にエネルギッシュに動きだした。その意味で、「ファウンダー」はマクドナルド兄弟ではなく、レイ・クロックであったといって間違いではないわけだ。


レイ・クロックが価値を見いだしたのは仕組みだけではない。「McDonald’s」(=マクダーノーズ)という「名前」そのものに価値を見いだしたのだ。そして「ゴールデンアーチ」というM字のロゴ。これらは、ブランドを構成する要素であり、知的財産権そのものだ。教会の十字架、裁判所の米国国旗に並ぶ存在にしてみせるのだという意気込みがまたすごい。

南カリフォルニアで生まれたコンセプトは、中西部イリノイ州からフランチャイズは始まった。ローカルからナショナルへの拡大。地域繁盛店から全国展開へ。

フランチャイズ拡大プロセスのなか、マクドナルドの創業者兄弟とフランチャイズによる拡大を精力的に推し進めるレイクロックは、ついに決定的対立に至る。この関係は、発明家と事業家の関係に似ているかもしれない。将来像の違いが決裂を生んだのだが、その結果はどうなったか。これは言うまでもないことだ。

そして、成功の秘密は「根気」(persistence)に尽きると、とレイ・クロックは何度も繰り返す。つまり、絶対にあきらめない、ということだ。それはこの映画を見ていれば、おのずから納得させられる。リスク・テーカーであり、ルール・ブレイカーであり、ゲーム・チェンジャーだったレイ・クロックならではの箴言だ。

セールスマンにとってのポジティブ・シンキング、効率的店舗運営フランチャイズ・システムネーミングとロゴで表現されるブランドと知的財産権不動産ビジネスとファイナンスなどなど、ビジネス関連ネタがてんこ盛り。

スピーディーな展開とマシンガントークのようなアメリカ英語が、いやがおうでもテンションを盛り上げる。 この映画はビジネスパーソンなら絶対に見るべきだ。いや、アメリカ社会やアメリカ文化を知るうえでも中身の濃い映画だといえよう。

超おすすめ。


(米国版ポスター)

PS 米国版のポスターと比べると、日本版のポスターは、主人公のレイ・クロックとM字「ゴールデンアーチ」の位置が微妙に違う。日本版ポスターは、なんだかM字が道化がかぶるフールズ・キャップみたいに見えてしまうのだが、日本版の製作を担当したデザイナーは気がついているのだろうか?






<関連サイト>

映画『ファウンダー』 公式サイト

映画『ファウンダー』 FBページ



柳井正と孫正義が憧れた「マック創業者」「クロックは私にとって恩人です」(プレジデント・オンライン、2017年8月5日)



<ブログ内関連記事>

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!
・・映画のなかでも「マクダーノーズ」という名前が重要だとピンときたとレイ・クロックは協調している。マクドナルドを日本で成功させた藤田田(ふじた・でん)もまた、レイ・クロックに勝るとも劣らない「怪物」であっった。しかも「知ある偽悪派」の怪物であった

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2014年11月17日月曜日

クレーンはツルである ― アナロジーによるネーミング(=類推による命名)


 (東京・お台場のテレコムセンターから)


クレーンとは重量のあるモノをつり上げて、所定の位置におろすための機械のことだ。日本語で起重機というが、一般的に使用されるコトバではない。

一般人がふだん目にするのは、工事現場や建設現場の大型クレーンだろう。一般にラフタークレーンが使用されているが、このタイプのクレーンは、車輪がついた自走式である。クレーン自体を運転して移動させることができる。

港湾施設で活躍しているクレーンは、正式にはガントリークレーンという。コンテナヤードで貨物船とのあいだでコンテナの積み替えを行うための機械である。このタイプのクレーンは据え付け型であり移動はできない。


クレーンはすっかり日本語として定着しているが、そもそもクレーンはどういう意味なのか、どういうスペリングなのか考えることはあまりないのではないだろうか。英語だとクレーンは crane とつづる。Crane を辞書で調べてみよう。

