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2014年1月18日土曜日

書評『地獄へようこそ ― タイ刑務所/2700日の恐怖』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)― 無実の罪で投獄された白人ビジネスマンが手記につづるタイの刑務所の恐るべき実態



『地獄へようこそ  ―  タイ刑務所/2700日の恐怖』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)の原題は Welcome to Hell : One Man's Fight For Life Inside The Bangkok Hilton,  by Colin Martin, 2005.

日本語訳タイトルは原著の直訳であるが、副題は「ある男のバンコク・ヒルトン内部で人生を賭けた闘い」である。まさにそれが「生存をかけ闘い」であることは本書を読むのが一番である。

バンコク・ヒルトン(The Bangkok Hilton)というスラングが英語にはある。もっぱらバンコク在住の「ファラン」たちのあいだで使われている。ファランとはタイ語で白人のことだが、フランス人を意味するフランセが語源だ。

もちろん、「バンコク・ヒルトン」は外資系高級ホテルのヒルトンのことではない。バンコク刑務所のことを指している。そこでは「快適な生活」が保障されるということだ。

著者は無実の罪で逮捕され、バンコクのツーリスト・ポリスで拷問を受け、投獄されたあげく、地獄のような環境のなかで2700日、すなわち約8年(!)の月日を持ちこたえたことを記している。

著者はアイルランド人ビジネスマン。タイのバンコクに本拠を置く詐欺組織に騙され、全財産を失っただけでなく、自力で犯人グループを追うなかで、その一人と取っ組み合いになって殴り殺してしまう。正当防衛ゆえの過失(?)と著者は主張するのだが・・・。

本書の前半は、著者の申告どおり受け取るにはやや疑問がなくはないのだが、白人が白人に騙されるケースもあるのだと知ることは意味のあることだと思う。というのも、バンコクでは日本人が日本人に騙されるケースが後を絶たないからだ。どうしても同じようなバックグラウンドをもっていて同じコトバをしゃべる同朋に安心してしまうのは洋の東西を問わないようだ。

著者を騙してカネを巻き上げた白人男もいくつもの偽名をつかっており、その「不良白人」ぶりには読んでいてあっけにとられる思いをする。

本書の後半は、「バンコク・ヒルトン」の内部での著者の体験を赤裸々に記したものだ。

読んでいて思うのは、これはインサイダーとして体験した者にしか書けないものだなということだ。ディテールの描写がこれでもかこれでもかと続きウンザリしなくもないのだが、タイの監獄の腐敗と不正ぶりにはなんともやってられない気分になる。まるで江戸時代の牢屋のような印象を受ける。

また、おざなりな裁判制度、法治国家ではあるが末端の組織では法律が法律として機能していない。すべてが見て見ぬ振りされているという実態・・・。

とにかくカネがすべてなのである。刑務所向けの予算がついてもすべて獄吏に着服されて受刑者にはいきわたらない現実。なにかあればカネ、カネ。カネさえあれば刑期さえ短くなる可能性もある。「地獄の沙汰もカネ次第」とはまさにこのことだ。

この本に書かれたことがただしいかどうかはわたしには判断しかねるが、もしただしいのであるならば、とにかくタイでは逮捕されないこと、投獄されないこと。犯罪を犯さないことはもちろん、事件に巻き込まれないこともきわめて重要だ。商売敵(がたき)に陥れられるケースは少なくない。

著者も刑務所のなかから裁判を起こしているが、日本よりもスピードがはるかに遅く、かつ真剣さの欠ける法律関係者のため、裁判で勝つのは容易ではない。ましてや外国人であればなおさらであろう。

日本は欧米先進国にくらべて人権後進国だとよく批判されるが、タイの現状はその比ではない。タイ以外の発展途上国もまた似て寄ったりというべきだろう。

読んでいて不快感を覚える描写もなくはないが、こういう本を読んでおくことは、自衛というセキュリティ感覚を向上させるために必要である。「バンコク・ヒルトン」の快適さは、生半可なものではないのだ。


(画像をクリック!)


