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2024年3月25日月曜日

書評『出雲世界紀行 ― 生きているアジア、神々の祝祭』(野村進、新潮文庫、2021)― 「出雲世界」を旅する私的ノンフィクションは、読み進めるうちに没入していくのを感じる

 

先々週のことだが、2~3日にかけて移動中に読んでいたのが、『出雲世界紀行 ー 生きているアジア、神々の祝祭』(野村進、新潮文庫、2021)という本だ。  

野村進氏は、東南アジアものや、「千年企業」ものなどのノンフィクション作品で知られている作家。わたしもこれらのテーマの作品は読んでいる。 

そんな野村氏が「出雲世界」か!? ちょっとした驚きだったが、読んでみて大いに納得している。 

日本海に面していて、海に向かって開かれた出雲の地は、対岸の大陸や朝鮮半島だけではなく、海流(=対馬暖流)をつうじて水平的に南洋とつながっているのである。これは出雲に限らず日本海側に共通した要素だ。舞鶴生まれのわたしも同感する。 

考えてみれば当たり前なのだが、野村氏を案内人にして「出雲世界」を旅していると、その当たり前の事実にあらためて目を開かれる思いがするのである。 

本書を構成している三本柱は、野村氏自身の説明をつかえば、「神社ガール」たちとめぐる出雲のさまざまな神社境港市の「水木しげるロード」、そして島根県西部でたいへんな盛り上がりを見せている「石見神楽」である。 

最初は私的な要素が多くて、読んでいてまどろっこしいなと思っていたが、出雲の神々に「マンガで描けと」けしかけ続けられた水木しげる先生の話を読んでいるうちに、だんだん面白くなってきた。

最後の「石見神楽」の世界には、読んでいて没入していることに気がついた。ぜひナマで体験したいと思う。 

伊勢神宮系の顕世(うつしよ)に対して、出雲大社系の幽世(かくりよ)の世界。現世に対しての来世、昼に対しての夜・・・。


「出雲世界」は面白い。水木しげるの『水木しげるの古代出雲』のことを考えながら、いまこれを書いている。 


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著者プロフィール
野村進(のむら・すすむ)
1956(昭和31)年東京生れ。ノンフィクションライター。拓殖大学国際学部教授。在日コリアンの世界を描いた『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞。『アジア 新しい物語』でアジア太平洋賞受賞。主な著書に、『フィリピン新人民軍従軍記』『救急精神病棟』『脳を知りたい!』『アジア定住』『海の果ての祖国』『日本領サイパン島の一万日』『島国チャイニーズ』『千年企業の大逆転』『解放老人』『調べる技術・書く技術』『千年、働いてきました』など多数。(出版社サイトより)


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2020年2月6日木曜日

「特別展 出雲と大和」(国立博物館、上野・東京)に行ってみた(2020年2月4日)ー「神代の出雲」に対して「仏教伝来後の大和」であり副題は「神と仏」とすべきだった



東京・上野で開催中の「特別展 出雲と大和」に行ってみた(2020年2月4日)。今年2020年は『日本書紀』が編纂されてから1300年になるので、その記念イベントなのだそうだ。

出雲と大和というと、出雲神話と大和神話の対比といった連想が湧いてくる。大国主命(おおくにぬしのみこと)に代表される出雲と天照大神(あまてらすおおみかみ)に代表される大和(伊勢)。そんなこともあって、とくに深く考えることもなく事前にネットでチケットを購入しておいた。あとは、いつ見に行くかということだけが残っていたのである。

今週火曜日(2020年2月4日)のことだが、所用のついでにに行ってみた。博物館に到着したのが16時過ぎていたので、閉館17時までのあわただしい観覧となったが、平日ということもあって来客数は思ったよりも多くなかった。展示は前期後期にわかれるが、訪れたのは「前期展示」ということになる。


(模型 加茂岩倉遺跡 銅鐸埋納状況復元 写真撮影可ゆえ筆者撮影)


第1展示室は「出雲」、第2展示室が「大和」となっているが、正直いって「出雲」は興味深い展示だったが、「大和」はあまり面白くなかった。 

というのも、「大和」の展示物はなぜか仏像ばかりで、これなら「仏像展」と最初からネーミングすべきではないか、と思ったから。個人的に仏教ファンであっても、仏像ファンではないので、少々ガッカリしたのが正直なところ。 

神代の出雲に対して、仏教伝来後の大和ということになるのだろうか。それなら、この展覧会の副題は「神と仏」とすべきだったのだ。

それに対して「出雲」のほうは、古代の出雲大社の縮小模型、古代の出雲大社の支柱である巨大な伊豆柱(模造だが)、銅鐸、埴輪などなど関心が高いものばかり


(同上)

自分自身が、日本海側の「丹後」(京都府)の生まれなので、「出雲」出身ではないが親近感があるのも理由の1つ。自分が生まれた舞鶴市は、古代は出雲の支配圏のなかにあった。

