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2017年6月10日土曜日

「逆回し」とは? ― 『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』は常識とは「真逆」の方法で製作された歴史書であり、ビジネス書である



つい先日(2017年5月18日)のことだが、『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン社、2017)というタイトルの本を出版した。2017年の現時点から、240年前の1776年までさかのぼった、ビジネス書のフォーマットで製作された歴史書だ。

内容は文字通り、「ビジネスパーソンのための近現代史」なのだが、コンセプト自体はもう少し長い。「ビジネスパーソンの、ビジネスパーソンによる、ビジネスパーソンのための」近現代史である。いうまでもなく、「人民の・・・」で始まる、リンカーン大統領の「ゲティスバーグ演説」の一節をもじったものだ。

なぜこのようなことを書くかというと、この3条件を備えたビジネスパーソン向けの歴史書がきわめて少ないからだ。

いわゆる「ビジネスパーソン向け」と銘打ってある本は、さまざまな分野で大量に出版されていくことだろう。だが、リアルなビジネス体験をもたない著者が書いた本は、現役のビジネスパーソンの立場から言わせてもらえば、いまひとつリアリティを欠いているといわざるをえない。

だが、それだけなら、それほどたいした特徴だとはいえないかもしれない。本書の最大の特徴は、「逆回し」という表現で「歴史を過去にさかのぼる」という手法を導入したことにあると考えている。経済学者のシュンペーター流にいえば、「新機軸」と言っていいかもそれない。


(カバーの袖に記載された本文からの引用)


 「逆回し」というのは、もちろん比喩的な表現だ。録画したビデオを「逆回し」すると、人間の動作がなんだかぎこちなく再生されてしまい、思わず笑ってしまうことがある。だが、そういう意味でつかったわけではない。ある意味では、「リバース・エンジニ アリング」の実践と考えていただいたほうがいいかもしれない。

いま目の前にある製品をバラバラに分解することで、その構造と機構、構成部品の詳細を知り、「見えない設計図」を再現する行為をさして「リバース・エンジニアリング」という。

「リバース・エンジニアリング」は、通常のものづくりの真逆の方向で行われる。最終製品をバラしてモジュールにし、モジュールを分解してユニットに、ユニットを分解して個々のパーツを取り出す。このプロセスで分解することで、逆に設計図が見えてくる。「リバース・エンジニアリング」の発想は、ものづくりのプロセスを「逆回し」にするものだ。

とはいえ、最終製品をバラバラにして取り出してきたパーツは、あくまでも断片であるに過ぎない。ユニットや、モジュールの単位まで再構成しなくては、設計図(=ストーリー)が見えてこない。ストーリーが明確でないと、アタマのなかで明確なイメージを構築できない恐れがある。執筆にあたって最大の難関はそこにあった。

「逆回し」で「さかのぼる」方法論によって制作された作品はないだろうか? なにかヒントになるものがないかと探した結果、NHKで『さかのぼり日本史』という番組が放送されていたことを知った。

2011年に放送されたこの番組は、ある特定のテーマを設定して日本史を「さかのぼる」という形式の歴史ものだ。放送後にはテーマごとに単行本化もされている。



■ヒントにしたのは「逆回し」で製作された映像作品

ほかに参考になるものがないかと探索している際に思い出したのが、韓国映画の『ペパーミント・キャンディー』(イ・チャンドン監督、1999年制作)という作品だ。


 (DVDのメインメニューより チャプター1~4)


この作品は、「20年間の韓国現代史を背景に、ひとりの男が絶望の淵から人生の最も美しい時期までをさかのぼっていくという手法」だと、DVDの解説文にある。

独立したが事業に失敗、悲劇的な最期をとげることになる主人公が、時間を「巻き戻し」て過去にさかのぼっていき、最後は人生でもっとも美しかった瞬間で終わるというストーリー展開だ。全体で7つの「チャプター」で構成されている。

