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2018年4月11日水曜日

書評『米中戦争前夜 ― 新旧両大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』(グレアム・アリソン、藤原朝子訳、ダイヤモンド社、2017)―「応用歴史学」で覇権交代の過去500年の事例に探った「トゥキディデスの罠」




日本語版のタイトルは「米中戦争前夜」とかなり扇情的だが、原著のタイトルが Destined for War(=戦争へと向かう運命)なので、煽りすぎというわけではない。 

内容は、2008年のリーマンショックを境に、世界経済の牽引役となった中国が、経済的に膨張するだけでなく、政治的かつ軍事的にもスーパーパワーへの道を突き進む現在、唯一の「覇権国」ではなくなったもうひとつの超大国の米国と軍事的衝突の可能性が高いことにかんする分析と、過去の歴史から得られた教訓をまとめたものだ。


(人民解放軍の「軍靴の響き」といったイメージのペーパーバック版)


著者のグレアム・アリソン教授は、ハーバード大学ケネディースクール(政策大学院)の初代学長。現在は、同校のベルファー科学・国際問題研究所所長をつとめている。 アリソン教授は、英国出身の気鋭の歴史家ニーアル・ファーガソン教授とともに、この研究所を率いている。 

このベルファー研究所は、国際政治問題を「応用歴史学」(Applied History)の観点から分析している研究所だ。「応用歴史学」は「主流歴史学」から派生したものだが、現在の問題を解決するヒントを歴史に探るというアプローチをとる。過去の事象をケーススタディとして分析し、教訓を得ることを目的としている。この意味では、ビジネススクールやロースクールのケーススタディにも共通するものがありそうだ。



■「トゥキディデスの罠」を回避できた4つのケース

この本が打ち出したコンセプトは「トゥキディデスの罠」(The Thucydides Trap)というものだ。トゥキディデスとは、ヘロドトスと並んで「歴史学の父」と称される古代ギリシアの歴史家。宿命のライバルとなったアテネとスパルタの30年抗争を描いた『戦史』で知られている。 

「トゥキディデスの罠」とは、チャレンジャーとしての新興国が示す「野心」に対して、チャレンジを受ける側の覇権国が感じる「不安」がエスカレートするに従い、双方に生み出されるワナのことだ。このワナにはまった結果、覇権国交替が戦争によって決着されたケースが過去に多数発生している。

そもそもは、古代ギリシアの覇権国スパルタが新興国アテネの「野心」に感じた「不安」から生じた巨大な構造的ストレスが、予期せぬ偶発的な事象から大戦争に至ったいきさつから生み出された概念だ。

この概念をつかって、過去500年間に発生した「覇権交代」を、16のケースとして抽出し、分析を行っている。16のうち12のケースでは戦争に至っているが、4つのケースについては戦争を回避できたことが判明した。 

戦争を回避できた4つのケースとは、15世紀末のスペイン対ポルトガル、20世紀前半の米英覇権交代、20世紀後半の米ソ冷戦時代、21世紀初頭のEU時代のドイツだ。
   
スペイン対ポルトガルの対立においては、より上位の機関であるカトリック教会が「トルデシリャス条約」という形で仲裁役を演じ、米英の覇権交代においては英国が自制心を発揮、20世紀後半のドイツは「欧州のなかのドイツ」という立場を明確にすることでライバル国の不安を取り除いた。


(核戦争をイメージしたハードカバー版)



■21世紀の中国と20世紀前半の米国はよく似ている

この本が面白いのは、21世紀になってから急速に勃興する新興国・中国を描くにあたって、19世紀後半から20世紀前半にかけての米国を対比して描いていることにある。この両者の膨張ぶりと野心は、時代が離れているとはいえ驚くほど似ているのだ。最終的に米国と戦った日本では、日本史のテーマなので比較的知られている歴史的事実だろうが、歴史感覚の乏しい米国人にとっては新鮮に映るのかもしれない。 

帯にもあるように、米中戦争の発生確率はきわめて高い。そのきっかけは北朝鮮か、あるいは尖閣問題か、それとも南シナ海か。米中が偶発的な事象から軍事衝突したら、それが全面戦争に発展する可能性があることが5つのシナリオで示されている。かなりディテールが具体的なシミュレーションである。 

