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2015年7月24日金曜日

ウナギはイール-英単語のなかにウナギ(eel:イール)を探せ!


以前このブログで ウサギは英語でラビット? ヘア? バニー?? という記事を書いているのだが、ウサギとカタカナで書いてあるのを見ると、どうしてもウサギをウナギと読み違えそうになる(笑)

ウサギを兎と漢字で書いたのでは読みにくいからウサギとカタカナにしたのだが、ウサギとウナギは、カタカナだとよく似ているので混同してしまうのだ。ウナギは鰻と書いてもいいのだが、あまり漢字はつかわないだろう。養鰻業といった表現においてくらいではなかろうか。

というわけで、ウナギについても何か書いておきたいと思っていたのだ。そこで、ウナギはイール(eel)-英単語のなかにウナギを探せ! という記事を書いてみることにした。

日本語のウナギと英語の eel はまったくイコールというわけではない。なぜならニホンウナギとヨーロッパウナギは、おなじウナギであっても種類が違うwikipedia英語版には unagi として項目が立てられているくらいだ。だが、そういった細かい区別は棚においておくこととしよう。

本日(2015年7月24日)は土用丑の日ということでもあるし、記事としてアップするのはちょうどよいだろう。じっさいに英単語を調べてみたのは、しばらく前のことである。


英単語のなかにウナギ(eel)を探せ!

eel(イール: ウナギ)というローマ字三文字を含んだ英語を思いつつ限りあげると以下のようなところだろうか。まずは名詞から。

reel (リール): 線、釣りのリール、フィルム、映画
heel (ヒール): かかと、ヒール
wheel (ホイール): 車輪


reel(線)は細長い線なので、ウナギと形が似ていないわけではない。


(シマノ製のスピニングリール wikipediaより)


ハイヒールの heel(=かかと)は、はたしてウナギと似ているのかどうか???

(heel shoe wikipediaより)

wheel (ホイール)は円形だが、スポークの部分は直線なので、ウナギと形が似ていないわけではない。heel に w をつけたものが wheel だが、とはいっても、やや牽強付会かな・・・。

(自転車の wheel  wikipediaより) 

動詞にも eel を含んだ単語はある。

feel (フィール): 感じる
kneel (ニール): ひざまずく、ひざまずいて祈る
peel (ピール): 皮をむく


感じるの feel、ひざまずく kneel(ニール)は関係なさそうだ。peel (ピール)は、皮をむくという意味だが、一般的に果物が対象だ。だがウナギも皮をはぐので・・・? これは eel という三文字を含んでいるが、意味的な関係はまったくなさそうだ。当たり前といえば当たり前だが・・・。



"eel" は英語としては歴史の長い固有語

そこでいったん視点をかえて、語源を調べてみよう。

eel : Origin Old English ǣl, of Germanic origin; related to Dutch aal and German Aal. (かなり古い英語で、オランダ語やドイツ語とも関連ある)

こんな表現もあった。

slippery as an eel 

「ウナギのようにニュルニュル」、これは日本人にもすぐに理解できる。



"eel" と "eal" は英語では同じ音

単語のなかに eel の三文字を含んだ英単語はほかにもあるはずだが、こういう形で英単語を探す辞書がない

そこで、eel のアタマに一文字つけたら英語になるかどうか試してみた。

Beel という単語があったが、これはベンガル語 
Geel というのはベルギーの都市名
jeel というのは英語だがめったにつかわれない。意味はゼリー
keel 船の竜骨(キール)
leel エリート中のエリート(俗語)
Neel 人名。磁気の研究で知られたフランスの物理学者
seel  調教目的で狩猟用のタカのまぶたを縫う ⇒ 目を閉じる,…を盲目にする
teel ゴマ(sesame)
veel feelに同じ
weel 狩猟用のおとり、漁獲用のやな


eel と eal は音が同じなので、音声に着目してみよう。

appeal アピール
deal  ディール 取引  
heal 癒し
meal 食事
reveal 明らかにする
seal シール、アザラシ
teal マガモなど小型のカモ、カモの羽色
veal  子牛の肉
yield 収穫
zeal 熱狂

yield は、eal ではないが、eel と同じ音なので含めておいた。

ウナギはイール(eel)-英単語のなかにウナギを探せ!というテーマで、いろいろ考えてみたが、なかなか英単語を特定できなかった。結論としては、eel 音は、ウナギとは関係ないということか・・。

