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2021年1月30日土曜日

書評『動物と機械から離れて-AIが変える世界と人間の未来』(菅付雅信、新潮社、2019)-久々に面白い本を読んだ気分になった。だが残念なことに最終章は・・・

 
久々に面白い本を読んだ気分になった。『動物と機械から離れて-AIが変える世界と人間の未来』(菅付雅信、新潮社、2019)という本だ。読んだのは比較的余裕ができた昨年2020年12月のことである。 

内容をかいつまんでいえば、国内外の人工知能(AI)開発の最前線の研究者たちにインタビューして回る旅。『WIRED日本版』の連載を1冊にまとめたものだ。この著者の前作『物欲なき世界』(平凡社、2015)が面白かったので期待して読んだが、今回も知的な期待に十分応えてくれる面白さだった。 


AI研究には「人間」とは何かという、そもそも論の問いが密接不可分

タイトルにある「動物と機械」というのは、その中間に位置するのが「人間」だという考えに基づいたものだ。AIの進化によって人間は「動物化」していくのか、それとも「機械化」していくのか

ある意味で哲学的な問いだが、これはAI研究には「人間」とは何かという、そもそも論の問いが密接不可分であることの反映である。第1章のタイトルが「AIとは何かを考えるとは、人間とは何かを考えること」であることに象徴的に表現されている。 

「自律性」とは? 「知能」とは? 「意識」とは? 「感情」とは?・・・こういった本質的な問いを避けて通れないのがAI開発の研究であり、あるいはAI研究をつうじて、こういった問いに迫ろうとしているのである。 


■AI研究者を訪ね歩いた旅の結論は・・

AI研究の世界的な中心は米国と中国であり、著者もまた米国西海岸のシリコンバレーと中国広東省の深圳を訪れて、さまざまな研究者や思想家たちと問答を行っている。

興味深いのは、米中の影に隠れて知られざるロシアの研究状況について1章を割いていることだ。ふだんあまり意識することがないだけに貴重な内容となっている。モスクワ郊外の研究開発都市スコルコヴォ’Skolkovo Innovation Center)である。ロシアの場合は、研究開発における政治との距離感がポイントだ。 

旅の成果である結論、第11章の「シンギュラリティは来ないが、ケインズの予言は当たる」に記されており、その結論は、常識的に考えて、まあそうだろうなというものとなっている。

ここでいう「ケインズの予言」とは、1930年の時点でなされた「100年以内に経済的な問題は解決する」という予言のことだ。2020年にパンデミックが発生したが、ペースが墜ちたとしても、ある程度までその通りとなるだろう。

シンギュラリティ(特異点)とは、2045年にはAIの能力が人間の知能を上回るという発明家カールワイルによる予測だ。著者とともに、第1章から第10章まで読んでいけば、「シンギュラリティは来ない」という結論になるだろう。これはある意味では「常識」的な見解といえよう。 

この本が興味深いのは、結論そのものよりも、さまざまな専門家の発言をじかに引用して掲載していることだ。立場によって真逆の発言もあって、AIをめぐる議論がまだまだ百家争鳴状態であることがよくわかる。その発言の1つ1つが知的な刺激を与えてくれるのだ。 


■だが残念なことに最終章は・・・

ところが、たいへん残念なことに最終章となる第12章「未来の幸福、未来の市民」では、これまでの議論とうって変わって、とたんに陳腐でつまらないものとなってしまう。「20世紀型発想のユートピア論」でしかないのである。帯に推薦文を寄せている水野和夫氏とおなじ発想だ。「朱に交われば赤くなる」ということだろう、おなじような傾向をもつお仲間たちが集まるのだろう。

シンギュラリティが来るか来ないかということは別にして、ユートピアを語るならいっそのこと、カーツワイルの『ポスト・ヒューマン』で展開された「シンギュラリティ」(特異点)のほうがはるかに面白い。オリジナルな思想だからだろう。だから、「20世紀のリベラル派」が大好きな「市民社会論」など、いまこの時点で持ち出す感性の鈍さが私には理解できないのだ。処方箋としてはまったくもって失格である。 

まあ、そういう残念な終わり方をする本であるが、第11章まではひじょうに面白い内容になっているので、繰り返しになるが、読む価値は大いにある本だといっていいだろう。 





目 次
まえがき
第1章 AIとは何かを考えることは、人間とは何かを考えること
第2章 「自律性」という広大な未知を探索する
第3章 世界最大のテック都市、深圳はAIに未来を託す
第4章 「わたし」よりも「わたし」を知っている機械
第5章 社会の複雑さに人間が追いつかず、AIが追いつこうとする
第6章 ロシアのシリコンヴァレーが示すAI競争という新たな冷戦
第7章 「意識とは何か」を考える意識
第8章 シリコンヴァレーの未来信者たちとその反動
第9章 仕事の代替は古くて新しい問題である
第10章 人間は素晴らしく、だらしなく動物である
第11章 シンギュラリティは来ないが、ケインズの予言は当たる
第12章 未来の幸福、未来の市民
あとがき
参考文献一覧

著者プロフィール
菅付雅信(すがつけ・まさのぶ)
編集者/株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役。1964年宮崎県生まれ。『月刊カドカワ』『カット』『エスクァイア日本版』編集部を経て独立。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、出版物の編集から内外クライアントのプランニングやコンサルティングを手がける。アートブック出版社ユナイテッドヴァガボンズの代表も務める。下北沢B&Bで「編集スパルタ塾」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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