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2021年1月26日火曜日

書評『在宅ひとり死のススメ』(上野千鶴子、文春新書、2021)-認知症になっても「在宅ひとり死」は可能!

 

この本は、やさしく書かれているがデータを駆使した社会学の本でもある。自分の生き方そのものを研究テーマにしているわけだ。現在72歳の社会学者である上野氏は、「孤独死」という表現には違和感を示して、「在宅ひとり死」を提唱している。

わたくし事であるが、昨年2020年4月に父が亡くなってから、母も「おひとりさま」となったわけだが、その後も住み慣れた自宅で過ごしている。息子である自分は同居していない。お互いそれがいちばんいいと思っている。現在のところ認知上の問題はなさそうだ。 


母は、最後は介護施設に移るといっているのだが、上野千鶴子氏の「おひとりさまの老後」シリーズの最新の本を読むと、かならずしも最期を施設で迎える必要はなさそうだ。しかも、認知症になっても在宅死は問題ないのだと。 

というのは、著者によれば、介護保険制度20年の歴史で、ずいぶん現場には経験が蓄積されているからだ。しかも、かつては「ぼけ」といっていた認知症は誰もがなる可能性が高い。それだけでなく、施設に入ったことで、かえって症状を悪化させるケースも多い。

誰だって住み慣れた自宅にいたいというのが本望だろう。誰が、なにも好き好んで年取ってから、あらたな人間関係の構築が必要な施設に移りたいと思うのだろうか。施設内での虐待のニュースも報道で耳にすることも多いではないか。

現時点では、まだ自分自身の問題ではない(と思って)いても、人間は間違いなく100%死ぬのであるから、いずれこの問題にはきちんと対応しなくてはならなくなる。

誰が言ったか忘れたが、「よく死ぬことは、よく生きることである」からだ。 だからこそ、こういう本を読むことは、生きるうえで重要な「教養」となる。平均寿命の長い女性は言うまでもなく、男性も自分事として読むことを薦めたい。 



目 次
はじめに
第1章 「おひとりさま」で悪いか?
第2章 死へのタブーがなくなった
第3章 施設はもういらない
第4章 「孤独死」なんて怖くない
第5章 認知症になったら
第6章 認知症になってよい社会へ
第7章 死の自己決定は可能か?
第8章 介護保険が危ない
おわりに

著者プロフィール
上野千鶴子(うえの・ちづこ)
1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクショネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間、教育と研究に従事。著書に『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本』(岩波書店)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊國屋書店)、『ケアの社会学』(太田出版)、『サヨナラ、学校化社会』など多数。母親の育児問題、独身女性の介護問題など、日本が抱える諸問題に対して話題作を出している。


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