一般的な映画とは真逆の発想だが、ハッピーエンドで終わる映画であることには変わりはない。見終わったあと、じつに不思議な印象が残る映画だ。


 (DVDのメインメニューより チャプター5~7)


似たような作品には、フランス映画の『ふたりの5つの分かれ路』(フランソワ・オゾン監督、2004年制作)がある。離婚した夫婦が、離婚からさかのぼって出会いまで時間をさかのぼるという映画だ。

映像作品はDVDで視聴する場合、チャプターごとに番号とタイトルがついているので、意識的に区分して視聴することも可能だ。チャプター内では、シークエンスごとに時間の流れにしたがって物語は展開するので違和感はない。

文字として記された書籍なら、紙の本であれ電子書籍版であれ、映像より対応しやすいのではないか? そこまで考えてから、ようやく本書の構想がまとまり、執筆を開始することができるようになったのだった。じつに3ヶ月も費やしてしまった。



■「逆回し」は、歴史書としては「常識」に反する発想だが・・・

人間にとって「さかのぼる」という行為は、じつは自然な発想なのである。

長い年月を生きてきた人なら当然のことであるが、それほど長い人生を生きていない若者だって、学校時代のことを思い出したりして懐かしい想いをするだろう。自分が「いま、ここに」存在するのは、その前に自分の親がいるからであり、その親にもまた親がいる。さかのぼれば、その連鎖は無限につづいていくことになる。

過去を振り返って出来事を思い出す。人間にとってはごく当たり前のことである。そして、人生にはいくつかの「分岐点」があることに気がつく。人生だけではない、歴史にもいくつもの「分岐点」がある

これは「現在」からさかのぼってみてはじめてわかることだ。その渦中にいるとそれが分岐点であることは正確にはわからないが、振り返ってみて、はじめてそうだと気がつくことも多い。

「逆回し」とは、「流れ」を重視する歴史書にはあるまじき非常識な試みだろう。だが、「現在」を知り、「未来」を考えるために歴史を知ることが必要であるならば、「逆回し」という発想はけっして非常識ではないはずだ。



■「現在」を起点に「未来」と「過去」を認識する

かつてブログに 書評『人間にとって科学とはなにか』(湯川秀樹・梅棹忠夫、中公クラシック、2012 初版 1967)-「問い」そのものに意味がある骨太の科学論 という記事を書いているが、科学的認識の方向性は、現在を起点にして、過去と未来の二つの方向に展開されうることが、同書で指摘されていることを紹介した(・・下図を参照)。


(人間の認識は「現在」を起点に「未来」と「過去」に向かう)


ビジネスパーソンの活動は、基本的に「未来」に向けてのものである。
歴史家の活動は、基本的に「過去」に向けてのものである。

だが、科学的認識の方向とおなじく、これは認識のベクトルが異なるだけで、認識の方法そのもの基本的に同じ構造をもっているといってよい。

一般に「未来」を予測することは難しいが、自分自身が体験している「過去」を振り返ることは比較的容易であるといえる。だから、人間は自分自身の「過去」の体験をベースにして「未来」を予測するのである。

だが、人間の体験には限界がある。自分が体験していること自体は一次情報であるが、あくまでも主観的なものである。自分が体験していないことは、あくまでも伝聞であり、情報の性格としては二次情報、あるいは三次情報となってしまうことは仕方ない。

だからこそ、イマジネーションが必要とされるのである。

未来を知るために過去を知る。過去についての正確な認識をもつためにはイマジネーションで補う。そして、「過去」と「未来」が「現在」を規定していることを知れば、まずは「過去」に「逆回し」でさかのぼることが、「現在」をより深く、かつ正確に知ることにつながることが理解されるであろう。

「逆回し」の発想とは、ただ単に振り返るだけでなく、データをもとに事実をあぶりだし、それをイマジネーションで補うことを意味しているのである。

「逆回し」という発想の実践として製作された『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』は、この機会にぜひ読んでみて欲しいと思う次第だ。

執筆中は、『「現在」がわかる「逆回し」世界史講座』という「仮タイトル」だったが、最終的に出版社の判断で現在のタイトルに落ち着いたというエピソードをここに書き留めておくこととしよう。


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2017年5月18日に5年ぶりに新著を出版します-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(佐藤けんいち、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)

「ビジネス書か歴史書か、それが問題だ!」-『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』を書店のどのコーナーに並べるか?

