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2018年9月15日土曜日

喉元過ぎれば熱さを忘れる?-「リーマンショック」から10年(2018年9月15日)


2018年9月15日は、その後「リーマンショック」と呼ばれることになった「世界金融危機」が勃発してから10年になる。1998年のこの日、アメリカの大手証券会社リーマンブラザースが破綻したのだ。

もうすっかり忘れているかもしれないが、「リーマンショック」は、その日突然というよりも、その後じわじわと世界中に拡がっていく性格をもった金融危機であった。日本もまた例外ではなく、そのなかに巻き込まれたのであり、気がついたときには不況のまっただ中に放り出されていた。

日本では、さらにさかのぼること、その10年前、すなわち1998年には長銀が破綻している。長銀とは、いまは亡き日本長期信用銀行のことだ。ことしはリーマンショックから10年の年であるとともに、長銀破綻から20年の年でもある。私自身その渦中にいただけに、記憶はナマナマしい。

1997年から始まった日本の金融危機が、三洋証券、山一証券と波及し、その翌年には長銀、日債銀が破綻して国有化、金融業界も再編と集約化が一気に進むことになった。今は昔の物語である。その当時はまだ生まれていなかった大学生1年生にとっては、すでに日本近現代経済史の一コマかもしれない。

このように振り返ってみると、ことし2018年が金融危機の年と連想されてもおかしくないのだ。はたしてどうなるかはわからないが、リーマンショック級の金融危機が発生しないことを祈りたい。

すくなくとも、2008年の「世界金融危機」の発生源となったアメリカ経済について、とくに金融という側面から考えるうえで読むことを勧めたいのが『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)だ。これは2006年の日経BP版の増補版。資本主義の総本山であるビジネス国家アメリカを理解するためには、必読書といっていい。

同著者の第2弾である超一極集中社会アメリカの暴走』(新潮社、2017)は、もう格差が止まらないどころか、勝者総取り(The winner takes it all)状態のアメリカに絶望さえ感じさせる内容になっている。

こういった本を読んだから、どうなるというものではないが、人間はイヤなことはすぐに忘れていまうことで精神的均衡を保っている面もあることを考えれば、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とならないよう、あえてイヤなことを思い出すことも必要ではないだろうか。

つぎの金融危機が、いつになるかは現時点ではわからないが・・。備えあれば憂いなし!?






<ブログ内関連記事>

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

書評 『世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)-アメリカ金融業界の周辺部からリーマンショックに迫る人間ドラマ

書評 『ブーメラン-欧州から恐慌が返ってくる-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文藝春秋社、2012)-欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「欧州比較国民性論」とその教訓

書評 『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)-アメリカの本質を知りたいという人には、私はこの一冊をイチオシとして推薦したい

CAPITALISM: A LOVE STORY 
・・ムーア監督2009年の作品『キャピタリズム-マネーは踊る』

『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)という本の活用法について

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む




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2016年7月14日木曜日

書評『中国4.0 ― 暴発する中華帝国』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)― 中国は「リーマンショック」後の2009年に「3つの間違い」を犯した



一昨日(2016年7月12日)、国際仲裁裁判から「中国の南シナ海領有に法的根拠なし」という審判が下された。

たいへん結構なことである。 だが、中国はそもそもなぜ、そのような無法なことをゴリ押ししてきたのか?

その理由を知りたければ、『中国4.0-暴発する中華帝国-』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)を読むとその事情がよくわかる。

著者は、在野の軍事戦略の大家。軍歴もある実践派である。本書は、その立場から中国の動きを独自の視線で分析したものだ。「中国4.0」とは、中国の対外戦略の推移を4段階で読み解いたものである。

「中国1.0」で「平和的台頭」を行ってきた中国は、そのままその路線を続けていれば経済大国として世界中から歓迎されたはずだった。だが、暴走を初めてしまったのだ。「中国2.0-対外強硬路線」、さらには「中国3.0-選択的攻撃」へと、わずが15年のあいだに3度も対外方針を変更している。15年間で3度も方針を変更していては、外側からみたらあまりにも不安定に映るのは当然だ。しかも、その糸について疑惑さえ招きかねない。