同様のことは取り組んでみると面白いですよ。なかなか知的で面白い遊びですから。





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「地震とナマズ」-ナマズあれこれ
・・ウナギが希少となっている以上、養殖もされているナマズは有望


 
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2015年7月23日木曜日

花札の「いのしかちょう」ー なるほど日本の山野には古来よりイノシシとシカが多いわけだ

(任天堂の花札「都の花」より)

「いのしかちょう」というフレーズがある。花札用語である。

いのしし(=猪)、しか(=鹿)、ちょう(=蝶)の3枚の札のことである。それぞれ、はぎ(=萩)、もみじ(=紅葉)、ぼたん(=牡丹)の花の札に対応している。

もうずいぶん長く花札はやっていないが、花札だけは所有している。花札は庶民的なゲームだが、花札に描かれた図柄が日本の自然と王朝文化であるのがいい。日本以外では植民地時代に朝鮮半島で定着したようだが、もっと海外にも知られていい。


花札と京都の任天堂

先日(2015年7月11日)、任天堂の岩田聡社長が55歳という若さで現役のまま病没された。

任天堂を NINTENDO にトランスフォームさせたのは、一族出身の先代社長の山内氏であるが、コンピュータゲーム路線を不動のものにしたのが抜擢されて42歳で社長に就任した岩田氏であった。奇しくもわたしと誕生日が同じ12月6日、この場を借りてご冥福を祈りたい。

いまでこそゲーム機メーカーで世界的に有名な NINTENDO だが、もともとは京都の花札屋である。わたしは一度だけ任天堂の本社を訪れたことがあるが、世界的なゲーム機メーカーという印象は感じられなかった。

任天堂の花札(!)は、マルフクの登録商標で現在でも販売されている。大統領の肖像画が、なぜかナポレオンであるのはご愛敬だ(笑) これは結構知られているネタだろう。(・・下掲の写真を参照)。

(任天堂の花札の大統領はナポレオン)

任天堂のサイトには、「花札の歴史・遊び方」というページがあるので、歴史の部分を一部引用しておこう。花札の歴史やゲームのやり方が書いてある。

花札の歴史は安土・桃山時代の「天正かるた」、江戸時代上期の「ウンスンカルタ」から、江戸時代中期に現在使用している花札ができたと言われています。花札ゲームの中でも2人でプレイする「こいこい」は、勝負勘・度胸・かけひき・冷静さを必要とする現代版知的ゲームです。

そもそも歌留多(カルタ)というのは当て字である。安土桃山時代にカードゲームが「カルタ」(=カード)というポルトガル語とともに南蛮文化として渡来したからだ。なぜ王朝文化が図柄のテーマになったのかはわからないが、花鳥風月のイメージとギャンブルの組み合わせが面白い。

(いの・しか・ちょう 任天堂)


人口減少と反比例に増え続けるシカとイノシシ

農村人口の減少にともなって、シカやイノシシが増えつづけているというニュースは、もはやあたらしくはないが、シカとイノシシが花札の図柄として登場するというのは、考えてみれば面白いことだ。それだけ日本では昔から当たり前の存在であるのだろう。

里山から里に下りてくるイノシシ、野山の草を食い尽くすシカ。もはや、イノシシもシカも害獣との認識が一般化しているが、そもそもはともに神の使いである。信州の諏訪大社ではシカもイノシシも、ともに供え物として首が献上されていたらしい。狩猟民族としての側面が神事に残存しているのである。

イノシシは「ゐ」の「しし」の意味。「しし」とは肉のこと。つまりイノシシは駆除したら食べるものであったのだろう。ちなみにシカの肉のことは古語でカノシシという。「か」(=シカ)の「しし」(=肉)という意味。

王朝文化の精髄である百人一首には、「奥山に もみぢかきわけ鳴くしかの・・・」というシカを題材にした和歌があるが、なぜかイノシシを歌った和歌はない。ともに神の使いであったはずなのだが・・・。