『正論』最新号(2017年9月号)に拙著の「書評」が掲載されました-「まことに厄介な、かつスリリングな歴史書」

自分のアタマで考え抜いて、自分のコトバで語るということ-『エリック・ホッファー自伝-構想された真実-』(中本義彦訳、作品社、2002)
・・「私が知る歴史家の中に、過去が現在を照らすというよりも、現在が過去を照らすのだという事実を受け入れる者はいない。大半の歴史家は、目の前で起きていることに興味をしめさないのだ。」(ホッファー『自伝』より)

(2017年9月3日 情報追加)


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2016年1月10日日曜日

「世界の英知」をまとめ読み ー 米国を中心とした世界の英知を 『知の逆転』『知の英断』『知の最先端』『変革の知』に収録されたインタビューで読む



2016年にの新年に「世界の知性」のインタビュー集をまとめよみした。いずれも、英語圏を中心とした米英(とくに米国)の知の巨人たちへのインタビューである。以下の4冊がそのリストである

『知の逆転』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2012)
●『知の英断』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2014)
●『知の最先端』(大野和基=インタビュー・編、、PHP新書、2013)
●『変革の知』(岩井理子訳、角川新書、2015) 

この順番で読んでいったのだが、やはりなんといっても『知の逆転』がダントツに圧倒的だった。本を読んで知的に興奮するということは、そうめったにあることではない。この本は、まさにその「めったにない本」である。

『知の逆転』に収録された賢人たちは、ほはじつにスゴい。いかに列挙してみよう。

ジャレド・ダイアモンド、 ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス 、マービン・ミンスキー 、トム・レイトン 、ジェームズ・ワトソン。いずれもいわゆる理系分野を中心にして、その他の領域にも横断的に語ることのできる「知の巨人」たちである。特定の肩書きでは語ることのできない、横断的知性の体現者たちである。

脳科学の知見のあるインタビューアーならではの「質問力」と「対話力」がフルに発揮されたもので、掲載分量の制約がないので限りなくディープ・インタビューに近い。あらためてこの本の評判がきわめて高いことを確認した次第。遅ればせながら、わたしも「この本は絶対に読むべきだ」、と推奨したい。

『知の英断』は、「エルダーズ」という、カーター元米大統領をはじめとする、一国の首相や大統領を務めた経験の持ち主を中心とした「実践家」たちのグループのメンバーたちへのインタビュー集。ヴァージングループ総帥のリチャード・ブランソンが入っているのは、彼が「エルダーズ」結成の呼びかけ人だからだ。

『知の最先端』のインタビュー対象もまた刺激的だ。心理学者のシーナ・アイエンガー、政治学者のフランシス・フクヤマ、国家の盛衰について研究する経済学者ダロン・アセモグル、テクノロジー評論家のクリス・アンダーソン、経済地理学のリチャード・フロリダ、イノベーション研究者のクレイトン・クリステンセン、作家のカズオ・イシグロだが、一人ひとりの分量が少ないのが残念。例外として、作家のカズオ・イシグロのインタビューは分量も多く読み応えがあった。

 『変革の知』は、韓国を代表するマスコミの「朝鮮日報」に掲載されたもの。同様の趣旨でビジネス思考家を中心とした幅広い人選だが、インタビューを行った人の情報が記載されておらず、しかも一人ひとりの掲載分量が少ないのが残念。ただし、韓国人の目を通したインタビューという点は、日本人によるものとは異なるという点で、「複眼的」になれる点に意味はある。

