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2022年7月21日木曜日

書評『GE帝国盛衰史ー「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(トーマス・グリタ/テッド・マン、御立英史訳、ダイヤモンド社、2022)ー 巨大コングロマリット企業の「失敗の本質」。衰退の芽はすでに絶頂期に存在した

 

米国そのものであった巨大コングロマリット企業GE(=ゼネラル・エレクトリック)の没落を膨大な取材をもとに、「ウォールストリートジャーナル」の記者が描いたものだ。 

かつて燦然と輝いていた大企業が、もはや見る影もないほど凋落してしまった理由を知りたい。そう思うのは、帯にあるようにビル・ゲイツもおなじだようだ。かつての GE を知っている人なら、おなじ感想を抱くに違いない。 

原題は、Lights Out : Pride, Delusion, and the Fall of General Electric である。直訳すれば『明かりが消えたープライドと妄想、そしてゼネラル・エレクトリックの没落』となるが、これは米国社会での生活に欠かせなかったGEの「電球」(light bulb)にひっかけたものであろう(・・下掲の米国オリジナル版カバーを参照)。



GE にとって電球といえば、発明王エジソン以来の象徴ともいうべき存在であった。

とはいえ、わたしの周辺にいた在米日本人のあいだでは、「よく切れるGEの電球」としてよく話のネタにしていたものだ(笑) 

品質管理で世界を制した1990年代前半の日本の製造業から見たら、GE はそんな存在でしかなかったわけだ。その日本企業も、かつての輝きを失ってしまったが・・・


カリスマ経営者ジャック・ウェルチという存在

関係者を除いては日本ではあまり存在感のない GE だが、日本のビジネスパーソンのあいだでの知名度が高かったのは、傑出した経営者であったジャック・ウェルチのおかげだろう。 

CEO として GE の絶頂期を実現したウェルチは、「カリスマ経営者」として世界中から礼賛され、日本でもその著書や関連本の翻訳が相次いだものだ。2000年代の前半にGEが広めた「シックス・シグマ」や「ストレッチ」なんていうビジネス用語を覚えている人もいるだろう。 

「選択と集中」というコンセプトを日本企業の流行にしたのも GE の影響だ。ジャック・ウェルチが「業界ナンバー1かナンバー2」以外は不要だとして、事業再編を繰り返して高収益で高株価を実現した戦略である。

電球から始まって冷蔵庫などの家電製品、さらには航空機エンジンや重電分野では原発まで扱っていた GE は、日本でいえば提携先でもあった日立や東芝のような「総合電機企業」をさらに超えた「コングリマリット」(=複合企業)であった。「3・11」で福島第一原発の事故の際に、原発が GE製であることがニュースになった。 

(GEのロゴ 筆記体をモノグラムとして図案化 Wikipediaより)


1990年代のはじめには、まさに 「MBA の教科書」そのものだったGE はハーバード・ビジネススクール(HBS)のケースにも取り上げられていて、MBAの授業では容赦なく人員削減を行う「ニュートロン・ジャック」のビデオを視聴し、クラスディスカッションしたものだ。 


ニューヨーク州の州都圏のスケナクタディはGEの企業城下町

わたしの場合は、ニューヨーク州のGEの企業城下町スケナクタディ(Schenectady)から近い、おなじ州都圏(=キャピタルリージョン)に立地する母校 RPI(=レンセラー工科大学)とは、さまざまな分野で密接な関係があったこともあり、ことさら親近感を感じていたものだ。

スケナクタディには GE の企業研究所(コーポレート・リサーチ・センター)が立地しているので、GE出身者は工学分野ではいうまでもなく、経営学においても在籍していた。戦略策定の教授は、GE本社のストラテジック・プランニング部門の出身者であった。 

これは余談だが、この教授からは、日本に出張して調査研究のため東芝を訪問する予定なので名刺の渡し方を教えて欲しいと、授業中に頼まれたこともある。また、プロジェクトを一緒に組んだ学生の一人は元GEのエンジニアであった。そんな30年前の記憶が映像としてよみがえってきた。