目 次

序章 賄賂と投獄の選択
第1章 生い立ち
第2章 詐欺の全貌
第3章 執念の捜索
第4章 首謀者を追い詰める
第5章 意外な展開-用心棒の死
第6章 恐怖の拷問
第7章 果たして殺人か?
第8章 地獄への一歩
第9章 刑務所-ジャングルの掟
第10章 初公判
第11章 悪の巣窟-暴力・ギャンブル・レイプ
第12章 刑務所からの告発
第13章 判決
第14章 看守の暴力支配
第15章 結核との闘い
第16章 ムエタイとの出会い
第17章 敗北と恩赦
第18章 過去との決別
終章 明日に向かって
謝辞
訳者解説


著者プロフィール  

コリン・マーティン(Colin Martin)
イギリス生まれのアイルランド人。15歳でアイルランドに戻り、その後再びイギリスに渡って溶接工として働く。結婚し、2人の子供を得たのちにオランダで「スペクタック溶接建設」を起こす。1994年にタイに拠点をおく「海外建設サービス(OCS)」と取り引きをするためにタイに渡航。しかし、これは完全な詐欺で、全財産を騙し取られてしまう。以降、犯人グループ、タイ警察・裁判所・監獄システムの腐敗と7年半に渡って戦う (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
翻訳者:一木久生(いちき・ひさお)早稲田大学文学部西洋史学科卒業。出版社勤務を経てフリージャーナリストへ。カンボジア内戦のとき、タイのカンボジア難民キャンプ、ラオス難民キャンプ等を取材。その後、教職を経て再びフリージャーナリストとしてアイルランド各地を回り一年半滞在(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

タイ映画 『わすれな歌』(英語タイトル:Mon-Rak Transistor)に、主人公の田舎のタイ青年が収監されて臭い飯を食うシーンがある



PS タイの監獄に収容されていた日本人元死刑囚の手記が出た

『求刑死刑 タイ・重罪犯専用刑務所から生還した男』(竹澤恒男、彩図社、2017)という本がそれだ。

著者プロフィールには、「栃木県O市でアジア雑貨店を経営。仕入れのために日本とタイを行き来するうちに、ヤーバー(錠剤型覚せい剤)の密輸に手を染めるようになる。2002年12月、バンコクのドンムアン空港で逮捕され、一審で求刑死刑、判決終身刑。二審で懲役30年に減刑され、タイのバンクワン刑務所に服役する。2016年9月、服役14年で、特赦により釈放帰国。」とある。

ぜひ、『地獄へようこそ-タイ刑務所/2700日の恐怖-』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)と内容を読み比べてみたいものだ。(2017年9月14日 記す)






<ブログ内関連記事>

書評 『タイに渡った鑑識捜査官-妻がくれた第二の人生-』(戸島国雄、並木書房、2011)-「鑑識36年」の著者がタイで体験したマッチョで無茶な生き様

タイのあれこれ (23) DVDで視聴可能なタイの映画-① ムエタイもの、② バイオレンス・アクションもの

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い

アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む

タイのあれこれ 総目次 (1)~(26)+番外編


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end

2013年11月30日土曜日

映画『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた ― 海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!



映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた。アカデミー賞候補の呼び声も高いということだが、その可能性はかなり高いとおもう。かなり重厚で見応えのある作品である。シナリオ、主演、映像そのすべてが三拍子でそろっているためだ。

なによりもつい最近の出来事なのである。実話なのである。いまから4年前、2009年4月12日のことだ。

ソマリア沖を航行中のコンテナ船が海賊に襲撃され、乗組員20人のために海賊の人質となったリチャード・フィリップス船長が体験した息詰まる4日間を描いた作品だ。


■どこに生まれようが生き残る(=サバイバル)がテーマにならざるをえない

映画の冒頭からこの映画はサバイバルをテーマとしたものであることが暗示される。

フィリップス船長にとっては、自分の子どもたちが生きる時代のアメリカ経済の厳しさ。そしてソマリア人漁師たちにとっては、政治経済が機能不全となり無法地帯と化している破綻国家に生きるという過酷さ。

船長はアメリカ東部のバーモント州に暮らす。海賊たちは破綻国家ソマリアの元漁師たち。本来ならまったくあい交わることのなかったはずの両者が、ソマリア沖の航海において遭遇し、けっして望んだわけではない濃い日々をともにすることになる。

