タイトルに惹かれて、『修行の心理学 ー 修験道、アマゾン・ネオ・シャーマニズム、そしてダンマ』(石川勇一、コスモス・ライブラリー、2016)という本を読んでみた。
臨床心理学の研究者自身の「一人称の体験」を、研究者本人が「第三者的」に観察して分析した内容の本だ。
その体験とはタイトルにあるように、日本の熊野の修験道とアマゾン奥地のネオ・シャマニズム、そしてタイトルには「ダンマ」(仏法)として登場するミャンマーの上座仏教(テーラヴァーダ仏教)である。
ああ、この人はほんとうに「修行体験」が好きなのだなあと思う。おなじく「修行」が大好きなわたしは大いに共感するものを感じる。
修行によって得られる境地そのものはさることながら、人からみたら苦行としかいいようがない修行のプロセスが好きなのだな、と。
わたし自身、18歳から22歳まで集中的に合気道に打ち込んで修行し、フィジカル面だけでなく、メンタル面も、スピリチュアル面でも修行によって得たものが多いという実感をもっているし、成田山の断食道場における断食修行や、出羽三山の修験道の「山伏修行体験塾」にも参加している。
さすがにアマゾン奥地でシャマン体験をしようなどという気持ちも、カネもないが、その意味では著者自身の体験は大いに興味をひくものであった。
修行に限らず体験というものは、あくまでも第一人称的なものである。その本人が五感をつうじて体験したビジュアルなイメージや、精神的な変容といったものを、自分以外の他人に伝えることはきわめてむずかしい。
とはいえ、事例をあつめて第三者的に分析したところで、いわゆる隔靴掻痒(かっかそうよう)である。靴のうえから足を掻くようなものでもどかしい。
その意味でも、研究者本人の第一人称的な直接体験を、時間がたってから冷静に見つめ直し、自分自身の体験を第三者的に、俯瞰的に観察して分析を行うことは、研究方法としても意味のあることなのである。定量的なデータ分析と相補うものとなるはずだ。
もちろん、著者自身の直接体験であり、それはまさに一回限りの体験である。おなじ場にいても他人とは異なる体験であるし、自分自身でもおなじ体験が再現できる保証はない。というよりも、まずそれは不可能であろう。だが、似たような体験は、異なる修行によっても訪れることもある。
修行が好きな人、修行に多大な関心をもっている人、修行体験がいかなるものか知りたい人には、読むことを薦めたい本だ。
けっして特定の宗教や、宗派、自己啓発セミナーなどに誘導しようとしている本ではない。あくまでも臨床心理学の研究者としての一線は守っている。その意味では、この『修行の心理学』は、安心して読める本である。
目 次プロローグ第1章 修行体験第2章 修験道療法第3章 修験道修行の心理と可能性第4章 アマゾン・ネオ・シャーマニズムとは何か第5章 異次元体験、地獄・天界・瞑想第6章 アマゾン・ネオ・シャーマニズムの効果と可能性参考文献一覧
著者プロフィール石川勇一(いしかわ・ゆういち)日本トランスパーソナル心理学/精神医学会会長。相模女子大学教授。法喜楽庵・法喜楽堂代表。臨床心理士。行者。専門は臨床心理学。瞑想、修行(初期仏教、修験道)、心身技法、ダンマ(法)を探求。神奈川県生まれ。早稲田大学卒・同大学院卒。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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