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2023年9月25日月曜日

書評『そして人生は続く あるペルシャ系ユダヤ人の半生(ブックレット《アジアを学ぼう》別巻⑬』(辻圭秀、風響社、2017)ー 1979年の「イラン革命後」の「イラン・イラク戦争」を機にイスラエルに移住した女性もまた「同時代人」である

 

1979年の「イラン・イスラーム革命」以降、イランと米国は断交し、イランとイスラエルの関係はきわめて悪い

そんな状態がつづくなか、ユダヤ人の状況はどうなっているのか。そいえば、この本があったなと思い出して読んでみることにした。

******

イスラエルを中心に中東研究を行っている研究者が、6年におよぶイスラエル滞在中に出会って親しくなった「あるペルシャ系ユダヤ人」への聞き取りの記録である。

「ユダヤ系イラン人」として生まれ育ち、革命後の「イラン・イラク戦争」のなかユダヤ人の夫が徴兵される危険を感じたため、夫婦で子どもと一緒に命からがら脱出した女性。 

「乳と蜜の流れる約束の土地」であったはずのイスラエル。移住してからわかったのは、中東欧を中心にしたヨーロッパ出身のアシュケナージ系ユダヤ人が支配的なイスラエルでは、中東出身のミズラーヒは二級市民扱いされることに、いやがおうでも気がつくことになる。

ヘブライ語起源で、イディッシュ経由でアメリカ英語にもなった「フツパ」(chutzpah)ということばがある。

「ど根性」といえばポジティブな響きがあるが、「ど厚かましい」という意味においてはネガティブにも響く。世界中どこにいってもイスラエル人のバックパッカーがいるが、たしかにずうずうしいという印象が強く、ネガティブに感じている。

その「フツパ」に象徴されるイスラエル文化への「同化」に困難を感じ、この女性においても「ペルシア系」としてのアイデンティティが浮上してきたという。中東の伝統文化との違いがあまりにも大きいからだ。

*****

さまざまなテーマに質問がてんこもりだが、面白いと思ったものをいくつかピックアップしておこう。

おなじユダヤ系といっても、生まれ育った古都イスファハンと首都テヘランとの違い。8世紀からつづくユダヤ人コミュニティで生まれ育ったこの女性は、ユダヤ人としてのアイデンティティとともに、中東の伝統文化にどっぷり漬かって育っている。まるで明治時代の日本人のようだ。

イランといえば「詩の国」であるが。この女性もまた、ハーフェズ、サアディー、ルーミー、フェルドゥースィーといった全盛期のペルシア詩人たちの詩を暗唱してきた。イスラエルに移住してから、本格的にペルシア音楽を学び始めたという。

面白いことに、ペルシア音楽の担い手はユダヤ人とアルメニア人だという。イスラームが音楽を「ハラーム」(禁止)としていることもあって(・・アフガンをふたたび制圧したタリバーンを見よ)、音楽家の地位はきわめて低い。現在のイランでもユダヤ系音楽家は尊敬されているという。

「イラン革命」前後については、最初はまず共産主義運動から始まり、最終的にイスラーム主導の革命に変化したという。

ホメイニ師は「啓典の民」(ズィンミー)であるとしてユダヤ教徒、キリスト教徒の身の安全を保証した(・・これはオスマン帝国とおなじだ)。だが、バハーイー教徒に対しては過酷な弾圧が行われていたらしい。


「イスラエルはエジプトと政府レベルでは関係良好、民衆レベルでは関係最悪。イランは政府レベルでは関係最悪、民衆レベルでは関係良好」という発言を親しい友人から聞いたと著者が書いている。なるほどと納得。国家間関係と民衆意識は別物である。

*****

それにしても驚くのは、1963年生まれのこのユダヤ人女性は、少女時代に「イスラエルという国の存在」を知らなかっただけでなく、イスラエルに移住するまで「ホロコーストのことを知らなかった」のだという。それを聞いたイスラエル人もまた驚いたのだとか。

われわれにとって「常識」となっていることも、かならずしも「常識」ではないということだ。世界は広くて多様性に富んでいる。この「ペルシャ系ユダヤ人」もまた、その一例に過ぎないのである。




目 次 
はじめに
1 本書の理解のために
 1 中東系ユダヤ人小史
 2 イラン・ユダヤ・イスラエル
2 革命前のイランに生まれて
 1 エスファハーンとユダヤ人
 2 家族・学校・言語
 3 ムスリムの学校に編入
 4 差別・反ユダヤ主義
 5 音楽
3 革命、戦争、そして脱出
 1 革命
 2 戦争と結婚
 3 脱出を決意する
 4 闇に潜んで山を越える
4 乳と蜜の流れる約束の地にて
 1 移民収容センターにて
 2 ヘブライ語のクラスにて
 3 イスラエル社会に飛び込む
 4 ユダヤ系イラン人から、ペルシャ系ユダヤ人に
おわりに
注・参考文献
あとがき

著者プロフィール
辻圭秋(つじ・よしあき)
1983年、大阪府八尾市生まれ。同志社大学神学研究科博士課程単位取得満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
 



<関連サイト>




<ブログ内関連記事>

・・『見えざるユダヤ人-イスラエルの<東洋>-』(平凡社選書、1998)は、中東イスラーム世界出身のユダヤ人であるミズラヒームの存在について、日本語でよめる書籍としてはじめて焦点をあてた先駆的かつ貴重な本である。



・・類書にはめずらしくイスラーム統治下の中世ユダヤ人社会について取り上げている

・・オスマン帝国はイベリア半島から追放されたセファルディム系ユダヤ人を大量に受け入れた


・・ソ連崩壊後にロシアからイスラエルへ移住した中高年夫婦

・・エジプトでイスラエルがどう見られているか、カイロ大学に1993年から1995年まで実際に在籍していたジャーナリストが体験談をもとに具体的に書かれている




(2023年11月7日 情報追加)


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