「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2026 禁無断転載!



ラベル 音声 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 音声 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024年7月18日木曜日

書評『広東語の世界 ― 香港、華南が育んだグローバル中国語』(飯田真紀、中公新書、2024)― 広東語は「中国語方言」ではなく「もう一つの標準中国語」だ!

 
 
 『広東語の世界 ― 香港、華南が育んだグローバル中国語』(飯田真紀、中公新書、2024)という本を読んだ。先月出版されたばかりの新刊書である。  

「広東語」は「カントンご」と読む。香港を中心に広東省(カントンしょう)でつかわれてきた言語だ。そして、いまなお旺盛に使用されている。 

しかも広東語は、香港を中心とした広東省だけでなく、「華僑」という形で、海外移民とともに東南アジアや北米大陸にも拡がっている。世界全体で8,000万人の話者がいうという大言語でもある。 

日本では一般的に「中国語の方言」という扱いを受けてきた広東語だが、「もう一つの標準中国語」と考えた方が実態に近い。それが、中国語学を専門とする著者の最終的な認識である。 

漢字音の読みが「普通話」(プートンホワ)と呼ばれる「北京語」(マンダリン)とはまったく異なることから、それはわかる。広東語は耳で聴いただけでは、どういう漢字に該当するのか見当がつかないからだ。

1997年に香港が「返還」されてから、すでに四半世紀がたっている。にもかかわらず、依然として広東語が普通話にとって代わられることがないという。 

なぜいまだに広東語は、香港でしぶとく生き続けているのか? その秘密が中国語学の立場から、さらに社会言語学的なアプローチで明らかにされる。そのカギは、広東語の「言文不一致」と、いまなお公用語である英語の存在にある。くわしくは本文を見ていただきたい。 

巨大な中国は、けっして単一の存在ではない。「南船北馬」という漢字熟語があるように、長江を境にして南北の違いがきわめて大きいことは、かつてから指摘されてきた。だが、言語という側面にそくして考えてみると、さらに複雑な様相が見えてくる。 

それはまた、コミュニケーションツールとしての「漢字」について考えることにもつながっていくのである。漢字は表音文字であるとともに表意文字である。書き言葉としての漢字文章は、広く中国語圏で共有されている。 ざっとした意味をとるだけなら、日本語人にも可能だ。


(香港POPSとして広東語でカバーされた日本の楽曲集のCD ブログ筆者コレクション)


「返還」後の現在の香港に関心のある人1970年代から90年代にかけての黄金時代の「香港映画」や「香港POPS」にはまったことのある人(・・かく言うわたしも、お気に入りの香港POPSを YouTube で流しながら読んでいた)。






そのほか、複数の中国語が移民社会ととともに存在する東南アジアで暮らしたことのある人、そしてニューヨークやサンフランシスコなど、米国の有名なチャイナタウンを知っている人なら、じつに興味深く読めると思う。 

とはいえ、いまから本格的に広東語を勉強しようとは、さすがに思わないな。かつてチャレンジしたことがあったが断念したまま現在に至るのは、声調が6つもあるのでハードルが高すぎるからだ。声調が4つの普通話よりも多いのだ。

広東語やベトナム語のように声調の多い言語は、若いときから耳を慣らしておかないと習得はむずかしい。


画像をクリック!
 

目 次
まえがき 
序章 広東語はどこで話されているか 
第1章 広東語はどのような言葉か 
第2章 話し言葉―香港の標準語 
第3章 書き言葉―言文不一致な中国語 
第4章 英語、北京語との共存、競争 
第5章 その他の中国語方言 
終章 広東語から問い直す「中国語」「方言」 
あとがき 
主要参考文献

著者プロフィール
飯田真紀(いいだ・まき)
1998年東京外国語大学大学院地域文化研究科修士課程修了、2005年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。香港中文大学中国文化研究所客員研究助手、北海道大学メディア・コミュニケーション研究院准教授を経て、東京都立大学人文社会学部教授。専門は中国語学・広東語文法。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

⇒ 広東語の短いフレーズの発音つき


<ブログ内関連記事>

・・中島みゆきの楽曲の多くが、『最愛』など香港POPSとして広東語でカバーされていることは、知る人ぞ知る事実。

・・香港人はまさに「アングロ・チャイニーズ」を体現したような存在

・・中国南部からの大反乱。首謀者の洪秀全は広東出身だが広東語ではなく、客家語を母語としていた


(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end

2013年11月22日金曜日

JFK暗殺の日(1963年11月22日)から50年後に思う(2013年11月22日)



