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2023年9月18日月曜日

書評『ジャイナ教とは何か ― 菜食・托鉢・断食の生命観(ブックレット<アジアを学ぼう>㊾)』(上田真啓、風響社、2017)― ベジタリアンの極地であるヴィーガンの、そのまた極北ともいうべきジャイナ教の菜食主義

 


ジャイナ教がいまでも生きた宗教であることを知ったのは、1995年にはじめてインド北部にいったときのことだ。

仏教寺院かなと思って尋ねてみたら、ジャイナ教の寺院だという答えが帰ってきた。おお、ジャイナ教はいまでも存在するのか! 

高校時代にジャイナ教のことは習ったが、ゾロアスター教や景教などとおなじく古代宗教だと思っていたからだ。ちなみにゾロアスター教もいまでもインドで生きている宗教である。

『ジャイナ教とは何か ー 菜食・托鉢・断食の生命観(ブックレット<アジアを学ぼう>㊾)』(上田真啓、風響社、2017)は、ジャイナ教とはなにかを「菜食」に代表される生命観から解説したものだ。「ジャイナ教入門」として読んでみて、これはよくできた本だと思った。いまから4年前のことだ。

出版されてからしばらくして読んだ(?)が、ブログに書いてなかったので、あらためて紹介しておきたい。


■ガンディーにも影響を与えたジャイナ教

ジャイナ教は、マハトマ・ガンディーの生き方と思想にも影響を与えている。ガンディーについての本を準備しているなかで知った

ガンディーが生まれ育ったインド西部のグジャラートにはジャイナ教徒が多く住んでいて、ヒンドゥー教徒のガンディー家は隣人としてつきあっていたという。ガンディーは、アタマではなくカラダでジャイナ教を理解していているのである。

不殺生を徹底するジャイナ教では、虫や微生物を殺してしまうかもしれないという理由で、大地を耕す農業は避けられている。このため商売や学問、そのなかでも宝石を扱う商人が多く、意外なことに金持ちも少なくない

ジャイナ教徒の人口は約450万人、インドの総人口14億人のわずか 0.3% しかいないのに、インド全体の個人所得税の 20% をジャイナ教徒が納めているという事実にそれが反映している。

この点については、『ジャイナ教の教え 信用と成功を手にする一番簡簡単な方法』(上林龍永、渡辺研二監修、三笠書房、2007)が自己啓発書の形態でまとめられていて、読みやすくためになる。


■仏教とは姉妹宗教だがインド以外には普及せず

ジャイナ教とはマハーヴィーラ(=ジナ)の教えであり、ジャイナ教徒とはジナの教えにしたがって生きる人びとのことであるが、十把一絡げにジャイナ教とはこういうものだとは説明できないほど多様化しているようだ。

仏教と姉妹宗教であると言われることも多い。仏教もジャイナ教も、その創始者であるブッダもマハーヴィーラも、紀元前6~5世紀という同時期、東インドという同地域に生きていて活躍した人である。反バラモンという性格が共通している。つまりヒンドゥー教とは異なる存在なのである。

不思議に思うのは、仏教がインドでは消滅したのに対し、なぜ似たような教義のジャイナ教はインドで生き延びたのかということだ。ヒンドゥー教と違って、仏教もイスラームも平等主義であることは共通している。ジャイナ教もまたそうだ。

だが、仏教とは違って、ジャイナ教はインドの外に向かって布教されることもなかった。完全にインド土着の民族宗教なのである。

ジャイナ教が生き残った理由のひとつは、その教義にもとづく徹底的な菜食主義にあったのではないだろうか?

