本日(2022年1月27日)のことだが、「東京シンフォニア」のコンサートにいってきた。コロナ下であるなしにかかわらず、クラシックのコンサートに行くのはひさびさだ。東京シンフォニアのコンサートは今回がはじめてだ。
1月27日はモーツァルトの誕生日。1756年に生まれ、1791年に35歳の短い生涯を終えた天才モーツァルト。彼が生きた18世紀後半の西欧は「啓蒙主義の世紀」であり「フリーメーソンの世紀」でもあった。
モーツァルトもまたフリーメーソンの会員であったことは、すでに「常識」いっていいだろう。 生涯の最後の7年間、モーツァルトはメーソンであった。1789年に始まった「フランス革命」に共感していた。
(右端の人物がウィーンのフリーメーソンの集会に参加している1789年のモーツァルト Wikipediaより)
そのモーツァルトの誕生日を祝うコンサートが、フリーメーソンゆかりの場所で行われるとなれば、一度は行ってみたくなるというものだ。前回(前々回?)その機会を逃していたので、今回は絶対に行くぞ、と。ほんと、1月半ばから日本でも感染拡大が始まったオミクロン変異株による「コロナ第6波」で中止にならなくてよかった。
(コンパスにG 東京メソニックセンターの玄関 筆者撮影 以下同様)
会場は、東京は御成門の東京タワーの足もとに近い「東京メソニックセンター」の地下2階にある「ゴールデンホール」。200人程度は収容できるホールは室内楽に向いている。メソニック(Masonic)とは、フリーメーソン会員を意味するメーソン(Mason)の形容詞形である。
ゴールデンホールの天井の梁には Nature(自然), Charity(慈善), Reason(理性), Faith(信念), Infinity(無限), Immortality(不死), Hope(希望) という英語が記されている。いずれも、いかにも啓蒙主義を支えたフリーメーソンらしい理念の数々である。
しかも、『モーツァルトとフリーメーソン』(茅田俊一、講談社現代新書、1997)によれば、1784年12月14日にウィーンでメーソン会員となったモーツァルトは、入会にあたって啓蒙主義的色彩の強い「慈善」という比較的小さなロッジを選択したという。
「慈善」とはドイツ語で Wohltätigkeit であり、英語なら Charity となる。生涯の最後まで真摯な会員であったモーツァルトは、メーソンの理念に共感していたわけである。
■フリーメーソンの理念に従っているシンフォニー
今回のコンサートで演奏された曲目は、「弦楽器のための交響楽」を3曲、「ハ短調 K.406」「変ホ長調 K.614」「ニ長調 K.593」である。
その3曲を19人編成のオーケストラで演奏。フリーメーソンにおいては、数字の 3 と 5 と7 が重要な意味をもつという。3と5と7、そして19はいずれも奇数であり素数であることにも注目したい。
(東京メソニックセンターのゴールデンホール)
ホールの音響はきわめてよく大いに演奏を堪能。目をつぶって音楽に身を浸していると、モーツァルトがメーソンであったかどうかなど、どうでもよくなってくる。音楽そのものを楽しむのが第一義的な目的であるから、それは当然といえば当然であるが。
とはいえ、もちろん音楽もさることながら、わたしも含めた観客にとっての関心は、フリーメーソンそのものにもあるのは言うまでもない。観客のほとんどはメーソンではないようだった。
■フリーメーソンのロッジの内部をはじめて体験
コンサートが始まる前に、コンサート会場とおなじく地下2階にある隣の「ブルーロッジホール」も見学させていただいた。
(天空のブルーがうつくしい 筆者撮影)
なにごとも百聞は一見にしかず。 写真撮影はOK。おお、なんと開放的なことよ!
