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2010年12月26日日曜日

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)




世界最古の巨大官僚組織の ”伏魔殿” バチカン銀行の深層をえぐる硬派な調査報道

 『バチカン株式会社』、このタイトルだけみたら、なにやらキワモノめいた内容の本と思うかもしれないが、この本はイタリアのジャーナリズム魂ここにありといった、実に内容の濃い硬派な調査報道本である。副題は「機密文書から知られるカトリック教会の金融・政治スキャンダルの真実」。

 日本語訳で450ページを超える本書は、バチカンが抱える闇についての解明とともに、イタリア現代史についての深層レポートにもなっている。なぜなら、イタリア内部のオフショア治外法権ともいうべき存在のバチカンは、イタリアにとっては国家内国家のような存在であり、バチカンとイタリア政界は切っても切れない関係にあるからだ。

 本書の出版がキッカケになって、闇に葬り去られていた事件の再捜査が始まったという。ニクソン大統領退陣を招いた『大統領の陰謀』のイタリア版のようなものといってよいのだろうか。つい先日も、バチカン銀行による、不正送金容疑の預金2,300万ユーロ(約26億円)の差し押さえ解除請求を、イタリアの裁判所が却下したというニュースが報道されたばかりである(2010年10月21日)。

 本書のディープスロートは、バチカン内部でバチカン銀行の監査にかかわった高位聖職者。死後公開すること遺言にのこし、膨大な資料を託された著者たちは、一年かけて内容を徹底分析、そのベースのうえにさらなる徹底取材の結果、すでに収束したと思われていた「P2スキャンダル」以降にも、さらに深刻なスキャンダルが根絶されることなく、闇に葬られていたことを確認するにいたる。

 不透明なカネの流れ、カネが絡む黒い事件簿。寄付された遺産や献金というかたちで信者の浄財を集めながら、慈善事業を隠れ蓑に作られた口座をつうじて資金を横流し、そして一部は着服
 口座をマネーロンダリング(資金洗浄)目的で使用し、資金運用の内容と、資金使途についての詳細については、財務ディスクロージャーをいっさい拒む

 ローマ教皇直轄の組織である宗教活動教会(IOR)、通称「バチカン銀行」は、まさにバチカンの伏魔殿、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の跋扈(ばっこ)する世界そのものだ。 
 組織の名誉と評判を守るためにスキャンダルが表沙汰になることをひたすら恐れ、情報を握りつぶし、疑惑の中心人物も組織ぐるみで守る姿勢。本書を読んでいて思うのは、遠いイタリアの話ではない。スケールの大小に違いはあれ、この日本でも観察されることだ。

 本書は大著だし、原注やら訳注やら大量にあって、しかもバチカンの組織そのものに熟知していない一般読者にとっては煩雑(はんざつ)であろう。しかし、じっくり腰を据えて読めばイタリア現代史に精通することにもなるし、イタリアもまた、ある意味では日本以上に過去のしがらみが重層的に堆積した伝統社会であることを確認することになる。 

 いかなる組織であれ、それがたとえ営利を目的とはしないものであっても、組織をつくり職員を雇って事業を行う以上、資本主義であろうがなかろうが、カネといっさい縁を切ることは不可能である。だから、宗教組織であっても経理と財務は欠かせない機能であり、組織がそのミッションを実現するためにカネを必要とするのも当然なのだが、しかしこのバチカンという宗教組織はいったい・・・。

 そもそも人間にとって宗教活動とはいったい何なのか? カネという人間の欲望はいったい何なのか? こういった深いことも、ため息をつきながら考えてしまう本である。


<初出情報>

■bk1書評「世界最古の巨大官僚組織の ”伏魔殿” バチカン銀行の深層をえぐる硬派な調査報道」投稿掲載(2010年10月29日)
■amazon書評「世界最古の巨大官僚組織の ”伏魔殿” バチカン銀行の深層をえぐる硬派な調査報道」投稿掲載(2010年10月29日)





目 次

いまバチカンで何が起きているのか
第1部 バチカンの秘密文書
 第1章 マルチンクスの繁栄と没落
 第2章 イタリア首相の裏口座
 第3章 架空名義の口座群
 第4章 動き出した巨額賄賂
 第5章 司法当局対バチカン銀行
 第6章 隠蔽工作
 第7章 教皇庁を欺く不逞の輩たち
 第8章 教皇の金庫、教皇の株式会社
第2部 マフィアとバチカン
 第1章 高位聖職者たちの陰謀
 第2章 告発されたバチカン


著者プロフィール

ジャンルイージ・ヌッツィ(Gianluigi Nuzzi)

1969年、イタリア・ミラノ生まれ。『パノラマ』誌および『イル・ジョルナーレ』誌の記者として活躍し、現在は右派系新聞『リーベロ』特派員。『コッリエーレ・デッラ・セーラ』紙にも寄稿。1994年よりイタリアの政界・金融界を巻き込んだ主要な刑事事件を追う。近年発表した数々のスクープ記事によって、司法当局が新たに調査に乗り出すなど、話題を呼んでいる。2008年春、レナート・ダルドッツィ師が収集したバチカン銀行関連の内部資料を独占入手、1年間の資料分析と追加取材をへて『バチカン株式会社(Vaticano S.p.A.)』を執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

