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2010年12月25日土曜日

書評 『聖母マリア崇拝の謎-「見えない宗教」の人類学-』(山形孝夫、河出ブックス、2010)-宗教人類学の立場からキリスト教が抱える大きな謎の一つに迫る




宗教人類学者の立場からキリスト教が抱える大きな謎の一つに迫る

 マリアとは何か? これはイエスとは何かという問いから派生する問題だ。

 イエスの父は「神」。イエスは「神の子」であるから「神」。ゆえに、イエスは「神」にして「人」。

 では「神の子」イエスの「母」は、「人」に過ぎないのか、それとも「神の子」の「母」は「神」か???・・・ああ、まったく混乱してくる。

 こうしたキリスト教内部の神学論争が、古代以来えんえんと続いてきたのだが、一般民衆は神学とは関係なく、イエスとマリアの母子像は切り離せない存在とみなしてきた。神であろうとなかろうと、マリアさまを崇拝するのは自然なことではないか、と。

 こうした一般民衆の心性の底には、キリスト教普及以前に存在した多神教世界の残存がある。キリスト教が発生した古代地中海世界では、古代ユダヤ教が徹底的に排除し殲滅させたバアール神信仰、エジプトのイシス信仰といった大地母神が残存してきた。

 ヨーロッパでは古代ケルト世界の地に集中的に出現した母子像である「黒いマリア」の存在がそれを濃厚に示している。

 一神教のユダヤ教やキリスト教が徹底的に抑圧してきた、大地母神に代表される多神教的要素は、一般民衆の心性の奥底で無意識の領域では生き抜いてきたのである。

 そして近年目立ってさかんになっているマグダラのマリアへの大いなる関心は、『マグダラのマリアによる福音書』という新約聖書偽典によるものだ。ハリウッド映画『ダヴィンチコード』の爆発的な人気もその動きを促進している。

 本書は、こうしたキリスト教会の内部で交わされてきた論争と、一般民衆の信仰とのせめぎ合いを、地中海世界と欧州キリスト教世界を中心に、歴史的に考察したものである。

 著者はジェンダー論の観点から、キリスト教の一神教的性格がもたらすひずみについて的確な批判的考察を行っている。

 キリスト教内部の人でありながら、護教論的な姿勢ではなく、あるべき方向に向けて方向性を考察しているのは、宗教人類学という学問の性格だけでなく、著者の人生に対する基本姿勢も預かって大きいことは、半自叙伝である『死者と生者のラスト・サパー』(河出書房新社、2012 初版 朝日新聞社、2000)を読むとよく理解できる。

 ただ、全体の構成として、第二部の「聖母マリアとマグダラのマリア」の分量を2倍にして、第一部の「聖母マリアの原像を探る」は大幅に縮小するべきだったのではないだろうか。そのほうがより多くの読者の関心に応えるものとなったのではないかと思う。

 キリスト教徒ではない私は、キリスト教の「多神教化」は好ましい現象であると捉えているが、さてみなさんの反応はいかがなものだろうか。


<初出情報>

■bk1書評「宗教人類学者の立場からキリスト教が抱える大きな謎の一つに迫る」投稿掲載(2010年10月29日)
■amazon書評「宗教人類学者の立場からキリスト教が抱える大きな謎の一つに迫る」投稿掲載(2010年10月29日)

*再録にあたって誤りを修正した。





目 次

はじめに
序章 今、なぜ聖母マリアなのか-歴史の揺らぎの中から
第1部 聖母マリアの源流を探る-古代オリエントの地母神から
 第1章 聖なる花嫁-旧約聖書『雅歌』
 第2章 豊穣と勝利の女神-ウガリット神話
 第3章 祝婚の花嫁と悲嘆の花嫁-アドニス神話から
 間奏 バァール宗教とヤハウェ宗教
第2部 聖母マリアとマグダラのマリア
 第1章 聖母マリアの誕生-新約聖書『福音書』から
  1. 『ルカ福音書』のマリア物語
  2. 外典『ヤコブ原福音書のマリア』
  3. 苦悩するヨセフ
  4. マリアの受胎をめぐる論議
  5. シメオンの剣-悲しみのマリア
 第2章 マリア学の形成
  1. マリア学とは
  2. 聖母マリアをめぐる最初の論争
  3. カオスの拡大
  4. 聖画像(イコン)崇拝禁止令の波紋
  5. 宗教改革者のマリア論
 第3章 黒いマリア-「わたしは黒いけれども美しい」(雅歌1:5)
  1. 黒いマリアの謎
  2. 黒いマリアの正体-その1 マグダラのマリア
  3. 黒いマリアの正体-その2 古代オリエントの大地母神 
  4. 黒いマリアの正体-その3 ケルトの地母神
  5. 黒い聖母と悪魔の謎-もう一つのキリスト教
  6. 結び
 第4章 マリアの出現
  1. マリアの世紀の到来
  2. 聖母マリアとの同一化
  3. 精緻ルルドの誕生
  4. 「マリア出現」をめぐる新しい研究
  5. 「マリア出現」の場所-封印された過去
あとがき
参考文献