出雲と丹後は、それぞれ古代に編纂が命じられて提出された風土記が残っている数少ない国である。それぞれ「出雲国風土記」「丹後国風土記」になる。ちなみに後者には浦島伝説が出てくる。

政治がからんでくる「大和」よりも、神話にどっぷり浸かっている「出雲」の方が面白いのは、当然といえば当然か。

さらにいえば、せっかく出雲神話といえば大国主命なのだから、大国主命=大黒様でネズミという連想を打ち出せば、子年の2020年にふさわしいものとなったのに。学芸員にはイマジネーションが欠けているのかな。「江戸時代のなかの古代」というコンセプトもありなのだろうに。専門を時代区分で区切る弊害か。

まあ、そんなわけで、古代神話世界の「出雲」と、仏像展の「大和」の二部構成で、両方好きな人にとっては最高だろうが、仏像ファンでない私には後半の展示は面白くなかったというのが、個人的な感想であります。


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・・言うまでもなく、水木しげる氏は出雲の境港の出身

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2020年子年の初詣はネズミにちなんで「子之神社」(市川市北方)に行ってきた(2020年1月5日)
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梅棹忠夫の幻の名著 『日本探検』(1960年)が、単行本未収録の作品も含めて 2014年9月 ついに文庫化!
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2020年1月5日日曜日

2020年子年の初詣はネズミにちなんで「子之神社」(市川市北方)に行ってきた(2020年1月5日)


(千葉県市川市北方の「子之神社」 筆者撮影)

正月も5日になってからの初詣である。どうせ初詣にいくなら、ついでにいろいろ用事を済ませたいからだ。

もろもろの施設が開くのにあわせての設定だ。というのも、正月の3日間が終わってもまだ開かない施設がある。時間とカネの節約である。

今年2020年は20年代の初めであるとともに、干支が一巡して子年となる。ネズミの年なので、それにちなんだ神社にお参りしたいと思って、いろいろ検索して探してみた。

ネズミといえば大黒様。大国主命(おおくにぬしのみこと)は出雲神話。大国主命は根の国の神様。根の国はネズミの国。おむすびころりん。だから、七福神の大黒様と白ネズミはセットになって祀られる。

(箱のなかの大黒様と箱をかじる白ねずみ)

ならば出雲大社となるわけだ。とはいっても、さすがに出雲まで出かける気にはならないので、行くとすれば六本木の「出雲大社東京分祠」だろう。そう目星をつけておいたのは昨年の年末のこと。

最初は、そこにしようと思っていたのだが、もう少し調べて見ると、「子之神社」というものがあることを知った。祭神は大己貴神(おおむちのみこと)、すなわち大国主命(おおくにぬしのみこと)である。横浜市などにある、という。

子神社(ねのじんじゃ、ねじんじゃ) (Wikipediaより)
子神社(ねのじんじゃ、ねじんじゃ)は神奈川県横浜市内などにある、主に大国主命を祭神とする神社。社によっては子之神社と表記される。 大国主命の遣いが子(ね、ネズミ)であるため、甲子(きのえね)の日に祭事を行っていたことから「子の神様」と言われ、神社の名称にもなった。 この他にも子神社あるいは子之神社は、横浜市内だけでなく神奈川県のその他の地域や埼玉県、千葉県、静岡県、山梨県など各地に存在する。 

おおそうか、千葉県にもあるのか! 

近くにないかとさらにネットで調べて見たら、千葉県市川市にもあることがわかった。市川市北方(きたかた)の「子之神社」(ねのかみしゃ)がそれだ。

おお、これだよこれ、ここに決めた。というわけで、2020年の初詣は、ネズミにちなんだ子の神社にいってみることにした。

(北方子之神社の「由緒書」 筆者撮影)

ちょっと先回りになるが、北方子之神社の「由緒書」が黒御影石に彫られたものが、鳥居の前に設置されているので、その文言を写し取っておこう。

子之神社は大己貴命(大國主命)を祭神とし亀山天皇の御代文永年間(1270年代約700年前)建立されたと伝えられ、その後幾度か改装され今日に及ぶ。昭和二十九年宗教法人として設立登記するも社屋老朽甚だしきためこゝに新築す

この御影石の「由緒書」がいつ建立されたのか書かれていないが、1270年代ので700年前ということは、1970年代のことなのだろうか。まあ、どうでもいいことだが。

(子(ね)の神社(かみしゃ)とルビが振ってある 筆者撮影)

京成電鉄の鬼越駅(むかしは「鬼子居」という漢字だったそうだ。鬼が住んでいたのだという)で下車して歩くこと約15分。小高い丘の上にあるので石段が長くてキツい


ただし、狛犬はあくまでも狛犬であってライオン、大国主命が祭神でも狛ネズミではないというのは残念。


「ネズミ算のように、良いことが大量に引き寄せられますように!」と賽銭を入れてから祈り、ガランガランと鈴を鳴らす。御利益のほどはわからないが、たまには出雲系の神社にお参りするのもいいだろう、と。



参拝してから、下界を眺めると景色がいい(写真)。


参拝を済ませたあとは、「子の神社」から少し歩いて市川市東山魁夷記念館へ。そのあと木下街道を下って市川市文学ミュージアム千葉県立産業科学館へ。この日は、1万6千歩以上歩いたことになる。

(つづく)


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初詣は飯綱神社(千葉県八千代市萱田)にいってきた(2017年元旦)-神社の境内に鐘楼があるのは明治維新の際の「神仏分離令」以前の名残り


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2012年5月29日火曜日

『水木しげるの古代出雲(怪BOOKS)』(水木しげる、角川書店、2012)は、待ちに待っていたマンガだ!