冒頭に掲載したのはアメリカを代表する週刊誌 TIME(タイム) の今週号の表紙です。The Moment That Changed America とあります。「アメリカを変えた瞬間」、いや「世界を変えた瞬間」から、そうか、もう50年もたったのか・・・。

1963年11月22日、JFKことケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺されたのでした。スナイパーによる狙撃の瞬間、飛び散った脳漿をかき集めようとする動揺したジャクリーンの映像はいまみても衝撃的すぎます。このシーンは日本でも衛星中継をつうじて日本でも視聴した人が少なくなかったようです。

すでに生まれていたとはいえ、もちろんわたしの記憶にはありません。ですが、ケネディを尊敬していた父親からは、ケネディの話はよく聞かされたものです。たとえば、ケネディ家では食卓でいつも食事をしながら議論をしていたとか、ボウル一杯のサラダを食べていたそうだ、とか。

先日(11月15日)に着任した愛娘のキャロライン・ケネディ駐日大使は、この日本で「その日」を迎えることになるわけです。アメリカ国内はもとより、世界的にも注目度の高い「ケネディ神話」がまさにここ日本でも復活するのを感じるのはわたしだけではないでしょう。

なにより証拠に、アメリカ大統領からの信任状をたずさえて皇居に馬車で向かったキャロライン大使をみるために数千人が集まったというのですからすごいものです。

1960年の安保闘争前後、若き日にケネディに代表される理想主義にひかれた人が日本にも多かったであろうことは容易に想像できます。敗戦国のナショナリズムの発揚と理想主義が、当時は両立していたわけです。

JFK暗殺関連の情報は2039年に解禁されるようですが、「その日」をわたしは迎えることができるのかどうか? ぜひ「真相」を知りたいと思います。


歴史的ディベイトとされるケネディ対ニクソンのTV選挙戦

ジョン・F・ケネディの就任演説もまた名言をのこしています。Ask not what your country do for you, ask what you can do for your country. (国があなたにしれくれることではなく、自分が国のために何ができるか尋ねてほしい)。これは1961年のものです。

この演説も音声できくと理想主義にあふれ格調高く、英語学習教材としても定番のものですが、大統領選挙戦におけるケネディ対ニクソンのTVディベートもまた、これ以上のものはないと言われるほど有名なものです(写真を参照)。これは1960年に行われたものです。



わたしはこの4回にわたっておこなわれたTVディベートで英語を勉強しました。通勤電車のなかでほとんど内容も覚えてしまうくらい何度も何度も繰り返し繰り返しウォークマンでテープを聞きこみました。大学を卒業して社会人になった1980年代後半のことです。テープから iPod などに媒体が変化しようとも、いまでも英語の勉強法はこれに尽きると考えています。  

この教材は音声教材なので、ラジオでの視聴のような感じです。たしかに弁護士出身でプロの政治家であったニクソンは説得力がありますが、ややだみ声のニクソンに対し、声質にかんしてもケネディのほうがフレッシュなだけでなく、チェンジ(変化)を求めるアメリカ国民に訴えるものが大きかったのではないかという印象をもったものです。

もちろん、その後のウォーターゲート事件で大統領を辞任することになったニクソンのことを知っているのでバイアスがかかっているのかもしれませんが・・・。

"I have a dream."(わたしには夢がある) のキング牧師とケネディは同時代のアメリカ人で、理想肌であったことも共通しています。もちろんケネディについては国家の最高のポジションに就いていた大統領でしたから、実際は汚い側面にも関与していたようですが、それはここでは問いません。

この二人がともに凶弾に倒れたことは、まさに「アメリカの悲劇」としかいいようがありません。


愛娘のキャロラインもまたリベラル派

リベラルがネガティブに語られることが多い現在の日本ですが、そもそもアメリカという人工国家は、旧世界から自らを解放した人々がつくった国だということは忘れないほうがいいでしょう。

リベラルのもともとの意味は左派ではなく、自由派ということです。JFK自身もリベラルではありましたが同時に現実主義者でもありました。ベトナム戦争に本格介入したのは大きな問題ではありましたが。

もちろん1958年生まれの愛娘キャロラインも JFK の衣鉢を継ぐ存在でしょう。その点がオバマ大統領と価値観を同じくするところなのでしょう。オバマ大統領自身、チェンジ(変化)を訴えて大統領に選出された人です。

政治家経験も外交経験もないことを問題視する評論家も少なくありませんが、コロンビア大学のロースクール卒業で弁護士としてのキャリアをもつ人ですし、その点は心配する必要はあまりないと思います。

