「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2026 禁無断転載!



ラベル 技術開発 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 技術開発 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024年9月22日日曜日

映画『Winny』(2023年、日本)を視聴(2024年9月22日)ー 技術開発と著作権をめぐる冤罪もののリーガルドラマでありヒューマンドラマ

 

昨夜のことだが、映画『Winny』(2023年、日本)を amazon prime video で視聴した。劇場公開から比較的早い段階で「無料」で視聴できるのはありがたい。126分。 

ファイル共有ソフトの Winny の開発者で、天才プログラマーだった金子勇氏を主人公にした冤罪もののリーガルドラマである。法廷もののヒューマンドラマである。英語の映画なら Based on a true story. という表示がされることだろう。 

金子勇氏が逮捕されたのはいまから約20年前の2003年、映画のなかでも言及されていたが、米国では Napster など「ファイル共有ソフト」を支える「P2P」(pier to pier)対「著作権」が大きな争点となっていた時代だ。 

ファイル共有が当たり前となり、動画が「無料」で公開され、自由に共有される現在から考えると、隔世の感さえ抱かされる。 Winny は登場するのが早すぎたのかもしれない。 

プログラミングが生きがいとさえなったいた金子勇氏は、プログラマーとしての活動を封じられることになった。だが、日本のエンジニアが萎縮することなく自由に開発に専念できる世の中にするため、法廷闘争に注力することを受け入れる。 

最初の逮捕から、なんと7年半かけて最高裁で「無罪」判決を勝ち取った金子勇氏と弁護士団だが、その半年後の2013年に金子勇氏は帰らぬ人となった。死因は急性心筋梗塞、42歳の生涯であった。さぞ無念であったろう。 

技術というものは、本来それじたいは価値中立的なものである。だが技術は善用することもできるし、悪用することもできる。Google の社是にあるように「邪悪にならない」ことが大事なのだ。 

技術開発が世の中のためになると信じ、開発に専念していた金子勇氏のような「性善説」に立つ天才プログラマーの命を奪い、技術開発の芽を摘んだ「性悪説」に立つ検察の愚かな所業は、日本人は絶対に忘れるべきではない。 

そして、金子勇氏のような天才プログラマーが存在したということもまた忘れるべきではな い。そのためにもこの映画を見るべきなのだ。
 

画像をクリック!



<ブログ内関連記事>







(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2022年5月11日水曜日

映画『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』(2020年、ロシア)― カラシニコフという根っからの技術屋の半生

 

ことし2月のことになるが、映画『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』(2020年、ロシア)を amazon prime video で視聴。原題は「カラシニコフ」(ロシア語)。 

旧ソ連で開発され、現在でもテロリスト御用達の自動小銃が AK-47。その開発ストーリーと根っからの技術屋だったミハイール・カラシニコフの半生を描いた映画だ。 

中央アジアのアルタイ出身のロシア人生まれ故郷はカザフスタンのアルマトイ近郊の農村。つまり、エスニシティはスラブ系のロシア人で当時はソ連国民であったが、現在ではロシアとは別の国となったカザフスタンの人ということになる。

「大祖国戦争」とスターリンが命名して「愛国心」をかき立てた「独ソ戦」。その最前線で負傷し、いやというほどドイツ製兵器の優秀さを痛感させられたカラシニコフ軍曹。愛国心がつよく、専門教育は受けてないが根っからのメカ屋であった彼は、連発式の自動小銃の製作に執念を燃やし、完成するまでは故郷に帰ることもしない。




「故郷に錦を飾るまでは帰郷しない」という、明治時代の日本人のようなメンタリティの持ち主であったのだ。この映画が昭和30年代に製作されて日本で公開されていたなら、間違いなくヒットしたのではないかな?

戦場という実践(いや実戦)の場で扱いやすく、耐久性のある自動小銃を開発することが祖国ソ連のためになるという信念を貫き、失敗を重ねながらもついに AK-47 を完成させたのは1947年のこと。すでに戦争は終わっていた。 総計2,600万人(!)も戦死したとされる「独ソ戦」には間に合わなかったのだ。

ソ連崩壊後も使用され続けているので、「AK-47 といえばテロリスト」という連想が働くが、この映画ではそんなことは一言も触れられない。あくまでもロシアの「愛国映画」なのだ。 

とはいっても、よくできたエンタメとして楽しめる戦闘シーンはほとんどなく、設計と試作品つくりの繰り返しが映画の内容だからだ。エンジニアの開発ストーリーに恋愛をからめたヒューマンドラマでもあった。 