これらのインタビュー集で取り上げられらた「知の巨人」たちの著書も全部読みたいと思うのだが、なかなかそこまではできないのが残念なところだ。

そう思う人も少ないないと思うが、すぐれたインタビューは著者のホンネが引き出されているので、著書そのものとは違う価値があるかもしれない。


『知の逆転』のなにがスゴいのか

ふたたび『知の逆転』について触れておきたいと思う。この本は、数あるインタビューのなかでもダントツに圧倒的だからだ。インタビュー対象とインタビュアーがマッチングしているからである。

この本でいちばん印象が強いのはチョムスキーである。この本を読むまでじつはチョムスキーはあまり好きではなかった。だがインタビューを読んで、その知的パワーの巨大さには圧倒された。言語学者で政治的発言のきわめて多いチョムスキーだが、インタビューの前半は、なんだかチョムスキーから経済学のレクチャーを受けているような気にさせられた。

インタビュアーの吉成真由美氏は、さすがにノーベル賞学者・利根川博士の伴侶だけに脳科学のベースがある。「門前の小僧」というわけではないが、それが大きな強みになっている。インタビュー対象の人選には MIT人脈も大いに働いているのだろう。インタビューに際しての準備も用意周到に行っていることが推測できる。

 『知の逆転』『知の英断』の両者に共通するのだが、吉成氏のインタビューがすぐれているのは、科学者にも政治家にも、かならず宗教についてたずねていることだ。インタビューの最後に行われているが、これがもしかするとインタビューのキモかもしれない。

宗教や価値観は、個人の内面にかんするものでありながら、じつは生き方にも思考にもおおいに影響を与えているのである。科学者にとっての宗教(の有無)、政治家など実践家にとって、信念の体系である宗教観や価値観は、ある意味ではもっとも重要な要素なのである。

それを聞き出すことができたインタビューだからこそ、じつに印象深いのであろう。



●『知の逆転』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2012)

目 次

第一章 文明の崩壊―ジャレド・ダイアモンド
 『銃・病原菌・鉄』から『文明崩壊』へ
 第三のチンパンジー セックスはなぜ楽しいか?
 宗教について、人生の意味について
 教育の将来
第二章 帝国主義の終わり―ノーム・チョムスキー
 資本主義の将来は?
 権力とプロパガンダ
 インターネットは新しい民主主義を生み出すか
 科学は宗教に代わりうるか
 理想的な教育とは?
 言語が先か音楽が先か
第三章 柔らかな脳―オリバー・サックス
 なぜ「個人物語」が重要なのか
 音楽の力 人間に特有の能力について
 生まれか育ちか?
 遺伝子か教育か?
 宗教と幻覚の関係
 インターネットが脳に与える影響
第四章 なぜ福島にロボットを送れなかったか―マービン・ミンスキー
 人工知能分野の「失われた30年」
 社会は集合知能へと向かうのか
 「エモーション・マシーン」としての人間
第五章 サイバー戦線異状あり―トム・レイトン
 インターネット社会のインフラを支える会社
 サイバーワールドの光と影
 アカマイ設立秘話
 大学の研究と産業との新たな関係
 教育は将来、どう変わっていくのか
第六章 人間はロジックより感情に支配される―ジェームズ・ワトソン
 科学研究の将来
 個人を尊重するということについて
 真実を求めて
 教育の基本は「事実に基づいて考える」ということ
 二重らせん物語
  尊厳死について

著者プロフィール
吉成真由美(よしなり・まゆみ)
サイエンスライター。マサチューセッツ工科大学卒業(脳および認知科学学部)。ハーバード大学大学院修士課程修了(心理学部脳科学専攻)。元NHKディレクターであり、子供番組、教育番組、NHK特集などを担当。コンピューター・グラフィックスの研究開発にも携わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






●『知の英断』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2014)

目 次  

第1章 戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領―ジミー・カーター
第2章 50年続いたハイパーインフレを数か月で解消した大統領―フェルナンド・カルドーゾ
第3章 「持続可能な開発」と「少女結婚の終焉」―グロ・ハーレム・ブルントラント
第4章 「人権のチャンピオン」と「世界一の外交官」―メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ
第5章 ビジネスの目的は、世の中に "違い" をもたらすこと―リチャード・ブランソン