弁護士は短時間で膨大な資料を読み込み、訴訟戦略を策定して実行するのがその職業の根幹にあるからです。キャロラインもその能力をフルに発揮することでしょう。実務に精通した優秀な「ナンバー2」やスタッフたちに恵まれれば、予想を超えた働きをする可能性だって否定できません。すでに公式ツイッターでは日本語版まで発信されています。

意外とタフニゴーシエーターかもしれませんよ。たんなるお飾りの "プリンセス" だと思ったら大間違いではないでしょうか。


「ケネディ次期駐日米国大使から日本の皆さんへ」 というビデオメッセージが着任前に公開されています。着任前にビデオメッセージを作成し公表するのは初めてだそうです。わかりやすい英語で(*日本語字幕つき)、好感度の高いビデオメッセージです。



なお、画面中央ではなく画面の右寄りで、しかもすこし斜めにすわっているのは、威圧感を与えないとの配慮だそうです。

着任前から話題になっていたキャロライン駐日大使。「ケネディ神話」は現在でもやはり生きていたわけですね。ここのところあまりしっくりとはいっていない日米関係ですが、キャロラインを駐日大使に選んだ作戦は、まずは初戦でオバマの勝ちといったところでしょうか。

キャロライン自身、日本には多大の関心をもっているということですが、JFK自身も太平洋戦争では帝国海軍の駆逐艦と衝突して大破した米海軍魚雷艇の艦長として危機を乗り切ったリーダーシップを発揮した人です。ブッシュの父もまた海軍パイロットとして日本軍に撃墜された人であったことを思い出させます。そもそもケネディ家はボストン出身ですから、日本との縁はきわめて深いファミリーなわけです。

日米関係がよりよい方向に発展することは、日米双方にとって重要なことですね。おおいに期待したいと思います。「ケネディ神話」復活によって、わたしもアメリカへの関心がふたたびよみがえってきたのを感じています。






<関連サイト>

SHOCKING: Video unreleased JFK assassination
・・ビデオがはじまってから6分前後で狙撃の瞬間がカラー映像で見れます。ショッキングな映像です。
The 1st Kennedy/Nixon Presidential Debate - Part 1/4 (1960)
・・ケネディ対ニクソンのTVディベート映像

ケネディ次期駐日米国大使から日本の皆さんへ
・・ビデオ・メッセージ(YouTube)

キャロライン・ケネディ駐日米国大使 キャロライン・ケネディ駐日米国大使
認証済み twitter アカウント @CarolineKennedy

対中国外交でも生かすべき米「リベラル・ホーク」人脈執筆者(「フォーサイト」、青柳尚志 2013年11月28日)
・・キャロライン・ケネディもまた「リベラル・ホーク」(リベラル・タカ派)であることが書かれている


PS ブログ記事執筆から3ヶ月後に記す(2014年2月19日)

なぜオバマ政権の大使は「無知」なのか-米国の外交に暗雲をもたらす選挙功労人事 (古森義久、JBPress、2014年2月19日)
・・「2009年から現在までの、オバマ政権における大使の政治任用は全体の53%という高い水準を記録した。ブッシュ政権では30%、クリントン政権では29%、先代ブッシュ政権では30%、レーガン政権は38%である。これらの数字で明らかなように、オバマ政権がキャリア外交官を大使に選ばず、外部からの政治任用者を登用する比率は異様に高い」  

このブログ記事を書いてから3カ月、最初の三カ月は蜜月(ハネムーン)として見守るものだが、さすがにキャロライン・ケネディ大使の資質に疑問符がつくようになってきいた。 和歌山県太地町のイルカ漁反対、その他もろもろ。上記の古森義久氏執筆の記事を読むと、オバマ政権の突出した異常(?)ぶりが明らかになる。古森氏は「大使人事が“カネ”の額で左右されている」と書いている。恩賞人事の最たるものである。  (2014年2月19日 記す)。


(追加)

「JFK-その生涯と遺産」展(国立公文書館)に行ってきた(2015年3月25日)-すでに「歴史」となった「熱い時代」を機密解除された公文書などでたどる

(2015年3月26日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ

映画 『ハンナ・アーレント』(ドイツ他、2012年)を見て考えたこと-ひさびさに岩波ホールで映画を見た
・・映画には直接でてこないが、イスラエルでアイヒマン裁判が行われたときアメリカではまさにケネディ大統領時代であった

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋社、2008)-第二次大戦後の米国を設計したシンクタンクの実態を余すところなく描き切ったノンフィクション
・・冷戦時代の1960年代はまた「合理主義」全盛時代でもあった