そのイノシシがなぜ花札には登場するのか? 疑問を抱き始めると切りがないが、機会があれば本格的に調べてみたいものだ。






参考: その他文明圏でポピュラーな野生動物

・・南インドで再興したタシルンポ寺から来日したチベット仏教僧たちによる「チャム」(チ­ベット密教僧による仮面舞儀礼)。踊っているのは、仮面をかぶっているがチベットのお­坊さんです。2009年5月8日撮影。「チベット・スピリチュアル・フェスティバル2­009」(東京・新宿の常円寺)にて。2009年11月18日に筆者(=佐藤けんいち)がアップロードした映像。
日本では「猪と鹿」だが、チベットでは「牛と鹿」のようだ。 

(2015年7月28日 記す)


<ブログ内関連記事>

鹿のマークの John Deere (ジョン・ディア)-この看板にアメリカらしいアメリカを感じる

辰年(2012年)の初詣は御瀧不動尊(おたき・ふどうそん)にいってきた
・・御瀧不動尊(千葉県船橋市)には、柵のなかで鹿が飼われている! 奈良公園とは違って雄鹿の角は切られていない

・・西欧ではキリスト教の布教により、鹿の位置づけはヒツジに比べて大幅に後退し、ついには角の生えた悪魔の象徴となる


■日本人の狩猟

・・この著者はシカもイノシシも狩る。しかも古来からの狩猟方法であるワナによって

・・農作物を食い荒らす害獣とみなされたシカやイノシシは、江戸時代の農民によって鉄砲で駆除されていた


南蛮文化




王朝文化




(2015年7月30日、9月13日、2016年3月9日 情報追加)


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2015年7月22日水曜日

書評『モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!』(モリナガ・ヨウ、溝渕利明=監修、アスペクト、2011)ー 独特の細密イラストによる「関係者以外立ち入り禁止」の「現場」探訪フィールドワーク


独特な細密イラストで有名なモリナガ・ヨウ氏による全ページがラーの土木現場の探訪フィールドワーク。土木現場は、特別な許可がない限り「関係者以外立ち入り禁止」なので、こういう企画ものはありがたい。

最近では土木女子略してドボジョなる存在も増加中とはいえ、圧倒的多数は土木男子(・・そんな表現はない)の世界である。

現場監督から作業員にいたるまで男の世界、働くのも男なら、そんな土木現場に関心をもつのも圧倒的多数は男子であろう。なぜそうなのかと問われても答えるのはむずかしいが、わたし自身も男子なので、どうしても土木や巨大構築物には関心が高い。

このルポは「土木学会誌」に連載されたものなので、その関係者でもない限り、単行本化されないと知ることはできないたぐいのものだ。けっして系統的な構成ではないが、著者自身の関心と取材のしやすさから首都圏を中心に、日本全国の土木建設プロジェクトを回っている。

身近な道路工事から、山奥のダムまでカバーする範囲は広い。面白いのは、生コンの材料であるセメントの工場や、鉄筋コンクリートに使用される鉄筋の工場まで見学していること。こういう知られていない世界を知るのは面白い。

監修者の溝渕利明氏も取材に同行しており、各編にある対談形式の取材後記が業界関係者の視点を語っているので面白い。「第2部 土木工事の基礎知識」も、土木にかんする基本的な疑問に答えてくれるのもありがたい。日本語の「土木」というコトバは歴史を負ったものなので、なかなか味わい深い

写真のほうがわかりやすいという印象もなくはないが、イラストだからこそ描き込めるという利点もあるし、なによりも著者自身の感想がイラストで表現されているのが、メカを描いても人間味豊かな味わいをだしているのがいい。