両者ともにサバイバルがテーマとして浮上しているのが21世紀の現状。置かれている状況はかなり異なるが、サバイバルという点においては本質的には同じなのである。

映画の前半は大型コンテナ船における海の男たちの世界、後半は船長(キャプテン)が海賊たちの人質になった結果、救命艇という閉鎖空間のなかでのサバイバルが描かれる。

映画の後半でテーマになるのが、人質になった船長自身にとっての極限状況におけるサバイバル。この段階になって、フィリップス船長にとってのサバイバルは、ソマリア人海賊たちと同じレベルになる。むきだしの人間として対等の関係になるのだ。

そう、心理学者マズローの欲求五段階説でいえば、「生理的欲求」と「安全の欲求」という人間にとって最低限必要な欲求が満たされない状況にフィリップス船長は置かれたのである。




想定していた成功を得られなかった海賊たちは救命艇でコンテナ船から脱出することになるが、その際にフィリップス船長は身代金目的の人質として海賊に連れていかれる。救命艇に乗ることによって彼らは運命共同体となった。いわゆる呉越同舟であるが、同じ船に乗っていることには変わりないのだ。英語ではこれをさして We're in the same boat. という。

同じく船に乗っているという点においては、大型コンテナ船の船員(クルー)も、海賊たちが乗るモーターボートも本質においては同じ存在だ。つねに危険と背中合わせなのが海の世界、「板子一枚下は地獄」という点において。だから、フィリップス船長は同じ海の男として海賊のリーダーと対話が成り立つと踏んだのだろう。

船長(キャプテン)がその乗員すべてに対して全責任をもつことにおいては、コンテナ船だろうが豪華客船だろうが、軍艦だろうが漁船だろうが、みな同じである。国際法に通じていようがいまいが、船長というのはそういう義務を担った職務なのだ。



■大型コンテナ船が舞台

大型コンテナ貨物船という、その大きさの割には乗員が男だけで、しかも20人程度しかいないという地味な世界が映画の舞台となるのは珍しい。

映画にでてくるのは世界最大の船会社マースク社(Maersk)のコンテナ船である。この船会社の大型コンテナ船アラバマ号が海賊から襲撃されたのである。デンマークに本籍のある会社でメルスクともいう。日本の港湾でもメルスクのコンテナはよく見かけるはずだ。

図らずして自社商品や自社ブランドが映像のなかに登場する広告宣伝手法のプロダクト・プレイスメントになっているわけだが、法人取引が中心の B2B企業である海運会社にとっては、ブランドを一般消費者に知らせること機会になっているかもしれない。実話をもとにした映画であるだけに怪我の功名かもしれない。





フィリップス船長の今回のミッションは、ソマリア沖を航行してアフリカ中部ケニアのモンバサまで救援物資を輸送するというもの。そのために船長はアメリカ東部バーモント州にある自宅から乗船地まで移動することになる。映画には出てこないが航空機での移動だろう。

当然のことながらフィリップス船長も海賊の危険は織り込み済みだったようだが、2009年当時はまだ一般人にとってはソマリア人海賊の話は常識とはなっていなかった。

国際的な要請に基づいて、日本が海上自衛隊艦船をソマリア沖に派遣することが決定され実行に移されたのが2009年、まさにこの映画で取り上げられた海賊事件が発生した頃である。

たとえ危険地帯であっても輸送をやめることはできない。依頼主がいればそれに応えるのがビジネスというものだ。船長もまた船会社の要請でアサインされれば任務につく。船員組合に所属している船員もまた契約ベースで動く。ちなみに企業内組合が常識の日本企業であっても、船員組合だけは企業横断型の業界ベースである。

危険を承知で船を出すケースもある。かつてベトナム戦争時代に商船の船長として荒稼ぎをしたという英国人の元船長から話を聞いたことがあるが、戦争地帯であれば海上保険がつりあがる。船長や乗員も危険手当がつくので、それを承知で船にのる男たちもいるのだ。


(これがホンモノのキャプテン・フィリップス 原作本となった自著のカバー写真)


だが、フィリップス船長の今回のミッションでは、乗員たちは実際に海賊に遭遇することはアタマではその可能性については理解していても、まさか自分たちが乗った船が海賊に襲撃されるとは想像もしていなかったようだ。希望的観測というやつである。

しかも巨大コンテナ船とくらべれば、漁船をつかった海賊船はふけば飛ぶようなちっぽけな存在だ。だがマシンガンで武装した海賊たちは、ある意味ではゲリラのような存在だろう。

武装していない丸腰のコンテナ船の船腹に「脆弱性の窓」(window of vulnerability)を発見した海賊たちは、そこになんと原始的な手段だが梯子をかけて乗り込んできたのだ! 