つい先日の2018年3月、中国は北朝鮮のバックに立つことを国際社会に対して明確に示したばかりだ。スーパー301条による貿易摩擦問題も含めて米中がうまく着地点を探し出せばよいが、こと尖閣問題にかんしては日米同盟が存在するために米国が戦争に引き釣り込まれる可能性があると著者も懸念している。こんなところに米国のホンネが現れてくるのだろう。逆に日本から見れば、在日米軍基地があるから日本が巻き込まれる可能性があるとなるのだが。 

かつて冷戦時代の「キューバ危機」(1962年)で核戦争の危機に直面した米国とロシア(当時はソ連)だが、両超大国の政治指導者の熟慮とねばり強い交渉により戦争を回避することができた。 
   
米中ともに超大国であり、しかも核保有国であることを考えれば、あらためて冷戦時代を研究する必要があることを著者は示唆している。著者は「キューバ危機」の研究でデビューした政治学者である。米中も核保有国であるがゆえに、自制が働くことを期待したい。 

タイトルはやや扇情的だが、内容はきわめてまっとうなものだ。専門書だが一般読者も対象にしており、翻訳も読みやすい。面白い内容の本なので、関心のある人には読むことを薦めたい。


(画像をクリック!)


目 次 

日本語版序文(船橋洋一氏)
第I部 中国の台頭
第1章 世界史上最大のプレーヤー
第II部 歴史の教訓
第2章 新旧対立の原点:アテネVS.スパルタ
第3章 500年間に起こった新旧戦争
第4章 第一次世界大戦の教訓:イギリスVS.ドイツ
第III部 嵐の予兆
第5章 中国は、かつてのアメリカと同じだ
第6章 習近平が率いる中国の野望
第7章 米中両国の共通点と相違点
第8章 戦争にいたる道程 米中戦争で想定される5つのシナリオ
第IV部 戦争はまだ回避できる
第9章 平和を維持した4例にみる12のヒント 第
10章 米中、そして世界はどこへ向かうのか 戦争回避の4つの戦略オプション
結論付録:「トゥキュディデスの罠」16のケースファイル


著者プロフィール

グレアム・アリソン(Graham Allison)
1940年、ノースカロライナ州生まれ。政治学者。ハーバード大学教授。同大ケネディ行政大学院初代学長、同大ベルファー科学・国際問題研究所長(本書刊行時)を務めた。専門は政策決定論、核戦略論。レーガン政権からオバマ政権まで歴代国防長官の顧問を、クリントン政権では国防次官補を務めた。1971年に刊行され今も政策決定論の必読文献である『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析』(中央公論新社、日経BP社)のほか、『核テロ 今ここにある恐怖のシナリオ』(日本経済新聞社)、『リー・クアンユー、世界を語る』(サンマーク出版)など著書多数。マサチューセッツ州ベルモント在住、1940年生まれ。

訳者プロフィール
藤原朝子(ふじわら・ともこ)
学習院女子大学非常勤講師。訳書に『シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問』『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ともにダイヤモンド社)など。慶大法学部政治学科卒。 




<関連サイト>

Graham Allison: "Destined for War: Can America and China Escape [...]" | Talks at Google (YouTube) 58分 ・・自著を語る


Applied History Project

https://www.belfercenter.org/project/applied-history-project#!about

応用歴史学 applied history 

https://en.wikipedia.org/wiki/Applied_history 

公共歴史学 public history の一分野 

Harvard kennedy School Belfer Center for Science and International Affaire

Applied History Project 

https://www.belfercenter.org/project/applied-history-project
Applied History is the explicit attempt to illuminate current challenges and choices by analyzing historical precedents and analogues. 
Mainstream historians begin with an event or era and attempt to provide an account of what happened and why. 
Applied Historians begin with a current choice or predicament and analyze the historical record to provide perspective, stimulate imagination, find clues about what is likely to happen, suggest possible interventions, and assess probable consequences.



<ブログ内関連記事>

JBPress連載コラム16回目は、「「米中G2時代」の現実から目をそらしてはいけない-日本人が想像する以上に長くて深いアメリカと中国の関係」(2018年1月2日)

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!

