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2026年3月10日火曜日

重版出来! 『超訳 自省録』(マルクス・アウレリウス、佐藤けんいち編訳、ディスカヴァリー・トゥエンティワン、2021)が「16刷」で「6万部」に!(2026年3月10日)

 


おお、重版出来! 2026年1月26日付けで「第16刷」となりました。 ありがとうございます。皆様のおかげです。

2020年代の日本でも「ストア派哲学」が市民権を得てきたようです。 

今回の増刷で、紙の本だけで「6万部」に到達! (・・・電子書籍版のダウンロード数は含まれてません) 。

いよいよ「10万部」への道が見えてきたな、と。 

「10万部」はいつの日に実現するかわかりませんが、その日がかならず来ることを願っております。 



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2026年3月8日日曜日

『物語 イランの歴史 ― 誇り高きペルシアの系譜』(宮田律、中公新書、2002)を読んで、「古代帝国の栄光」と「屈辱の近代史」がイランのナショナリズムを支えていること、イラン人に「救世主願望」があることを知る

 

 2026年2月28日に開始されたイスラエルと米国のイランイスラーム共和国に対する共同軍事作戦は、すでに2週間目に突入している。  

中東湾岸諸国とは違って、戦争の直接被害を受けない東アジアの日本であるが、ホルムズ海峡の実質的封鎖にとなう石油価格上昇など、経済面を中心に間接的な影響が出始めている。 

イランと米国、イランとイスラエルの敵対関係は、古くて新しい話ではあるが、「レジーム・チェンジ」すなわち現在のイスラーム共和国体制が転覆されるのか否か、現時点ではまだ見通しはつけにくい。 

さまざまな識者がイラン情勢について語っており、わたしも YouTube では日本語情報だけでなく、米英以外の英語情報も視聴しているが、偏向のはなはだしいオールドメディアだけでなく、当然のことながらネット情報にかんしてもポジショントークからは距離を取るように努めている。 


■イランの内在的に考えるため歴史を振り返ってみる 

現在進行中の問題を考えるにあたっては、いったん距離をおいて過去の歴史を振り返ってみるのがよい。 

先日は『イラン現代史 ― イスラーム革命から核問題、対イスラエル戦争まで』(黒田賢治、中公新書、2025)という本を読んで、1979年のイスラーム革命前後から2020年代の現在にいたる歴史を振り返ってみた。 

だが、イランにかんしては、イスラーム革命以前についても見取り図をもっていたほうがいい。そう考えて『物語 イランの歴史  ―  誇り高きペルシアの系譜』(宮田律、中公新書、2002)を書棚から引っ張り出してきた。 

購入してから、なんと24年(!)たってはじめて通読してみたが、これは面白い本であった。在外イラン人の事情にも詳しい、イラン通のイスラーム研究者による本書で、歴史をつうじて形成されてきたイラン人の日常生活とホンネ、そしてメンタリティーが手に取るように理解できるのだ。 

もちろん、四半世紀も前の記述なので「終章 イランはどこに向かうのか?」は、さすがに現時点でアウト・オブ・デイトになっている。とはいえ、その章の副題にある「イスラームからイラン・ナショナリズムへ」は、現在のイランを考えるにあたって、じつに示唆に富む。 

というのも2002年ですでに、シーア派による神聖国家の体制に違和感を感じているイラン人は、宗教的な規制を押しつけてくる抑圧的な権威主義に反発を感じているのである。イスラーム的な普遍性よりも、ナショナリズムに拠り所を求めるようになってきているのである。 

イランのナショナリズムを支えているのは、ペルシア語は言うまでもないが、アケメネス朝やササーン朝などの古代ペルシア帝国の栄光の歴史である。一方、19世紀以降は近代化に遅れをとり、英国やロシアによって半植民地化された屈辱の歴史の裏返しの感情に起因するものだ。 

古代ペルシア帝国以来、イランは5000年以上にわたって官僚制によって成り立っていた国である。古代においては、西アジアにおける先進文明の担い手として周辺地域に影響をあたえており、その点では3000年の歴史をもつ東アジアにおける中国とよく似ているというべきだろう。 

イラン国民(・・ただし、本書では記述がないがイランは多民族国家でありペルシア系は6割程度である)は、プライドの高い誇り高き人びとなのである。アラブやトルコなど周辺諸民族に対して優越感を抱いている。 

そんなイラン国民であるが、抑圧的な状況下での苦難がつづくと「救世主願望」が表面化してくる。これは歴史をつうじてなんども繰り返されている現象だ。 

救世主願望は、メンタリーとしてある意味では他律的であり、結果として独裁者を招きかねない(・・イソップのカエルの寓話を想起)。イスラーム化される以前の支配宗教であったゾロアスター教が、ペルシア系イラン人の精神の基層部分にあるためかもしれない。 


■トランプは「救世主」となりうるか?

