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2020年3月20日金曜日

映画『野性の呼び声』(2020年、米国)-カナダ西海岸とアラスカの大自然にどっぷり浸かる



映画 『野性の呼び声』(2019 米国)をやっと見てきた。

いまやパンデミックとなった新型コロナウイルスの影響で、映画館のような密閉空間に2時間もいるのはどうかなという気がしないでもないが、さすがにマスクを着用したうえで見ることにする。

というのも、ようやく今週月曜日に一仕事が片付いたので(=4冊目の執筆完了!刊行は今年5月予定)、見たかった映画を見に行くことができるからだ。公開からもう3週間もたっているので、ぼやぼやしていると公開が終了してしまう。

『野性の呼び声』(The Call of the Wild)は、アメリカ文学の古典、ジャック・ロンドン『野性の呼び声』(あるいは『荒野の呼び声』というタイトルの日本語訳もある)の実写化だ。カナダ西海岸とアラスカの大自然にどっぷり浸かることのできるスケールの大きな映画だ。




「野性の呼び声」に覚醒した飼い犬バック(Buck)を主人公にした物語である。

ポスターやトレーラーでは、主演がハリソン・フォードのような印象を受けるが、本当の主演はバックを演じたイヌである。この賢い大型犬の本名はなんというのかな?

この映画をつうじて、人もイヌも、自分が自分の人生の主人であることを取り戻していく。熱い思いがわき出してくる。いい映画だ。 

ある種のロードムービーでもある。バックが飼われていたカリフォルニアから、イヌさらいに誘拐されてアラスカへ。貨車に入れられて、西海岸をひたすら北へ。

貨物船にのって到着したのはアラスカだ。アラスカで郵便配達のための犬ぞりを引っ張るイヌとして転売されたのだ。新たな主人は、フランス系カナダ人のカップル。

そこで待っていたのは、過酷な自然だけではない。犬ぞりというチームの一員になることだ。バック自身が、イヌの社会に溶け込み、どう自分の役割を果たすか、である。最終的に気が優しくて力持ち(!)のバックは、持ち前のリーダーシップ能力を発揮して、犬ぞりのイヌたちのリーダーとなる。リーダーシップもまた、この映画のテーマである。

世の中が電信の時代に移行すると、犬ぞりによる郵便配達事業は採算がとれなくなり撤退。イヌたちも路頭に迷うことになる。そして再会したのが、息子を失って孤高な世界に生きる老人。これが、この映画の「助演」のハリソン・フォードが演じる主人公だ。




亡くなった息子の夢を追体験するために始まった "You and I" の旅。この旅をつうじて、さらに「野性の呼び声」に突き動かされたバックは、狼の世界に溶け込んでいく。最終的に自分の「居場所」を発見することで、主体性を回復し、幸せをつかむことになるのだ。

それにしても、ジャック・ロンドンの原作が素晴らしいのだ。

西海岸カリフォルニアのサンフランシスコに生まれ、カリフォルニアで育ったジャック・ロンドンは、船乗りとして日本近海に来たこともあるし(小説のテーマにもなっている)、新聞記者として日露戦争の従軍記者として来日し、朝鮮にも渡っている。それだけでも、日本人としては親近感を感じる存在だ。

映画が小説と違うのは、なんといってもカナダ西海岸(ブリティッシュ・コロンビア、ユーコン)とアラスカの豊かな大自然の美しさを映像として堪能することができることだ。雄大な大自然にどっぷりと浸る映像体験。せせこましい日常から抜け出す冒険の旅の疑似体験となる。もちろん相棒はバックだ。 

ああ、アウトドアの旅に出たい。「野性の呼び声」の促しだ!







<関連サイト>


That Cuddly Kitty Is Deadlier Than You Think(New York Times, Jan. 29, 2013)
・・これぞまさに「野生の呼び声」に応答したネコ。ネコは小さな野獣。小さな肉食獣。

     
<ブログ内関連記事>

映画 『正義のゆくえ-I.C.E.特別捜査官-』(アメリカ、2009年)を見てきた・・ハリソン・フォード主演

映画 『コン・ティキ』(2012年 ノルウェー他)をみてきた-ヴァイキングの末裔たちの海洋学術探検から得ることのできる教訓はじつに多い

映画 『ラサへの歩き方 祈りの2400km』(2015年、中国)をアンコール上映で見てきた(2018年1月7日〉-チベット人一家の五体投地による「カイラス山巡礼」