●『知の最先端』(大野和基=インタビュー・編、、PHP新書、2013)

目 次

第1章 その「選択」があなたの人生を変える(シーナ・アイエンガー)
第2章 共産中国の正統性が失われる日(フランシス・フクヤマ)
第3章 国家の繁栄は「政治制度」がもたらす(ダロン・アセモグル)
第4章 製造業の常識を破壊する「メイカーズ革命」(クリス・アンダーソン)
第5章 オリンピックで倍増する東京の魅力(リチャード・フロリダ)
第6章 日本は「イノベーションのジレンマ」の最先進国だ(クレイトン・クリステンセン)
第7章 愛はクローン人間の悲しみを救えるか(カズオ・イシグロ)


著者プロフィール
大野和基(おおの・かずもと)
1955年兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。1979年~97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動を開始、国際情勢の裏側、医療問題から経済まで幅広い分野の取材・執筆を行なう。97年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。アメリカの最新事情に精通している。近年はテレビでも活躍。{本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)






●『変革の知』(岩井理子訳、角川新書、2015)

目 次


第1部 世界を見通す賢人たちの基準
 思いやりや与えることが成功の秘訣(アダム・グラント)
 最高の選択をするためには間違った選択を避けること(ロルフ・ドベリ)
 恐れがあればこそ仕事も人生もアートになる(セス・ゴーディン)
 モノより体験を買う時、もっと幸せになれる(マイケル・ノートン)
 スマートフォンではなく顔を見ないと本当の心は見えない(ジャレド・ダイアモンド)
第2部 代わりのきかない「自分」の創り方
 現代人は皆、顧客の心を虜にしなければならないセールスマン(ダニエル・ピンク)
 競争ではなく、ただ製品のためにエネルギーを使う(フィル・リービン)
 私たちは何か素敵なことをするためにこの惑星に来た(カリム・ラシッド)
 消費者の欲望を読み取るために、まず彼らになってみる(ヤン・チップフェイス)
 あらゆる創造には「人間」に対する熱烈な探究心が必要(ケビン・ファイギ)
第3部 危機を乗り越えた生存戦略
 やると言ったことを実践し、なると言った人にならねばならない(ジョン・ライス)
 世代を見通す「職人」資本主義を学ぶべき(ブルクハート・シュベンカー)
 つまらない1000人より確実な1人に集中せよ(アニタ・エルバース)
 世界を救いたいと夢見たことが私を救った(オリビア・ラム)
 真のリーダーは自分を下に置いてビジョンを提示する(趙玉平)
 社員の感情も管理できる企業が成功する(テレサ・アマビール、ボリス・グロイスバーグ)
 成功する企業は一目で分かる(マイケル・モーリッツ)


訳者プロフィール

岩井理子(いわい・のりこ)
神奈川県出身。日本語教師として韓国に滞在し、帰国後に翻訳者を目指す。現在はDVD/CS放送向けのドラマや映画の字幕翻訳・監修を行うかたわらワイズ・インフィニティ字幕翻訳講師を務める。また実務翻訳にも多数携わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)





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2012年8月6日月曜日

「ムクゲの花が咲きました」- 原爆記念日に思うこと(2012年8月6日)



真夏日に似合うのが ムケゲ の花。

漢字だと 「木槿」、あるいは 「無窮花」 と書きますね。
「無窮花」 を韓国語読みすれば「ムグンファ」。韓国の国花でもあります。

韓国語も固有語ではなく、漢字という共通語が背景にある単語だと、アタマのなかにすっと入ってくるのはありがたいものです。

そういえば、『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』という韓国小説の日本語訳がありました。韓国のいわゆる愛国反日小説といった内容でした。

タイトルと日本国内での衝撃(?)だけはつよく印象に残りながらも、小説じたいは読んでいません。どんな内容であるかについては、wikipedia で調べて見ましょう。