イランの歴史を振り返って見てくると、つぎのようなことを考えてみたくなる。 

今回のイランに対する軍事作戦を主導しているイスラエルと米国であるが、トランプ大統領はイラン国民にとっての「救世主」となるのだろうか、という問いだ。 

現時点では、地上軍派遣は行わない(・・カーター政権時代、米軍はアメリカ大使館人質救出作戦で大失敗している)、体制転換までは行うが、そこから先はイラン国民がやるべきことだ、と賢明にもトランプ氏は明言している。

宿敵とみなしてきたイラン・イスラーム体制との最終戦と位置づけ、長期戦も辞さない覚悟のイスラエルに引きずられることなく、名目はなんであれ戦争を早期に終結させることができれば、トランプ氏は「救世主」として評価されることになるかもしれない。

あるいは、「救世主」ではなくても、そのキッカケをつくった存在として評価されることになるかもしれない。仮にそうだとしても、その後のイラン再建は困難な道筋をたどることになるのではないか? 

いずれにせよ、戦争が膠着化して長期化しないことを望むばかりだ。イラン情勢は中東情勢にとどまることなく、今後の東アジア情勢にも大きな影響をあたえるからだ。東アジアで米軍の兵力が手薄となり、そのプレゼンスが低下することは、日本の安全保障にも大きな悪影響を及ぼすことになる。 

おなじアジアの国として共通性もあることもあって、イランとは長きにわたって良好な関係を保ってきた日本ではあるが(・・もちろん正倉院の話をしているのではなく、近代以降の話に限定する)、「台湾有事」を視野に入れると、米国との関係はなかなかむずかしいものがある。 

西アジアの地域大国としてのイランは、たかだか建国250年の米国とは違って、古代においては先進文明としての帝国であった。

レジーム・チェンジ(=体制転換)が実現するかどうかはわからないが、栄光の歴史を背景にもつイラン国民のナショナリズムは、いかなる方向にイランを導いていくのだろうか? 


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目 次
序章 イラン人の日常生活と文化 
第1章 ペルシア帝国の栄光とイラン文化の形成 
第2章 イラン文明のイスラームとの融合 
第3章 西欧帝国主義との出会いと宗教社会 
第4章 民族運動の台頭と挫折 
第5章 イラン‐アメリカ相互不信の背景 
第6章 イランの伝統文化の探求 
第7章 模索するイランのイスラーム 
終章 イランはどこへ向かうのか? ―  イスラームからイラン・ナショナリズムへ あとがき 参考文献/イラン略年表 


著者プロフィール
宮田 律(みやた・おさむ) 
1955年生まれ。専門は、現代イスラム地域研究・途上国の国際政治・イラン現代史・イラン現代政治。慶應義塾大学文学部史学課卒業。学位は、歴史学修士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校・1985年)。一般社団法人現代イスラム研究センター理事長。現代のイスラム主義の運動、過激派の世界観と活動、米国の中東イスラム政策、米国の軍産複合体、日本と中東イスラム世界の関係、中村哲医師の活動など平和創造の在り方、オリエント世界を中心とする世界史、ナショナリズムの世界史的発展、中東イスラム世界の文化と現代世界など幅広い分野で数々の著作がある。(Wikipediaより) 



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・・「救世主願望」を生み出したイラン高原とゾロアスター教

・・「勝たなくても負けなければいい」 これはベトコンが長年にわたるゲリラ戦を勝ち抜いた哲学である。」➡ イランもまた同様に考えているのではないか?


■イランと米国の関係


■イランとイスラエルの関係



■日本とイランの関係






(2026年3月11日 情報追加)


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2026年3月1日日曜日

書評『ボヘミアでなぜ「先駆的」宗教改革が起こったのか ― フス派戦争(世界史のリテラシー)』(薩摩秀登、NHK出版、2026)― 巨大組織を内部から改革しようとしたが挫折した男。その生涯と後世の評価の変遷】

 


著者の薩摩氏は、チェコの歴史にかんしては第一人者で著書も多い。わたしにとっては大学学部時代のヨーロッパ中世史のゼミの先輩で、当時は大学院生だったこともあり、親しく接していた人でもある。

NHK出版の「世界史のリテラシー」は、世界史を学んだ人が抱くであろう疑問に、専門歴史家がその知見を一般読者向けに語りかける内容のシリーズだ。 

「宗教改革」というとルター、そしてカルヴァンというのが、世界史を学んだ人の模範的回答であろう。いずれも16世紀の西洋人だ。 

だが、ルターには先行者がいたのである。それが本書のテーマであるヤン・フスである。15世紀のボヘミア(現在のチェコ)の人だ。ルターもカトリックの修道士だったが、フスもまたカトリックの聖職者で説教者だった。いずれも組織内部の人であった。 

フスは、イングランドのウィクリフの影響でカトリック改革を志したが、抱き込まれることを拒絶し自分の信念を貫いた。そのため破門されたうえ、最終的には火刑に処されることになる。 

ビジネスパーソンの立場から言い換えれば、「(カトリック教会)という巨大組織を内部から改革しようとしたが挫折した男」、そういう位置づけも可能だろう。 

イングランドもボヘミア(現在のチェコ)も、西欧カトリック世界の「辺境」だったことが興味深い。変革はつねに「周縁」から始まって「中心」に向かっていくのである。これはどんな組織にも共通している。 

