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2021年6月19日土曜日

書評『テクノロジー思考 ー 技術の価値を理解するための「現代の教養」』(蛯原健、ダイヤモンド社、2019)ー 20世紀の「石油の世紀」から21世紀の「データの世紀」へ

 
先週のことだが、『テクノロジー思考-技術の価値を理解するための「現代の教養」』(蛯原健、ダイヤモンド社、2019)という本を読んだ。この本はいい。おすすめしたい。 

なぜなら、現在と近未来についての考察が深く、かつ的確だからだ。テクノロジー抜きに現代を考えることは不可能である。経済も政治も、すべてテクノロジーを軸に回っているのが現代という時代だ。 

ここでいうテクノロジーとは、テクノロジー全般のことではない。「データ・テクノロジー」に限定されている。ITとはインフォメーション・テクノロジーのことだが、もはや現在はインフォメーションのレベルではなく、すべてがデータを中心に動いているのである。 

その担い手が米国企業の GAFA(=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)であり、中国企業のアリババやテンセント、そしてバイドゥ(百度)といったプラットフォーム企業であることは、もはや常識といっていいだろう。 

まさに、現在は「イノベーション至上主義」の時代であり、これに「過剰流動性」つまり「カネ余り状態」が掛け合わされて「データ・エコノミー」が驀進しているわけだ。コロナ下で、この動きは止まるどころか、むしろ促進されていることは周知のとおりだろう。 

20世紀が「石油の世紀」だったとしたら、21世紀は「データの世紀」だというアナロジーに注目すると見えてくるものが多い。 

「原油」は精製して石油製品に加工しないと使えない。「生データ」も加工して情報や知識に変換しなくては使えない。そのデータ分析で使用されるのがAI(=人工知能)であり、ディープラーニングなど関連するさまざまなテクノロジーである。 

この本の著者は、20年以上にわたってスタートアップのテクノロジーベンチャーに投資活動を行ってきたベンチャー・キャピタリストである。テクノロジーをどう読むか、それが投資判断に反映するのであり、その知見が本書で公開されているわけだ。 

テクノロジーをテクノロジーとしてだけ見るのではなく、経済という視点から、テクノロジーと経済の相関関係を見ているその観点から展開される本質的な議論が役に立つ

いま流行の DX(デジタル・トランスフォーメーション)についても、マーケットの観点から見ることが可能になる。すべての産業、すべての企業の「データ・テクノロジー」化は、いまだ道のりは遠い。だからこそ、そこにビジネスチャンスがあるわけだ。 

しかも、社会という観点からの見方も忘れていないのが著者の特徴だろう。 

先に、データと石油のアナロジーについて触れたが、20世紀の「石油の世紀」に石油産業が体験したのは「独占禁止法」(=反トラスト法)による企業分割であった。経営史ではおなじみのテーマである。 

いまこの2020年代に浮上してきたのが、データエコノミーの担い手である、GAFAに代表されるプラットフォーム企業への独占禁止法適用議論の高まりである。ここでもアナロジーが働いているのである。 

中国では中国共産党がアリババやテンセントの活動に制限を加え始めている。米国でも民主党政権下で独占禁止法議論が活発化している。そしてその米中両国のあいだでは、覇権をめぐって対立が激化している。 

こんな状況のなかで、データ・テクノロジーをめぐる政治経済社会がどう進展していくのかについて考えるためのヒントが、この本には書かれている。著者がいうように、まさに「現代の教養」というべきであろう。 




目 次

序章 テクノロジー思考とは 
第1章 テクノロジー産業の現在 
第2章 イノベーション至上主義と、スタートアップ全盛時代 
第3章 次なるフロンティアはどこにあるのか 
第4章 データ資本主義社会 
第5章 欧州という現代のデータ十字軍 VS データ中央集権企業群 
第6章 インド- 復権するテクノロジー大国 
第7章 中国テクノロジーの正体 
第8章 米中テクノロジー冷戦とは結局のところ何か 
終章 テクノロジー思考の実践に向けて 
 
著者プロフィール
蛯原健(えびはら・たけし) 
1994年、横浜国立大学経済学部を卒業し、㈱ジャフコに入社。 以来20年以上にわたり一貫してスタートアップの投資及び経営に携わる。 2008年、独立系ベンチャーキャピタルとしてリブライトパートナーズ㈱を創業。 2010年、シンガポールに事業拠点を移し東南アジア投資を開始。 2014年、バンガロールに常設チームを設置しインド投資を本格開始。 現在シンガポールに家族と在住し、インドと東京の3拠点にて事業を行う。 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA )。本書が初の著書となる。




さて、ついでに話題になっていた関連書を読んでみた。『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(山本康正、講談社現代新書、2020)である。 

内容的にはほとんどかぶっているので、あまり新鮮味は感じなかった。『テクノロジー思考』と比べると、やや考察が浅いという印象を抱いてしまう。

ただし、カバー帯にもある「2020年代のテクノロジーの構図」は、ビジュアとしてはよくできている。 

著者の半生と自分でつくりあげてきたキャリアについては興味深く読んだが、あえて1冊選べと言われれば、私としては『テクノロジー思考』を読めば十分なのではないかと思う。もちろん、この2冊ともに読んで比較してみるのもよいだろう。 

*** 


 21世紀の石油であるデータを取り巻く状況を網羅的に扱った新聞連載の書籍化だ。日経にしては、データエコノミー化を煽るだけの内容になっていないのは意外な感じがした。 



米中そして英国がリードしている状況のなか、周回遅れの日本企業と日本社会はどう取り組んでいくべきか、なかなか悩みはつきないものがある。 

いずれにせよ、21世紀は「データの世紀」という認識で、ものごとを捉えていかなくてはならないのが、いま現在の状況なのである。われわれは、そのまっただ中にいるのだ。 


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