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2023年1月13日金曜日

書評『「ネオ・チャイナリスク」研究 ー ヘゲモニーなき世界の支配構造』(柯隆、慶應義塾大学出版会、2021)ー 中国人エコノミストがみる経済を越えたチャイナリスク

 
『「ネオ・チャイナリスク」研究 ー ヘゲモニーなき世界の支配構造』(柯隆、慶應義塾大学出版会、2021)を読んだ。中国人エコノミストがみる、経済を越えたチャイナリスクにかんする本である。  

柯隆(か・りゅう)氏は、1963年南京生まれ。1988年に大学入学のため来日して以来、日本を拠点に研究活動をつづけているエコノミストである。メディアへの出演も少なくない。 

「ネオ・チャイナリスク」というのは、従来からある中国ビジネス実行上のリスクではない、あらたなリスクが浮上しているからだ。世界が中国を危険視していることから生じるリスクである。これに対して、過剰とも思える反応を示している中国共産党が中国の経済と社会にもたらすリスクである。 

「改革開放」から40年、急激に膨張した中国経済、それにともなって急激に変化した中国社会。社会の変化は外面的なものが可視化されているが、人びとの心の内面の変化もきわめて大きい。 

市場経済化したものの、あくまでも中国共産党の指導下の「社会主義市場経済」であり、共産党による恣意的な介入をともなうものであり、しかも言論の自由はない。これらの点については、あえてここに列挙する必要もないであろう。 

著者は、本書では経済をもっぱら制度面から考察し、1919年の五・四運動からはじまる中国現代史を踏まえた中国の政治経済と社会について分析を行っている。 

わたしは著者とはほぼ同世代だが、生まれ育った環境はまったく異なる。著者の少年時代は毛沢東の時代であり、毛沢東死後の激動の時代を過ごしてきた人だ。それだけに、日本語による著作であるが、中国を視る目は日本人とは異なるものがある。 

毛沢東に対してはきわめて批判的だ。周恩来に対しても同様だ。鄧小平は、あくまでも改革開放にただ乗りした存在だとみなす。

改革を実行したのは趙紫陽であり(それゆえに天安門事件で排除された)、WTO加盟にこぎつけた朱鎔基首相(当時)である。改革を停滞させた胡錦濤に対しても批判的だ。 

習近平氏は1953年生まれの現在69歳。世代的には「文革世代」であり「紅衛兵世代」である(・・ただし、本人は紅衛兵にはなれなかった)。高等教育を受ける機会を奪われた、いちじるしく基本的な教養を欠いている世代である。かれの取り巻きもまた同様だ。

市場経済にかんする理解も高くはなさそうだ。 これに対して、1980年代、とくに1990年代以降に生まれた中国人は情報化時代の世代であり、おなじ中国人とはいえ、まったく異なる存在といっていいのである。

それほど、この40年間の中国社会は激変しているのである。だから、あたらしい世代が指導層につくまで期待できないと著者はいう。それまでは、過去の蓄積を食いつぶしていくことになるのであろう。 

著者とは生まれた場所は異なるが、わたしもTV放送をつうじて毛沢東や、江青女史など五人組の問題を同時代的に知っている世代であり、1972年の「日中国交回復」を小学生としてリアルタイムで体験している。この本を読みながら、あの時代のことを思い出しながら読んでいた。

中国社会の激変ぶりは日本の比ではない。あまりにもブレが大きすぎるのだ。 あまりにも変化しているだけでない。政策のブレが大きすぎる

日本に活動拠点を置いている著者だが、中国人として、中国には世界から尊敬される存在になってほしいという思いが強いのだろう。だからこそ、現状の悪化する情勢に対しては批判的にならざるを得ないのであろう。 

著者の本を読むのは初めてだが、短文を並べていくような文体には、なかなか慣れないものを感じた。日本語は著者の母語ではないからだろうが、こなれた日本語ではなく、なんだか中国語を日本語化したものを読んでいるような感じだった。 

とはいえ、ところどころ漏らされる著者の感想が面白い。おなじ漢字表現をつかっていても日中でニュアンスが異なること、「理」にこだわる日本人と「情」で動く中国人など、日中双方を熟知している著者ならではの面白い指摘がある。 




目 次
序章 中国の台頭と「ネオ・チャイナリスク」の浮上
第Ⅰ部 「チャイナリスク」の再定義
 第1章 変化する「チャイナリスク」の意味
 第2章 リスクを生み出す既存制度の脆弱性
第Ⅱ部 新しいチャイナリスクの諸相
 第3章 チャイナリスクの制度分析 
 第4章 韜光養晦から「戦狼」外交への展開 
 第5章 経済自由化と国家資本主義 ― 国有企業戦略の光と影 
 第6章 IT・先端技術大国化への道 
第Ⅲ部 取り残される旧態部分 
 第7章 二極化で置き去りにされる階層 
 第8章 自由なきところに文化は育たず 
 第9章 「改革すべきでない改革」とは何か 
 第10章 「赤い帝国」の興亡
終章 中国民主化への道程とネオ・チャイナリスクの行方 
あとがき 
参考文献

著者プロフィール
柯隆(か・りゅう)
1963年、中国・南京市生まれ。1988年来日、愛知大学法経学部入学。1992年、同大学卒業。1994年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)、長銀総研入所。1998年、富士通総研経済研究所へ移籍。2006年より同研究所主席研究員。2018年、東京財団政策研究所へ移籍、現在、同研究所主席研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授、多摩大学大学院客員教授、国際経済交流財団(JEF)Japan Spotlight 編集委員を兼務。この間、財務省関税外国為替等審議会委員、財務政策総合研究所中国研究会委員、JETROアジア経済研究所業績評価委員、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員、広島経済大学特別客員教授等を歴任。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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