先の「第20回党大会」で選出された「チャイナ・セブン」(・・遠藤氏の造語で中国共産党の最高指導部の「政治局常務委員7人」のこと)の分析から始まる。
今回はじめて選出された丁薛祥(てい・せつしょう)氏という人物に注目すべきとの指摘が重要。習近平の科学技術政策の懐刀のような存在のようだ。ことし60歳ともっとも若いメンバーであり、この人物の登用に要注目というわけだ。
これに関連して、中国の宇宙開発について1章が割かれて「第4章 決戦場は宇宙にー中国宇宙ステーション稼働」も要注目。この件にかんしては、遠藤氏は前々から注意喚起しているが、日本人はもっと重大な関心をもつべきだ。
それ以外の項目にかんしては、是々非々と読み取るべきだろう。 経済と制度分析にかんしては本職のエコノミストの見解を、ただし中国人のマインドや行動、中国共産党の内在的論理にかんしては、さすが遠藤氏はその経歴からいって、日本人のなかではピカイチと受け止めるべきだろう。
中国問題は、新型コロナ感染症対策としてのロックダウンが突然解除されるなど、時々刻々と変化しているので、その点はリアルタイムで追っていく必要はある。
だが、変わらない本質への理解を欠いていては、表面をなぞるだけで誤った認識をもってしまいがちだ。 いかにもわかりやすい説明には、眉につばつけて批判的に接しなくてはならない。何人か複数の専門家を選んで、その見解をウオッチしつづけることが必要だ。
「日本人にだけ通じる中国論」から脱却しようという、遠藤氏の提言には全面的に賛成だが、その遠藤氏の発言も当然のことながらすべてを鵜呑みにしないことが重要だ。
目 次はじめに第1章 習近平と新チャイナ・セブン第2章 習近平はなぜ三期目を狙ったのか その1:父の仇を討つために鄧小平を乗り越える第3章 習近平はなぜ三期目を狙ったのか その2:アメリカに潰されるな!第4章 決戦場は宇宙にー中国宇宙ステーション稼働第5章 ゼロコロナ政策を解除すると死者多数第6章 習近平が抱える中国の国内諸問題第7章 習近平外交とロシア・リスクおわりにー「日本人にだけ通じる中国論」から脱却しよう
著者プロフィール遠藤 誉(えんどう・ほまれ)中国問題グローバル研究所所長。 1941年中国吉林省長春市生まれ。国共内戦を決した「長春食糧封鎖」を経験し、1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『卡子(チャーズ)中国建国の残火』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(白井一成との共著)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』など多数。
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