いったん海賊たちの侵入を許してしまったが最後、コンテナ船は絶体絶命の窮地に追い込まれることになる。映画をみている観客にとっても、息詰まるシーンの連続である。





■海上における「非対称戦争」とアメリカ海軍の本気度

事件が発生した2009年の前半は、まだソマリア人海賊問題が一般人のレベルでは常識となっていなかった頃だ。その海域でパトロール活動を行っていたのが、アメリカ海軍の艦船など少数に過ぎなかったこともフィリップス船長にとっても不幸なことであった。

だが、アメリカ人の生命と財産を守るというつよい意志を示したアメリカ政府が動き出すと、ソマリア人海賊に勝ち目はない。

米海軍の駆逐艦が現場に急行し、周辺海域が戦闘地域であえるという宣告がなされて海賊掃討と
人質救出作戦が実行されることになる。ここがまたこの映画の見ものである。アメリカという国家のゆるぎない意志が具体的な形で示されるからだ。

海軍特殊部隊SEALs(ネービー・シールズ) が海上でみせる特殊作戦。映画のなかではオペレーション(operation)ではなくマヌーバー(maneuver)といっていたが、まさにプロフェッショナルの仕事であった。

人質救出作戦もまた対テロ戦争と同様、非対称戦争である。いまの時代、海上においても従来型の正規戦よりも非対称戦争のほうが多い。

映画 『ゼロ・ダーク・サーティ』はウサーマ・ビン・ラディンを殺害するミッションを描いたノンフィクション映画であったが、ビンラディン殺害外作戦を実行したのは機動力をフルに活かしたネービー・シールズであった。使用された機能は、SEALs のうち L すなわち LAND(陸)とAIR(空)での特殊任務であった。

『キャプテン・フィリップス』では、海軍特殊部隊であるネービー・シールズにとっては本来の戦場である S すなわり SEA(海)での特殊作戦の遂行。これがまたすごいのだ。この映画の見どころの一つでもある。


(ソマリア沖の海賊 wikipedia掲載の図よりインド洋全域)



■けっして他人事はない海賊問題

日本の海上自衛隊も艦船派遣いるが映画には出てこないのは、事件発生当時はまだ海上自衛隊艦船はまだ派遣されていなかったからだ。

ソマリア沖の海賊問題は、日本から遠く離れたアフリカの話にみえるが、日本にとってもきわめて重大な問題だ。

「食糧とエネルギー」のほとんどを大きく海外からの輸入に依存、金額ベースでみて約7割が「海上輸送」に依存しているのである。輸送時間の関係から、海上運賃は航空運賃よりはるかに安い。量ベースでみたら比率はもっと高くなるはずだ。

日本にとってシーレーンはまさに海上の生命線(ライフライン)。シーレーンはスエズ運河から日本列島までつながっている。江戸時代後期の警世家・林子平がロンドンから江戸まで水路でつながっていると言ったことを想起しべきだろう。

日本の商船隊にとってはマラッカ海峡における海賊問題だけでなく、ソマリア沖の海賊問題もきわめて重大な問題なのだ。日本人の生存は海上輸送に依存しているのである。

海賊というと映画『カリブの海賊』に代表されるファンタジーがあるが、海賊をロマンチックに語るのは現実的ではない。現代の海賊はマシンガンで武装した大義なきゲリラのような存在だ。

この映画は、「いま、そこにある危機」として、現実世界でいまなにが起こっているかを知るためにも見るべきなのだ。

ヒューマン・ドラマとっしてもすばらしいが、それ以外のさまざまな意味においても、ぜひ見るべき映画だといっておこう。




●『キャプテン・フィリップス』
●監督 :ポール・グリーングラス
●出演 :トム・ハンクス、キャサリン・キーナー
●配給 :ソニー・ピクチャーズ
●上映時間: 134分
●公開日 :11月29日より全国公開


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PS 2013年度の第86回アカデミーにノミネートされながらも、残念ながら受賞は逃した『キャプテン・フィリップス』。絶対に受賞間違いなしだと思っていたのだが・・・ (2014年3月5日 記す)。