著者プロフィール

山形孝夫(やまがた・たかお)

1932年生まれ。東北大学文学部卒業。同大学院博士課程修了。宮城学院女子大学教授、学長を歴任し、現在同大学名誉教授。専攻は宗教人類学。『砂漠の修道院』(平凡社)で日本エッセイストクラブ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<書評への付記>

 神学論争のなかで、内部からマリアを切り捨てたのがルターを筆頭とするプロテスタント教会。ユダヤ教への先祖返りか、一神教の性格を徹底追求してきたプロテスタント教会は、19世紀以降、カトリック教会が打ち出してきたマリアに対する親しみを非難する。それは一神教からの大幅に逸脱ではないか、多神教への道を開くことになるのではないか、と。

 カトリック教会が、いわゆる「マリア出現」という超常現象を、神学上の問題は棚に上げて、部分的に容認するようになってのは、一般民衆の動きをもはや無視できないとみなしているからである。自らの生き残りのために、一般民衆のニーズを、願望を積極的に取り込み、抱き込んでいく方向。

 「マリア出現」にかんしては、私はポルトガルのファーティマにはいったことがあるが、いまだフランスのルルドには行っていない。いつの日か訪れてみたいと思っているが、そう思ってからもすでに20年以上がたっている。

 19世紀以降カトリック教会が打ち出してきたマリア崇拝、20世紀以降大幅に増大している「マリア出現」という超常現象を認めているカトリックに対するプロテスタント教会の非難は、キリスト教の一神教からの大幅に逸脱はないか、多神教への道を開くことになるのではないか、という不安が根底にあるのだろう。

 書評のなかでも書いたが、近年目立ってさかんになっているのが「もう一人のマリア」、すなわちマグダラのマリアへの大いなる関心が、まさに一般民衆のなかにある渇望を表現しているのであろう。ハリウッド映画『ダヴィンチ・コード』はそのあらわれの一つである。

 そもそも多くの聖者をかかえるカトリックは、一神教でありながら多神教的な性格を濃厚にもっているというべきである。そのなかでも、もっとも人気があるのが聖母マリアということなのだ。

 書評では触れていないが、日本人の立場としては、文化人類学者の石田英一郎の名著 『桃太郎の母』をぜひ読むべきだと奨めておきたい。この本は、地中海世界で発生した母子像を考察の出発点にした、すぐれて比較民族学的な著作である。楽しみながら読める名著である。

 「第一部の「聖母マリアの原像を探る」は大幅に縮小するべきだったのでは」と書評に書いたのは、すでに山形孝夫の読者であれば、『レバノンの白い山』などで何度も繰り返し書かれてきた話だからだ。もしこの本を読んでいなくても、もっと圧縮すべきであった。これは編集者の責任である。





<関連サイト>

Da Vinci Code (Trailer) (ハリウッド映画『ダヴィンチ・コード』 トレーラー(英語)





<ブログ内関連記事>

書評 『治癒神イエスの誕生』(山形孝夫、ちくま学芸文庫、2010 単行本初版 1981)-イエスとその教団の活動は精神疾患の「病気直し」集団のマーケティング活動

書評 『新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒-』(菅瀬晶子、NIHUプログラムイスラーム地域研究=監修、山川出版社、2010)
・・キリスト教が発生した古代東地中海世界に現在に至るまで生き残ったキリスト教諸派。圧倒的なマジョリティであるイスラーム世界の内側で 1% 以下のマイノリティとして生きる彼らは、本来のキリスト教の姿をとどめている

韓国映画 『嘆きのピエタ』(キムギドク監督、2012)を見てきた-「第69回ベネチア国際映画祭」で最高賞の金獅子賞を受賞した衝撃的な映画
・・ピエタとは聖母子像のこと

書評 『なんでもわかるキリスト教大事典』(八木谷涼子、朝日文庫、2012 初版 2001)一家に一冊というよりぜひ手元に置いておきたい文庫版サイズのお値打ちレファレンス本

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)
・・キリスト教徒が「人口の 1%」である日本、なぜそうなのか

書評 『折口信夫―-いきどほる心- (再発見 日本の哲学)』(木村純二、講談社、2008)
・・国文学者で民俗学者であった折口信夫とキリスト教の接点について言及している。いっけん多神教世界に見える日本も、実は一神教的な超越神の要素をもっているのではないか?

(2012年12月24日 追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)







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