『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(むくげのはながさきました)は、金辰明による韓国の小説。民族主義的、反日的な小説で、韓国では100万部を売ったベストセラーとなった。また、1995年に映画化され、1995年度 良い映画、第6回 春史映画芸術賞 男子優秀演技賞(イ・ヘリョン)、審査委員特別賞を受賞した。
作中に韓国が北朝鮮と手を結び南北共同軍を組織して日本に核を撃ち込むという戦略シナリオを読む部分がある。また、南北共同軍が対馬や九州を占領した後、熊本県の水前寺公園を意味も無く破壊したり、日本の農家から作物を収奪して食糧不足に悩む北朝鮮へ送るなどの記述もある。一連の南北共同軍による攻撃で、万策尽きた日本は韓国と北朝鮮に降伏し、多額の賠償金を支払う事や島根県の竹島の領有権主張を放棄する事、更には韓国が長崎県の対馬を36年間植民地にする事などを認める内容になっている。

原作は1993年出版のようですが、ずいぶん物騒な内容ですね。

日本語版は、 『ムクゲノ花ガ咲キマシタ 上・下』(金辰明=キム・ジンヒョン、方千秋訳、徳間書店、1994)です。




ムクゲが咲くのは真夏、日本人であれば真夏の8月6日は「原爆記念日」なので、核戦争の小説は、たとえシミュレーションだとしても、正直いって好印象はもてません。

1995年に公開されたという韓国映画 「ムクゲの花が咲きました」のさわりの部分をYouTubeで視聴してみるとよいでしょう。 ⇒ https://www.youtube.com/watch?v=61aRULbUdco




もちろん、わたしは反韓感情をあおるつもりなど毛頭ありませんが、 『ムクゲノ花ガ咲キマシタ 』については、その存在を知っていると知らないとではまったく異なります

「韓流ブーム」で日韓関係は劇的に改善したなどという幻想は、もたないほうがよいのではないでしょうか? 『ムクゲノ花ガ咲キマシタ 』は、原作が出版されたのが1993年、映画化が1995年ですから、まだ20年もたっていないのです。

日韓ともに、相手に対しては勝手な思い込みをしがちな傾向がありますが、日本から見た韓国だけでなく、韓国から見た日本についても、つねに意識して「アタマの引き出し」のなかに入れておくことが必要です。

なにごとも「複眼的」に考えるクセをつけることが大事ですね。 『ムクゲノ花ガ咲キマシタ 』の存在は、ムクゲの花が咲く季節に、毎年思い出すべきでしょう。


画像をクリック!



<関連サイト>

韓国映画 「ムクゲの花が咲きました」
・・韓国人俳優のしゃべる日本語がヘンなので笑えるが、内容はちっとも笑えない
(以前、アップしていた動画が削除されてので差し替え)

ムクゲの花が咲きました(輝国山人の韓国映画)

(2025年8月8日 情報追加)



(ハリウッド映画『ザ・デイ・アフター』(1983年)




PS. 2012年8月15日の韓国大統領の暴挙と暴言について

この記事を 2012年8月6日に書いたときは、予想もしなかったのだが、2012年8月15日に韓国のイ・ミョンバク大統領が竹島上陸を断行しただけでなく、「謝罪せよ」などという天皇陛下に対する不敬発言さえ飛び出した。

8月15日は日本にとっては大東亜戦争の「敗戦記念日」だが、韓国から見れば民族の独立と国家主権を回復した「光復節」である。ここまでは、それぞれの「ものの見方」であるから、どうのこうの言うつもりはまったくない。複眼的に見るとはこういうことを指す。

しかし、韓国大統領の言動には違和感を感じるだけでなく、怒りを感じている日本国民はすくなくいないと思う。たとえ、政権末期でレイムダック化した大統領だとはいえ、これら一連の暴挙と暴言が許されざる行為であることに異論はあるまい。