<関連サイト>

映画 『キャプテン・フィリップス』 オフィシャルサイト(日本版)

Captain Phillips - Official Trailer (HD) Tom Hanks (英語版トレーラー)

Captain Phillips (映画のフェイスブック・ページ 英語)

『本当にあった 奇跡のサバイバル60』に載った ありえない生還劇6 第1回 映画『キャプテン・フィリップス』で描かれなかったもう一人のヒーロー (ナショナル・ジオグラフィック、2014年)

ソマリア沖2009年4月12日の事件(wikipedia)
Piracy in Somalia (wikipedia英語版)

マースク社公式サイト(日本語)
・・正式社名 A.P. モラー・マースク(デンマーク語:A.P. Møller - Mærsk A/S)は、デンマークの首都コペンハーゲンに本拠を置く世界一の海運会社

Rose George: Inside the secret shipping industry (TED Talk  FILMED OCT 2013 • POSTED DEC 2013 • TED@BCG Singapore)
・・「知られざる海運業」(シンガポールにて公開録画  英語)

港のエース、ガンマンの絆 クレーン運転士・上圷(かみあくつ)茂 (NHK プロフェッショナル 仕事の流儀) (2014年4月21日 放送)
・・コンテナ輸送に不可欠の業務であるガントリークレーンの操作を行う運転士の仕事



ソマリアの「海賊ビジネス」 海賊に憧れ罪を犯す少年を救え (國井 修、日経ビジネスオンライン、2012年11月28日)

ジブチに集う欧米と日本の自衛隊 (日経ビジネスオンライン 2013年12月19日)

US Navy SEAL & SWCC—official website (ネービー・シールズ 公式サイト)
U.S. Navy SEAL & SWCC Page (ネービー・シールズ facebookページ)

『本当にあった 奇跡のサバイバル60』に載った ありえない生還劇  第1回 映画『キャプテン・フィリップス』で描かれなかったもう一人のヒーロー(ナショナル ジオグラフィック日本版、2014年4月15日)

The hidden opportunity in container shipping  By taking advantage of savings and revenue opportunities, container lines can return to profit. (McKinsey & Company, November 2014)


すしざんまい社長が語る「築地市場移転問題」と「ソマリア海賊問題」(ハーバー・ビジネス・オンライン、2016年1月18日)
・・築地すしざんまい社長の木村氏は、伝手を頼ってソマリアの海賊達と話し合い、ソマリア沖がキハダマグロの好漁場であることを知り、みずから漁船を提供しマグロ漁のやりかたを教えたうえで、みずから買い取るルートを整えて元漁民が大半の海賊たちの更正をビジンスベースで援助している、という。その結果、その海域では海賊被害ゼロが実現しているという。ただし、いまだ赤字だとのことだ。

(2014年8月29日、11月21日、2016年1月21日、5月18日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

■海と海賊

「東インド会社とアジアの海賊」(東洋文庫ミュージアム)を見てきた-「東インド会社」と「海賊」は近代経済史のキーワードだ

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か?
・・「海賊たち」がつくった大英帝国

映画 『コン・ティキ』(2012年 ノルウェー他)をみてきた-ヴァイキングの末裔たちの海洋学術探検から得ることのできる教訓はじつに多い

政治学者カール・シュミットが書いた 『陸と海と』 は日本の運命を考える上でも必読書だ!

書評 『海賊党の思想-フリーダウンロードと液体民主主義-』(浜本隆志、白水社、2013)-なぜドイツで海賊党なのか?
・・ただしここでいう「海賊」は著作権侵害行為としての海賊行為(piracy)

書評 『日本は世界4位の海洋大国』(山田吉彦、講談社+α新書、2010)

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人
・・「海賊とよばれた日本人」のモデルは出光佐三

『レッド・オクトーバーを追え!』のトム・クランシーが死去(2013年10月2日)-いまから21年前にMBAを取得したRPIの卒業スピーチはトム・クランシーだった

映画 『ゼロ・ダーク・サーティ』をみてきた-アカデミー賞は残念ながら逃したが、実話に基づいたオリジナルなストーリーがすばらしい
・・ウサーマ・ビン・ラディン殺害計画に動員されたのは米海軍特殊部隊SEALSであった!

