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2022年6月18日土曜日

書評『ロシアの興亡』(河東哲夫、MdN新書、2022)ー「ロシア」を理解したいならこの1冊ともいうべき本

 
 『ロシアの興亡』(河東哲夫、MdN新書、2022)が出版されたので、さっそく読んでみた。今週はじめのことだ。  

ソ連崩壊を予測して現地で体験、最終的にカザフスタン大使を歴任した元外交官で、ロシア通の著者によるロシア本。ロシア語で大河小説を書いて、ロシアで出版した経験の持ち主でもある。 

「ロシア」を理解したいなら、この1冊といっていいだろう。 「ロシア」とカッコ書きで記したのは、いまある現在のロシアだけを見ていては、その全体像が理解できないからだ。

読み出してから知ったが、この本はもともと『ロシア皆伝』というタイトルで2015年に出版された新書の全面改訂版である。どうりで、政治経済と外交から、文学を含めた芸術まですべてをカバーした、凝縮された内容になっているわけだ。 

「ウクライナ戦争」の勃発を踏まえて、あらたに書かれた「はじめに」から、キーワードを含んだフレーズを引きだしておこう。結論ともいえる内容がこれだ。 

 ロシアはいま、歴史の岐路にある。(・・中略・・)中央権力の弱体化がまた露わになるかもしれない。そうなると、ロシア政治の重要な変数であるところの「地方の動き」が問題になってくる。(・・中略・・)中国、インドなどは当面、ロシアを守っているが、ロシアが沈んでいくにつれて、見放していくだろう。(・・中略・・)工業化に遅れ、石油・ガス収入を分け合うだけの社会を、締め付けで維持。それを批判する西側に逆切れしての破れかぶれの愛国主義。周囲は武力で従えようとする。(・・中略・・)自由と民主主義、そして市場経済をベースとする、近代文明の世界に加わる機会を失ったのだ。(・・中略・・) ロシアの歴史は、だから苦難の繰り返し。なかなか進歩しない。ロシアは興亡を繰り返し、「近代」の手前で足踏みを続ける。 

ここでいう「興亡」とは、領土という観点でいえば、拡張と収縮の繰り返しということだ。

これは、そもそもの主発点であるルーシから、13世紀のモンゴルによる支配と、東方正教会の盟主としてビザンツ帝国(=東ローマ帝国)を継承するとして16世紀に名乗った「第3のローマ」17世紀以降の世界史への遅れた登場というロシア史をひもとけば明らかなことだ。 

ロシアは、西欧や日本のような「ネーション・ステート」(=国民国家、民族国家)ではない。本質的に「帝国」なのである。多民族で多宗教の状態。 獲得した領土は、意外なことに、あっけなく手放しもする。「帝国」だからだ。著者の指摘は鋭い。

20世紀以降に限っても、ソ連誕生時点には縮小、第2次世界大戦で拡張、ソ連解体時には縮小と、70年間のあいだだけでも「拡張と収縮」を経験している。 

21世紀の現在、ロシアは間違いなく「衰退過程」にある。みずから引き起こした「ウクライナ戦争」は、それを加速させることなった。自業自得としかいいようがない。 

したがって、さらなる解体と縮小は、歴史を踏まえて考えれば、当然ありうべきことだといって間違いないだろう。 

著者は、この本をこう締めくくっている。「この本は、「ロシア」という存在へ最後の頌歌(しょうか)なのだ」、と。

帯カバーには「プーチン帝国は崩壊する」というキャッチコピーが記されている。だが、著者はこの本では「解体後のロシア」について直接触れていない。読者それぞれが考えるべき応用問題である。 




目 次
はじめに 
第1章 ウクライナ侵略戦争で一変したロシアと世界
第2章 ロシアの興亡ーその面貌
第3章 歴史のトラウマー栄光と悲惨
第4章 異形のロシア経済ー停滞と格差の構造
第5章 ロシア人の実相ー欲望と渇望のシンフォニー
第6章 プーチン政権の内奥ーロシア政治の深層
第7章 ロシアの外交ーその無力、その底力
第8章 日露関係ーすれ違いの200年


著者プロフィール
河東哲夫(かわとう・あきお)
外交評論家/作家。1947年東京生まれ。東京大学教養学部卒業後、1970年外務省入省。ハーバード大学大学院ソ連研究センター、モスクワ大学文学部に留学。外務省東欧課長、文化交流部審議官、在ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベキスタン兼タジキスタン全権大使を歴任。2004年外務省退官。日本政策投資銀行設備投資研究所上席主任研究員を経て、評論活動を始める。東京大学客員教授、早稲田大学客員教授、東京財団上席研究員など歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。


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