どうやら、中国は「リーマンショック」(2008年)の翌年に大きな勘違いをしてしまったようなのだ。世界金融危機にまで至りかねない状況のなか、米国は経済的に「衰退」し、リーマンショック後に財政出動によって世界経済を「牽引」したのが中国であった。問題は、その際に中国は、「中国の時代」が前倒しに実現可能になったと勘違いし、舞い上がってしまったのである。「米中G2論」などという褒め殺しにも気がつかなかったのだ。

著者が指摘する「中国の戦略的誤り」は次の3点だ。①カネとチカラの混同、②線的(リニア)な予測の錯誤、③二国間関係の錯誤。以下、わたし流に解説しておこう。

①は、小国を「札束で引っぱたいて言うことを聞かせる」ということ。露骨だが効果的な方法である。中国が、とくにアフリカで独裁者をカネで買収してきたことは周知のとおりだ。かつて英国も米国も行ってきたことではある。だが、経済力と影響力はイコールではない経済力が縮小しながらも、いまだ英国は影響力をもっている。このような例は歴史的に多数ある。いまの中国はカネがあるが魅力はない。

②は、右肩上がりで成長し続けるという幻想のこと。バブル期とその後にわたって日本人も致命的な間違いを犯したことを想起すべきだろう。中国もその同じワナに捕らわれてしまったのだ。バブル期を知っているわたしのような人間からみれば、中国の勘違いによる傲慢さはじつに甚だしく、しかもじつに危うい。

①と②はわかりやすいが、③の「二国間関係の錯誤」は、ややわかりにくいかもしれない。著者独自の「逆説的論理」(paradoxical logic:パラドクシカル・ロジック)が適用されるものだ。「ある国が大きくなって、しかもそれが「平和的台頭」でなければ、台頭して強くなったおかげでかえって立場が弱くなること」を意味している。実際の世界には多数の国があり、二国間だけの純粋な関係というものは存在しないのである。合従連衡が発生するのがつねである。これはビジネス世界との大きな違いだ。

ある国が大国化すると周辺諸国に脅威を感じさせることになり、劣勢にある国を支援しようとする動きが必ず発生する。それが軍事同盟である。日露戦争前の日本もそうであった。当時の「小国」日本は日英同盟と米国の支援のおかげでロシアとの戦争に辛くも勝利できたのであった。だが、1930年代には「大国」化への途上にあった日本は大きな間違いを犯してしまう。英米を敵に回してしまったのだ。

南シナ海を「核心的利益」とする現在の中国共産党は、満蒙(=満洲+蒙古)を「帝国の生命線」とした大日本帝国と酷似している。「大陸国家の海洋進出」と、「海洋国家の大陸進出」は真逆の関係にあるが、身の程知らずという点において共通している。前者は中国、後者は日本のことである。2010年現在の中国は、1930年代の日本と同じ失敗をする可能性が高い。

このほか、本書には、ルトワック戦略論のエッセンスがふんだんにちりばめられている。たとえば「潜伏的効果」(latent effect)。民主主義国の米国が米国として存在しているが故に、民主主義政体をとらない中国には破壊的工作を行っているに等しいという。ルトワックは、戦略論の世界では意外なほど効果を発揮していると説くが、これはジョゼフ・ナイのいう「ソフトパワー」のことでもあろう。

中国人は、たとえどんな僻地に住んでいようが、米国大統領選のことを知っている。それに対して、政治的リ-ダーは自分たちが選んだわけではない。そこが、同じく強権政治を行っていながらも中国の習近平とロシアのプーチンとの大きな違いである。まがりなりにも、プーチンは自分たちが選んだリーダーだという意識がロシア人にはある。ソ連時代とは根本的に異なるのだ。その意味では、共産党独裁体制の中国は、いまだソ連段階なのである。

そして、「海洋パワー」(maritime power)と「シーパワー」(sea power)の違い。地政学でいう「シーパワー」は「ランドパワー」と対になる概念で、軍事力というハードパワーを想定している。これに対して、ルトワックのいう「海洋パワー」とは、「シーパワー」の上位概念で、自国以外の関係性で生まれるという。これもまた、「ソフトパワー」を含んだ概念であろう。「海洋パワー」は米国にはあるが、中国にはない。そう短時日に形成できるものではないからだ。