土木であれ何であれ、「現場」にはすべてがつまっている。「現場」に始まり「現場」に終わる。「現場」こそ面白いのだ。





目 次
   
はじめに
第1部 土木工事現場見学
 01 JR新宿駅南口  東京都
 02 JR中央線 三鷹・立川間  東京都
 03 副都心線  東京都
 04 首都高速大橋ジャンクション(地上)  東京都
 05 首都高速大橋ジャンクション(地下)  東京都
 06 地下式LNGタンク  愛知県
 07 円山川・出石川の災害復旧  兵庫県
 08 セメント工場  神奈川県
 09 創成川アンダーパス  北海道
 10 大保ダム  沖縄県
 11 御前山ダム  茨城県
 12 石神井川の整備  東京都
 13 幌富バイパス  北海道
 14 島根原子力発電所(その1)  島根県 
 15 島根原子力発電所(その2)  島根県
 16 千歳川の樋門と改築工事  北海道
 17 鉄筋工場  岡山県
 18 羽田空港D滑走路  東京都
 19 圏央道 高尾橋  東京都
 20 コンクリート製品工場  栃木県
 21 新東名高速道路 猿田橋-吉原ジャンクション  静岡県
 22 小塚山トンネル  千葉県
 23 虎杖浜トンネル付近の改良工事 北海道
第2部 土木工事の基礎知識
 1. 土木って何
 2. 土木は文明とともに生まれた
 3. 土木を代表する構造物
 4. これからの土母奥を支えるのは!?
おわりに

著者プロフィール
モリナガ・ヨウ(もりなが・よう)
1966年東京生まれ。早稲田大学教育学部地理歴史専修、漫画研究会在籍。ルポイラストを得意とする。立体も年に数体作る

監修者プロフィール
溝渕利明(みぞぶち・としあき)
1959年生まれ。岐阜県出身。名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了、博士(工学)。大学卒業後鹿島建設株式会社に入社、技術研究所勤務。明石海峡大橋海中基礎建設工事等数多くのプロジェクトに参加。1993年から3年間広島支店温井ダムJV工事事務所勤務。2001年に鹿島建設を退社。法政大学に転籍。2004年に教授となる。専門は、コンクリート材料、施工法、非破壊検査技術など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

  

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『前田建設ファンタジー営業部』(前田建設工業株式会社、幻冬舎、2004)で、ゼネコンの知られざる仕事内容を知る

解体工事現場は面白い!-人間が操縦する重機に「人機一体」(=マン・マシン一体)を見る
・・あたらしい構造物の建設の前には解体という作業が待っている

マンガ 『いちえふ-福島第一原子力発電所労働記 ①』(竜田一人、講談社、2014)-廃炉作業の現場を作業員として体験したマンガ家による仕事マンガ
・・原子炉関係の建設も、もちろんゼネコンの仕事

タダノの大型クレーンの商品名ピタゴラス-愛称としてのネーミングについて

スクラップ・アンド・ビルドの激しいバンコク-さらに大変貌中の大都市バンコクから目が離せない!

『崩れ』(幸田文、講談社文庫、1994 単行本初版 1991)-われわれは崩れやすい火山列島に住んでいる住民なのだ!

明治22年(1889年)にも十津川村は大規模な山津波に襲われていた-災害情報は「アタマの引き出し」に「記憶」としてもっていてこそ命を救うカギになる

梅棹忠夫の幻の名著 『日本探検』(1960年)が、単行本未収録の作品も含めて 2014年9月 ついに文庫化!
・・日本最初の高速道路である名神高速道路について文明論の観点から取り上げている


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2015年7月21日火曜日

「般若心経」×「ネコ写真集」 = 『般ニャ心経』 -こついにはやられたニャ~(笑)


リアルの書店にはあまり行かなくなってしまったが、たまにいくと驚きの発見がある。先日の発見は、ニャんと『般ニャ心経』(笑)。般「若」心経の「若」が「ニャ」に。神田の三省堂本店1階に山積みされていた。
      
「般若心経」×「ネコ写真集」という掛け合わせで、タイトルが『般ニャ心経』(笑) ニャるほど、さすがにこういう企画は思いつかなかった・・・。やられたニャ~(^^; 
    
すでに昨年の12月に出版されていたようです。入手したのは2015年6月の再版。6ヶ月で第2刷りはスローペースだが、じわじわと人気がでているのかな? わたしも結局、買ってしまいました。


漢訳の『般若心経』のフレーズごとに、見開き右ページにわかりやすい日本語による解説、左ページにその内容にふさわしいネコの写真とキャプション。これが絶妙の味をだしているわけ。
  

正式なタイトルは、『ラク〜に生きるヒントが見つかる 般ニャ心経』(加藤朝胤 (監修)、 リベラル社 (編集)、星雲社、2014)。監修者は、薬師寺の執事長を務めるお坊さん。「仏教」ではなく「佛教」とのこだわりあり。だから、『般若心経』の解説は信用がおけるというわけだ。

ネコ好きのための『般若心経』入門。おすすめの一冊ですニャ!





