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2022年7月13日水曜日

書評『戦争はいかに終結したか ー 二度の大戦からベトナム、イラクまで』(千々石泰明、中公新書、2021)ー 戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい

 
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が2022年2月24日始まってから、すでに4ヶ月を経過している。

やはり、短期間での終結は難しかったのだ。戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。 

「1日も早く戦争が終わってほしい」という思いは、当事者も含めて正直な気持ちだろう。

戦争が長引くのは、侵略側にとっては誤算だし、侵略された側にとっても、いつまで抗戦を持続できるか不透明だからだ。 

昨年、米軍がアフガニスタンから撤退したが、撤退のドタバタのさなかの7月に『戦争はいかに終結したかー二度の大戦からベトナム、イラクまで』(千々石泰明、中公新書、2021)という本が出版された。これはまさに時宜を得た出版だなと思って購入しておいたが、なかなか読むヒマがなかった。 

そうこうしているうちに、「ウクライナ戦争」が勃発し、現在進行中の戦争をいかに終結させるかが、まさに喫緊の課題となったのである。先月終わりにようやく読み終えたが、戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しいと、あらためて強く痛感している次第だ。 

戦争の勃発について書かれた本は、それこそ無数にあるが、戦争がどう終結したかについての本は意外と少ない。 

おそらく今回のウクライナ戦争も、始まりは衝撃的だったが、時間の経過につれて見ている方にとっても慣れが生じて、関心の度合いがだんだんと減少していくのだろう。ソ連による「アフガン侵攻」も衝撃的なニュースであったが、それがどのように終わったのか、あまり語られることはない。 

防衛省防衛研究所の主任研究官による本書は、20世紀になってからの大きな戦争について、もっぱらその終結に至るプロセスをケーススタディとして記述した歴史書である。 

第1次大戦以降に始まり、第2次世界大戦(欧州/アジア)、朝鮮戦争とベトナム戦争、米国の主導による2つの湾岸戦争(湾岸戦争とイラク戦争)とアフガン戦争を扱っている。


「戦争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のどちらを重視するか

読んでいて思うのは、戦争の終わらせ方は、そう簡単なものではないということだ。妥協を重視して停戦を急いだ結果、将来に禍根を残して戦争がふたたび勃発することは多い。 

将来の禍根を断つため、(勝者の立場からだが)徹底的に完膚なきまでまでたたきのめす場合は、交戦国の双方に多大な損害と犠牲を発生させる。 

著者は、「序章 戦争終結への視角」と題して、戦争終結にかんする理論的フレームワークを設定している。それは、「戦争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のどちらを重視するかという視点である。 

実際の戦争は、このトレードオフの関係にある両極端のあいだでグラデーションを描いているわけだが、このようなフレームワークで整理すると、本質がよく見えてくる。ただし、いずれも勝者の側からみたものだ。 

具体的に事例をあてはめれば、「戦争原因の根本的解決」を重視したのが、第2次世界大戦(欧州)とイラク戦争(=第2次湾岸戦争)であり、勝者の側も犠牲に耐えきれず「妥協的和平」を重視したのが、朝鮮戦争とベトナム戦争である。 

「戦争原因の根本的解決」を徹底できなかったのが、第1次世界大戦と第2次世界大戦(アジア)である。

この見方によれば、第1次世界大戦では徹底的に問題解決されなかったために、結局は20年後に第2次世界大戦という惨事を招いたことがよく理解できるし、なぜアジアで緊張状態が続いてきたかも理解できるのである。


■問題の根っこを絶ったとしても、未来永劫に保証されるわけではない

読んでいて思ったのは、たとえ将来に禍根を残さないように問題の根っこを絶ったとしても、未来永劫にわたって問題が発生しないわけではないということだ。 

問題の根っこを絶つという、そのタイムフレームはあくまでも主観的なものだ。四半世紀かもしれないし、半世紀を想定しているのかもしれない。いずれにしせよ、勝者の側に主観に過ぎない。

戦争原因となっている問題そのものを当事者がどう解釈するか、その解釈の仕方はさまざまなファクターによって左右されるのであり、決まり切った解などないのである。 

第2次世界大戦によって実現された米国主導の戦後体制だが、戦争終結から70年もたてばほころびが見えてくる。時間の経過とともに戦争当事国をめぐる環境が変化してくるのは、ある意味では当然のことだ。つまり、時間軸の議論が重要なのだが、残念なことに本書ではそういった観点が欠けている。 

とはいえ、戦争の終結のあり方について考えるために、重要な視点を与えてくれる本である。戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しいのである以上、本書で展開された議論をアタマのなかに入れて世界情勢を見る必要がある。





目 次
はしがき 
序章 戦争終結への視角ー「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマ
第1章 第一次世界大戦ー「勝利なき平和」か、懲罰的和平か
第2章 第二次世界大戦 “ヨーロッパ” ー無条件降伏政策の貫徹
第3章 第二次世界大戦 “アジア太平洋” ー「幻想の外交」の悲劇
第4章 朝鮮戦争-「勝利にかわるもの」を求めて
第5章 ベトナム戦争ー終幕をひかえた離脱
第6章 湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争ー共存から打倒へ
終章 教訓と出口戦略-日本の安全保障への示唆
あとがき
主要参考文献
 

著者プロフィール
千々和泰明(ちじわ・やすあき)
1978年生まれ。福岡県出身。2001年、広島大学法学部卒業。2007年、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。ジョージ・ワシントン大学アジア研究センター留学、京都大学大学院法学研究科COE研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)、防衛省防衛研究所教官、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て、2013年より防衛省防衛研究所主任研究官。この間、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。国際安全保障学会最優秀新人論文賞受賞。国際安全保障学会理事。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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