「ハーバード リーダーシップ白熱教室」 (NHK・Eテレ)でリーダーシップの真髄に開眼せよ!-ケネディースクール(行政大学院)のハイフェッツ教授の真剣授業
・・ハーバード大学の行政大学院はケネディを記念してその名をつけている

岡倉天心の世界的影響力-人を動かすコトバのチカラについて-
・・ボストン美術館の日本美術担当キュレータをつとめた岡倉天心。そもそもボストンは幕末以来、貿易をつうじて日本との深い縁がある。貿易をつうじて蓄積された富が美術館やオーケストラなど各種の文化遺産の背景にある

「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」(東京国立博物館 平成館)にいってきた

Two in One, Three in One ・・・ All in One ! -英語本は耳で聴くのが一石二鳥の勉強法

書評 『戦前のラジオ放送と松下幸之助-宗教系ラジオ知識人と日本の実業思想を繫ぐもの-』(坂本慎一、PHP研究所、2011)-仏教系ラジオ知識人の「声の思想」が松下幸之助を形成した!
・・ラジオによる声のチカラ

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)-トップに立つ人、人前でしゃべる必要のある人は必読。聞く人をその気にさせる技術とは? ・・オバマ演説の秘密についても一章をさいて解説

シビリアン・コントロールということ-オバマ大統領が政権批判したアフガン駐留の現地司令官を解任

冬の日の氷雨のなか、東京のど真ん中を走る馬車を見た
・・プリンセスと呼ばれることの多いケネディ新大使と馬車はよく似あっていた

書評 『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)-アメリカの本質を知りたいという人には、私はこの一冊をイチオシとして推薦したい


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2013年10月27日日曜日

書評『サウンド・コントロール ―「声」の支配を断ち切って』(伊東乾、角川学芸出版、2011)― 幅広く深い教養とフィールドワークによる「声によるマインドコントロール」をめぐる思考



現役の指揮者で大学教官である著者は、『さよならサイレントネイビー  ―  地下鉄に乗った同級生』(集英社、2006)という著書で作家としてデビューしている。

本書『サウンド・コントロール  ―「声」の支配を断ち切って』(伊東乾、角川学芸出版、2011)は、オウム真理教に参加したことによって地下鉄サリン事件にかかわり、死刑判決を受けた同級生の物理学徒について書かれた本だ。

「サイレントネイビー」とは、みずからの行為についてはいっさい弁明をしないという日本海軍の美学のようなものだが、みずからの行為について沈黙を守るのではなく、世の中にむけて弁明せよというのが著者の主張だ。だが、内容については共感できる部分と、なんだか言いようのない違和感を感じる両面があったことを覚えている。

本書 『サウンド・コントロール-「声」の支配を断ち切って-』について話を進めると、「サウンドコントロール」というと、オーディオデバイスや音声入出力端子についての音響工学の話のようだが、内容はまったく違う。『さよならサイレントネイビー』の続編といっていい内容の本だ。

大量虐殺の発生したルワンダの裁判から始まった記述は、ソクラテスを裁いた古代ギリシャ裁判員法廷、封建制日本の裁きの場であるお白州、ナチス・ドイツのホロコースト、現代日本のマルチメディア裁判員法廷と、いっけんバラバラでとりとめのないような印象を受ける。

著者が本書で一貫して主張したいのは、「声の支配の権力性」と「音によるマインドコントロール」がもつ問題という一点に収斂(しゅうれん)される。

音声、すなわち聴覚が人間にとってより根源的な知覚であることは、本書では触れられていないがソクラテスのデルフォイの神託や、ジャンヌ・ダルクへの神の呼びかけを考えてみればわかることだろう。

声の支配によるコントロールがより根源的なものであることは、これもまた本書では触れられていないが、マスコミといえば新聞とラジオしかなかった戦前、しかもJOAK一局しかラジオ放送がなかった戦前日本のことを考えれば想像することは困難ではない。

マインドコントロールは声によって行われる。これはオウム真理教においてもマントラという形で行われていた。そもそも大乗仏教と密教には音声によるマインドコントロールが埋め込まれている。

本書は 『さよならサイレントネイビー』の続編とも言うべき内容なのだが、そのために逆に読後感があまり心地よくない。いまひとつ著者の思想には共感できないものを感じるからだ。

違和感の源泉は、著者が4代(?)つづくキリスト教の家に生まれたという出自にあるのかもしれない。圧倒的多数の一般日本人とはやや異なる視点でものをみているためもあろう。「空気」に着目した山本七平や「世間」に着目した阿部謹也のように。