『水木しげるの古代出雲』を先週やっとゲットしました。アマゾンでは品切れが続いていて、なかなか入手できなかったので、別のネット書店で購入。正直にウレシイ。到着したその日に一気に読了。

水木しげるの夢枕に現れては、古代出雲のことを、「早く描け、早く描け」とけしかけてきたという古代出雲の青年。この話はTVのインタビューで語っているのを聞いたことがありましたが、マンガを完成したことによって、夢には現れなくなったのだ、とか。このことはこのマンガのなかにも書き込まれています。

出雲大社の勢力圏のにある島根県境港市出身の水木しげる先生。もともと武良家(・・水木しげるの本名は武良茂)は、隠岐の島から島根に移住したらしい。

隠岐の島は、本州からみれば「離島」という位置づけになります、大陸との海路の中継点にあって、大陸からの影響が強いようです。現在は連絡船で結ばれている荒海の玄界灘にくらべて、隠岐の島の日本海のほうが波が穏やかだから、ということなわけです。

東京都調布市で島根県境港市を思い、境港からは隠岐の島、そして大陸を思う。まさに、母(なる故郷)を思って「哭きいさちる神=スサノヲ」そのものではないですか。

マンガの内容は、言うまでもなく、文字どおり出雲神話をマンガにしたもの

ただし、『古事記』や『日本書紀』といった、公式な神話だけではなく、現存する数少ない風土記の一つである『出雲風土記』やその他異本にも基づきながら、独自の出雲世界をマンガとして水木ワールドの一冊本に描き上げたわけですね。

古代出雲族が天孫族に「国譲り」したという美談が公式な神話ですが、そんなキレイ事ではなく、戦った末に敗れ去ったが実態に近かろう、と。

古代出雲族はすごかったのがというのが、水木しげるなど出雲派の世界観です。オオクニヌシは地下世界(=根の国)の主となるのと引き替えに、出雲大社が造られたわけですね。。

いわばオルタナティブ史観というか、神話観といっていいでしょう。出雲系神話は、明治維新の際にも大きな衝突となった事件でもあります。これは、政治学者の原武司の『<出雲>という思想』(講談社学術文庫、2001)で、詳細に解説されています。ただし、マンガにでてくるのは、哲学者の梅原猛です。

じっさいに考古学的な発見によって、古代の出雲大社が机上で復元されていますが、現在のものよりもはるかに大きな高層建築であったことが明らかです。

このテーマは、水木しげるにとっては、子どもの頃からですから、なんと80年(!)という長年の懸案事項であったとのこと。ようやっと、ここに解決したということであったようです。一件落着。

オオクニヌシの支配の及んだ日本海側の京都府舞鶴市生まれのわたしにとっても、今回のマンガ完成は、うれしい快挙であります。

増刷されてもすぐに売り切れになってしまうこのマンガ、みなさんもぜひ!


目 次

プロローグ
第1章 天地創世
第2章 アマテラスとスサノオ
第3章 出雲神話
第4章 オオクニヌシの試練
第5章 スクナビコナとオオモノヌシ
第6章 アメノヒボコ襲来
第7章 国譲り
第8章 謎の出雲青年
第9章 出雲大社造営
エピローグ
参考文献
水木先生と出雲(岡宏三 古代出雲歴史博物館専門学芸員)

著者プロフィール

水木しげる(みずき・しげる)
漫画家・妖怪研究家。1922(大正11)年、鳥取県境港市出身。南方戦線での従軍経験の後、紙芝居、貸本漫画などを執筆。1965年、「週刊少年マガジン」に連載した「墓場の鬼太郎」(のちに『ゲゲゲの鬼太郎』と改題)は代表作となり5度TVアニメ化。2007年、『のんのんばあとオレ』によりフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞。2010年、文化功労者に選出される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


PS 2015年6月に角川文庫より文庫版が出版 (2015年7月19日 記す)


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水木しげるの「戦記物マンガ」を読む(2010年8月15日)
・・妖怪モノ以外の戦記物は、水木しげるマンガの真骨頂である

マンガ 『ビビビの貧乏時代-いつもお腹をすかせてた!』(水木しげる、ホーム社漫画文庫、2010)-働けど働けど・・・

(2014年5月27日 情報追加)


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