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2025年9月25日木曜日

書評『黄禍論 百年の系譜』(廣部泉、講談社選書メチエ、2020)― アメリカ白人の深層心理の底に根強く生き続ける「黄禍論」。それはけっして過去の話ではない

 

『黄禍論 百年の系譜』(廣部泉、講談社選書メチエ、2021)を読んだ。「黄禍論」という切り口で、1890年代以降の百年以上にわたる日米関係を、東アジアの人口大国である中国とからめて描いた近現代史である。 

その時々の新聞記事を縦横無尽に引用して構成された、リアルタイム感覚で読み進めることのできる本になっている。コラージュ的手法といえようか。 

この本を通読すると、アメリカが苦境に陥ったとき、なぜ日本だけが標的にされるのか、その理由がアメリカ人の深層意識の底にある「人種主義的思考」にあることが見えてくる。 

「日米戦争」の終局における原爆投下も、1980年代後半の「日米経済戦争」におけるジャパン・バッシングも、日本(およびアジア人)に対するアメリカ人の恐怖心理が働いていると考えるのが自然であろう。 もちろん、それが主たる要因ではないにせよ。

2020年代の現在、弱体化した日本ではなく、アメリカの存在を脅かすまで巨大化した中国が主要な標的にされている。だが依然としてアメリカは、日本が中国に結びつくことを極度に恐れているのだ。「アジア主義」に対する恐怖である。 

このことは、日本人はよく理解しておいたほうがいい。 

ハリウッド映画や洋楽などによって、かなりの程度まで感覚がアメリカナイズされている現代日本人は、日本人もアメリカ人もおなじように考えていると、勝手に思い込んでいるのかもしれない。 だが、アメリカ人が日本人をどう見ているかは、それとはまったく別の問題だ。認識にズレが存在するのだ。 

それは、あくまでも主観的な認識であり、当然のことながらバイアスがはたらく余地が大きい。歪みによって形成された認識のズレが極大化したとき起こるのは・・・ 


(カバーの裏に記されたアメリカ大統領たちのホンネ)



■アメリカにおける「黄禍論」(イエローペリル)

「黄禍論」(イエロー・ペリル)とは、「黄色人種」であるアジア人が攻めてくるという恐怖と不安から生まれてくる妄想のことである。日清戦争後(1895年)、急速に台頭してきた日本が呼び覚ましたものだ。 

教科書的には、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世が言い出したとされ、日清戦争後の仏独露による「三国干渉」の根拠になっているとされる。本書によれば、起源としては英米アングロサクソン圏からも発生したものもあったようだ。 

1880年代は欧米世界でも、まだ「進歩」が信じられていた時代だった。ダーウィンやスペンサーによる「進化論」が、白人の西洋文明の優位性という認識を下支えしていた。 

ところが、1890年代に入ると「世紀末」意識による将来的な不安、西洋文明に対する悲観的な見方が有力になっていく。「黄禍論」が蔓延していく背景には、時代の空気の変化があったのだ。 

「黄禍論」がアメリカで蔓延するようになったのは、日露戦争(1905年)における日本の勝利、言い換えればロシアの敗戦がきっかけになっている。小国日本に対する礼賛は、逆転して不安と恐怖へと転換していく。アジアの先頭に立った小国日本が、人口大国の中国と結びつくという恐怖。 

日露戦争後に流行した日米戦をシミュレートした「日米未来戦記」の流行「オレンジプラン」という対日戦争計画策定。そして第一次世界大戦後には、国際連盟設立に際して日本が提案した「人種差別撤廃案」が廃案にされたこと・・・

状況をきわめて悪化させたのは、日本からの移民を排斥する「排日移民法」(1924年)の成立である。日本を標的にしたこの連邦法の成立が、いかに当時の日本人に屈辱感をあたえたか、この点にかんしては歴史的想像力をフルに働かせなくてはならない。 

日本サイドでは屈辱感から生まれた激しい怒りの言説、米国サイドでは恐怖心理から生まれるさまざまなフェイク情報。これらが日米相互で絡み合って増幅し、悪循環をさらに悪化させ、最終的に日米戦争という破局にいたったことは、あえて書くまでもないだろう。 


■「コロナ期」にアジア人への暴力行為が蔓延したアメリカ

2020年9月に出版された本書は、まさに「コロナ時代」の産物である。 

すでに記憶が希薄化しつつあるが、第1期トランプ政権時代の末期、アメリカではアジア人に対する露骨な蔑視や暴力行為が蔓延したことを思いだす必要がある。コロナ感染症(COVID19)が中国の武漢から世界中に拡がったことへの、過剰な反応が生み出したのだ。 

「平時」には友好的で寛大なアメリカ人も、戦争や感染症など「有事」の際には、深層意識の底にあるアジア人への恐怖心が浮上してくる。それは、理性ではコントロールできない感情レベルの反応である。 

だから、「黄禍論」は、けっして過去の話ではないのだ。今後もどんなきっかけで急浮上してくるかわからない。そう考えておくべきだろう。 


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目 次
はじめに 
第1章 東洋人の群れ ―「日中同盟」の悪夢 
第2章 幻の「人種平等」― 国際連盟設立と人種差別撤廃案、そして「排日移民法」 
第3章 汎アジア主義の興隆と破綻 
第4章 戦争と人種主義 
第5章 消えない恐怖 ― 冷戦下の日米関係 
第6章 よみがえる黄禍論 
おわりに
注 
あとがき

著者プロフィール
廣部泉(ひろべ・いずみ) 
1965年生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。ハーバード大学大学院博士課程修了。Ph.D(歴史学)。現在、明治大学政治経済学部教授。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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・・そもそも日本人は、自分の肌の色を黄色などと思ってはおない。クレヨンの「肌色」は「黄色」ではない


・・実業界を代表して日米関係改善に奔走した渋沢栄一だったが



・・吉田司氏の「コラージュ・ノンフィクションという手法」

・・アルバニア移民二世のジョン・ベルーシが演じた三船敏郎の『用心棒』にインスパイアされたという「サタデー・ナイト・ライブ」(SNL)のカリカチュアライズさらた「サムライ」には、平均的なアメリカ人を笑わせるであろう「日本人像」が表現されている。そこには悪意はない。映画『ティファニーで朝食を』(1961年)に登場するカリカチュアライズされたステレオタイプ的な日本人ユニヨシとは違うものがある。ベルーシが主演として参加したスピルバーグ監督の映画『1941』(1979年製作)のこの映画には三船敏郎も出演している


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