*******

以上、視聴後に記した感想に加筆修正したのだが、映画を視聴したのが2022年の「2月24日」以前のことであり、アップするタイミングを失してしまっていた。

隣国ウクライナに軍事侵攻したロシアは、いま国内で「愛国心」を喚起すべくさまざな政策を行っているが、「独ソ戦」とは違って「ウクライナ侵略」は、祖国防衛戦争でも正義の戦いでもない。むしろ、攻め込まれた側のウクライナでこそ、侵略者ロシアに対する「愛国心」がかき立てられている。あるいはナショナリズムといっていいかもしれない。
 
「禍福は糾える縄の如し」というわけではないが、ロシアの行為はまさに「天につばする」ものにほかならない。愛国心をかきたてただけに、そのしっぺ返しは取り返しのつかないものになるのではないか?
 
ただし、この映画『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』という映画は、開発者のヒューマンドラマとして視聴したらいい。とくにイデオロギー色はないエンテメ作品である。


<ブログ内関連記事>








(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end

2019年4月12日金曜日

書評『ホンダジェット ー 開発リーダーが語る30年の全軌跡』(前間孝則、新潮文庫、2019 初版 2015)ー 技術開発だけでなく、リーダーシップとマネジメントの本としても読みごたえあり!


ホンダジェット-開発リーダーが語る30年の全軌跡-』(前間孝則、新潮文庫、2019 )を読んだ。じつに読みごたえのある本だ。 初版の単行本は、2015年に出版されている。

1986年からゼロスタートした、自動車メーカのホンダによる小型ジェット機開発の全記録である。ホンダジェット(Honda Jet)は、エンジンを内部ではなく双翼の上に立てた画期的なデザインと、燃費性能を武器にして、6人乗り小型ジェット機の分野でトップブランドに躍り出た画期的な小型ジェット機だ。

それは、まったく新たな分野に挑んだイノベーションの記録であり、開発の中心にいた一技術者のリーダーシップと人生の軌跡でもある。 


(ホンダジェットの機首 Wikipediaより)

1986年の開発開始から苦節30年。部品産業を含めて関連産業の裾野が広いとはいえ、それはあくまでもサプライヤーの話。購買者の裾野の広い自動車ビジネスとはまったく異なるのが、購買者が限定される民間航空機ビジネスの世界だ。民間航空機ビジネスは、顧客先にありきの軍用航空機ビジネスとも違う。

民間航空機の開発は、もともと航空機開発への夢をもっていた本田宗一郎が創業した、ホンダのようなイノーベーティブな会社でも、並大抵ではない苦労をともなったものであった。ホンダは日本企業だが、小型ジェット機開発は、最初から「航空機大国アメリカ」で開始されることになる。その理由は、本書に詳述されている。

革新的なアイディアを形にした「試作機」の完成は一つのマイルストーンであったが、それはまたあらたな始まりであったに過ぎない。ビジネスとして事業化すること、量産化するために越えなければならない壁はきわめて高かったのだ。ただ単に技術面だけの話ではない、経営そのものに直結してくるからだ。それほど民間航空機ビジネスは、ハイリスクである。イノーベーションとは、技術だけにかかわる話ではないのである。 


(ホンダジェットの機内 Wikipediaより)

最近のホンダは、正直いって、かつてにくらべると残念ながら勢いがないような印象がある。だが、このホンダジェットの開発は、「パーソナル・モビリティ」を標榜するホンダにとって、二輪と四輪につづく、経営面でのあらたな柱となりうる事業分野の誕生といったことにとどまらず、創業者の本田宗一郎精神のあらたな時代への継承にもつながるストーリーでもある。 

技術ノンフィクション作家の前間孝則氏の本は、何冊も読んでいるが、この本もまた、技術とそれを担う人間のドラマを描いた作品として楽しみながら読んだ。技術開発だけでなく、リーダーシップとマネジメントの本としても、読みごたえがある一冊である。 




目 次

まえがき
序章 ホンダ航空機事業参入の衝撃
第1章 創業者精神の水脈 
第2章 五里霧中の日々 
第3章 ハードウエアで世界を変える 
第4章 飛翔への道程 
終章 グローバル時代の新次元へ 
あとがき 
文庫版あとがき 
主要参考文献



著者プロフィール

前間孝則(まえの・たかのり)
1946(昭和21)年、佐賀県生まれ。石川島播磨重工業(現IHI)でジエットエンジンの設計に20年余従事する。1988年に同社を退職後、執筆活動に入る。技術ノンフィクション分野の著者多数。代表作に『戦艦大和誕生』『戦艦大和の技術遺産』『マンマシンの昭和伝説』など。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものの加筆)


