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2026年6月13日土曜日

昨年2025年の大ヒット映画『国宝』を amazon prime で視聴(2026年6月13日)― 芸の道を極めるというエゴイズムの極地。それを究めた暁に人々に感動をあたえることになる

 

昨年2025年の大ヒット映画『国宝』を amazon prime で視聴した。つい先日のように思っていたら、もう「無料」で見れるとは! 

どうも根が天邪鬼な性格なわたしは、流行りものはかえって遠ざけたくなる悪癖がある。というわけで、とうとう最後まで映画館に見に行くことはしなかったのだが、評判の高さはそれなりに意味あるものなわけだ、見終わる前からつよく実感した次第。 

あらすじは書く必要もないと思うので省略するが、どうもこの手のヒューマン・ドラマには過剰に感情移入してしまうので、気力と体力がないと最後まで視聴できないものだ。 

もちろん、自分は歌舞伎界の人間でも歌舞伎好きの人間でもない。とはいえ、歌舞伎の女形を演じる2人の主人公、生い立ちも性格もまったく異なるこの2人を軸にした生き様に「人生」を見てしまう。自分の人生を重ね合わせて見てしまうから、どうしても感情移入してしまう。 

だが、この映画にはそんな懸念をいとも簡単に忘れ去ってしまうだけの魅力がある。いや、ストーリーと映像美が織りなす魔力というべきか。




そのまま視聴し続けてもいいのだが、さすがに174分の長尺なので、一息入れるためキリのいいところでいったん休憩を入れる。これだからこそ、自宅での視聴はありがたい。

これはさらに重要なことだが、自宅なら映画館とは違って、自然の欲求が我慢できずにスクリーン前を横切っていく不届き者たち(!)も皆無である。

上映時間が3時間ともなれば、老齢の不届き者による迷惑行為がかならず出現するといって過言ではない。映画上映に際しては「シニア割引」ではなく、むしろ若年層の観客の映画館離れを防ぐために「シニア割り増し料金」を設定すべきである。


さて、話を『国宝』に戻せば、芸の道を極めるという、まさにエゴイズムの極地。そのたゆまぬ精進のプロセスでは、その当人が意識しないなか、かかわった人たちがさまざまな意味で「犠牲」になっていく。だが、芸を究めたがゆえに、そして究め尽くしたその暁には、多くに人々に感動をあたえることになる。

もちろん、人間国宝など他人の評価に過ぎないのであり、芸を極め尽くすことなど永遠にはありえないのだが、その精進のプロセスにこそ意味がある。そして、そこには救いがある。エゴイズムが浄化される日が訪れるのだ。すばらしい内容であった。


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2025年8月15日金曜日

映画『戦争と人間 第三部「完結編」』(1973年、日活)― ソ連との全面戦争はすでに1939年にノモンハンで行われていたのだ

 


財閥企業と軍部との結託が行われていた満洲国を中心に、中国大陸における戦前日本の行動をヒューマンドラマを基調にした歴史映画である。「超格差時代」であった1930年代の日本が描かれている。  




すでに半世紀前の作品であり、しかも左翼全盛時代のものなので、中国に対する贖罪意識が過多であり、現在からみると鼻につくシーンも多々ある。とはいえ、日本映画史上に残る傑作であることは確かなことだ。これだけのスケール感のある映画は、なかなかあるものではない。 




三部あわせて、なんと9時間超(!)という超大作なのだが、予算の関係で第四部は製作されることなく終わったらしい。1973年はオイルショックで狂乱物価の年だったらなあ。 

はじめて見たのは、TVでの放映であった。いつのことだったか忘れたが、ずいぶん昔のことになる。第三部にあたる『完結篇』のメインテーマが、1939年にソ連との全面衝突になった国境紛争の「ノモンハン戦争」である。

そのシーンが目に焼き付いているので、どうしてもこの『完結篇』だけを見たくなるのだ。

『完結篇』後半の「ノモンハン戦争」のシーンは圧倒的だ。CGなどまったくなかった時代の作品である。なんとソ連でロケを行い、ソ連のモスフィルムから貸与された実物の戦車が使用されているのだ。

だからこそ、リアル感に充ち満ちた映像が可能となったのであろう。 タコツボのなかで待機する日本軍歩兵の真上を通過する戦車のシーンなど圧巻だ。二度と再現できないであろう。ノモンハン戦争が、いかに熾烈なものであったかが、手に取るようにわかるのだ 

(*ただし、現在の研究によれば、ソ連側の損害も大きかったことが指摘されている。映画のなかで指摘されているように、ノモンハン戦争が、欧州における第二次世界大戦勃発につながっていくことも定説となりつつある。それだけノモンハンの意味は重要なのだ)。 


 出演している俳優陣もまた豪華で、それぞれがみな個性あふれる人物を演じきっている。それにしても、左翼運動家の妻となった、財閥家の娘を演じている吉永小百合が若々しく、美しい。 