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「シャーリプトラよ!」という呼びかけ-『般若心経』(Heart Sutra)は英語で読むと新鮮だ


If Your Cat Could Talk 「あなたのネコがしゃべれたら・・・」

猛暑の夏の自然観察 (2) ノラネコの生態 (2010年8月の記録)

子ネコが拉致誘拐された!ノラネコの自由を奪うな、ネコを返せ!

「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」-ノラネコ母子に学ぶ「学び」の本質について

必要は発明の母-ノラネコ合従連衡? 呉越同舟?

ノラネコも寒い日はお互い助け合い

枯葉のベッドで眠るネコ二匹-ノラネコも寒い日はお互い助け合い ②

ノラネコに学ぶ「テリトリー感覚」-自分のシマは自分で守れ!

今年もノラネコの子ネコお披露目シーズンが到来!(2011年6月)




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2015年7月20日月曜日

「この実 なんの実 気になる実」-椿は花だけではありません


「この実 なんの実 気になる実」。このタイトルは日立グループのCMソングである「日立の樹」の歌い出しの一節 「この木 なんの木 気になる木」のもじりである。

元歌では、「名前も知らない木ですから~」とつづくのだが、「なんの木」かお気づきだろうか。緑の色つやの濃い常緑樹なので、もしかしたら柑橘類(?)と思われるかもしれないが、これは椿(つばき)である。椿の実である。

先日、とある場所で日照りを避けていたら、その生け垣に大きな実がなっているのが目に飛び込んできたのだ。


冒頭に掲載した写真でもわかるように、大人の手のひらの半分くらいの大きさである。触るとじつに堅い。これが椿の実なのである。7月下旬現在の椿の実である。

椿の花はよく目立つので話題になることも多いが、椿の実はなぜかあまり話題にならない。この写真の椿の実は7月下旬のものだが、これから8月にかけて熟していくこの実からタネを取り出し、油を搾り取ると、いわゆる椿油になる。椿のタネは、お茶の木のタネのような形をしている。

日本原産の椿からとれる椿油は、古来より食用油や整髪油として使用されてきた。SHISEIDO(資生堂) の TSUBAKI(ツバキ) は、オレイン酸をたっぷり含むツバキ油が保湿効果が高いことに着目した製品である。


「この実 なんの実 気になる実」と思う人は、春先に椿の花が咲いていた場所を思い出して訪れてみるとよいだろう。もちろん庭木に椿をもっている人は、あらためて椿の実をじっくり眺めてみるのも一興だろう。

じつに大きな実なのである。椿の実は!
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2015年7月18日土曜日

書評『三商大 東京・大阪・神戸 ー 日本のビジネス教育の源流』(橘木俊昭、岩波書店、2012)ー 日本のビジネス教育の系譜を「実学の府」にさぐる


「三商大」という表現にすぐにピンとくるのは、一橋大学と神戸大学、そして大阪市立大学の関係者であろう。

これらの新制大学はいずれも戦前は、それぞれ東京商科大学、神戸商業大学、大阪商科大学という名称で知られていた。いわゆる「商大」である。この3つの「商大」を総称して「三商大」というのである。「三商大」関係者でないと、すぐにはわからないかもしれない。

「三商大」の名称は、現在でも三大学のあいだではゼミナール活動や部活動をつうじて使用されており、相互に訪問しあって交流を深めている。「見えざるネットワーク」のひとつというべきであろうか。

現在では日本でもアメリカ型の大学院教育である MBA(経営学修士)が普及してきているが、それ以前はビジネス教育の担い手はもっぱら学部レベルの商学部や経営学部が担ってきた。その裾野には全国各地の商業高校やビジネス関連の各種専門学校がある。