韓流そのものを否定するつもりはまったくないが(・・いいものはいい、悪いものは悪いの是々非々でいくべきだから)、韓流ブームによって過去を水に流したなどとは夢にも思わぬことだ。

そもそも日本と韓国とでは歴史観がまったく異なるのである。この点については、書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である をぜひご参照いただきたい。

アングロサクソンほどではないが、あくまでも事実ベースでものを考えるのがプラグマティストである日本人の発想であるなら、韓国人や中国人は「~であるべき」という発想でものを考えがちである。ドイツ語でいえば、ザイン(=である)とゾレン(=であるべき)の違いである。
    
とくに韓国人は、朱子学という儒教原理主義ともいうべき悪弊に染まっており、日本人とは歴史観をすりあわせることはきわめて困難であると、古田博士は述べておられる。

南北朝鮮民族の思考方法に精通した碩学・古田博司先生の発言は、まさに値千金である。われわれは、あくまでもアングロサクソン的な事実中心主義(ファクトベース思考)でいくべきである。

つまりは国際的な場で第三者による判定(ジャッジ)を求めるべきなのだ。まずは言論のチカラによって。

(2012年8月22日 記す)


<関連サイト>

今度こそ本気の韓国の「核武装論」 日本の核武装も認め、米国への言い訳に(鈴置高史、日経ビジネスオンライン 2013年2月28日)・・ついにこんな議論が韓国でも出てくるようにになってきたのか。


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2010年4月25日日曜日

書評『知的複眼思考法 ― 誰でも持っている創造力のスイッチ』(苅谷剛彦、講談社+α文庫、2002 単行本初版 1996)―「複眼的思考法」は現代人にとっての知恵である!




現代社会に生きるわれわれにとっての知恵とは、いいかえれば「知的複眼思考」というマインドセットのことなのだ

 「複眼思考」を自分自身の「ものの考え方」として身につけて使いこなす方法を、著者自身による教育実践を踏まえて、具体的な方法論として紹介してくれた、日本語では初めて出版された本である。

 『知的複眼思考法  ―  誰でも持っている創造力のスイッチ』(苅谷剛彦、講談社+α文庫、2002)は、 自学自習用のテキストとしても活用できる、「自分のアタマで考える」ための基礎をつくる必読書といってよい。

 本書は、基本的に1996年以前の6年間に当時の大学生(・・それも著者が教えていたのは東大生だ!)に「ものの考え方・・」を教える経験をつうじて生まれた本であり、大学生を主要な読者として設定している。

 東大生ですら、いや東大生だからこそ、受験勉強でアタマがコチコチになって、思考の柔軟性がなくなっていたようだ。「複眼思考」とは、思考に幅広さと柔軟性をもたらし、創造力の基盤となる「ものの考え方」でもある。

 とはいえ、もちろんビジネスパーソンも読める本であることはいうまでもない。日本の大学教育では、なぜか「ものの考え方」が、方法論として教育されてこなかった。その意味では、大学生だけでなく、ロジカルシンキングを身につけたいビジネスパーソンにとっても必読書といってよいのだ。

 著者による問いかけを自問自答しながら、順番に読み進めてゆくうちに、おのずから「複眼思考」のなんたるかが体得できる、ムリのない構成になっている。

 序章 知的複眼思考法とは何か
   知的複眼思考への招待
   「常識」にしばられたものの見かた
   知ることと考えること
 第1章 創造的読書で思考力を鍛える
   著者の立場、
   読者の立場
   知識の受容から知識の創造へ
 第2章 考えるための作文技法
   論理的に文章を書く
   批判的に書く)
 第3章 問いの立てかたと展開のしかた-考える筋道としての問い
   問いを立てる
   「なぜ」という問いからの展開
   概念レベルで考える)
 第4章 複眼思考を身につける
   関係論的なものの見かた
   逆説の発見
   「問題を問うこと」を問う

 1996年に単行本初版がでてからすでに15年近く、2002年に文庫化されてからもロングセラーをつづけている本書だが、著者が「あとがき」にも書いているように、1995年のオウム事件に際して「複数の視点からものごとをとらえていくことの重要性、そしてまたそれをなるべく広く読者に伝えることの大切さを、あらためて感じた」(P.375)という。