軍事戦略は、経営戦略とはイコールではないが、この本はじつに面白い。日本語版オリジナルの語り下ろしなので読みやすい。アタマの整理のために、ぜひ読むことを薦めたい。





目 次

日本の読者へ
序章 中国1.0-平和的台頭
第1章 中国2.0-対外強硬路線
第2章 中国3.0-選択的攻撃
第3章 なぜ国家は戦略を誤るのか?-G2論の破綻
第4章 独裁者、習近平の真実-パラメータと変数
第5章 中国軍が尖閣に上陸したら?-封じ込め政策
第6章 ルトワック戦略論のキーワード(奥山真司)


著者プロフィール

エドワード・ルトワック(Edward N. Lutwak)
ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれのユダヤ系。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

訳者プロフィール

奥山真司(おくやま・しんじ)
1972年生まれ。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。英国レディング大学大学院博士課程修了。戦略学博士(Ph.D)。国際地政学研究所上席研究員。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<関連サイト>

「世界的戦略家が“大国中国”を斬る」-著者は語る(週刊文春WEB 2016.05.18)



<ブログ内関連記事>

書評 『パックス・チャイナ-中華帝国の野望-』(近藤大介、講談社現代新書、2016)-2012年に始まった「習近平時代」を時系列で振り返るとクリアに見えてくるもの

朗報! 国際仲裁裁判所が「中国の南シナ海支配にNO」の審判を下した(2016年7月12日)

「連盟よさらば! 我が代表堂々退場す」(1933年)-いかなる「離脱」も戦争の引き金とならないことを願う

「意図せざる結果」という認識をつねに考慮に入れておくことが必要だ
・・どうも中国は、自分の行為がいかなる結果を引き起こすかについての想像力を著しく欠いているようだ

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・
・・「戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。」

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・この記事に掲載した各種資料を参照

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く
・・「中華秩序」を破壊したのが近代日本であったという事実。これはしっかりとアタマのなかに入れておかねばならない。琉球処分と日清戦争における日本の勝利によって、「中華秩序」は破壊された。だからこそ、中国の指導者は絶対に日本を許せないのである。」

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂聰、新潮社、2009)-「平成の林子平」による警世の書
・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・海は日本の生命線!

(2016年7月20日・21日・24日・25日 情報追加)


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2012年12月24日月曜日

書評『世紀の空売り - 世界経済の破綻に賭けた男たち』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)ー アメリカ金融業界の周辺部からリーマンショックに迫る人間ドラマ


2008年のリーマンショックか4年以上たったが、世界経済はいっこうに回復する兆しもない。

そんななか、 『世紀の空売り ー 世界経済の破綻に賭けた男たち』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)を読んだ。原著も日本語版も2010年に出版されている。

アメリカ金融破綻を、逆張りで空売りに賭けた少数のアウトサイダーたちから描いた作品だが、読んでいて思ったのはアメリカ資本主義の行き詰まりにほかならない。

フロンティアを失っていたアメリカ資本主義が、ついには国内の低所得者層を巨大なフロンティアとみなして収奪の限りを尽くしたものの、壮大な「虚構」がついに崩壊してしまったという印象だ。

低所得者向けの住宅ローンを小口にして債券化したサブ・プライムローン証券の詳細については本書を読めば理解できるように書かれているが、その仕組みと意味について、金融業界内部のインサイダーたちもほとんど理解していなかったという事実がまた恐ろしいことなのだ。

その虚構に気付いたごく少数のトレーダーたちのアウトサイダーが賭けたのが「空売り」(ショート)であった。逆張りである。そしてその賭けに勝利するまでのドラマが、このノンフィクションの内容だ。

その反対側にいる投資銀行は「買い」(ロング)に賭けていた結果、無残にも惨敗。ベア・スターンズは破綻し買収され、名門投資銀行のリーマン・ブラザーズはこの世から姿を消した。

金融商品の仕組みを理解していない投資銀行、格付け機関のいい加減な格付け、規制し監督する立場にいながらなにも理解していなかった連邦準備制度理事会や財務省。まさに「財務省・ウォールストリート複合体」というインサイダーモラルハザードとしかいいようがない。