『完結篇』は、1937年7月7日の「盧溝橋事件」で始まった日中戦争後が描かれている。「先の大戦」すなわち「大東亜戦争」は、この宣戦布告なき中国国民党との全面戦争から始まるのだ。 

泥沼化した日中戦争は、英米との全面対決につながり、最終的に1945年8月9日に始まった2週間にわたる「日ソ戦争」によって大日本帝国が崩壊したことによって終った。 

本日8月15日は「終戦記念日」。実際の戦争は「日ソ戦争」という形でつづいたが、この日を鎮魂の日とすることに異議はない。 


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書評『日ソ戦争 ― 帝国日本最後の戦い』(麻田雅文、中公新書、2024)― 「中立条約」を無視したソ連軍が侵攻を開始、日本と全面戦争になったのは、長崎に原爆が投下される数時間前のことであった


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2025年8月5日火曜日

映画『オッペンハイマー』(2023年、米国)を amazon prime video で視聴(2025年8月5日) ー オッペンハイマーの人物像を描いたヒューマンドラマであり、安全保障問題にかかわる「セキュリティ・クリアランス」もテーマ

  

 映画『オッペンハイマー』(2023年、米国)を amazon prime video で視聴さすがクリストファー・ノーラン監督の作品。180分の長編をまったく飽きることなく最後まで見ることができた。  

2023年に米国で公開され、同時に公開されて大ヒットした『バービー』とコラボした宣伝が日本国内で大顰蹙を買っただけでなく、原爆被害のシーンがないという理由で批判が殺到、日本公開が大幅に遅れた作品だ。 

それから2年もたってこの映画のことも記憶から消えていたが、 amazon prime にレコメンドされて思い出した。そうだ、いまこの時期に見ておかないと。 




「原爆の父」とよばれたロバート・オッペンハイマー博士の生涯を描いた作品だ。 

前半は、原爆開発に成功するまで。物理学者としての栄光と、ときおり顔を出す人間としての弱さが描かれている。個人的には、オッペンハイマーが若き日に教鞭をとっていたバークレーをなつかしい思いをした。

後半は、実際に原爆が投下されてからの苦難にみちた人生。多大な犠牲者を出したことによる良心の呵責と、戦後米国社会で猛威を振るった「赤狩り」のなかで名誉を失い、そして名誉を回復するまでの軌跡。 

背景として知っておくべきことは、原爆開発にかかわった物理学者たちはユダヤ系がかなり多いという事実だ。

オッペンハイマーもユダヤ系だが、アメリカ生まれのアメリカ市民だったのに対し、映画にも登場するシラードやテラーなど、いずれもナチスから逃れてドイツや中欧から移ってきた人ばかりなのである。原爆開発には関与していないアインシュタインもまた、いうまでもなくユダヤ系である。

この点にかんしては、『知識人の大移動 1(亡命の現代史 3) 』(みすず書房、1972)という本がある。科学者の大移動ということでいえば、第二次世界大戦時のドイツや中欧からの脱出がまずあげられるが、原爆開発競争において最終的に米国がドイツに勝ったのは、ユダヤ系の天才クラスの物理学者がドイツから失われたことも大きくあずかっている。

この映画は、そういった原爆開発と、それを物理学者として主導したオッペンハイマーを描いた作品だが、さまざまなテーマが複雑にからみあっている。

ここでは、陸軍が主導した原爆開発と国家機密の関係について重点的に見ておこう。これは現在の日本にとっても、きわめて重要なテーマである。





■主要なテーマは「セキュリティ・クリアランス」

原爆を開発し、第二次世界大戦で米国の勝利に多大な貢献をしたオッペンハイマーが、なぜ「赤狩り」の対象になったのか? 

専門の理論物理学だけでなく、文学や語学をふくめた、ありとあらゆることに興味をもち(・・そのなかには『バガヴァッド・ギーター』を原文で読むためのサンスクリット語も含まれる)、共産党員ではないが共産主義にシンパシーをもっていたこと、その交友関係に共産主義者が多数いたことが、冷戦時代に突入してから問題とされたのだ。 

そういう人物であることは承知のうえで、陸軍が主導権を握っていた原爆開発の国家プロジェクト、「マンハッタン計画」の開発責任者に選ばれたのである。アメリカ生まれのアメリカ市民であり、優秀な科学者、そしてプロジェクトリーダーとしての能力を高く評価されたからだ。

だが当然のことながら、採用される前から身辺調査がされていた。 この映画は、そんなオッペンハイマーをめぐる「セキュリティ・クリアランス」もテーマになっている。日本語字幕では「機密アクセス権」となっているが、最近日本でもその必要性がつよく叫ばれている「スパイ防止法」と密接にかかわる、国家機密漏洩防止制度のことだ。 