書評 『海洋へ膨張する中国-強硬化する共産党と人民解放軍-』(飯田将史、角川SSC新書、2013)-事実を淡々と述べる本書で正確な認識をもつことが必要だ

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・・・「日露戦争終結直後から、太平洋をはさんだ日本と米国のあいだに勃発した「太平洋戦争」に至るまでの約40年の歴史を、現在では忘れられた「日米未来戦記」の数々とその作者たちをを取り上げて、戦争という「空気」がいかに形成されていったかを描き切っている。(・・中略・・)日本人の意識と無意識のなかに徐々に形成され、一般国民に対米開戦を積極的に支持させるに至った「空気」は、結果として日米開戦を積極的に後押しし、支持する原動力になる。(・・中略・・)日米戦争は1941年(昭和16年)にいきなり始まったのではない。」 
『日米若し戦はば』というベストセラーの未来戦記が出版されたのは1920年の日本。米中両国で未来戦記が出版される状況が続いたあと・・・? 米中関係をみるにあたって20世紀前半の米日関係を振り返る意味は大いにある

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む

「ハーバード リーダーシップ白熱教室」 (NHK・Eテレ)でリーダーシップの真髄に開眼せよ!-ケネディースクール(行政大学院)のハイフェッツ教授の真剣授業 

(2018年4月13日・18 情報追加)


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2018年1月3日水曜日

JBPress連載コラム16回目は、「「米中G2時代」の現実から目をそらしてはいけない-日本人が想像する以上に長くて深いアメリカと中国の関係」(2018年1月2日)


JBPress連載コラム16回目は、「「米中G2時代」の現実から目をそらしてはいけない-日本人が想像する以上に長くて深いアメリカと中国の関係」(2018年1月2日)
⇒ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51980

こと北朝鮮問題に関しては、実質的に「米中G2」状況になっているのである。米中関係こそ問題解決の中心にあることは、日本国民も理解するようになってきた。

覇権国の米国に「世界の警察官」の役割を依存してきた日本人にとって、中国の急速な台頭に不安感を抱くのも当然といえば当然であろう。だが、「米中G2時代」という現実から目をそらしてはいけない。事実を事実として認識することが重要だ。

自分を思考の軸に置くのは当然だが、バイアスの存在そのものは意識しておく必要がある。好き嫌いに関係なく、自分にとって見たいもの、都合のいい側面だけを見てしまう傾向が人間にはあるからだ。

米中関係もまた、好き嫌いとは別に、事実は事実として見るということを「常識」にすべきだろう。

極端な立場に偏することなく、「競争と協調」というビジネスパーソンのマインドセットで中国に対応していくべきだろう。

(以下、本文につづく)


年頭にふさわしい、すこしハードで大きめのテーマで書きました。

内容的には、それほど特異なものではないと思います。むしろ「常識」といっていいものでしょう。しかし、その「常識」がはたして「常識」となっているのかどうか、冷静に考えて見る必要があるのでは?

思い込みや希望的観測を捨て、勇気をもって手探りであっても前へ進むこと。そして、さらなる知的体力の増強が求められる一年となることでしょう。 

まだ仕事モードではないとは思いますが、こういう時期だからこそ、ぜひご一読いただきますよう。引き続き、今年もよろしくお願いします。


(昨年12月までのコラムのバックナンバー)


<ブログ内関連記事>

■日米関係と日中関係

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『海洋へ膨張する中国-強硬化する共産党と人民解放軍-』(飯田将史、角川SSC新書、2013)-事実を淡々と述べる本書で正確な認識をもつことが必要だ

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える


■中国とキリスト教

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか? 
・・精神的飢餓感が儒教やキリスト教、その他の宗教に向かう現在の中国

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000) 
・・「泉 朱子学の発想には二元論的発想がととのえられています。だから、中国と朝鮮のキリスト教化のために、朱子学が論理的地ならしをしたと、皮肉ることもできます。・・(中略)・・つまり、中国や朝鮮のように二元論的な朱子学のイデオロギー体系が定着したところでは、ヨーロッパの文化が入ってきたときに、これと対決し、価値としてのヨーロッパ体系に抵抗していますよ。「よきをとり、悪しきを捨て」ではなく、中国や朝鮮では全体として批判し、拒否しています」

書評 『韓国とキリスト教-いかにして "国家的宗教" になりえたか-』(浅見雅一・安廷苑、中公新書、2012)- なぜ韓国はキリスト教国となったのか? なぜいま韓国でカトリックが増加中なのか?
・・「日本でも中国でもそうであったが、キリスト教が直面したのは御先祖さまをどう扱うか、つまり祖先祭祀をどう捉えるかという問題であったのは、韓国もまた同様であった。日本では祖先祭祀は仏教が吸収したのでキリスト教が入り込む余地がなく、中国では「典礼問題」を起こしながらも(・・これがバチカンによるイエズス会禁止の原因となった)、キリスト教は祖先祭祀との折り合いをつけた。」


■中国系米国人

エスニシティからアメリカ社会を読み解く-フェイスブック創業者ザッカーバーグというユダヤ系米国人と中国系米国人のカップルが写った一枚の結婚写真から

(2018年1月8日 情報追加)




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2017年11月10日金曜日

書評『習近平 vs. トランプ ー 世界を制するのは誰か』(遠藤誉、飛鳥新社、2017)ー「米中ビッグディール」という「密約」に警戒せよ!