(参考) 2014年1月公開のアメリカ映画『ネービーシールズ チーム6』(SEAL Team Ⅵ: The Raid on Osama Bin Laden)は同じテーマ。 ネイビーシールズ:チーム6 予告編


■物流とロジスティクス、そして危機管理

『ドキュメント アジアの道-物流最前線のヒト・モノ群像-』(エヌ・エヌ・エー ASEAN編集部編、エヌ・エヌ・エー、2008)で知る、アジアの物流現場の熱い息吹

大飢饉はなぜ発生するのか?-「人間の安全保障」論を展開するアマルティヤ・セン博士はその理由を・・・
・・物流問題がそのカギである!

タイのあれこれ (21) バンコク以外からタイに入国する方法-危機対応時のロジスティクスについての体験と考察-


■不可抗力と海上保険

「不可抗力」について-アイスランドの火山噴火にともなう欧州各国の空港閉鎖について考える
・・海賊もまた不可抗力(フォルス・マジュール)であるので免責となる

■その他

「マズローの法則」 (きょうのコトバ)


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2012年7月23日月曜日

書評『原発と権力 ー 戦後から辿る支配者の系譜』(山岡淳一郎、ちくま新書、2011)ー「敗戦国日本」の政治経済史が手に取るように見えてくる


■「原発推進政策」を軸にすると、「敗戦国日本」の戦後政治経済史が手に取るように見えてくる

「原発推進政策」を軸にすると、「敗戦国日本」の戦後政治経済史が手に取るように見えてくる、そんな感想をもつ中身の濃い、読み応えのある一冊である。

すでに多くのノンフィクション作家が原発推進をめぐるこの戦後政治経済史について書いているが、本書のいたる所でその分析力の鋭さと洞察力の深さに、なんどもうならされる思いをさせられた。

それは、著者がすでに『田中角栄-封じられた資源戦略石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(草思社、2009)において、エネルギー問題を軸にすえた戦後史への鋭い斬り込みを示していることにもあるのだ。

広義の安全保障には、軍事力だけでなく、国民生活の根本にかかわるエネルギー問題と食糧問題が大きな意味をもつ。本書によれば、1970年代の前半の日米「再処理」交渉では、「核不拡散」政策によって、日本の再処理に首をタテにふらなかった米国を押し切って「再処理」へと踏みだした経緯があったのである。

「石油の一滴は血の一滴」という名台詞を吐いたのは第一次大戦当時のフランス首相クレマンソーだが、日本が第二次大戦で敗れ去ったのもまた、エネルギー源である石油が絶対的に不足していたからだ。

「敗戦国日本」が「唯一の被爆国」でありながら、政治家たちが原子力に着目したのはエネルギー問題の観点だけでなく、真の国家独立を獲得するために核武装へのつよい憧れが原発推進の「隠れた動機」であったことも、本書ではつぶさに検証される。

権力ときわめて相性のいいのが原子力だ。こと原子力をめぐっては党派を超えて戦時中の大政翼賛会的体質が見え隠れするのはそのためなのだ。

政治家、官僚、電力会社という鉄のトライアングルをめぐる関係も、じつは一筋縄ではいかない複雑さがあることを感じ取り、日本が高度経済成長とひきかえに、いかに国土だけでなく人心をも荒廃させてきたか。

これらのことを知るためにも、ぜひ読んでおきたい本である。


<初出情報>

■amazon書評「「原発推進政策」を軸にすると、「敗戦国日本」の戦後政治経済史が手に取るように見えてくる」(2012年3月26日 投稿掲載)





目 次

はじめに
第1章 「再軍備」が押しあけた原子力の扉
第2章 原発導入で総理の座を奪え!
第3章 資源と核 交錯する外交
第4章 権力の憧憬 魔の轍「核燃料サイクル」
終章 二一世紀ニッポンの原発翼賛体制
あとがき
主要参考文献


著者プロフィール

山岡淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)
1959年愛媛県生まれ。出版関連会社、ライター集団などを経て、ノンフィクション作家へ。「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに近現代史、建築、医療、政治など分野を越えて旺盛に執筆。主な著書に『国民皆保険が危ない』(平凡社新書)、『医療のこと、もっと知ってほしい』(岩波ジュニア新書)、『狙われるマンション』(朝日新聞出版)、『成金炎上昭和恐慌は警告する』(日経BP社)、『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄封じられた資源戦略』(ともに草思社)、『日本を大切にする仕事』(英治出版)などがある。(本データは出版社のサイトから転載)。