金融世界のインサイダーとアウトローの対比は、買い(ロング)と売り(ショート)という対比で、コントラストが鮮やかに描かれている。

1985年に名門投資銀行であるソロモン・ブラザーズが、会社形態を合資会社から株式会社に変換したことから金融世界の暴走が始まったのである。

1985年、これもまたメルクマールとなる年であったのだ。

わたしが金融系コンサルティング会社に入社して社会人となったこの年、著者のマイケル・ルイスは名門投資銀行ソロモン・ブラザーズの社員となっている。そしてその経験をもとに処女作『ライアーズ・ポーカー』を書き上げて世界的ベストセラーとなった。

オリバー・ストーン監督のハリウッド映画 『ウォール街』が製作公開されたのが1987年のことである。

原書のカバーは、釣針がドル札を巻き上げているイラストが描かれている。原書の副題にある Inside the Doomsday Machine は直訳すれば「世界の終わりの日をつくるマシーン内部」ということになる。

「世界の終わり」というドゥームズデイをつくってしまったアメリカの金融世界は、はたして正常化するのであろうかまたあらたなフロンティアをでっちあげるしか生きる道はないのだろうか?

それにしても、よくここまで詳細な取材を行ったうえで、迫真の人間ドラマに仕立て上げることができるものだと、著者マイケル・ルイスのストーリーテラーとしての手腕には驚くばかりだ。

読んでどうなるということもないのだが、読むとじつに面白い物語である。


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<ブログ内関連記事>

書評 『ブーメラン-欧州から恐慌が返ってくる-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文藝春秋社、2012)-欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「欧州比較国民性論」とその教訓
・・『世紀の空売り』のあと。金融危機はアメリカから欧州へ、そしてアメリカに逆流

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

CAPITALISM: A LOVE STORY ・・映画 『キャピタリズム マネーは踊る』

マイケル・ムーアの最新作 『キャピタリズム』をみて、資本主義に対するカトリック教会の態度について考える

映画 『ウォール・ストリート』(Wall Street : Money Never Sleeps) を見て、23年ぶりの続編に思うこと

『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)という本の活用法について

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている

Bloomberg BusinessWeek-知らないうちに BusinessWeek は Bloomberg の傘下に入っていた・・・


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2010年3月15日月曜日

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む




月刊誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年 NO.3 の献本が、「R+ レビュープラス」から届いたので、さっそく目をとおしてみた。

 まず、論文タイトルと筆者、そして論文のサマリーと筆者略歴をじっくり読んでみる。それから、本文を読んでみる。

 とりあえず、ここでは論文タイトルと筆者名を、雑誌掲載順に並べて紹介しておこう。

<CFRミーティング>
ジョセフ・スティグリッツが語る金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来(ジョセフ・E・スティグリッツ/コロンビア大学教授)
  
日米安全保障条約50周年の足跡と展望-いまも安保はグランドバーゲンか?(ジョージ・パッカード/米日財団会長)
  
<フォーリン・アフェアーズ・アップデート>
「北京コンセンサス」の終わり(姚洋(ヤン・ヤオ)/北京大学国家発展研究院副所長) 
  
<Classic Selection 2007><CFRアップデート>
中国・インド経済が直面する社会格差という開発ジレンマ-農村の貧困と格差社会への対応を
 
<CFRミーティング>
新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字 (セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会シニア・フェロー 国際経済担当)
 
<CFRインタビュー>
アメリカの財政赤字とドルの運命(ライアン・アベント/Economist.com エディター) 
  
<CFRブリーフィング>
金融規制案は危機の本質を見落としている-システミックリスクの震源は債券保証会社だった(マーク・レビンソン/米外交問題評議会(CFR)国際ビジネス担当シニア・フェロー)
 
<Review Essay>
なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか
(ジャグディッシュ・バグワティ/コロンビア大学教授)
 
<Review Essay>
女性を助ければ、途上世界が救われる(イソベル・コールマン/CFRシニア・フェロー)
 
  
核武装後のイランにどう対処するか(前編)(ジェームズ・M・リンゼー/米外交問題評議会研究部長、レイ・タキー/米外交問題評議会シニア・フェロー)
 
核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか
(チャールズ・ファーガソン/米科学者連盟会長)
 
<特集 世界は再び食糧不足の時代へと向かっている>

世界は再び食糧不足の時代へ-結局、マルサスは正しかったのか(チャーリスル・フォード・ランゲ/ミネソタ大学教授、チャーリスル・ピエール・ランゲ/イエール大学学生) 
  