竹下・ルッジェリアンナ

1971年、イタリア・パレルモ市生まれ。1996年、国立ヴェネツィア大学東洋言語文学部日本語学科日本宗教哲学専攻卒業。1999年、花園大学文学研究科修士課程修了。2002年、大阪府立大学大学院人間文化学研究科博士後期課程修了。専攻は宗教哲学、禅学。現在、京都外国語大学イタリア語学科専任講師。2009年、第1回朝日21関西スクエア賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 イタリアの首都ローマは、カトリック世界にとっては「永遠の都」、すなわち世界の中心である。

 イタリアからみれば「国家内国家」ともいうべきバチカンは、たとえイタリア国内にあっても主権国家である。
 1868年の明治維新に先立つ1860年に国家統一をなしとげたイタリアとローマ教皇庁は、長年にあたって犬猿の仲であったが、ファシスト党のムッソリーニ政権のイタリアとのあいだで結ばれたラテラノ条約(1929年)によって関係は正常化した。

 外交上の免責特権を得たバチカン市国は、イタリアの司法当局の介入を合法的に回避できる守秘義務が完全に守られ、ゆえにバチカンでの資金運用はオフショアとなる。欧州でいえばルクセンブルク大公国、欧州外ではケイマン諸島などがオフショアとして有名だ。

 この外交上の免責特権がマネーロンダリングの温床になっているわけなのだ。スイスが米国による揺さぶりで特権的な地位を失いつつある現在、欧州に存在するバチカンは依然として不正資金洗浄の温床であうことを止めていない。
 
 こういう面白い記事があるので、参考にされるとよい。ベールに包まれたバチカンの財政事情(佐藤康夫 Yasuo Sato ローマ在住ライター)

 バチカン市庁の決算報告はないが、第8章の「教皇の金庫、教皇の株式会社」が、対外秘の監査資料に基づくものだけに興味深い。この章に書かれた事実は、マネロンではないが、教会や修道院の経営における財務の意味を考えるうえでは、むしろこの第8章だけで一冊にしてもらいたいくらいだ。修道会からの借り入れ申請、とくに遺産相続関係の係争は、財源としての寄付をめぐるものだけに興味深い。

 どんなに崇高な教えを説いたとしても、世俗世界で活動を行う以上、人間の欲望とカネの問題から完全に身を離すことはありえないからだ。これは資本主義でなくても同じことである。
 秘匿性、口座取引情報漏洩を極度に恐れる修道会関係者にとっても、バチカン銀行はいわゆる「プライベートバンク化」として機能しているようだ。

 本書は、秘密結社フリーメーソンがらみの「P2スキャンダル」以後を主に扱ったものである。
 「P2スキャンダル」で明るみになったバチカンの闇については、多くの本が出版されている。日本語で読めるものには、マネローンダリングの解説書も含めて以下のようなものがある。
 現在のローマ教皇の前の前のヨハネ=パウロ一世の死は、教皇就任後一ヶ月というあまりにも突然でかつ不可解なものであった。

『法王暗殺』(デイヴィッド・ヤロップ、徳岡孝夫訳、文藝春秋、1985)
『誰が頭取を殺したか-P2スキャンダルと法王庁-』(ラリー・ガーウィン、飯島宏訳、新潮文庫、1985)
『霧の会議 上下』(松本清張、文春文庫、1990)
『マネーロンダリング入門-国際金融詐欺からテロ資金まで-』(橘玲、幻冬舎新書、2006)

 田中真紀子元外相は、日本の外務省を指して「伏魔殿」と言い放ったが、バチカン銀行の闇は日本の外務省の比ではなさそうだ。

 この本を読んだからと言って、とくに何かの得になるというわけでもないが、興味のある人は目を通して損はないと思う。



<関連サイト>

ローマ法王、スキャンダルまみれのバチカン銀行に大ナタ (JBPresss、2014年7月10日)
・・Financial Times の翻訳記事。清廉潔白な教皇フランシスコによる原点回帰。成功するのかどうかは未知数
カトリック教会が貧しい人々の支援に力を入れるようにするというローマ法王フランシスコの「ミッション」の一環として、宗教事業協会(IOR)-スキャンダルが多く生じているバチカン銀行の正式名称-の規模が大幅に縮小される。・・(中略)・・資産運用の機能をはぎ取ることにより、1980年代からバチカン銀行を悩ましてきたスキャンダルの大半の根源を取り除きたいとローマ法王庁の幹部は考えている。

(2014年7月10日 項目新設)



<ブログ内関連記事>

書評 『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』(松本佐保、中公新書、2013)-「近代」がすでに終わっている現在、あらためてバチカン生き残りの意味を考える

600年ぶりのローマ法王と巨大組織の後継者選びについて-21世紀の「神の代理人」は激務である
・・南米から初の教皇の誕生!

「ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ-書物がひらくルネサンス-」(印刷博物館)に行ってきた(2015年7月1日)-15世紀に設立された世界最古の図書館の蔵書を実物展示

(2013年12月24日、2015年7月7日 追加)






(2012年7月3日発売の拙著です)








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