 <関連サイト>

「潜在的核保有国・日本」への不信 オバマが安倍から「核」取り上げた(山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]、ダイヤモンドオンライン 2014年3月27日)
・・「米国は日本の原子力技術の水準を認め、潜在的核保有を半ば容認しながら管理下に置いて利用してきた。その一方で、国際原子力機関(IAEA)を通じて日本の核物質管理を徹底して監視している。 「IAEAの査察で最重点に置かれているのが日本です。用途が定かでないプルトニウムや高濃縮ウランをこれほど大量に保有いている国はないからです。兵器転用が疑われているということです」 経産省の官僚は言う。そんな国が「戦後レジームからの脱却」に本気で動き出したら穏やかではないと、他国は思うだろう」  こういう見方がけっしておかしなものではないことは知っておくべきだ


<ブログ内関連記事>

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)
・・「3-11」の前に出版されたものだが、ぜひ『原発と権力』とあわせて読んでおきたい一冊

書評 『原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎、岩波新書、2000)-「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい
・・原子力産業草創期にエンジニアとしてかかわった著者の軌跡

書評 『津波と原発』(佐野眞一、講談社、2011)-「戦後」は完全に終わったのだ!

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?


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2012年7月22日日曜日

書評『原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎、岩波新書、2000)ー「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい

■「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい

著者が逝って12年、最後のメッセージをテープから起こして編集した文字通りの遺著である。

『市民科学者として生きる』(高木仁三郎、岩波新書、1999)には書ききれなかった思いが、このほんとうの最後の本にはこもっている。著者の執念と気迫が読者にも迫ってくるのを感じるはずだ。

著者の故高木仁三郎氏は、原子力関係者に多い「物理屋」ではなく「化学屋」である。この点が、著者の見る視点にユニークさをもたらしているようだ。

現象を数値計測し観察するのが「物理屋」の世界であれば、モノとしての放射能に直接かかわるのが「化学屋」の世界である。

シミュレーションによる設計からはもれ落ちてしまう放射能というリアリティ。バーチャルな世界ではなく、リアルな世界で放射能とかかわってきた著者の、実体験から語った日本の原子力技術が誕生当初から抱えている問題点については説得力がきわめて大きい。

いかなる産業であれ組織であれ、その後の性格はその誕生時点で大きく規定されてしまうものだが、1950年代における日本における原子力産業の誕生が財閥企業復活の原動力ともなったことには大きな注意を払う必要があるだろう。この側面にかんしては書いている人も少なくないが、著者のように、その当時の「空気」まで語れる人はそう多くはない。

つまり、原子力産業には「出生の秘密」があるというべきなのだ。

「輸入技術としての原子力」という視点も鋭い。

原子力産業とは、明治以来の日本近代化をそのまま凝縮したようなものとさえいえるものだ。けっして自然発生型の技術ではなく産業でもないという点が重要である。

また、各財閥グループ企業から技術者を寄せ集めてつくった組織という点にも、原子力産業における他人まかせの無責任体制が誕生時点から内在していたことが理解される。まさに「押しつけられた運命共同体」だったわけだ。

日本における原子力産業の誕生からかかかわってきた著者が語るところを聞けば、そもそもの誕生の時点で原子力産業が大きな問題を抱えていたことが手に取るように実感される。

そもそも、営利事業であるビジネスと技術はお互いにとって異物なのであるが、とくに原子力という技術はその最たるものでることが理解される。

本書は、「組織と個人」の問題、「技術と倫理」の問題にも大きく踏み込んでいる。「企業の社会的責任」をクチにする以前に、「技術の社会的責任」を理解しない技術者たちの存在に言及している本書の指摘に、原子力産業だけでなく、ひろく技術者のみなさんも真摯に受け止めて欲しいと思う。

アカウンタビリティは「説明責任」ではない、ほんとうは「結果責任」と訳すべきなのだ。こう語る著者の気迫が「3-11」後によみがえったことはたいへんよろこばしい。

技術者そうでない一般市民も高木仁三郎氏の声に耳を傾けてほしいと思う。そして、日本は「先進国」とは何がどう違うのかを考えてみてほしいと思う。


<初出情報>

■amazon書評「 「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい」(2012年3月26日 投稿掲載)