<Classic Selection2008
食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想-貧困国の現実に目を向けよ(ポール・コリアー/オックスフォード大学経済学教授)


  「フォーリン・アフェアーズ」(FOREIGN AFFAIRS)とは、直訳すれば外務省の「外務」(foreign affairs)のことだが、いうまでもなく米国の外交問題の専門雑誌である。各国の現役の政治経済の指導者が寄稿することでも有名な、国際政治における政治的意志決定に大きな影響を及ぼしてきた米国の専門誌である。「国際政治」と「国際経済」は不可分の関係にあるという「国際政治経済学」の立場が一貫しており、その点は今月号にも一貫している。

 国際版は、スペイン語版Foreign Affairs Latinoamérica)、日本語版Foreign Affairs in Japan)、ロシア語版Russia in Global Affairs)がでているようで、国際版の購読者数は総計18,600人と、かなりの数になっている。

 国際版のウェブサイトの記述によれば、日本語版は1990年から1998年までは中央公論社が、1998年から2008年までは朝日新聞社の月刊オピニオン誌『論座』が、2008年以降は Foreign Affairs Report として、印刷媒体での刊行を月刊でつづけているとある。付け加えれば、現在は株式会社フォーリン・アフェアーズ・ジャパンが発行主体となっている。

 私は、日本版はずっと朝日新聞社の傘下にあったものだと思い込んでいたので、なにか「色がついてしまっているな」と敬遠していたのだが、この事実を知って安心した次第だ。

 もちろん発行主体の CFR(Council for Foreign Relations:外交問題評議会)自体の特性をアタマにいれておく必要があるが、日本語版の翻訳記事の選択と編集で、二重のバイアスがかかることに留意しておく必要がある。

 なお、「外交問題評議会」(CFR)は、Wikipedia の簡潔な要約を使えば以下のようになる。
アメリカ合衆国のシンクタンクを含む超党派組織。略称はCFR。「外交関係評議会」と訳されることもある。1921年に設立され、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織であり、アメリカの対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている。超党派の組織であり、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる。本部所在地はニューヨーク。会員はアメリカ政府関係者、公的機関、議会、国際金融機関、大企業、大学、コンサルティング・ファーム等に多数存在する。知名度が高く、影響力が大きいことで知られる。


 実は、日本語版の「Foreign Affairs Report」を通読したのは、今回が初めての経験である。

 私自身の専門は国際政治学ではないので、毎月購読しているわけではないが、必要に応じて個別の論文を英語で読むことは過去にあった。英語版であれ、日本語版であれ、一冊まるごと読むのは今回が初めてだ。非常に新鮮な思いを味わった。

 思ったより日本語の訳文がこなれており、とくに英文を参照することなく、そのままアタマに入ってくるような平明な文章になっているのがありがたい。

 また、各論文に付されたサマリーがまた的確で、本文をざっと読む前と読んだあとにサマリーを読むと、論文の要旨がすうーとアタマのなかに入っていくのを覚える。

 掲載論文を根拠に私自身が論文を書くことがあれば、レファレンス先として日本語訳をあげることが十分に可能な訳文になっているといってよいだろう。

 ただし、「なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか」(ジャグディッシュ・バグワティ)の原題が Banned Aid (バンド・エイド)なんて、英語のダジャレを、そのまま日本語に移せないのは残念。いっけん堅くみえる論文も、こういう遊びがあるってことを伝えたいものだ。もちろん、論文でも触れているように、これは U2 のボノも参加していた Band Aid にひっかけたものだ(・・さらにさかのぼれば絆創膏の band aid からきている)。論文の著者の立場は直接本文で確かめていただきたい。


 2010年3月号の内容についてだが、論文そのものの中身まで言及しだすと、私自身が Review Essay(評価論文)を書かなくなってしまうので深入りは避けておくが、これは面白いと思った論文に簡単なコメントだけ加えておきたい。

 「ジョセフ・スティグリッツが語る金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来」(ジョセフ・E・スティグリッツ)については、ノーベル賞受賞の経済学者であり、グローバリズムに対しては批判的な見解を示している論客で日本でも著名な人なので、特に付け加えることはないが、ただ経歴には世界銀行のチーフ・エコノミストであったことを付け加えるのが親切というものだろう。