副題が「日本のビジネス教育の源流」とあるように、本書『三商大 東京・大阪・神戸 ー 日本のビジネス教育の源流』(橘木俊昭、岩波書店、2012)は、戦前の「商大」時代のビジネス教育について、東京商大(=一橋大学)を筆頭に、大阪商大(=大阪市立大学)、神戸商大(=神戸大学)、そして「三大高商」(・・高商とは高等商業高校の略)と呼ばれた長崎高商、小樽高商、横浜高商についてくわしく取り上げている。

著者自身、経済学者であるだけでなく、学部は小樽商大(=小樽商科大学)出身とのことなので、このテーマを語るのはふさわしいポジションにあるといえよう。小樽商大は現在でも一橋大学とは密接な関係を保っている大学である。わが恩師の阿部謹也先生も、いちばん最初の赴任先は小樽商大であった。

わたし自身は一橋大学(=東京商大)の出身であるので、書かれている内容についてはほとんどが既知のものであるが、こういう形で一般書として全面的に取り上げていただくのはたいへんありがたい。なぜなら、一橋大学はビジネス界と受験界ではダントツの存在感がありながら、一般的な知名度がイマイチだからだ。

本書を読んでいただきたいのは、「三商大」関係者もさることながら、むしろかならずしもそうでない方々である。

というのも、いまでこそビジネス、とくに企業家が先導して世の中を変えていくという重要な事実が世の中全体で認識されるようになってきているが、「官尊民卑」の近代日本においては「民」そのものであるビジネス教育は、江戸時代から変わることなく不当にも低く位置づけられてきたためからだ。「実学」蔑視の感覚は、現在でも文部科学省には旧帝国大学に劣位する存在として、根強く残存しているという印象をわたしは抱いている。経済産業省との違いである。

じっさい、東京商大は戦前(!)においてなんども存亡の危機に遭遇しながら乗り切ってきたが、これらの危機はみな文部省サイドにおけるビジネス教育の無理解と、「官」中心の発想がもたらしたものであった。

明治維新後の「近代化」において、ビジネス教育の重要性を理解し、積極的にそれを推進したのが文教族の元祖である森有礼(もり・ありのり)といった政治家や、日本資本主義の父・渋沢栄一、そして啓蒙思想家で慶應義塾大学の創立者・福澤諭吉といった人々であった。いずれも留学やビジネスなどをつうじて米国と深くかかわっていた人たちだ。かれらが一橋大学の出発点である商法講習所の設立にかかわったのである。商法講習所は「私塾」として出発したのである。

当時の先進国は英国であり、また米国というビジネス立国であったのだが、明治日本のビジネス教育は当時最先端であったベルギーのアントワープ高等商業学校をモデルにしたという。これは意外なことかもしれない。

ロースクール(=法科大学院)における判例研究が、ビジネス教育において事例研究として「ヨコ展開」されたのが1930年代のハーバード・ビジネス・スクールであるが、日本のビジネス教育においてはケースメソッドは長く導入されなかった日本では座学中心の専門教育と教養教育が中心となったのだが、この功罪については議論のわかれるところであろう。現在はようやくケースメソッドが普及しはじめた段階だ。

「三商大」のいずれも現在では総合大学として(・・一橋大学は学部として理工系はないが研究者養成の大学院を備えた総合大学である)存在しているのは、大学という制度そのものの日本的な発展の歴史があるためである。ちなみに現在の一橋大学は、6大学院4学部体制となっている。

経済学の立場から大学の発展史について執筆してきた著者は、すでに 『早稲田と慶応-名門私大の栄光と影-』(講談社現代新書、2008)『東京大学-エリート教育機関の盛衰-』(岩波書店、2009)『京都三大学 京大・同志社・立命館-東大・早慶への対抗-』(岩波書店、2011)という著書があるが、「実学」を旨とし、そこから発展してきた高等教育として、東京工業大学(=東工大)を中心とした日本の工業教育についての本を書いていただきたいと思う。帝国大学や私立の総合大学とは異なる発展の歴史がそこにあるからだ。

現在では、一橋大学と東京工業大学は、東京医科歯科大学東京外国語大学とともに「四大学連合」を形成し、密接な提携関係にあると書きくわえておこう。時代は「実学」の時代なのである。