『ニッポンの犬』(岩合光昭、平凡社、1998)-イヌは日本犬に限る!(2018年の干支はイヌ①)

「羊飼い」と「聖ベルナール」は性格が真逆の大型犬(2018年の干支はイヌ③)

猛暑の夏の自然観察 (3) 身近な生物を観察する動物行動学-ユクスキュルの「環世界」(Umwelt)


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2018年1月1日月曜日

『ニッポンの犬』(岩合光昭、平凡社、1998)-イヌは日本犬に限る!(2018年の干支はイヌ①)


『岩合光昭の世界ネコ歩き』なんてTV番組をもち、ネコ写真で有名な写真家・岩合光昭さん。

でも、被写体はネコだけではない。イヌもまた被写体であり、写真集さえある。

それが『ニッポンの犬』(岩合光昭、平凡社、1998)だ。20年前の出版だが、現在でも毎年販売されるカレンダーに登場する。

イヌは日本犬に限る。日本ではペットとしての洋犬が多いが、なんといってもイヌは日本犬に限る。そう断言したい。

写真集の表紙に 「カワイイ、りりしい、たのもしい」 という宣伝シールが貼ってあるが、まさにそのとおり。この本に登場する犬の顔が実にいい。思わずほおずりしたくなるような犬、ほれぼれとするような表情をした犬、犬、犬・・・。

何度眺めてもうれしい本だ。

日本犬の原型は、もともと縄文時代から飼育されてきた狩猟犬にさかのぼる。主人と認めた人にはよくなつくが、それ以外の人にはなつかない。だから「吠える飼い犬」として絶大な信頼を受けてきた。秋田犬も柴犬も土佐犬も、その他の日本犬もみなそうだ。闘犬である。

(Shiba Inu - Wikipediaより)

世界的に有名な忠犬ハチ公(Hachi)もそうであるが、秋田犬(あきた・いぬ akita dog)が世界的に人気があることはよく知られているかもしれない。じつは日本犬といったらすぐに思い浮かぶ柴犬(しば・いぬ)もまた、世界中で人気らしい。

柴犬は Shiba inu というローマ字表記になる。すでに英語になっているようだ。主人とその家族には忠実だという点がという点が評価されているらしい。


日本犬の世界的な人気。うれしいことではありませんか!

ことし2018年はイヌ年。今年もよろしくお願いします。









<関連サイト>

海外でも人気な柴犬 「サムライ」のような性格が心を掴んでいる?(2017年12月18日)
・・「海外で、柴犬を飼っている人の多くは、「柴犬は賢い」「柴犬は忠実」「柴犬は、飼い主や家族には忠実で、限りなく優しい。だが、警戒心が強いので、番犬にもなる」「穏やかで頭がよく、忠実でまるで日本人のよう」と手放しで絶賛しています。これは、ヨーロッパや英語圏で多く買われている犬種は、もとは狩猟や牧羊などのための使役犬であったのを、愛玩犬として改良した犬種がほとんどでした。けれども、「柴犬」や「秋田犬」などの日本犬は、ずっと人間のために番犬や狩猟犬として存在し、愛玩犬としての改良など全く行われていません。さらに柴犬は、洋犬の狩猟犬のように「鳥を追い立てる」「狐を穴から追い出す」と言った狩猟のサポートをするタイプではなく、クマやイノシシに直接戦いを挑んでいくタイプの狩猟犬でした。そういった勇ましい歴史もあり、そのため、「誰にでも懐く」「人に対して警戒心が薄い」ということもなく、「警戒心は強いけれど、家族、主人には忠実」「利口で我慢強い」と言った性格が受け継がれてきたのでしょう。


<ブログ内関連記事>

狛犬はイヌじゃない。ほんとはライオンだ!(2018年の干支はイヌ②)

「羊飼い」と「聖ベルナール」は性格が真逆の大型犬(2018年の干支はイヌ③)


タイのあれこれ (8)-ロイヤル・ドッグ

猛暑の夏の自然観察 (3) 身近な生物を観察する動物行動学-ユクスキュルの「環世界」(Umwelt)
・・動物生態学者コンラート・ローレンツの『人、イヌに会う』を紹介