まずでてくる意味は動物のツルだろう。そう、クレーンとはツルのことなのである。起重機のクレーンは、形がツルに似ているので一般名詞でクレーンと命名されたようだ。アナロジーによる命名である。

アナロジーとは類推や類比という意味で、ひらたくいえば、「~のような」を表現するレトリックのことだ。クレーンの例でいえば、起重機は「クレーン(=ツル)のような」形をしているからクレーンとよぶ、ということになる。

身近な例でいえば、コンピュータのマウスは、形がマウス(=ネズミ)に似ているので、マウスと命名されている。実験用のマウスは日本でもマウスとそのまま呼ばれている。

ほかにもさまざまなケースがあると思うので、探してみるといいだろう。

マウスについては、いまでは日本人はネズミのことだとすぐにわかるが(・・ただし、マウス mouse とラット rat の違いまでは認識していないかも)、クレーンがツルのことだとは、なかなか思いつかないかもしれない。

とはいえ港湾のコンテナヤードに設置されているガントリークレーンは、クレーンではあるものの、どう見てもツルという感じではないなあ。

わたしはガントリークレーンを見ると、いつもタカアシガニ(=高脚蟹)を連想してしまうのだが・・・。



PS 日本語には鶴嘴(つるはし)がある

この記事を書いたときには想起していなかったが、日本語には鶴嘴(つるはし)という名称の道具がある。工事現場などで硬い地面などを砕くために使用されるが、先端がとがった形状は、たしかにツルのくちばしのようである。

高度成長期を代表するスポ根アニメの名作 『巨人の星』で、星飛雄馬の父親の星一徹が土木現場で汗水たらしながら働いているシーンを想起するが、現在では重機を使用して掘削を行うのがあたりまえなので、鶴嘴(つるはし)の出番も少なくなった。だが、それでも狭い場所を掘る時には人間の手で鶴嘴を使用することもある。

英語ではツル(=クレーン)のくちばしは吊り上げ機器として、日本語ではツルのくちばしは道具として名称に活かされているわけだ。こういう異文化論(?)は雑学として面白い。

(2015年10月15日 記す)



<関連サイト>

港のエース、ガンマンの絆 クレーン運転士・上圷(かみあくつ)茂 (NHK プロフェッショナル 仕事の流儀) (2014年4月21日 放送)
・・コンテナ輸送に不可欠の業務であるガントリークレーンの操作を行う運転士の仕事


<ブログ内関連記事>

タダノの大型クレーンの商品名ピタゴラス-愛称としてのネーミング

映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた-海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!
・・貨物船とコンテナ

「千葉港めぐり観光船」に乗ってきた-潮風に吹かれて海から京葉工業地帯をみる
・・港湾のコンテナヤード

『ドキュメント アジアの道-物流最前線のヒト・モノ群像-』(エヌ・エヌ・エー ASEAN編集部編、エヌ・エヌ・エー、2008)で知る、アジアの物流現場の熱い息吹

ウサギは英語でラビット? ヘア? バニー??
・・マウスとラットの違いも同様

『前田建設ファンタジー営業部』(前田建設工業株式会社、幻冬舎、2004)で、ゼネコンの知られざる仕事内容を知る

書評 『モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!』(モリナガ・ヨウ、溝渕利明=監修、アスペクト、2011)-独特の細密イラストによる「関係者以外立ち入り禁止」の「現場」探訪フィールドワーク

(2015年10月15日 情報追加)


