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2022年7月14日木曜日

書評『現代ロシアの軍事戦略』(小泉悠、ちくま新書、2021)ー ロシアの軍事戦略を理解することは、日本人にとってきわめて重要だ

 
 昨年5月に出版されたが、読む機会を失したままになっていた『現代ロシアの軍事戦略』(小泉悠、ちくま新書、2021)をようやく読了。 先月終わりのことだ。

本というものは、読むタイミングも重要であるが、ロシアが無謀な戦争に突入して、ロシア軍が抱える問題が明るみになった現時点で読んでも、価値が失われていないことを確認した。

2022年2月24日に、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから、本書はベストセラーになっている。各種のメディアで引っ張りだことなっている著者によるものだからだろう。 

TV や YouTube などでの冷静な語り口と同様、本書もまた理路整然とした筆致が読んでいて心地よい扱っている対象が対象だけに、バランスのとれた冷静な姿勢はきわめて重要だ。 


そのスイッチを押したのは、言うまでもなくロシアであるが、小泉氏の前著『「帝国」ロシアの地政学-「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019)で指摘されているように、ロシアはウクライナをみずからの「勢力圏」とみなす主観的な「世界観」をもっている。  

NATOがついに「勢力圏」であるウクライナに手を突っ込んできたと見なしたプーチンにとって、軍事侵攻は、ある意味では当然のリアクションだったのかもしれない。 

だが、第三者的に見たら、中国がベトナムを膺懲(ようちょう)するとして開始した、1979年の「中越戦争」を想起してしまう。手痛い失敗に終わったこの戦争で、人民解放軍の弱さが世界中にさらされる結果となった(・・ただし、この失敗を契機に鄧小平は軍制改革に踏み切った)。 


■ロシアの軍事戦略は古典的なクラウゼヴィッツ型+非クラウゼヴィッツ型

さて、『現代ロシアの軍事戦略』に話を戻すが、第1章から第3章までは、2014年の「クリミア侵攻」にはじまった「ハイブリッド戦争」について論じている。 

その鮮やかな占領ぶりは世界中をあっと言わせたのであり、「ハイブリッド戦争」こそロシアのあたらしい軍事戦略と見なされるようになったのだが、はたしてこれがロシアの軍事戦略のあたらしい方向なのかどうか、について検証している。 

「ウクライナ戦争」は、ロシアの軍事ドクトリンにおいては「地域戦争」と位置づけられるもののようだが、ロシアは第2次世界大戦以後は独ソ戦のような大規模戦争を戦っていない。 この事実はきわめて重要だ。

もし仮に「ウクライナ戦争」が「地域戦争」から拡大して大規模化した場合、ロシアは「大規模戦争」をどう戦うことになるのか? 

著者は2008年以降のロシア軍の「軍事演習」を分析することで、いかなる軍事戦略をとるのかを推測している。この第4章は、いろんな意味で読んでいて興味深い。 

ロシアの軍事戦略は、基本的にクラウゼヴィッツ的な古典的な通常戦を中核としながら、非クラウゼヴィッツ的なハイブリッド戦争的要素をあくまでも補助機能として用いている。これが、本書における著者の結論だ。 

ウクライナ戦争において、ロシアが古典的ともいえる通常戦を遂行していることで、この結論は実証されたことになる。 とはいえ、ロシアは通常戦の展開で大失態をさらすことになってしまった。この事実をどう解釈するか、これは今後の課題となる。 

NATOを中核とする西側諸国に対しては、経済的にも軍事的にも劣勢に立ち、核攻撃能力など一部の分野を除けば、軍事的な優位性をもたない現在のロシアではあるが、ウクライナ戦争の推移を見てロシアは弱いときめつけるのは時期尚早だろう。 

「ロシアは見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」というビスマルクのことばを想起しなくてはならない。 

「権威主義国家」のロシアは、「西側」からの脅威につねにさらされているとして、その主観的認識においては「永続戦争」を戦いつづけているのである。通常戦に発展しないまでも、サイバー戦も含めたハイブリッド戦争が、今後も継続されると覚悟するべきだろう。 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を機に、「西側」に属する国家としての位置づけを明確にした日本は、したがってロシアからみたら「敵国」と位置づけられることになった。 敵を知り己を知らば百戦殆(あや)うからず。ロシアについては、今後も正確な情勢把握が必要であることは言うまでもない。 

ロシアの軍事戦略を、軍事オタクとしての狭くて深い知識と、軍事研究者としての幅広い視野で分析をつづけている小泉氏は、じつにユニークな存在だ。今後も時の政治情勢に忖度することなく、精緻な分析と的確な発言を期待したい。 

軍事マターにおいて重要なのは、リアリズムとプラグマティズムである。 
  
  


目 次
はじめにー不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章 現代ロシアの軍事思想ー「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
第4章 ロシアが備える未来の戦争
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
おわりにー2020年代を見通す
あとがきーオタクと研究者の間で
参考文献


著者プロフィール
小泉悠(こいずみ・ゆう)
1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)特任助教。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)等。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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