「縄文多空間 船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(船橋市海神)にはじめていってみた(2016年5月21日)-海辺の小高い丘に居住していた縄文人たちの痕跡。7000年前の「縄文早期」に思いをめぐらす
・・「縄文犬は日本犬の原型であるが、この遺跡の発掘からわかったのは、縄文人たちはイヌを大事に扱っていたという事実だ。脚の骨を折った老犬を丁重に葬っていることから明らかになった。」

(2018年1月2日・7日 情報追加)




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2009年8月28日金曜日

タイのあれこれ (8)-ロイヤル・ドッグ



 (「ロイヤル・ドッグ」のトンデーン物語)

 ハリウッド映画『HACHI』(オリジナル・タイトルは HACHIKO: A Dog's Tale)、日本の松竹映画『ハチ公物語』のリメイクである。

 設定はアメリカの地方都市に変えたが、主人公の大学教授という設定は同じで、熱心なチベット仏教信者のリチャード・ギアが演じる。

 でも本当の主役は HACHI である。「週刊文春」の阿川佐和子との対談で、シナリオを読んで自らプロデューサーも買って出たというリチャード・ギアは、共演した犬たちのことを、仏教のヨギ(=修行者)のようだといっているのは面白い。犬は余計な雑念がないからだ、と。とても犬の境地には到達できない、とも。 

 予告編みてるだけでもジ~ンとして目頭が熱くなってくるので、映画館で見るのはやめておきたい。絶対泣いてしまうから。

 やはり本当の物語には、洋の東西を越えて人間の心に訴えかけてくるものがあるのだろう。米国版の trailer とくらべてみるのも面白い、というより、また泣かされる。

 駅で迷子になった子犬(・・この子犬は秋田犬ではなく柴犬をつかったそうだ)の首輪についたdog tag には、漢字の八(はち)の字・・芸が細かいねー。ちなみに、英語の dog tag はミリタリー・スラングでは認識票のことをさす。戦場で斃れてクチがきけなくなっても認識票をみればわかるということ。dog fight とは、戦闘機による空中戦のことだ。

 そうそう、オリジナルの日本版『ハチ公物語』予告編も参考までに。日本人だからハチ公の話はある程度知っているが、やはり舞台設定は現代ににしたほうが、より親近感がますというのは否定できない、と思う。もちろんオリジナル版のハチ公も、仲代達也や八千草薫といった名優以上にすばらしい。

 またハリウッドのリメイクかよ、という人もいるが、日本出身の秋田犬は、すでに世界の AKITA なんだからいいではないか!、と私は思う。

 ハチ公も、世界の Hachiko になったのだから。世界中で愛される物語となるだろう。
 絵本として読まれてきた米国だけでなく、世界中の人が映画をつうじて、ハチ公(HACHIKO)の物語を知ることになるのだから。
 
  『ニッポンの犬』(岩合光昭・写真、岩合日出子・文、平凡社、1998年)という写真集がある。やはり犬はなんといっても日本犬である。以前、こういう文書を書いている。

犬は日本犬に限る! by 土佐犬 (bk1書評 2001/03/28 投稿掲載)私は犬だ。もちろん、猫に対して犬が好きだ、という意味だが。犬は日本犬に限る。表紙に「カワイイ、りりしい、たのもしい」という宣伝シールが貼ってあるが、まさにそのとおり。この本に登場する犬の顔が実にいい。思わずほおずりしたくな るような犬、ほれぼれとするような表情をした犬、犬、犬・・・。何度眺めてもうれしい本。


■タイの「ロイヤル・ドッグ」

  さて、話はタイのロイヤル・ドッグのことである。 こちらのロイヤルは、loyal なだけではない、Rで始まるロイヤル、すなわち Royal でしかも Loyal な犬 の話である。

 タイのプーミポン国王ラーマ9世の愛犬トンデーンの話。この犬の話はタイでは知らない人はいない。しかもなんとマンガにもなっているのだ。

 このマンガによれば、あやうく保健所につれていかれて処分される寸前だった犬が助けられて、その子犬のうち一匹が国王にもらわれることとなった、犬のシンデレラ・ストーリーのような物語で実話である。

 この犬は実に賢い犬らしく、国王陛下が国民に道徳を説く際には、トンデーンの話を引き合いに出すという。


 日本語訳が世界でさきがけて出版されている。『奇跡の名犬物語-世界一賢いロイヤル・ドッグ トーンデーン-』(プーミポン国王陛下、世界文化社、2006)。

 プーミポン国王の特別の許可をえて、タイ政治学の重鎮である赤木攻・前大阪外国語大学学長が翻訳されている。犬好きならすでによく知っている話かもしれない。日本版は絵本として出版されているが、私としてはタイ語版のマンガのほうが面白く感じている。タイ語版には英語訳がついているので問題はない。