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2011年4月2日土曜日

「東北関東大震災」というネーミングは敗れ去った-デファクト競争ではなく、閣議決定によって・・・


     
 「東北関東大震災」というネーミングは敗れ去った。完敗です。しかも、きわめて後味の悪い負け方。

 なぜこういう言い方をするかというと、ネーミングの「デファクト」をめぐる競争の結果ではなく、政府の閣議決定によってだからです。


NHKが「東北関東大震災」を使用するのをやめた理由

 大震災と大津波から3週間たった昨日(4月1日)、夜の NHKニュースを見ていたら、「東日本大震災」という表現にいきなり変わっていました。

 画面にあらわれた「東日本大震災」という白文字に、「えっ、なんで?」と思っていたのですが、19時のニュースの冒頭で、なぜ「東日本大震災」という表現に変わったかの説明があって、はいめてその意味がわかりました。

震災の名称 東日本大震災に(NHK)
4月1日 17時48分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110401/k10015049201000.html
政府は、1日午後、持ち回り閣議を開き、今回の震災の名称を「東日本大震災」とすることを閣議了解しました。政府は、今後、震災関連の特別措置法や基金を創設する場合などについて、この名称を使用することになります。
今回の地震災害について、NHKはこれまで「東北関東大震災」としてきましたが、政府が閣議で名称を正式に決めたことから、今後は「東日本大震災」とすることにします。

 「NHKよ、お前もか!」

 なんと、本日付の「持ち回り閣議」において「東日本大震災」に決定したということです。正式な政府決定だということだです。NHKが公共放送である以上、「長いものに巻かれろ」という対応をとるのは、それはそれとして仕方ないことです。

 さっそく「持ち回り閣議」を検索して調べてみると、wikipedia の「閣議」の項にはこうあります。

早急な処理を要する案件の場合には内閣参事官が閣議書を持ち回ってそれぞれの閣僚の署名を集めることにより意思決定とする場合がある。これを持ち回り閣議という。閣議は閣議書に花押をもって署名することになっている。閣議は非公開が原則である。(*太字ゴチックは引用者=私によるもの)

 なぜ、私が「「東北関東大震災」というネーミングは敗れ去った」と書くかというと、ネーミングとしては「東北関東大震災」のほうが、より実態に近い表現であると考えるからです。

 その理由については、くわしくは、【緊急提言】 「大震災」のネーミングについて-報道機関は 「東北関東大震災」に統一すべきだ!に目をとおしていただけると幸いです。

 「東日本大震災」とはいったいどこからどこまでを指すのか? まるでナンセンスなネーミングであるといわざるをえない。北海道は、中越は、長野はは東日本か? こういう疑問はウェブ上でもでているようです。

 なぜ「東北」の二文字を消し去るのか?? 不思議でなりません。

 もしかすると、意図的なものがあるのではないかと邪推もしたくなってきます。日本政府は「東北」という二文字がでてくると何か都合が悪いことでもあるの? そんなことも考えたくなります。 

 「東北」の二文字を出さないのは意図的なものではないとしても、閣僚たちの潜在意識のなかでは、どこかで「東北」を軽視しているような気がしなくもありません。考えすぎでしょうか?


名称(ネーミング)をめぐる「デファクト」競争は「民意」の反映である

 ネーミングをめぐる「デファクト」競争で敗れ去ったのなら、それは国民からの人気投票という性格からいって仕方ないものです。経済学者ケインズのいう「ビューティ・コンテスト」の類ですね。投票によって負けたのなら、その競争のプロセスと審査のプロセスが公正であれば、文句のつけようはない。

 それが「民意」というものでしょう。

 ビジネスの世界では、とくに「規格」をめぐる「デファクト」競争のことを、「デファクト・スタンダード」競争といいます。

 1980年代、ビデオの規格をめぐる競争で、ソニーのベータ(β)規格が技術的にはすぐれているのに、パナソニック連合の VHS規格が最終的に勝利したケースがその代表的事例です。「デファクト・スタンダード」となった VHS は、ビデオ時代が続いているあいだ市場を支配することとなりました。

 「デファクト」(de fact)とは、「実質上の」を意味するラテン語です。この反対語は「デ・ジューレ」(de jure)となる。「法律に基づいた」という意味です。