 著者も本書のなかで指摘しているように、とかくビッグワードやマジックワードが一人歩きして、ものを考える手間を省略したがる傾向のある日本では、「複眼思考」をしっかりと身につけて、あふれかえる知識を自分なりに制御して生きてゆくことは、サバイバルのツールとして不可欠といってよい。

 「知識社会」が到来したさかんにいわれているが、インターネットの存在によって知識量そのもので勝負がつく時代は完全に終わっている。本当に必要なのは知識そのものではなく、知識を使いこなす知恵である。現代社会に生きるわれわれにとっての知恵とは、いいかえれば「知的複眼思考」というマインドセットのことだと言い換えてもいいだろう。

 本書には、著者が米国の大学院で鍛えられた、いい意味でのアングロサクソン的思考法が全編を貫いている。

 現代人にとっての必読のテキストとして、あらためて推奨しておきたい。


<初出情報>

■bk1書評「現代社会に生きるわれわれにとっての知恵とは、いいかえれば「知的複眼思考」というマインドセットのことだ」投稿掲載(2010年4月23日)



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<書評への付記>

 苅谷剛彦氏は、教育社会学専攻、教育問題を社会学の観点から研究する学者で、『大衆教育社会のゆくえ-学歴主義と平等神話の戦後史-』(苅谷剛彦、中公新書、1995)という名著で、いちはやく教育における格差問題を、データをもとに実証して論じていた。教育が不平等を再生産している現実を指摘し、脱神話化をおこなった。

 その後も旺盛な著作活動で、日本の教育をめぐる状況に様々な・・を投げかけてきた論客である。

 1955年東京生まれ、東京大学大学院教育学研究科修士課程を修了後、ノースウェスタン大学大学院博士課程を修了、社会学博士。東京大学大学院教育学研究科教授を経て、現在はオックスフォード大学教授。

 苅谷氏とは、私立大学の教育諮問委員として一時期、同席して親しくお話させていただいたことが何回かある。

 帰りの電車のなかで、「ベストティーチャー」といわれているんですよねーと聞くと、あまりうれしそうな反応でもなかったのが印象に残っている。「ベストティーチャー」マスコミが勝手に貼り付けたレッテルだろうか。レッテルが勝手に歩き回るというのも痛し痒しといったところだろうか。
 
 マスコミ情報だけでものごとを判断するのは危険がともなう、ということでもある。

 その意味は、本書を読めばよく理解できるはずだ。



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書評 『イギリスの大学・ニッポンの大学-カレッジ、チュートリアル、エリート教育-(グローバル化時代の大学論 ②)』(苅谷剛彦、中公新書ラクレ、2012)-東大の "ベストティーチャー" がオックスフォード大学で体験し、思考した大学改革のゆくえ
・・『知的複眼思考法』の著者によるオックスフォード大学に移籍後の著作

書評 『ことばを鍛えるイギリスの学校-国語教育で何ができるか-』(山本麻子、岩波書店、2003)-アウトプット重視の英国の教育観とは?

スローガンには気をつけろ!-ゼークト将軍の警告(1929年)
・・「とかくビッグワードやマジックワードが一人歩きして、ものを考える手間を省略したがる傾向のある日本」で気をつけなければならないこと

「意図せざる結果」という認識をつねに考慮に入れておくことが必要だ
・・「意図せざる結果」については本書でも詳しく説明されている

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは
・・政治哲学者サンデル教授のソクラテスメソッドによる対話型授業ときわめて高度なファシリテーション技術

ダイアローグ(=対話)を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、一対一の対話経験を集団のなかで学びを共有するファシリテーションにある

What if ~ ? から始まる論理的思考の「型」を身につけ、そして自分なりの「型」をつくること-『慧眼-問題を解決する思考-』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2010)

(2014年1月8日、8月17日 情報追加)


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