 タイ語のマンガ版が興味深いのは、タイ王国憲法では、「神聖にして絶対不可侵」の存在である国王陛下を(・・戦前の大日本帝国憲法と同じ)、いかにマンガに登場させるかという点にかんして作者が大いに悩んだという。その結果、国王陛下はすべて白塗りで、透明人間のような描き方となった(下の写真)。

(タイで出版されているカートゥーン版)

 なんだか奇妙なかんじもするが、国王陛下のご真影がいたるところに存在するのが、タイ王国である。かしこくも国王陛下にあらせられましては・・・ってことであろう。苦肉の策といえば、そうとしかいいようがないが。


■タイの犬は放し飼い


 バンコクの犬といえば、朝から暑いということもあるが、でっぷりと肥えたメタボで、朝からマグロのように舗道に転がって熟睡しているのが大半だが、すべて野良犬ではなく、飼い犬もまじっているようだ。首輪をしている犬がいる。バンコク中心部ビジネス街のシーロムで撮ったこの写真の犬は、首輪に Cool Dog なんて書いてあるが、どこが Cool だっちゅうの!?と突っ込みを入れたくなる。



 タイでは犬は放し飼いなので、というより日本と違って鎖でつなぐ習慣がないので、野良と飼い犬が共生しているのである。

 ただしバンコク以外では、犬は必ずしもマグロではない。

 数年前、チェンマイの郊外にあるヘルス・リゾートで休暇をとっていたときのことである。

 滞在して数日目、ヒマだったのでゲートの外にでてみた。ゲートの外は見渡す限りまったくの農村地帯で、少し散歩していくとタイ人の民間信仰の対象となっている巨樹があったので見に行ってみた。巨樹に近づいてゆくと、なぜか突然、犬が一匹吠えだした。

 するとその声につられて何匹も犬が吠えだし、みるみるうちに数百メートル先から犬が突進してきたことに気がついたと思ったら、四方八方から何匹も犬が吠えながら猛スピードで突進してきたのである。何かスローモーションのフィルムをみているような気がしていたが、あっという間に犬たちが私の周りを囲んで吠えまくっている。

 後ろを見せたら間違いなく噛まれると思ったので、たまたまその時手にしていた傘をひろげて犬が近寄れないようにしばし防戦していたが、もしかした駄目かもしれないという気持ちになったその瞬間、農家からおじいさんがでてきて、口笛で犬になにか合図した。そのとたん、犬は吠えかかってくるのをやめて散っていった。「悪い人ではないから吠えないように」と、おじいさんが犬に合図したようだ。思わずおじいさんには頭を下げて礼をしたものであった。

 まことにもって、よそ者には警戒するという原則をたたきこまれた番犬として優秀なチェンマイ犬たちであった。まさに Loyal dogs である。

 
 教訓: タイの犬だからといって、すべてバンコクを基準にして固定観念でもって類推するのは危険である。

 舗道に転がっているマグロ犬だけではない。タイには王様の犬もいれば、バンコク市内ではセレブが飼うチワワもいる。もちろん主人に忠実な番犬もいる。もちろんマグロ犬も発情期は寝そべったりしていないので危険である。

 犬の数だけ、"犬"生がある。もちろん犬だから、dog year を生きているのであるが。


 P.S. さて今回は、本日8月28日に、タイのあれこれ(8)で、ハチ公(=Hachiko)をとりあげたが、これはシンクロではなく、種を明かせばインテンショナルなものである。たまにはこういう細工を組み込んだ設計も面白い。犬づくしの回であった。


* タイのあれこれ (9) につづく





PS 読みやすくするために改行を増やし、小見出しを入れ、写真を大判にして
キャプションを書きくわえた。本文には手を入れていない。 (2014年1月19日 記す)


<ブログ内関連記事>

『Sufficiency Economy: A New Philosophy in the Global World』(足を知る経済)は資本主義のオルタナティブか?-資本主義のオルタナティブ (2)

タイのあれこれ (6) 日本のマンガ

タイのあれこれ (10) シャム猫なんて見たことない・・・


「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中)                   
     




(2012年7月3日発売の拙著です)








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