<関連サイト>

ホンダジェット公式サイト(英語版)

ホンダジェット公式サイト(日本語版)


<ブログ内関連記事>

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

「航空科学博物館」(成田空港)にいってきた(2013年12月)-三里塚という名の土地に刻まれた歴史を知る

鎮魂!「日航機墜落事故」から26年 (2011年8月12日)-関連本三冊であらためて振り返る

海上自衛隊・下総航空基地開設51周年記念行事にいってきた(2010年10月3日)
・・YS11最後のお披露目

"Whole Earth Catalog" -「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を体現していたジョブズとの親和性

最高の「ナンバー2」とは?-もう一人のホンダ創業者・藤沢武夫に学ぶ

(2019年4月16日 情報追加)


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2015年5月21日木曜日

「第1回 国際ドローン展」に行ってきた(2015年5月20日)-百聞は一見にしかず!

   (自律制御システム研究所の大型有線給電型ドローン)

幕張メッセで本日(2015年5月20日)から3日間にわたって開催中の「第1回 国際ドローン展」に行ってみた。事前登録で入場料無料。
    
「国際ドローン展」とうたっているものの、「テクノ・フロンティア2015」というメカトロニクスとエレクトロニクス分野の要素技術と製品設計関連の展示会の一部であった。ビジネス向けの展示会である。
  
ことし2015年の5月に入ってから、政府官邸に墜落していたことがテレビ報道で大々的に取り上げられてから、日本でもドローン関連の話題が一般化しているが、この展示会は社会で話題になる前に企画されたものであろう、無人機ドローン関連の出展者数は総計50社程度と少ないが、ドローンのビジネス用途を考えるうえではおおいに参考になる。
  
上空からの観測や空撮、監視とセキュリティ、災害現場や農場でのモニターなどでの使用など、多様な用途にすでに取り組んでいる企業の出展があり、見ていてなるほどと思わされた。具体的にいえば、建設現場での活用に取り組んでいるコマツやセキュリティ関連のセコム、それに中日本高速道路などである。法規制の問題は残るが、さまざまな用途での応用が活発に検討されるようになっていることが確認できる。
   
展示会のなかで一番存在感があったのが株式会社自律制御システム研究所の展示。千葉大学の野波研究室における研究成果を商業化するために設立された大学発ベンチャーである。ミニサーベイヤーという商品名で量産化に着手している。飛行実演のデモも行われた。冒頭に掲載した写真は、大型有線給電型ドローン、かなりの大きさである。


自律制御システムのドローンは、室内やトンネル内などGPSが利用できない環境での自律飛行を可能としたことが重要だ。ドローンは基本的に GPS で位置確認し、インターネットを利用した無線によって遠隔制御を行う。これらは、いずれも米国発の軍事技術が起源であるが、その枠組みの外にある技術開発に注目すべきだろう。

いまではあたり前の情報通信技術のインターネット、衛星をつかって位置を特定する GPS(=Global Positioning System)、これらはみな米軍の軍事技術として誕生し、その後に民間に開放されてきたものだ。無人機ドローンもまたそうであり、しかも先にあげたの2つの軍事技術なくしては誕生しなかったものである。無人機そのものはハードウェアだが、無人機の運用はインターネットとGPSを統合したシステムなのである。
  

自分の仕事には直接関係がなくても、あるいはすぐにはかかわらないものであっても、話題になっているものは、自分の目で直接見て確かめるべきだろう。百聞は一見にしかず、である。






<関連サイト>

「第1回 国際ドローン展」(2015年5月20日~22日 幕張メッセ)

「ドローン 可能性と脅威のはざまで」 (NHKクローズアップ現代、2015年5月21日放送)


<ブログ内関連記事>

書評 『無人暗殺機ドローンの誕生』(リチャード・ウィッテル、赤根洋子訳、文藝春秋、2015)-無人機ドローンもまた米軍の軍事技術の民間転用である
・・インターネットとGPS、そしてその延長線上の軍事技術として開発されたドローン

書評 『21世紀の歴史-未来の人類から見た世界-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2008)-12世紀からはじまった資本主義の歴史は終わるのか? 歴史を踏まえ未来から洞察する
・・プライバシーがなくなり監視がつよまる世界という未来図

法哲学者・大屋雄裕氏の 『自由とは何か』(2007年) と 『自由か、さもなくば幸福か?』(2014年)を読んで 「監視社会」 における「自由と幸福」 について考えてみる
・・ドローンの普及は、ビジネス面における利便性向上と同時に、上空からの監視の強化にもつながるであろう

