先月出版されたばかりの『本当のウクライナー訪問35回以上、指導者たちと直接会ってわかったこと』(岡部芳彦、ワニブックスPLUS新書、2022)を読んだ。
この本は、ウクライナ関連では、入門書としてはもっとも読みやすくて、もっとも信頼できる本だといっていいと思う。
2022年2月24日にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、TVメディアでの出演をつうじてこの人の存在を知った。
神戸学院大学教授なので、東京に拠点をおくTVではリモートでの出演が多いが、過剰になりがちなしゃべりが、やや耳につくものの、ウクライナにかんしてこれほど精通している人がいるとは知らなかった。視聴していてたいへん勉強になる。(過去の放送分は YouTubeでも視聴可能)
この本は、TVメディアには乗りにくいエピソード的な話が満載で、たいへんためになる。内容もじつに興味深い。
「訪問35回以上、指導者たちと直接会ってわかったこと」という副題は、「第5章 誰も知らないウクライナ政界の人物像」にかんするもので、ウクライナ政治と政治指導者たちの人柄の紹介が興味深い。
「第2章 知られざる日宇交流史ーその100年史」は、戦前の日本と満洲では、反ソ反共という観点でウクライナの民族主義者と密接な関係をもっていたことなど、はじめて知る話ばかりだ。なるほど、これは著者である岡部氏の研究テーマでもあるようだ。
「おわりに」では、ウクライナにかんしてロシア発の妄想的で歴史観や陰謀論にだまされないことが重要だと強調している。対ロ制裁よりもニセ情報対策が重要だという主張は、まさにその通りだ。
著者がいうとおり、ウクライナに関心を持ち続けること。これがもっとも重要なことだ。なにか1冊読むなら、まずはすぐに読めるこの本から始めるべきだろう。
目 次はじめに第1章 まだまだ「知られざる大国」のウクライナ第2章 知られざる日宇交流史ーその100年史第3章 誰も知らないウクライナ政界の人物群像第4章 なぜウクライナはロシアに狙われたのかー2014年を境に変わったことと変わらなかったこと第5章 ウクライナ・ロシア戦争ーなぜゼレンスキーは持ちこたえられたのかおわりに
著者プロフィール岡部芳彦(おかべ・よしひこ)1973年9月9日、兵庫県生まれ。神戸学院大学経済学部教授、同国際交流センター所長。博士(歴史学)(中部大学:2021年)、博士(経済学)(神戸学院大学:2015年)。ウクライナ国立農業科学アカデミー外国人会員ウクライナ研究会(国際ウクライナ学会日本支部)会長。主な受賞歴:ウクライナ内閣名誉章(2021年)、ウクライナ最高会議章(2019年)、ウクライナ大統領付属国家行政アカデミー名誉教授(2019年)、ウクライナ国立農業科学アカデミー名誉章(2017年)、名誉博士(ウクライナ国立農業科学アカデミー・アグロエコロジー環境マネジメント研究所第68号、2013年)。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
<関連サイト>
フリホリー・クペツィキーと日本人 ━1937 年のウクライナ民族主義者組織グループ来日とハルビンでの活動(岡部芳彦、神戸学院大学)
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