オッペンハイマーは、原爆開発プロジェクトが開始されて以後のことになるが、「セキュリティ・クリアランス」を付与されることになる。だが、戦後になってから「軍拡競争につながりかねない」として水爆開発に否定的な言動を行っていたため、「セキュリティ・クリアランス」が停止される。

これが後半の、安全保障問題がらみの非公開の委員会での査問につながっていく。 


■オッペンハイマーは原爆開発を成功に導いたが・・

この映画では、広島と長崎の原爆投下については、直接的なシーンがないことが日本では批判の原因となっていた。だが、見終わって思うのは、その必要はないという感想をもつにいたった。

なぜなら、原爆投下が引き起こすであろう地獄絵は、原爆投下するしないにかかわらず、オッペンハイマーにはわかっていたからだ。 

ドイツの敗戦によって原爆開発プロジェクトが中止になるかと思われたが、オッペンハイマーはプロジェクトの継続をつよく主張。これは陸軍サイドとしても同様だった。開発費に国家予算から巨大な金額が投下されていたからだ。

物理学者として、プロジェクト・リーダーとして、オッペンハイマーは原爆開発を成功させた。ここまでは物理学者たちの仕事である。プロジェクトが完了したら、そこから先は発注主である陸軍に引き渡されれ、物理学者たちの手を離れることになる。

いまだ戦争をやめようとしない日本に対して「新兵器」を使用するかどうか、陸軍内部でも政府のあいだでも激しい論争が行われたのであるが、原爆投下を最終決断したのは、あくまでも国家の最高責任者であるトルーマン大統領であった*。

*ただし、『誰が日本を降伏させたか 原爆投下、ソ連参戦、そして聖断』(千々石泰明、PHP新書、2025)によれば、核使用にかんする大統領の命令文書は存在しないという。核使用命令は、7月25日にスティムソン陸軍長官とマーシャル陸軍参謀総長の承認を得て発令されたが、トルーマン大統領が核使用命令を事前に見たかどうかも明らかではない大統領は、核使用にかんしては、軍事作戦を遂行する責任のある軍にゆだねていた可能性がある、と。(P.62~63、103)


法的な最終責任を負わなくてはならないのは、シビリアンコントロールの下では、軍人でもなく、ましてや科学者ではないのである。 これはきわめて重要なポイントだ。

とはいえ、ギリシア神話のプロメテウスが人類に火をもたらしたように、オッペンハイマーは人類に原爆をもたらしたのである。火は人類の生活をラクにしたが、同時に破壊につながりかねない両義的な存在である。

原爆が戦争を終わらせたことは事実だが、その原爆が人類破滅につながりかねない贈り物であったことは、オッペンハイマー自身も深いレベルで自覚していたのだ。道義的責任を感じて苦悩していたのだ。 

この映画は、物理学者としての栄光と、みずからが発見し実現してしまったことによる苦悩を描いたヒューマンドラマとしてすばらしい。エンタメとしては最上等の作品だ。まだ見ていない人は、ぜひ見るべき作品である。 


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・・原爆開発を成功させた米陸軍からスピンオフした、米空軍が主管する研究開発組織「ランド・コーポレーション」が実現してものとは

・・超天才というべきフォン・ノイマンはハンガリー出身のユダヤ系。第2次世界大戦での米国の勝利に多大な貢献をなしたのである。「戦後」の米国を支配した「合理主義信仰」の権化のような存在。「マンハッタン計画」に参加、原爆開発中に浴びた放射能が原因でガンになり、52年というけっして長くない人生を閉じた

・・1995年に公開されたという韓国映画 「ムクゲの花が咲きました」は、日本を核攻撃して全滅させるという内容



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2025年6月25日水曜日

マンガ『きのう何食べた? 24』(よしなが ふみ、講談社、2025)ー 今回の最終話は泣ける・・・

 

『きのう何食べた?㉔』(よしなが ふみ、講談社、2025)を amazon に予約、発売初日の6月23日に入手して、すぐに読んだ。 

 1年に約1冊のペースで出版される単行本で読んできたが、早いものでもう24巻。 アラカン(=アラウンド還暦)のカップルの、その時点のライフステージにまつわる、さまざまな出来事が物語を前に進めてきた。

自分は主人公たちと同世代なので、けっして他人事ではない。 ネタバレになってしまうので書かないが、それにしても急な展開で、今回の単行本に収録された最終話の#192は、読んでて涙腺がうるんでくる。 

マンガを読んでてそんな気持ちになるのはひさびさだ。親の心、子しらず。子の心、親しらず。このマンガは食をテーマにしたものだが、愛と死もテーマになるヒューマンドラマなのである。 

物語はまだまだつづく。いずれ介護する側でなく、介護される側になっても、このマンガはつづいていくのだろうか?  「人生百年時代」だからなあ。

そして、ライフステージの最終段階である、見送り、見送られるところまで至るのだろうか?


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