 米日財団会長ジョージ・パッカードによる、「日米安全保障条約50周年の足跡と展望-いまも安保はグランドバーゲンか?」については、米国でも公平な立場の発言があることを知るためにも、目をとおすことが望ましい。執筆者の立場は国防総省とは異なるし、また米軍内部にも空軍と海兵隊のライバル意識があって問題をややこしくしていることが指摘されている。

 姚洋(ヤン・ヤオ)による「「北京コンセンサス」の終わり」は、かなり突っ込んだ提言を行った論文であるが、北京大学国家発展研究院副所長という肩書きの発言であり、政府も了承している考えの表明と考えて良いのだろう。その意味では面白い。

 このほか、2010年3月号では「国際援助」関係の論文がいくつか収録されており、いずれも興味深く読むことができた。「中国・インド経済が直面する社会格差という開発ジレンマ-農村の貧困と格差社会への対応を」「なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか」(ジャグディッシュ・バグワティ/コロンビア大学教授)、「女性を助ければ、途上世界が救われる」(イソベル・コールマン/CFRシニア・フェロー)。後者の2本の論文は単行本のレビューであるが、レビュー執筆のあり方としても一つの参考になる。

 「国際経済問題」にかんしては、「新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字」(セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会シニア・フェロー 国際経済担当)、「アメリカの財政赤字とドルの運命」(ライアン・アベント/Economist.com エディター)、「金融規制案は危機の本質を見落としている-システミックリスクの震源は債券保証会社だった」(マーク・レビンソン/米外交問題評議会(CFR)国際ビジネス担当シニア・フェロー)があるが、一番最後の論文はかなり核心をついた内容の論文で参考になる。米国においては、「債務保証会社」の監督責任が州政府レベルにあって、連邦政府にはない(!)という事実が、サブプライムローン問題の核心にあるという指摘、これは勉強になった。

 「核兵器と原子力問題」については、「核武装後のイランにどう対処するか(前編)」(ジェームズ・M・リンゼー/米外交問題評議会研究部長、レイ・タキー/米外交問題評議会シニア・フェロー)、「核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか」(チャールズ・ファーガソン/米科学者連盟会長)。これらの論文を読むと、問題の整理が容易になる。


 最後に、<特集 世界は再び食糧不足の時代へと向かっている>として論文2本が収録されている。

 「世界は再び食糧不足の時代へ-結局、マルサスは正しかったのか」(チャーリスル・フォード・ランゲ/ミネソタ大学教授、チャーリスル・ピエール・ランゲ/イエール大学学生)、「食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想-貧困国の現実に目を向けよ」(ポール・コリアー/オックスフォード大学経済学教授)。

 とくに、後者のポール・コリアーについては、主著である最貧国問題解決のための必読書である『最底辺の10億人-最も貧しい国々のために本当はなすべきことは何か?-』(ポール・コリアー、中谷和男訳、日経BP社、2008)は、このブログでも取り上げている

 「食糧問題」については、奇しくも講談社の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」2010年3月号が、「特集 世界の「食糧争奪」戦争-フィレオフィッシュが食べられなくなる日」という特集を組んで取り上げている。
 とくに「食糧問題」は、「エネルギー問題」とならんで日本の生存にためには生命線ともいえる問題であり、対岸の火事と思うことなく自分の問題として真剣に捉える必要がある。あわせて読むことをお薦めしたい。


 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」は、最初から最後まですべてのページに目を通すのも良し、必要な論文だけピックアップして読むのも良し、あるいはタイトルとサマリーだけ読むのも良し。読者の目的に応じて読むことができるように、日本語版はよく工夫して編集されている。
 日本語版の公式ウェブサイトとあわせて利用すれば、より実りある活用が可能となるだろう。

 なお、本誌のバックナンバーは基本的に一般書店には配本していないということだが、最新号だけでなくバックナンバーが amazon.co.jp で入手可能であることを付け加えておこう。





PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判に変更した。内容にはいっさい手は入れていない。あらたに「ブログ内関連記事」の項目を新設した。(2016年7月24日 記す)


<ブログ内参考記事>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.5 を読む-特集テーマは「大学問題」と「地球工学」-

「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える-制度改革か、それとも日本システムからの退出か 1986-2010」(2010年9月)を読んで、この25年間の日米関係について考えてみる
              
月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」


リーマンショックと世界金融危機

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

(2016年7月24日 項目新設)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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