(2015年5月22日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)











Clip to Evernote 


ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。


禁無断転載!




end

2014年10月2日木曜日

書評『「夢の超特急」、走る! ー 新幹線を作った男たち』(碇 義朗、文春文庫、2007 単行本初版 1993)ー 新幹線開発という巨大プロジェクトの全体像を人物中心に描いた傑作ノンフィクション



2014年10月1日で、東海道新幹線開業から50年となるのを前に、すでに買っていながら読んでなかった本を読んでみた。

 『「夢の超特急」、走る!-新幹線を作った男たち-』(碇 義朗、文春文庫、2007)がその本だ。単行本初版 1993年で、そのときは本屋の店頭で立ち読みして大いに関心をそそられたが購入しないまま見送ってしまった。その後、だいぶたって忘れていた頃に文庫化された際には迷わず購入しておいたものの積ん読で7年。ようやくこの機会を利用して読み終えた次第だ。

新幹線という巨大プロジェクトの全体像を人物中心に描いた傑作ノンフィクションともいうべき作品で、じつに読みでがある。日本に鉄道技術が導入されてから当時は100年、世界最速の新幹線をつくりあげた技術陣の熱意と執念の熱い物語である。

戦前の満洲で広軌による「特急あじあ号」を走らせたという満鉄の経験、敗戦後に海軍の航空技術者を大量に雇用したことで飛躍的に向上した高速鉄道の技術湘南電車ではじまった電化技術世銀融資を導入した政治的な理由岐阜羽島駅誕生にまつわる大物政治家伝説の真偽など、技術面にとどまらず金融やその他もろもろまでプロジェクト全体を捉えた力作であった。

東海道新幹線開発という巨大プロジェクトはいかにして実現にこぎつけたか。主人公は「新幹線の父」と呼ばれた71歳で国鉄総裁に就任した十河信二と、彼の絶大な信頼を受けた技術トップの島秀雄である。当時はまだ国鉄といういう半官半民の巨大官僚組織であり、国鉄と政治との関係、敗戦後日本と復興などの時代背景をもととに語られる物語だ。

新幹線開発においては、大東亜戦争という中断があったものの、技術という観点からみると戦前と戦後を一貫して継続していることがわかる。新幹線開発当時すでに100年近い鉄道技術の蓄積があったのであり、しかも満洲での広軌鉄道の運営という経験にはきわめて大きなものがあったのだ。

戦前の満洲の「遺産」といえば、広軌の高速鉄道を実現しなくてはならないという強い信念と行動力をあわせもった十河真二の存在はきわめて大きいが、新幹線は満鉄の「特急あじあ号」そのものではない。

明治維新後、英国の技術によって鉄道が導入された日本は「狭軌」で出発したが、輸送量増大とスピード化実現のため国際標準の「広軌」化を実現しようという機会は戦前にもあった。だがまことにもって残念なことに、政治の思惑によって広軌化は葬り去られていたのだ。線路の広軌化よりも、票につながりやすい新線敷設のほうが地元への利益誘導の観点から優先されたためである。

だからこそ、広軌の高速鉄道、しかも広軌で電化の高速鉄道実現は、新幹線プロジェクトの推進者たちとっては、どうしても実現しなくてはならない悲願であったのだ。そのための組織内外における苦闘は筆舌に尽くせないものであったようだ。この点もこのノンフィクションには詳しく書き込まれている。

在来線とはまったくの別軌道で、貨物列車も走らせない高速鉄道のみの広軌で電化された新路線を敷設することが可能となったことが、その後の高密度のダイヤでありながら無事故記録を更新しつづける原動力となったことは怪我の功名というべきだろうか。結果として新幹線にとっては幸いなことであった。鉄道先進国のフランスでもドイツでも、高速鉄道と在来線は同じ軌道を共有しているのである。

しかも電気機関車が客車を牽引する欧州型の特急ではない、新幹線という自走型の高速列車を実現させたことが、日本を鉄道技術におけるトップランナーとしたのである。新幹線開業後のフランスとドイツ、とくに TGV に代表されるフランスのすさまじいまでの対抗意識についてはここで指摘するまでもあるまい。

「性能優先の検知から最先端技術を導入しようとする元飛行機屋と、絶対的な安全追求の立場から手堅い経験工学を重視する鉄道屋と、それぞれの良さをうまく取り混ぜて東海道新幹線をまとめ上げた島秀雄国鉄技師長の柔軟な思考と手腕」(文庫版のための「あとがき」から)

