■1986年のチェルノブイリ原発事故に触発されて書かれた小説のマンガ化
いまから四半世紀以上前に発生したチェルノブイリ原発事故の恐怖は、遠く離れた日本でも大きな反響を起こした。
だが、風が吹く方向に位置しているドイツでは、放射能被害が実際に発生したのであった。
この点を抑えておかないと、なぜドイツでは反原発が国民レベルで盛り上がったのか理解できない。
このマンガの原作は、すでに親子二代で読み継がれているのだという。ドイツが「脱原発」に踏み切った背景には、『みえない雲』という小説が普及していたこともあるという。
原作の小説は読んでいないので、このマンガ版だけを読んだ感想としては、チェルノブイリ原発事故と広島と長崎への原爆投下を一緒くたにしたような内容で、やや違和感がなくもないのだが、原発事故の恐怖感を肌感覚で理解できる内容である。読者を「反原発」に向かわせる効果はきわめて大きいというべきだろう。
内容もさることながら、わたしが興味深く思ったのはドイツのマンガについてだ。
ドイツでも日本のマンガやアニメが圧倒的な存在であることは知っていたが、さすがにドイツ人のマンガ家が存在する(!)ことはしらなかった。
しかも、絵柄やコマ割りが日本のマンガそのものではないか! 主人公たちはドイツ人なのに、なぜか顔立ちが日本のマンガそっくり。内容よりもそちらに関心がいってしまったのは、読み方としては邪道かもしれないが・・・
(映画化もされている)
<初出情報>
■amazon書評「1986年のチェルノブイリ原発事故に触発されて書かれた小説のマンガ化」(2012年3月26日)
著者プロフィール
アニケ・ハーゲ(Anike Hage)
1985年生まれ。ドイツの女性漫画家。ニーダーザクセン州、ヴォルフェンビュッテル出身。ドイツ出身の漫画家ではあるが、その絵柄やスタイルは日本の漫画に大きな影響を受けている。ハーゲが商業デビューを果たした出版社の TOKYOPOP社は、「グローバルMANGA」として日本国外から日本式の漫画を描く作家を多くデビューさせており、ハーゲはその一人である(Wikipediaの項目から)
グードルン・パウゼヴァング(Gudrun Pausewang)
1928年、チェコ生まれ。戦後、旧西ドイツに移住。72年以降ヘッセン州の小学校で教鞭をとる傍ら、執筆活動にも従事。平和問題、外国人労働者などの社会問題をテーマに、大人向け、青少年向けに多数の著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
高田ゆみ子
1956年大阪生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
<ブログ内関連記事>
書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?
「チェルノブイリ原発事故」から 25年のきょう(2011年4月26日)、アンドレイ・タルコスフキー監督最後の作品 『サクリファイス』(1986)を回想する
『チェルノブイリ極秘-隠された事故報告-』(アラ・ヤロシンスカヤ、和田あき子訳、平凡社、1994)の原著が出版されたのは1992年-ソ連が崩壊したからこそ真相が明らかになった!
スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む
「特攻」について書いているうちに、話はフランスの otaku へと流れゆく・・・
・・フランスは日本のマンガやアニメ好きが多い! なんせ otaku(オタク)もフランス語になっている
(2012年7月3日発売の拙著です)
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