不殺生(アヒンサー)といえばガンディーという連想があるが、なんせ、ジャイナ教においては、虫や微生物を殺してしまうかもしれないので農作業には従事しないという徹底ぶりである。2500年以上にわたって、固く守り通してきたということであろう。


■ジャイナ教の5つの実践倫理と菜食主義

ジャイナ教の創始者であるマハーヴィーラが重視したのは、以下の5つの実践倫理である。

●生き物を傷つけない
●嘘をつかない
●与えられていないものを取らない
●性的禁欲を守る
●所有しない

仏教と同様に出家と在家が区分されており、出家者には厳しい戒律が課せられるが、在家信者にはそれよりゆるやかなものとなる。

ジャイナ教の菜食主義は、不殺生(アヒンサー)の実践を食生活から捉えたものである。

「そこに生命が存在する可能性」のあるもの、「そこから生命が発生する可能性」があるものは食べることを避けるという。

ジャイナ教で食べられないものは、以下のものがあげられている。肉を食べないのは当然のこととして、植物にも規制は及んでいる。

自然死した動物のものを含めた肉類、ハチミツ、イチジク類の果実、酒類、濾過されていない水など。「殺生によって得られるから」で「無数の微生物がいるから」である。

葉のもの、湿った食べ物、発酵食品、腐敗した食べ物は、「そこに微生物がいる」という理由で規制されている。家庭での作り置きも奨励されない。

タマネギなどの球根、大根などの根菜類、イモ類などの地下茎は、「そこからあらたな生命が生じるから」。ザクロやナス、トマトなど「多くのタネをもつもの」。不殺生が徹底される。

以上のようなさまざまな規定があるが、出家者は托鉢で施されたものだけを食べ、午後は水も飲まないが、在家信者の場合は、食材を調理することは許されているという。

日常的な食は、見た目にかんしてはヒンドゥー教徒の菜食とさほど変わらないという。素材の違いがあるが、地域によっても、家庭によってもすべての規制が守られているわけでもないようだ。

とはいえ、ベジタリアンの極地であるヴィーガンの、そのまた極北ともいうべきジャイナ教の菜食主義なのである。

にもかかわらず、本書に掲載された写真を見る限り、やせて貧相な人はいない徹底した菜食主義を2500年ちかくつづけけてきた人たちのことを考えれば、ほんとうに肉が必要なのか疑問に思ってくるのは、わたしだけではないのではないか?

本書は、著者のインド留学中のフィールドワークをもとにした研究の成果であり、教義や経典の解説に終わっていない点がすばらしい。ただ欲をいえば、ジャイナ教の菜食主義について、レシピも含めた解説本を見てみたいとつよく思う。できれば実際に食べてみたい。

どなたか、『古今東西 菜食主義大全』みたいな本を書いてくれないかな。


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目 次
はじめに-ジャイナ教とは何か
 1 現在における分布
 2 少ない人口・高い識字率
 3 ジャイナ教とは何か  
 4 ジャイナ教は「ヒンドゥー」か
 5 ジャイナ教に神様はいるのか
 6 仏教との共通点-沙門の文化
二 マハーヴィーラ
 1 ティールタンカラの存在
 2 マハーヴィーラの生涯
 3 マハーヴィーラの教え
 4 ジャイナ教の聖典
三 教団の歴史と体系
 1 空衣派(くうえは)と白衣派(びゃくえは)
 2 両派の分裂
 3 両派の違い
 4 在家と出家
 5 大誓戒と小誓戒
四 出家とは-出家修行者の特徴
 1 なぜ出家するのか-輪廻と業の理論
 2 出家の儀式
 3 不殺生の実践
 4 出家修行者の持ち物
 5 遊行
 6 禁欲
5. 出家修行者の食生活
 1 ジャイナ教の生物観-菜食主義の背景
 2 托鉢
 3 托鉢における不殺生
 4 托鉢の偶発性
 5 施主との関係
 6 食事に対する姿勢
 7 断食と断食死
 8 原則と例外
六 在家信者の生活
 1 12の誓い
 2 施しを行うこと
 3 プージャー(礼拝)
七 在家信者の食
 1 そこから生命体が発生するか
 2 食べられるべきではないものリスト
 3 インドの中のジャイナ教
八 まとめ
注・参考文献 あとがき


著者プロフィール
上田真啓(うえだ・まさひろ) 
1980年生まれ。 京都大学大学院文学研究科(インド古典学)博士後期課程指導認定退学。 現在、京都大学文学部非常勤講師。 これまでの論文には「ジャイナ教の他学派批判―不殺生をめぐる議論について」(『印度学仏教学研究』第59巻第1号、日本印度学仏教学会、2010)“Nikṣepa in Tattvārthādhigamasūtra: A Method for the investigation of words” (『印度学仏教学研究』第60巻第3号、日本印度学仏教学会、2012)などがある。

  
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書評 『輪廻転生-<私>をつなぐ生まれ変わりの物語-』(竹倉史人、講談社現代新書、2015)-科学的精神の持ち主こそ読んでほしい本
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・・シュタイナーもジャガイモは食べるなと強調している。ただし、ジャイナ教とは理由は違う


■菜食主義とヴィーガン






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2021年3月14日日曜日

国軍のテロ行為に「非暴力」で対抗するミャンマー市民を応援したい-いまこそガンディーを想起せよ!