わたしにとっては、著者の問題意識はアタマでは理解できなくはないのだが、なぜか言いようのない違和感が残るのは否定できない。鶴見俊輔に感じるのと同じ、共感と違和感のまじりあった感想に似ているような気がする。もしかすると、それは著者が戦略的に狙っていることなのかもしれないが・・・。

だが、取り上げられたテーマと考察そのものは、じつに知的好奇心を刺激するものが多い。

法務官僚からキリスト教に改宗した古代ローマの聖アンブロジウスがキリスト教に埋め込んだ音声による権力装置、音響学にも造詣の深かった作曲家の父をもつガリレオ・ガリレイにおける「音楽の知」など、じつに読み応えがある。クラシックの音楽家である著者は、キリスト教がその根幹にある西欧文明について熟知しているからだ。

数学や物理学と音楽は密接な関係にあるが、それにとどまらず西欧的な意味のリベラルアーツを身につけている著者の守備範囲はきわめて広くかつ深い。数学と物理学、音楽と法学と人文学の融合。まさに「文理融合の知性である。

読み方は読者次第だ。


画像をクリック!


目 次

  飛べない白鳥のイントロダクションⅠ
第1部 南へ 一九九四/二〇〇七年、ルワンダ 草の上の合議
 第1章 サバンナの裁判員
 第2章 雨のガチャチャ
  飛べない白鳥のイントロダクションⅡ
第2部 西へ 司教座と法廷 ローマからギリシャへ
 第3章 ガリレオのメトロノーム
 第4章 官僚アンブロジウスの遠謀
 第5章 玉座は蜂を駆逐する
  飛べない白鳥のイントロダクションⅢ
第3部 東へ 白い砂の沈黙 日出づる国の審判で
 第6章 石山本願寺能舞台縁起
 第7章 銀閣、二つのサイレンサー
 第8章 裁きの庭と「声」の装置
第4部 北へ メディア被曝の罠を外せ! サウンド・コントロールと僕たちの未来
 第9章 確定の夜を超えて
  跋 それでも鳥は北を目指す
あとがき

著者プロフィール 

伊東 乾(いとう・けん)
1965年、東京生まれ。作曲家、指揮者。ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督。東京大学理学部物理学科、同大学院総合文化研究科博士課程修了。2000年より東京大学大学院情報学環・作曲=指揮・情報詩学研究室准教授。第二次世界大戦時の音楽メディア情宣への批判を原点に、人間にとって「聴く」とは何かをジャンルを越えて問いつつ、作曲・演奏・基礎研究などに取り組む。第1回出光音楽賞ほか受賞多数。2006年にはオウム真理教のマインド・コントロールを追った『さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生』(集英社)で第4回開高健ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『指揮者の仕事術』(伊東 乾、光文社新書、2011)-物理学専攻の指揮者による音楽入門

書評 『戦前のラジオ放送と松下幸之助-宗教系ラジオ知識人と日本の実業思想を繫ぐもの-』(坂本慎一、PHP研究所、2011)-仏教系ラジオ知識人の「声の思想」が松下幸之助を形成した!
戦前においてラジオは唯一のマスメディアであり、しかもJOAK一局しかないかったからだ。この点については、著者による 『ラジオの戦争責任』(PHP新書、2008)においてすでに触れている。大東亜戦争の突入したのは。ラジオによって増幅された国民の声であったことも指摘されている。

書評 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子、朝日出版社、2009)-「対話型授業」を日本近現代史でやってのけた本書は、「ハーバード白熱授業」よりもはるかに面白い! ・・戦争へと押しやった国民の声はラジオによって増幅された可能性が高い

「海軍神話」の崩壊-"サイレント・ネイビー"とは"やましき沈黙"のことだったのか・・・

書評 『対話の哲学-ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜-』(村岡晋一、講談社選書メチエ、2008)-生きることの意味を明らかにする、常識に基づく「対話の哲学」

【セミナー開催のお知らせ】 「生きるチカラとしての教養」(2013年6月27日)

「オックスフォード白熱教室」 (NHK・Eテレ)が面白い!-楽しみながら公開講座で数学を学んでみよう
・・アートと数学の関係についても講義

讃美歌から生まれた日本の唱歌-日本の近代化は西洋音楽導入によって不可逆な流れとして達成された
・・音楽による「洗脳」はここからはじまった。すでに不可逆の流れとして日本人の脳は西洋化されている


(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end