「実学」はハウツーではない。すぐ役に立つものは、すぐ役に立たなくなる。「実学」を究めるためには、周辺領域の「教養」分野が必要となってくる。この順番が大事なのだ。


* 2012年に執筆済みの記事に加筆修正を加えてアップした(2015年7月18日)


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目 次

はしがき
第1章 商法講習所から高等商業学校へ
 1. 江戸から明治にかけての商業、商人教育
 2. 私立と府立の商法講習所
 3. 官立商業学校の設立と高等商業学校まで
 4. 商法講習所、東京商業学校、東京高商での教育と学生
第2章 東京高商から東京商大、一橋大学へ
 1. 東京高商から東京商大昇格への運動
 2. 東京商科大学の誕生
 3. 新制・一橋大学の誕生とその後
第3章 東京商大・一橋大学の華麗な人材輩出力
 1. 一橋の名声を高めた学者群
 2. 有能な経済人を多く輩出し、異色な人も学んだ一橋大学
第4章 マルクスをも包摂した大阪商大(=大阪市立大学)
第5章 ビジネス教育を重視した神戸商業大学(=神戸大学)
第6章 三大高商の輝き(長崎・小樽・横浜)
第7章 外国のビジネス教育から学ぶこと
 1. アメリカのビジネス教育
 2. ヨーロッパのビジネス教育
第8章 現代のビジネス教育
 1. ビジネススクールでの教育がなされる以前の時代
 2. 日本でビジネス大学院教育は必要か
 3. 一橋大学の現在
あとがき
参考文献
人名索引

著者プロフィール

橘木俊詔(たちばなき・としあき)
1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授を経て、同志社大学経済学部教授。その間、仏米英独で教育・研究職。専攻は経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

旧三商大(wikipedia項目)


<ブログ内関連記事>

実業界と「実学」教育

書評 『渋沢栄一 上下』(鹿島茂、文春文庫、2013 初版単行本 2010)-19世紀フランスというキーワードで "日本資本主義の父" 渋沢栄一を読み解いた評伝
・・商法講習所(=一橋大学)についても1章を割いている

書評 『渋沢栄一-社会企業家の先駆者-』(島田昌和、岩波新書、2011)-事業創出のメカニズムとサステイナブルな社会事業への取り組みから "日本資本主義の父"・渋沢栄一の全体像を描く
・・大学設立と支援もまた社会事業であった

書評 『渋沢栄一-日本を創った実業人-』 (東京商工会議所=編、講談社+α文庫、2008)-日本の「近代化」をビジネス面で支えた財界リーダーとしての渋沢栄一と東京商工会議所について知る
・・「近代化」を商工業の点から実行していくためのリーダ育成もまた使命の一つであった


東京商科大学と一橋大学

書評 『「くにたち大学町」の誕生-後藤新平・佐野善作・堤康次郎との関わりから-』(長内敏之、けやき出版、2013)-一橋大学が中核にある「大学町」誕生の秘密をさぐる

書評 『「大学町」出現-近代都市計画の錬金術-』(木方十根、河出ブックス、2010)-1920年代以降に大都市郊外に形成された「大学町」とは?

ヘルメスの杖にからまる二匹の蛇-知恵の象徴としての蛇は西洋世界に生き続けている
・・東京商大のシンボルであるヘルメス(ーマーキュリー)は商業の神。現在の一橋大学にも引き継がれている


近代日本の「実学」教育

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!
・・福澤諭吉は一橋大学の出発点である商法講習所開設の趣意書を執筆している


米国の「実学」教育

レンセラー工科大学(RPI : Rensselaer Polytechnic Institute)を卒業して20年

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!

慶応大学ビジネススクール 高木晴夫教授の「白熱教室」(NHK・ETV)
・・ケースメソッドによるビジネス教育

書評 『世界はひとつの教室-「学び」×「テクノロジー」が起こすイノベーション-』(サルマン・カーン、三木俊哉訳、ダイヤモンド社、2013)-「理系」著者によるユーザーフレンドリーな学習論と実践の記録

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?
・・西欧の初期近代において、大学は衰退し、実学中心のアカデミーがそれとってかわっていたという歴史的事実。この本のなかでは森有礼は、あくまでも初代文部大臣として帝国大学モデルを作り上げた人としてしか登場しないことに違和感を覚える


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