本日(2017年11月9日)は、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出されてから1年になる日だ。さらにさかのぼれば、奇しくも1989年に「ベルリンの壁」が崩壊してから28年目になる日でもある。

そのトランプ大統領が、「アジアツアー」の途上にある。日本を皮切りに、韓国を経て中国に至っているが、今回の12日間に及ぶ長い「アジアツアー」の最大目的は当然のことながら中国との交渉であろう。

もしかすると、「米中ビッグディール」が密約として結ばれる可能性があるのではないかという疑心暗鬼が日本にあるのは当然だ。トランプのアメリカは、あくまでも「アメリカ・ファースト」の原理原則で動いているのであって、同盟国の日本は米国にとっては比較的自由に取り扱いがきく手駒の一つに過ぎないと考えるだからだ。韓国など、間違いなくそれ以下の存在であろう。

トランプ大統領は安部首相と相性がいいとニュース報道されているが、習近平とも馬が合うようだ。褒め殺しに限りなく近い印象がなくもないが、習近平を最大限に褒めていることを忘れるべきではない。米中両大国のトップは、巨大オーナー企業同士の頂上会談のようなものと考えるのが適当だろう。

今回は日本が最初の訪問地になったが、日本の頭越しに中国訪問という悪夢が実現しなかっただけでも、よしとするべきではないだろうか? 佐藤栄作首相の時代、米国のニクソン大統領は日本の頭越しに中国を電撃訪問し、国交回復を実現したことは忘れるわけにはいかない屈辱であったのだ。

ことし8月に出版されてすぐに読んだ本だが、『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か』(遠藤誉、飛鳥新社、2017)は、米中関係の深層を知るうえで、いまあらためて読み直す必要のある本だ。 出版社による書籍紹介から内容をピックアップしておこう。

<内容紹介> 新・米中蜜月の裏の巨大取引! そこには中国の代弁者キッシンジャーがいた。アメリカを操ってきた世界最大の暗部を、中国研究の第一人者がはじめて解き明かす。
・アメリカを私物化するキッシンジャー
・誰も語らない北朝鮮問題の根本矛盾
・AIIB、一帯一路の真の狙い
・中国最強の知恵袋・王滬寧(おう・こねい)
・大の親中派・イヴァンカ
・米中をつないでいる米財界人
・清華大経済管理学院顧問委員会リスト初公開

ニクソン大統領による米中国交正常化は、キッシンジャー国務長官の「忍者外交」によって実現した「ビッグディール」というべきだ。

日本嫌いのキッシンジャーがそれ以後、中国の代理人を務めていることは、ある意味では「常識」であったが、本書で事実として確認されたことは、日本人のためにはたいへん喜ばしい。米財界が中国ビジネスをどう見ているかについても、遠藤氏の言うとおりだと納得する。

著者の遠藤誉氏は、中国で生まれて国共内戦時代から中共初期の中国で少女時代を送った人。中国共産党の生態とロジックが手に取るようにわかる人だ。

カバー表紙のイラストは辣椒(ラージャオ)氏によるものだ。『マンガで読む嘘つき中国共産党』(新潮社、2017年)の著者である政治風刺マンガ家。ペンネームである。

辣椒氏は、日本滞在中に「表現の自由」のない中国に帰国することの危険を感じそのままを逃れて日本に「亡命」」したが、民主主義が徹底しない日本には見切りをつけて渡米することにしたのだという。辣椒(ラージャオ)さんとの出会い-亡命漫画家『嘘つき中国共産党』(遠藤誉)を参照されたい。

遠藤誉氏の著書は、ほぼすべて読んでいるが、『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か』もまた、いまこの時期だからこそ読むべきだと推奨しておきたい。