 したがって、今回の NHK の決定は、「東北関東大震災」というネーミングが「デファクト」になる機会を逸しました。公共放送という性格から、限りなく「デ・ジューレ」である「閣議決定」に従わざるを得ないということだったのでしょう。そう納得するしかありません。

 「閣議決定」の法的効力については、「衆議院議員長妻昭君提出」の「質問書」に対する答弁があるので参照してください。全文が公開されています。

 閣議決定は、法令には当たらず、一般に、これに反したとしても法令違反となるわけではないが、内閣の意思決定として、その構成員たる国務大臣はもとより、内閣の統括下にあるすべての行政機関を拘束するものであり、各行政機関の関係職員はこれに従って職務を執行する責務を有している。
 閣議決定と異なる措置が採られている場合は、各行政機関は当該閣議決定に従って必要な措置を採ることとなる。

 つまり「デ・ジューレ」そのものではないが、日本においては、限りなく「デ・ジューレ」であるということです。仮に、裁判に訴えても(・・そんなひとはまず皆無でしょうが)、勝ち目はないといっても言い過ぎではないでしょう。たとえ、それが愚かな政府の愚かな決定であったとしても。

 しかし、正直なところ、ネーミングをいきなり変えるたことには絶句ですね。唖然としています。ガッカリです。NHK は、キチンとした考えがあって、あえて「東北関東大震災」の名称を使用していたはずなのに・・・


名前のもつチカラの意味を考えよう
 事件や事故においても、ネーミングのもつ意味やチカラはきわめて大きい。

 何ごとであれ、名前をつけることによって、はじめてその他のものごとと区別され、それそのものとして存在をもつことになるからです。これは難しくいえば、言語分節化(articulation)のもつ機能のことです。

 だからこそ、名付け(ネーミング)という行為とそれがもつチカラは大きいのです。名前に込められた思いが、子どもやペットとの関係をどう規定しているかを考えれば、理解できるものと思います。

 このことの意味を考えてもらいたいので、あえてこの文章を書いて記録に遺すこととした次第です。
 「負け惜しみ」(sour grapes)と言われれば、そのとおりかも知れませんが・・・。

 もちろん、私は今後も「東北関東大震災」という名称を使います。「東北」という二文字を消すことに反対だからです。



<ブログ内関連記事>

【緊急提言】 「大震災」のネーミングについて-報道機関は 「東北関東大震災」に統一すべきだ!
・・ブランド論のネーミングの観点から【緊急提言】として発表した。

sour grapes  負け惜しみ
・・イソップの寓話からきた比喩表現

おもしろ本の紹介 『偽書「東日流(つがる)外三郡誌」事件』(斉藤光政、新人物文庫、2009)  

庄内平野と出羽三山への旅 (2) 酒田と鶴岡という二つの地方都市の個性
・・同じ東北でも、太平洋側と日本海側では、明治維新の際の扱いは大幅に異なったことにも注意しておきたい。有史以来の日本における「東北」についても、よく考えてほしいものである。




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2011年3月20日日曜日

【緊急提言】 「大震災」のネーミングについて-報道機関は 「東北関東大震災」に統一すべきだ!



 今回の「大震災」(2011年3月11日 午後2時46分発生)のネーミングについて、NHK を除く報道各社は、民放も新聞社も、いずれも「東日本大震災」というネーミングで報道を行っている。

 私は、このネーミングはきわめてミスリーディングである、と言わざるをえないと考えている。

 今回の地震の正式名称は、「東北地方太平洋沖地震」である。これは気象庁の命名であり、公式な記録文書に残るものだ。これはこれでよい。有史以来、数ある大規模地震の一つとして記録され、地震学の観点から研究される対象であるからだ。

 だが、研究者ではなく、一般人に大きな影響を与える報道機関が「東日本大震災」というネーミングにこだわるのは、事態を正確に反映したものではなく、しかもきわめてミスリーディングであると考える。

 現時点において唯一の例外は、公共放送機関である NHK だけである。NHKは地震後しばらくしてから、一貫して「東北関東大震災」というネーミングを使用している。

 大地震とそれに引き続いて起こった大津波という大被害にあった「東北」を全面に出し、かつ報道の頻度がきわめて少ないが被害を受けている「関東」に注目を与えることのできるこのネーミングは、「東日本大地震」というおおざっぱなネーミングよりも、はるかに実態を正確に表現したものではないだろうか?