近年は積極的に情報公開するようになっているので、秘密めいたものなどないことが誰の目にも明かだ。コンサート開始前と幕間にスマホで写真撮影しまくる。一期一会である。その他の観客もみな興味津々でおなじ行動。スマホ時代ならではといえようか。
コンサートの帰りにはお土産までいただいた。サントリーの提供で「モーツァルト チョコレートクリームのリキュール」のボトルでザルツブルク製。モーツァルトに甘いチョコレートはよく似合う。ただし、現在わたしは酒をやめているので味わえないのが残念ではあるが・・・
今夜の曲目は、甘さだけではない深みのある曲であたが。 音楽監督で指揮者のロバート・ライカー氏自身がメーソンなので実現したのであろう。メーソンの帽子を被って挨拶されていた。
(独立後の新首都に礎石を据えるメーソンのジョージ・ワシントン 壁に飾られた絵画)
世界を股にかけて活動したい人には、米国を中心にネットワークが形成されている社交団体のメーソンは、ある意味ではうってつけかもしれない。 1曲目のタクトを振った指揮者の菅野宏一郎氏もまた、ルーマニア在住の日本人でメーソンなのだそうだ。
モーツァルトの誕生日のメーソンホールでのコンサートは来年もやるようなので、フリーメーソンに関心のある人は一度は行ってみるといいだろう。
<参考>
1月26日(水)・27日(木) 東京メソニックセンター 午後7時開演 モーツァルトバースデーコンサート
【プログラム】
【ごあいさつ】年始恒例、モーツァルトの誕生日1月27日を祝うモーツァルトバースデーコンサート。 カナダから2人の著名なヴァイオリニストをソリストとして招く予定で、来日の可能性をぎりぎりまで待ちましたが、海外からの入国停止はまだ継続中です。 大変残念ながら、2人のヴァイオリニストとの共演は、次回のモーツァルトバースデーコンサートまで待つことになりました。そこで今回はプログラムを変更して、弦楽五重奏曲を19人の東京シンフォニア用に編曲した「弦楽のための交響曲」を3曲演奏いたします。 1784年、28歳のモーツァルトはウィーンのフリーメイスンに入会し、短い人生を終えるまで精力的に活動を行いました。メイスンの会合の場では、社会的な地位とは関係なく、皇帝ヨーゼフ2世や貴族や著名な音楽家たちと、会員として対等に話をすることができたのです。 東京メソニックセンター内の美しいホールでのコンサートをお楽しみください。会場では引続き感染防止対策を実施いたします。
Mozart and Freemasonry(Wikipedia)
<関連サイト>
・・「グランド・ロッジ」について、その歴史的経緯について日本語で解説されている。情報は基本的に英語
<ブログ内関連記事>
・・「交流のあった米国の実業家が「フリーメーソン」の会員であると聞いて、自分でもその内容について調べてみたらしい。「精神の真修養法」にでてくる話だ。結論としては、フリーメーソンの説くところと儒教の教えには共通性があると言う」
・・内村鑑三は、この講演で慈善活動に力を入れる米国の実業者について語っている
・・足もとのGはガス(Gas)のG
・・「本書で取り上げられる「陰謀説」は、「田中上奏文」(・・いわゆる田中メモランダム) 、張作霖爆殺事件、第二次世界大戦、東京裁判、コミンテルン、CIA、ユダヤ、フリー メーソンといった日本近現代史の定番といった数々である。」
・・「革命の世紀である18世紀は、なによりもベーコンの世紀なのである」(エウジェニオ・ガレン)とイタリア・ルネサンス研究者が言うように、「啓蒙の世紀」でかつ「フリーメーソンの世紀」であった18世紀の西欧。「啓蒙主義」は英語では Enlightenment であり、闇に光をもたらす運動を意味する。17世紀の光と視覚が重視された時代に生きたベーコン自身はメーソンではなかったが、「薔薇十字団運動」とのからみでメーソンにも多大な影響を与えているのである。人類すべてにとって役に立つ科学と技術の重視。ベーコンが繰り返し旧約聖書の「賢者ソロモン王」に言及していることも、その証左といえよう。フリーメーソンは、破壊された「ソロモンの宮殿」の再建築をミッションとしていた。
(2022年1月31日 情報追加)
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