*再録にあたって加筆した(2012年7月22日)





目 次

はじめに
1. 議論なし、批判なし、思想なし
2. 押しつけられた運命共同体
3. 放射能を知らない原子力屋さん
4. 個人の中に見る「公」のなさ
5. 自己検証のなさ
6. 隠蔽から改ざんへ
7. 技術者像の変貌
8. 技術の向かうべきところ
あとがきにかえて
-友へ 高木仁三郎からの最後のメッセージ/高木さんを送る
高木仁三郎・年譜



著者プロフィール

高木仁三郎(たかぎ・じんざぶろう)
1938年、群馬県前橋市生まれ。東京大学理学部化学科卒業。理学博士(東京大学)。専門は核化学。日本原子力事業でエンジニアとして勤務したのち、東京大学原子核研究所、東京都立大学助教授、マックス・プランク核物理研究所客員研究員をへて、原子力資料情報室の設立に参加。1987年から1998年まで同代表。原子力発電、とりわけプルトニウム利用の危険性について、専門家の立場から警告を発し続けた。2000年10月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに筆者が増補した)。


<書評への付記>

正直なところ、もし「3-11」で福島第一原発で原発事故が起きなかったら、高木仁三郎の本を読むことは、一生なかったかもしれない。

「市民」と名のつくものに、少なからぬ違和感を感じていたからだ。「市民」という名をかたったいかがわしさといってもいいだろうか。「市民」といいながら、ある種の「政治」がからんでくるいかがわしい「市民派」。

だが、『原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎、岩波新書、2000)を読んで、高木仁三郎氏は、そういったいわゆる「市民」派とは、まったく関係のない、ほんとうの意味での「市民」であることを知った。知るのが遅すぎたのかもしれない。死後10年以上たって、はじめてその意味を悟ったということだ。

あわせて読んでおきたいのが、『市民科学者として生きる』(高木仁三郎、岩波新書、1999)である。この本は、「市民」と「科学者」をどう両立させて「市民科学者」として生きることになったかを、包み隠さず語っている自伝である。この本で書ききれなかったことが、『原発事故はなぜくりかえすのか』として最後のメッセージになったのである。

癌で亡くなった高木仁三郎氏。おそらく、原発の現場のエンジニアとして働いていた時代の被曝が原因の一つなのであろう。その意味では、象牙の塔のなかという安全地帯で発言する学者とは異なる人であった。

『原子力神話からの解放-日本を滅ぼす九つの呪縛-』(高木仁三郎、講談社+α文庫、2011)も、テーマと内容は重なる点も多いが、あわせて読んでおきたい。

「原子力村」は「世間」論の観点から、大いに検証すべきである。なぜ、人間は、とくに日本人は、個人としてはまともな考えをもっているのにもかかわらず、集団になると、利害関係のある組織に属すると、とたんに思考停止状態になってしまうのか?

意志決定論で有名な議論に、グループ・シンクというものがある。ケネディ政権時代のキューバ危機における意志決定について研究されたものだが、アメリカ人ですら集団のなかでは空気に流されがちなのだ。いわんや、日本人をや、ということか。

「3-11」という未曾有の危機に直面し、歴史が一変した世界に生きる日本人。本書は、自分で考え、自分で行動するためのよきテキストとなる本である。

いかなる立場に立つのであろうとも、かならず一度は考えながら読むべきである。





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書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?

「チェルノブイリ原発事故」から 25年のきょう(2011年4月26日)、アンドレイ・タルコスフキー監督最後の作品 『サクリファイス』(1986)を回想する

『チェルノブイリ極秘-隠された事故報告-』(アラ・ヤロシンスカヤ、和田あき子訳、平凡社、1994)の原著が出版されたのは1992年-ソ連が崩壊したからこそ真相が明らかになった!

<スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む

書評 『コミック みえない雲』(アニケ・ハーゲ=画、グードルン・パウゼヴァング原作、高田 ゆみ子訳、小学館文庫、2011)-ドイツでは親子二代で読み継がれたベストセラー小説のマンガ化

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)

皇紀2670年の「紀元節」に、暦(カレンダー)について考えてみる・・「出生の秘密」(status nascens)というライプニッツのコトバ


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