 
「非暴力」(Nonviolence)といえばマハトマ・ガンディー

米国のキング牧師も、チベットのダライ・ラマ14世猊下も、ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問もみな、ガンディー精神に深く学んで実践してきた人たちだ。 

そのガンディーに影響を与えた一人が、米国の思想家で実践家のヘンリー・デイヴィッド・ソローだ。『ウォールデン』が代表的著書だが、『市民的不服従』(Civil Disobedience)もよく知られている。1846年の出版だ。現在でも米国では広く読まれている本だ。

いまミャンマーで市民が、「市民的不服従運動」(CDM: Civil Disobedience Movement)と「非暴力」を掲げて抵抗運動を続けている源泉は、この流れのなかにある。

「非暴力」にかんするガンディーのことばを引用しておこう。 出典は、ガンディー 強く生きる言葉』(佐藤けんいち編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020)から。


●「暴力のうえに構築されたもので、永続的なものはない。そう私は信じている。暴力によって実現した勝利は、敗北とおなじだ。なぜなら一時的なものに過ぎないからだ」 
●「いつでも死ぬ覚悟ができているからといって、人を殺す覚悟ができているという理由にはならない。 

(『ガンディー 強く生きる言葉』(佐藤けんいち編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020)より

「天網恢々(てんもうかいかい) 疎(そ)にして漏(もら)さず」という。 クーデターを引き起こして一般市民にテロ行為を行う国軍は、一時的に勝利したとしても、永続的な勝利とはならないことを知るべきなのだ。 

 「非暴力」と「市民的不服従」をかかげて、国軍のテロ行為に「非暴力」で対抗するミャンマー市民を応援したい。

すでに状況は1988年に近くなりつつあるのではないかという危惧と懸念がつきまとうが、正義がどちらの側にあるか、あまりにも明白ではないか! 

たとえ時間がかかろうと、暴力に訴えた方が最終的に敗北することになる。そう信じている。




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・・トルストイの「非戦思想」と「ベジタリアン主義」もガンディーに大きな影響を与えている


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2020年8月16日日曜日

「8月15日のガンディ」― インド独立運動の指導者ガンディーはなぜインド独立式典(1947年8月15日)に参加しなかったのか?



インド独立は、いまから73年前の1947年8月15日だった。本日は、パキスタン独立記念日でもある

つまり、英国からの独立は、パキスタンとの「分離独立」という形となってしまったのであり、まことにもって残念なことだった。もし、そうでなかったなら・・と考えたくなる。

招待されていたにもかかわらず、独立運動の指導者ガンディーは独立記念式典に姿を見せなかった

なぜか?
   
なによりも「分断」を憂慮し、回避しようとしていたガンディーは、この日もヒンドゥー教徒とイスラム教徒の「融和」を図るためインド全土を行脚していたのだ。独立式典など祝っている気にはなれなかったのだ。

8月15日は日本にとっては「終戦記念日」(=敗戦記念日)。だが、インドとガンディーについて考えたい1日でもある。





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JBPressの連載コラム第78回(最終回)は、「今こそ世界が必要とするガンディーのリーダーシップ- 「アフターコロナ」時代の価値観を先取りしていたイノベーター」(2020年5月19日)

JBPress連載第6回目のタイトルは、「独立から70年!いよいよ始まるインドの時代-舞台はインド、日英米はさらに密接な関係に」(2017年8月15日)

JBPressの連載コラム第62回は、「悲惨なインパール作戦、インドからはどう見えるのか- 「形を変えて」インド独立につながっていた」(2019年10月8日)

「緊急事態」解除後に『ガンディー 強く生きる言葉』を求めて「書店フィールドワーク」(2020年6月1日)

