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2012年7月8日日曜日

書評 『惜櫟荘だより』(佐伯泰英、岩波書店、2012)-現在と過去、熱海とスペインと、時空を飛び交い思い起こされる回想の数々


「月刊佐伯」と揶揄されると、著者みずからが自嘲気味に語る「文庫書き下ろし時代小説」で有名な作家・佐伯泰英氏の初のエッセイ集である。

しかしなんといっても、毎月書き下ろして出版される「時代小説」は、文庫版ですでに180冊、累計4,000万部を越えているそうだ。

まさに先駆者でかつ、継続的に書き続けてき「職人ワザ」以外の何物でもあるまい。

タイトルにある「惜櫟荘」(せきらくそう)とは、著者が譲り受け修復を行った熱海の別荘のことである。

 もともとは、岩波書店の創業者である岩波茂雄(1881~1946)が、昭和2年に創刊した岩波文庫がヒットしたので、そのカネで建てた別荘である。信州出身の岩波茂雄とって、海の見える見晴らしのいい別荘は、まさに憧憬(しょうけい)のまとであったようだ。

『世界史こぼれ話 3』(三浦一郎、角川文庫、1975)には、岩波茂雄が「惜櫟荘」を建てたときのエピソードがでてくる。短いのでそのまま引用しておこう。

岩波茂雄が熱海に別荘を建てた時、敷地にある櫟(くぬぎ)が邪魔だったが古木なので、これを切らずに残した。そこで別荘に惜櫟軒とつけて露伴に額の揮毫(きごう)を乞うと、翁は「これではいやしい」と櫟軒と書いて与えた。

文中に「惜櫟軒」とあるが、これは「惜櫟荘」のあやまりである。露伴とは、もちろん明治の大文豪・幸田露伴のことだ。

仕事場を東京から熱海に移した著者は、これまた何かの縁で「惜櫟荘」と、その設計を行った建築家・吉田五十八(よしだ・いそや:1894~1974)の名を後世に残すことを目的に、修復を決意したのである。

本書に収められたエッセイは、その経緯と若き日の回想を時空を越えて交錯させながら綴られたものだ。その意味では、作家・佐伯泰英の半生の記といってもいいだろう。

佐伯泰英の作品では、時代小説よりも、むしろスペインものが好きなわたしのような読者には、じつにうれしい一冊である。

というのも、テーマは惜櫟荘の修復作業の経緯でありながら、でてくるのは熱海だけではなく、写真家として身を立てるために、闘牛をテーマとしてスペインに滞在していた若き日々の回想シーンが多く登場するからだ。 海に面した熱海もまた、地中海に面したスペインの町を思い起こさせるものがあるようなのだ。

そして、スペインで出会い、交流のあった堀田善衛(ほった・よしえ:1918~1998)などの文学者やアーチストたちとの回想も、文学好きの読者にはたまらないだろう。つい先日亡くなった本好きの俳優・児玉清の素顔もまた読み応えがある。

現在と過去、熱海とスペインと、時空を飛び交い思い起こされる回想の数々。不遇時代から時代小説作家として確立するまでの苦労、そして時代小説家として成功した現在でも、スペインへの思いは消えることがない。人生とは、そういうものだろう。Ces't la vie.

まさに、熟成した芳醇な香りを感じさせる、「職人」による手作りの味わい深い一冊である。

目 次

文豪お手植えの……
仕事場探し
鮑と文庫
ティオ・玲二
五十八の原図
惜櫟荘解体
作家と教師
子のライオン
四寸の秘密
詩人と彫刻家
上棟式の贈り物
五十八の灯り
ベトナムへの旅
ホイアンの十六夜
一間の雨戸
画家グスタボ・イソエ
翌檜の門
書の話
児玉清さんと惜櫟荘
呼鈴と家具
自然の庭
遅い夏休み
修復落成式(一)
修復落成式(二)
松の話
あとがき


佐伯泰英(さえき やすひで)

1942年、福岡県北九州市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。1971~74年、スペイン在住。帰国後,闘牛をテーマとするノンフィクション作家・写真家として活躍ののち、1999年より時代小説に転じる。"時代小説文庫書下ろし”のスタイルを貫き、数多くの長編シリーズを執筆する。「居眠り磐音江戸双紙」、「密命」,「古着屋総兵衛」など著書多数(岩波書店のサイトから引用)。


PS 2016年1月に岩波現代文庫から文庫化された。文庫によって成功した著者にとって著者が文庫化されることは大きな喜びであろう。文庫版には新稿として「芳名録余滴」が収載されている。




<関連サイト>

『惜櫟荘だより』-著者からのメッセージ/著者略歴/目次(岩波書店のウェブサイト)

佐伯泰英 不遇の時代からベストセラー作家へ  「書き続けられることが喜び」(WEDGE 2012年12月06日 吉永みち子)

惜櫟荘ものがたり~岩波茂雄と吉田五十八~(BS朝日)
・・2013年5月26日(日)21~22:54BS朝日で放送。再放送は2014年1月2日



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