わたし的には、フスの改革思想と実践、その意思を引き継いだフス派の闘争もさることながら、その後のチェコの歴史のなかでフスがどう位置づけられてきたかに関心がある。

 第一次世界大戦後にチェコスロヴァキアとして独立したものの、最終的に1993年に分離して単一国家となったチェコだが、神聖ローマ帝国(≓ハプスブルク帝国)や社会主義国家ソ連という外部勢力の支配下にあった歴史をもつ。 

19世紀から始まったナショナリズムの勃興期には、フスは「民族の英雄」として礼賛され、20世紀末にはカトリック教会から事実上の教会改革者であったと認められ、名誉回復されることになる。ところが、21世紀の現在では、チェコ人のフス熱は冷めてしまっているらしい。 

歴史上の人物をどう評価し、ただしく位置づけるかという課題は、つねに「現在」にかかわるテーマである。

かつてあれほど礼賛されてロシア革命もフランス革命も、現在では手放しで礼賛する者は少ない。フスについても同様だ。

コンテクスト(=文脈)によって解釈は変化する。 歴史というものは、「事実」とその「解釈」で成り立つ「ストーリー」であることを、あらためて肝に銘ずるべきである。つねに書き替えられる運命にあるのだ。


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目 次
はじめに 
第1章 事件の全容 フスは何を主張し、フス派は何のために戦ったのか? 
第2章 事件の歴史的・宗教的背景 なぜ、中世後期最大の教会改革運動がボヘミアで起こったのか? 
第3章 同時代へのインパクト フス派の運動は、「早すぎた宗教改革」だったのか? 
第4章 後世に与えた影響 フスやフス派は我々に何を語っているのか? 
おわりに 
参考文献

著者プロフィール
薩摩秀登(さつま・ひでと) 
明治大学経営学部教授。1959年、東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門は東欧・中欧の中世史および近世史。著書に『プラハの異端者たち  ―  中世チェコのフス派にみる宗教改革』『物語 チェコの歴史  ―  森と高原と古城の国』『図説 チェコとスロヴァキアの歴史』など。共著に『チェコを知るための60章』など。


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2026年2月27日金曜日

「りくりゅうペア」に凄い、凄すぎる、感動した「2026ミラノ・コルティナ冬期オリンピック」を振り返る(2026年2月27日)



「ミラノ・コルティナ冬期オリンピック」(2026年2月2日~22日)が終了した。リアルタイムでの視聴はしていなかたが、スノボやジャンプなど日本人選手の活躍ぶりにかんしては、SNSをつうじてチェックはしていた。

そのなかでも、ペアスケーティングの「りくりゅう」の氷上の演技は動画ではじめて視聴したが、それはもうなんど繰り返し見ても、凄い、凄すぎる、感動したとしか表現しかできないのがもどかしい。なんど視聴しても、目頭が熱くなってくる。




とりたててフィギュアスケートのファンというわけではないからから、的確に言語化することができないのだが、あえていえば「心技体の三位一体」が実現した希有なパフォーマンスだったといえるのではないだろうか。

パートナーとのあいだの完全なシンクロナイズが、ひとつひとつの技だけでなく、流れとしてシームレスに実現している。歴代最高得点をゲットしたメイクヒストリーであり、ショートプログラムで5位からの大逆転という、まさにメイクドラマとしかいいようがない。


(りくりゅうペアは、1時間28分42秒から1時間37分まで)


そんな「チームジャパン」の活躍ぶりに湧いた「ミラノ・コルティナ2026」の閉会式が、なんとヴェローナの野外劇場で開催されたことは、その昔のイタリア旅行の際に、夏に野外オペラを鑑賞したこともあって感慨深いものがあった。





間髪を入れずに『Number 臨時増刊号 ミラノ・コルティナ五輪のすべて。』(Kindle版、Number編集部、2026)が出版されていることを知り、さっそく購入。

 紙媒体の雑誌で買ってもいいかなと思ったが、ビジュアル系の雑誌は電子書籍のほうがいいかな、と。kindleで雑誌を購入するのは、はじめての経験。 




文字だけの書籍は、とくに横書きの英語のものは移動中にスマホで読んでいるが、ビジュアル系の雑誌はノートPCで「見開き2ページ」で見て、そして読む写真の美しさと文章がフィットしているのがいい。 

動画がメインの時代になっているが、動画とは違った、それこそ「モーメント」(瞬間)を切り取った写真の良さを堪能。 

冬期オリンピックというと、もう半世紀も前の1972年の札幌オリンピックから見始めたわたしだが、20年まえにおなじくイタリアで開催された「トリノ冬期オリンピック2006」では、メダルがイナバウアーの荒川静香のゴールドだけだったことを思い出す。

メイクドラマそのものだった「りくりゅうペア」は言うまでもなく、あらためて今回の「チームジャパン」の健闘を讃えたい。 


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