目 次 

まえがき

第1章 「一つの中国-水面下で動く米財界と中国
 1. それはトランプのビッグ・ディール第一弾だった
 2. トランプ、突然の表明・・・「一つの中国」原則を尊重
 3. 水面下で中国で深くつながっていた米財界人
 【コラム】 超エリート校・精華大学の由来
 4. トランプ政権はキッシンジャーに乗っ取られていた
第2章 米中蜜月「世紀の大芝居」か
 1. シリア攻撃-ビッグ・ディール第二弾
 【コラム】 中国最強の知恵袋・王滬寧(おう・こねい)
 2. 帰国してから米中首脳電話会談
 3. 米中蜜月を演じて北朝鮮を追い詰める
 4. 中国は中朝軍事同盟を破棄できるか?
第3章 北朝鮮問題と中朝関係の真相
 1. 朝鮮戦争はなぜ始まったのか?
 2. 休戦協定が残したしこりと根本的矛盾
 3. ソ連崩壊後の中朝関係
 4. 中国の制裁はどこまで行くのか
第4章 中国の野望、世界のリスク
 1. 「一帯一路」構想とは何か
 2. 一帯一路構想はいつから練り出されたのか
 3. グローバル経済の覇者を狙う
 4. 習近平の顔に泥! 開幕式直前に北朝鮮がミサイル発射
 5. 日本はAIIBに参加すべきではない
 6. 中国の不戦勝となるのか-トランプ、パリ協定を離脱
第5章 歴史の真相に怯える習近平
 アメリカも気付きはじめた中国の巨大な嘘
 参照: 毛沢東が潘漢年(はん・かんねん)と直接連絡を取った例(「毛沢東年譜」より抜粋) 
 ウォルドロン教授との対談(『Hanada』2017年3月号)

あとがき 金日成派に粛清された延安派-長春を食糧封鎖した挑戦八路

著者プロフィール 

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941(昭和16)年中国吉林省長春市生まれ。国共内戦を決した「長春包囲戦」を経験し1953年に帰国。 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。 著書に『卡子(チャーズ)-中国建国の残火』『チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平』(ともに朝日新聞出版)、 『毛沢東-日本軍と共謀した男』(新潮新書)など多数。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)





<関連サイト>

トランプ訪中、主人公はアラベラちゃん(遠藤誉、Yahoo!ニュース、2017年11月10日)
・・「それ以外にも活躍していたのは習近平の母校、清華大学にある経営管理学院顧問委員会の米財界人たちだ。そこにはゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースCEOなど、目がくらむほどの米財界の大物たち数十名が名を連ねている(この全員のメンバー・リストは『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』のp.31~34に掲載)。 第19回党大会と一中全会が終わると、習近平は早速、この顧問委員会のメンバーと歓談した。ここで既に今般の米中首脳会談の基本路線は決まっていたと見ていいだろう。(・・中略・・) 清華大学経営管理学院顧問委員会の最も大きな目的は、米中間の経済貿易に貢献する「人財育成」である。投資などが目的ではない。 これは実は時間が経てばたつほど大きな効果を発揮することになる。(・・中略・・) 28兆円の投資協定の裏には、清王朝から続いている、(アメリカのための)清華大学の米大財閥たちとの、恐るべきベースがあることを見逃してはならない。 トランプのアジア歴訪は、ビジネスマン・トランプの一面を発揮したが、表面には出ていない米中の結びつきを、見たくはないだろうが、正視するしかないだろう。」

習近平がトランプに呑ませた「スーパー・ビッグディール」の中身(近藤大介、現代ビジネス、2017年11月14日)
・・「ビッグディール」にかんする一つの推測記事

(2017年11月14日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則
・・「本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。」

書評 『パックス・チャイナ-中華帝国の野望-』(近藤大介、講談社現代新書、2016)-2012年に始まった「習近平時代」を時系列で振り返るとクリアに見えてくるもの

トランプ大統領初来日(2017年11月5日~7日)-この機会に「 トランプ現象」とは何かについてあらためて考えてみる

書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している
・・「中国に対しては、キッシンジャー以来、いわゆる「瓶のフタ」論という詭弁で在日米軍の存在を自己正当化してきたことも忘れるべきではない。日本が暴発しないよう、米軍が駐留しているという論である」

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか? 
・・米中関係の太さについての重要な指摘が行われている本である。あまり読まれていないのが残念だ。「2章 日米の宿命の関係  1. 同盟国から仮想敵国へ  2. 幻想のアジア  3. 米中同盟=日本の破滅  4. アメリカの日本観  5. 再び日米戦争論」は必読

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目! ・・経済と安全保障のズレが存在するアジア太平洋地域



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