新著『ガンディー 強く生きる言葉』のサンプルが届きました-わが人生初の文庫本は「文庫オリジナル」での出版



(2020年5月28日発売予定の拙著です)


 
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2020年5月21日木曜日

新著『ガンディー 強く生きる言葉』のサンプルが届きました-わが人生初の文庫本は「文庫オリジナル」での出版


できたてほやほやの新著『ガンディー 強く生きる言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のサンプルが出版社から届きました。  

今回の新著は、わが人生初の文庫本「文庫オリジナル」での出版。手のひらサイズの文庫本。 ハードカバーの単行本ではありません。本棚に飾る本ではなく、手に取って読むための本。




とくにリーダーシップの観点を中心に、ガンディーの全体像を捉えることが可能なように、ガンディー自身による言葉を181項目精選し、あらたなに日本語化したものです。

「目次」は、以下のとおりです。


はじめに なぜいまガンディーなのか? 
Ⅰ 人生は実験の連続だ 
Ⅱ 結果にとらわれずに行動せよ 
Ⅲ 奉仕は喜びだ 
Ⅳ リーダーは一人でも突き進め 
Ⅴ 経済と社会には倫理が必要だ 
Ⅵ 一人ひとりが政治をつくる 
Ⅶ 教育の目的は人格形成だ 
Ⅷ 欲望をコントロールせよ 
Ⅸ 内なる真理に従え 
Ⅹ 愛は勝つ 
ガンディー年譜 
主要参考文献


(amazon掲載の内容紹介から)


新型コロナウイルスのパンデミックにともなう「緊急事態宣言」も解除の方向に向かっているので、もうそろそろリアル書店の店頭に並ぶ頃かな?* 自粛解除にともなって再開する書店も増えつつあありますからね。もちろん amazonなどのネット書店で予約も可能。  

ぜひお読みいただきたく。そして愛読していただきたく。よろしくお願いします。

(*注 5月28日、リアル書店とネット書店で同時発売となります。






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2020年5月19日火曜日

JBPressの連載コラム第78回(最終回)は、「今こそ世界が必要とするガンディーのリーダーシップ- 「アフターコロナ」時代の価値観を先取りしていたイノベーター」(2020年5月19日)


JBPressの連載コラム第78回目(最終回)は、今こそ世界が必要とするガンディーのリーダーシップ-  「アフターコロナ」時代の価値観を先取りしていたイノベーター」(2020年5月19日)
⇒ https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60528

2017年6月6日から始まったJBPressの連載コラム
ですが、今回のコラムで連載は終了となります。まる3年間のご愛読、ありがとうございました。 


第78回(=最終回)は、インド独立の父・ガンディーこのたび、私の編訳でガンディー 強く生きる言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)というタイトルの本が5月28日に出版予定ですが、その書籍の紹介を兼ねた連動企画です。 インド独立の父・ガンディーの言葉を181項目選んだアンソロジーです。



なぜいまガンディーなのか、そもそもガンディーはどういう人だったのかガンディーの言葉がなぜあらたな価値観の構築に繋がる可能性があるのか、そういったさまざまな点について、私なりに考えていることを述べてみたいと思います。 

まさに現在のこのような状況だからこそ、ガンディーの言葉にじっくりと耳を傾けるべきではないかでしょうか。

そろそろ「緊急事態宣言」の解除が始まりつつある状況下、全国の書店も再開が始まりつつあります。ぜひ店頭でお手に取ってみてください。





現在とその先にあるちょっと先の未来を考えるために歴史を振り返る

「何を書いてもいい」ということで始まった連載ですが、テーマが拡がりすぎたかもしれません。

とはいえ、現在とその先にあるちょっと先の未来を考えるために歴史を振り返るという基本姿勢は、最初から最後まで貫くことができたのではないかと思っています。

バックナンバーは、こちらですべて読むことができます。ウェブ雑誌ならではですね。JBPressの会員でない場合は、タイトルで検索してみてください。各種のウェブ雑誌媒体に配信されていますので、読むことができます。

2週間に1回の連載でしたが、まる3年間78回の連載を1度も落とすことなく完走できたことは、ひそかに誇りに思っている次第です。


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