 東北の太平洋岸の被害は目を覆うばかりのもので、直接の被災者ではない私のような人間も、大きな精神的ショックを受けている。

 しかし、被害を受けたのは東北だけではない。太平洋に面した茨城県、千葉県房総だけではなく、千葉県の東京湾岸に面した浦安市や船橋市の埋め立て地も大きな被害を受けている。
 
 茨城沖ではその後余震というのはあまりにも規模の大きな地震が続いているし、千葉県の外房では津波の被害で死者も出ている。現時点においても、太平洋岸を走る JR常磐線は土浦駅より先は、不通のまま復旧の見通しもたっていない。

 千葉県の東京湾岸では震度は5であったが、埋め立て地は地盤が弱いため液状化現象が発生し、ライフラインが寸断され、いまだにガスや水道が復旧していない地域があることを知らなくてはならない。震度の大きさだけが被害状況の大きさをあらわしているわけではない。

 とくに物流倉庫が集中する浦安市では、液状化や地割れが発生し、大きな障害が発生していることは、ここで大きく強調しておきたい。浦安市に立地する東京ディズニーランドや、集合住宅や一般住宅だけが問題なのではない。千葉市の湾岸埋め立て地でもまた、液状化の被害は大きい。

 宮城沖で発生したと同程度の大地震が関東で発生したら、間違いなく東京都の東京湾岸地域も大被害を受けることになろう。これは東京湾岸に立地する民放も例外ではない。

 このような状況のなか、なぜ東京に本社が立地する民放や新聞社が「東日本大震災」というネーミングを使用するのか?

 たしかに、東京以西からみれば、「東日本」と一括して表現することもわからなくはない。「西日本」に属する関西からみても、中国四国からみても、九州からみても「東日本」と一括することは意味のないことではないだろう。沖縄からみれば「ヤマト」(本土)ということになろうか。海外からみれば総称としての「日本」となる。

 しかし、私は「東北関東大震災」のほうが、さまざまな理由から適切であると考える。

 音声という観点からいっても「東日本大震災」(ひがしにほん・だいしんさい)よりも、「東北関東大震災」(とうほく・かんとう・だいしんさい)のほうが発音しやすい。

 意味からいっても、すでに「関東大震災」(かんとう・だいしんさい)が存在し、その前に「東北」を加えることによって、今回の大震災とその後の大津波を一瞬にして把握することを容易にしている。

 しかも、「東北関東縦貫自動車道」がすでに存在しているので、「東北関東」と続けて発音するのに抵抗感はない。

 ロジスティクス(物流)の観点からいっても、関東からどうやって東北に物資を届けるかということが喫緊(きっきん)の課題になっている状況である。東北の被災地と被災者は、関東が前線基地として復興を支える立場にある。関東以西は後方支援基地ということになろう。

 繰り返しになるが、なによりも大地震とそれに引き続いて起こった大津波という大被害にあった「東北」を全面に出し、かつ報道の頻度がきわめて少ないが被害を受けている「関東」に注目を与えるべきである。