■巨大コングロマリット企業を支えていた金融部門の功罪

そんな GE だが、ジャック・ウェルチの時代から、基本的に総合電機企業でありながら、すでにポートフォリオにおいてウェイトが高くなっていたのが金融部門であった。高収益、高株価を実現していたのは製造部門ではなく、ノンバンクだったのだ。

この状態にかんしては、はたして製造業とのシナジーがどれだけあるのかは、わたしも疑問にかんじていた。金融業と製造業は水と油のようなもので、ビジネス風土も大きく異なる。 

案の定、この巨大化したノンバンクはGE の絶頂期をもたらしただけでなく、制御不能な暴走を招いたすえに、2008年の「リーマンショック」で破綻の瀬戸際まで追い込まれたのである。 

その後の GE は、つねにキャッシュ不足に悩まされながら、ウェルチの後継者となったジェフ・イメルトはノンバンク部門を切り離し製造業中心の構成に戻したものの、ついに株価が回復することなく、再浮上のキッカケをつかめないまま没落するに至る。

本書の後半を読んでいると、まさに日本での提携先であった東芝の命運と重なって見えてくる。 


■GEにおいても「衰退の芽は絶頂期」にあった

問題はすでにジャック・ウェルチ時代の絶頂期に存在していたのである。これは、本書を読むと手に取るようにわかる。「衰退の芽は絶頂期にある」とはよく言われることだが、GEにおいてもまた例外ではなかったわけだ。 

利益捻出のために違法スレスレの会計処理、何層にもおよぶ官僚制、異論を許さないワンマン体制、市場の読み間違い、実質的に機能していなかった取締役会というガバナンス不全、高額な報酬などなど。つまり、なるようにしてなった結末なのだな、と。 

日本語版のカバーは、なんだか黒枠広告のようだが、 GE は解体されたが消滅してしまったわけではない。再建途上にあるわけだが、もはやかつてのようなニュースになることはないだろう。 

この本は、事実関係の記述を中心にしたビジネスもののノンフィクションで、読んでいてワクワクするような内容ではない。だが、後半に入ってくると、巨大コングロマリット企業の衰退が不可避なものであることがわかってきて、がぜん面白くなってくる。 

このテーマに関心のある人は、「失敗の本質」のケーススタディとして、読めば得るものは大きいだろう。 




<関連記事>

・・「企業経営のお手本と賞賛され、国家とほぼ同等の信頼を得ていたアメリカの超巨大企業=GE(General Electric)帝国はなぜ崩壊したのか。かつては大統領専用機エアフォースワンのエンジンから、発電機、家電製品まで手がけ、経営トップのジャック・ウェルチは世界最高の経営者とされてきた。ジャック・ウェルチは本当に世界最高の経営者だったのか? 後を継いだジェフ・イメルトは本当に優れた経営者だったのか? 超巨大組織の“崩壊”の内実を明らかにした『GE帝国盛衰史』を早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授とテレビ東京の豊島晋作が読み解く。」

・・新著『パワーカット― あるアメリカの象徴の盛衰』でGEの没落について分析している金融ジャーナリストのウィリアム・D・コーハンは、「GEは2021年11月、医療機器・電力・航空機エンジンの3事業に分社化すると発表した。今後をどう予測するか」という質問に対して、「いずれの事業も他社に買収され、GEは近い将来に消滅するのではないか。3事業は分割後、来年と再来年に上場予定だ。いつでも、誰でも買収可能になる。3つとも各分野の最大手級で、競合企業やプライベート・エクイティ・ファンドに狙われるはずだ」と答えている。

(項目新設 2022年12月2日)
(情報追加 2022年12月6日)


<ブログ内関連記事>


・・ニューヨーク州の州都オルバニーとトロイ、スケナクタディが州都圏(=キャピタルリージョン)である


・・東芝にいた西堀栄三郎博士は品質管理の専門家で、GEのスケナクタディの企業研究所を訪問している。この話はその著書『技士道』にでてくる

・・GEのジャック・ウェルチばりの「選択と集中」というキャッチフレーズのもと、大胆な事業構造改革を断行したのが西田厚聰(にしだ・あつとし)氏は、結果として東芝衰退の「戦犯」となった



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