海軍が開発してきた最先端の航空技術とインクリメンタル(累進的)な経験技術を特色とする鉄道技術のハイブリッドが新幹線なのであった。技術開発の観点からも、じつに内容豊富で読ませる内容の本なのである。

買ってすぐ読んでおけばよかったという思いとともに、単行本出版からすでに20年以上たっているのに、まったく古さを感じさせない内容であるのは、当時はまだ存命中であった関係者への綿密な取材をもとにしたノンフィクション作品だからであろう。なによりも最後まで読み切らせる著者の筆力がすごい。

東海道新幹線という巨大プロジェクトについて丸ごと描ききった本書は、ぜひ多くの人に勧めたい読み応えのある好著である。






目 次
第1章 黎明
 走路無限
 海外で開かれた目
 SLよ、さらば
 電化の明と暗
 十河総裁の登場
 広軌新鮮計画の胎動
 東海道線増強調査会
 空気を変えた講演会
 戦前の「弾丸列車」計画
第2章 大きな賭け
 新線調査室
 鉄道か道路か
 高性能電車時代の幕あけ
 東京-大阪を日帰りで
 新幹線への序曲、「こだま」
第3章 零戦から新幹線へ
 旧軍技術者千人を採用
 零戦の空中分解と鉄道の脱線
 動き始めた研究所
 鉄道後進国日本
 世界銀行借款に成功
第4章 立ちはだかる難問
 サムライ「新幹線総局」に集う
 難航する用地買収
 利権の構造
 駅をめぐる動き
第5章 高速への挑戦
 トンネル・橋・ふん尿タンク
 自説を曲げない技術者たち
 天地の難問
 YS11と新幹線
 モデル線での初体験
 黄害と雪害
第6章 「夢の超特急」誕生
 設計者と研究者
 噴出した予算不足
 それぞれの退陣
 最後の難関
 開業へ
あとがき
文庫版のためのあとがき
主要参考文献


著者プロフィール

碇 義朗(いかり・よしろう)
1925年鹿児島県生まれ。東京都立航空工業学校卒。陸軍航空技術研究所を経て、戦後、横浜工業専門学校(現・横浜国立大学)卒。航空、自動車、鉄道など、メカニズムと人間のかかわりをテーマに数多くのノンフィクションを発表してきた。航空ジャーナリスト協会会員、横浜ペンクラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

書評 『ペルシャ湾の軍艦旗-海上自衛隊掃海部隊の記録-』(碇 義朗、光人社NF文庫、2015)-「国際貢献」の第一歩は湾岸戦争終了後の1991年に始まった ・・本書の著者によるもう一冊のノンフィクション


■新幹線と鉄道関連

祝 新幹線開通から50年!-わが少年時代の愛読書 『スピード物語-夢をひらく技術-(ちくま少年図書館7)』(石山光秋、筑摩書房、1970)を紹介

書評 『「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史-』(原 武史、新潮文庫、2011)-「高度成長期」の 1960年代前後に大きな断絶が生じた

書評 『有法子(ユーファーズ)-十河信二自伝-』(十河信二、ウェッジ文庫、2010 単行本初版 1959)-「新幹線の父」と呼ばれる前の満洲時代を中心とした貴重な証言
・・ただし国鉄総裁時代の話は含まれていない


日本近代化と日本のものづくり技術

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む
・・技術の観点からみた戦艦大和健三プロジェクトとその戦後への「遺産」

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!

書評 『原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎、岩波新書、2000)-「市民科学者」の最後のメッセージ。悪夢が現実となったいま本書を読む意味は大きい
・・自前の技術ではないあ「輸入技術」であった原発の問題


日本近代化と近代の終焉

書評 『高度成長-日本を変えた6000日-』(吉川洋、中公文庫、2012 初版単行本 1997)-1960年代の「高度成長」を境に日本は根底から変化した
・・東海道新幹線と太平洋ベルト地帯の工業化は「高度成長」のシンボルであった

書評 『未完の「国鉄改革」』(葛西敬之、東洋経済新報社、2001)-JALが会社更生法に基づく法的整理対象となり、改革への「最後の一歩」を踏み出したいまこそ読むべき本

書評 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒の彼方の光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2012)-ETV特集を見た方も見逃した方もぜひ
・・1970年の大阪万博を推進した梅棹忠夫がついに書けなかった『人類の未来』という本

書評 『近代の呪い』(渡辺京二、平凡社新書、2013)-「近代」をそれがもたらしたコスト(代償)とベネフィット(便益)の両面から考える

(2015年10月8日、2017年5月14日 情報追加)


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end