 ネーミングとは命名行為のことである。正しい名前は正しい実態を表現する。「名は体をあらわす」というではないか。

 以上の意味において、報道機関のすべてが、 NHK が使用する「東北関東大震災」に統一するべきだと提言したい。



P.S. 日本赤十字も「東北関東大震災」というネーミングを使用している

  「東北関東大震災義援金を受け付けます」(日本赤十字)・・ここから義援金を送ることができます。

 なお、私は NHK とは視聴者という以外の関係はもっていないので、いわゆるポジション・トークではありません。日本赤十字についても同様です。

 また、ネット書店の amazon も bk1 も「東北関東大震災」を使用しています。

 この【提言】は、ブランド・マネジメントの観点からのものであると、受け取っていただけると幸いです。

  (2011年3月30日 追記)

 その後の結果については、こういう記事を書きました。まことにもって残念な結果です。
 「東北関東大震災」というネーミングは敗れ去った-デファクト競争ではなく、閣議決定によって・・・(2011年4月2日)
 「東北関東大震災」というネーミングは敗れ去った。完敗です。しかも、きわめて後味の悪い負け方。なぜこういう言い方をするかというと、ネーミングの「デファクト」をめぐる競争の結果ではなく、政府の閣議決定によってだからです・・(つづきは上記の記事をクリックしてみてください)



<関連サイト>

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震関連情報 (気象庁)
   
東日本大震災の影響残る潮見地区/潮見町(My Funa ネット 2011年3月17日 千葉県船橋市)

東京からもっとも近い被災地・浦安 現地ルポ【上】産業編(東洋経済オンライン 2011年3月15日)
東京からもっとも近い被災地・浦安 現地ルポ【下】生活編
東京にもっとも近い被災地・浦安 現地ルポ 3(3月16日)
東京からもっとも近い被災地・浦安《4》新しいマンション地区が断水に苦しむ(3月17日)
東京からもっとも近い被災地・浦安《5》復旧工事着々(3月17日)

ライフライン被害深刻 浦安、千葉で液状化(ちばとぴ 千葉日報ウェブ 2011年3月19日)
*この記事はサーバーから消される可能性もあるので、記録のためここに転載しておこう。

 東京湾沿岸にある京葉地域の埋め立て地では、液状化現象によりライフラインに大きな被害が出ている。特に浦安市や千葉市の被害は深刻で、復旧作業が続いている。地質学の専門家は「沈下はしばらく続き、本格的な復旧は地盤が安定してからすべきだ」との見方を示している。

 浦安市では埋め立て地域のほぼ全域で液状化が確認され、上下水道やガスなどライフラインに影響が出ている。県水道局によると、18日午後3時現在で約1万9千戸が断水。配管損傷などで水圧が足らず減水となっている家も約5万8千戸に上る。ガスの供給が停止している地域もあり、京葉ガスは復旧を急いでいる。

 千葉市では美浜区で液状化が多発、市が管理する道路計約44キロの被害が確認されている。県営団地内の通路や駐車場、千葉港内道路で路面のゆがみが認められた。JR海浜幕張駅など利用者の多い場所から順次、土砂の除去や路面の状況調査などを行っている。同区と浦安市では、地盤が緩み住宅が傾く被害も多数に上るとみられる。

 船橋市では三番瀬周辺などの3カ所で、地盤沈下による亀裂などで道路が損傷。市は高瀬町や日の出町など湾岸地域での被害調査を進めている。県によると、同地域の一部約30戸が断水している。同市や習志野市の県営団地内でアスファルトのゆがみが確認された。



<ブログ内関連サイト>

3月11日に発生した「東北沖大地震」について (2011年3月12日)

「東北関東大震災」は M9.0 規模であった・・・(2011年3月13日)

国民の一人一人が「勇気」 をもって、この危機を共に乗り切ろう! (2011年3月14日)

地震、津波、原発事故、そして財政危機。「最悪の事態」を想定しなければならない状態になっているが・・・(2011年3月15日)

トップに立つ人のコトバが、末端にいるすべてのメンバーに届くものになっていますか?
・・陛下は科学者らしく「東北地方太平洋沖地震」という名称を使用しておられる

「非常時」には「現場」に権限委譲を!-「日本復興」のカギは「現場」にある




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