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2022年4月16日土曜日

パンデミックがもたらした「グローバリゼーション後」の世界を見よ!-ドイツ三十年戦争の悲惨な状況

 
 ようやくウクライナの首都キーウ近辺からロシア軍が撤退したが、そこにのこされていたのは、民間人の虐殺死体であった。それも現在判明しているのは、氷山の一角であると・・・ 

ロシア軍のおぞましいまでの悪行は非難されて当然であるが、この光景を画像や映像でみて想起するのは、寒冷化とペストによって「第1次グローバリゼーション」終焉後のヨーロッパ大陸世界である。 

「ドイツ三十年戦争」の悲惨さを見よ! 

21世紀の現在が、17世紀とよく似ていると思わないだろうか? そういう感想をもった人は、ぜひ拙著『世界史から読み解く「コロナ後」の現代』(佐藤けんいち、ディスカヴァー携書、2021)をご覧いただきたい。 

「コロナ後」とは、言い換えれば「グローバリゼーション終焉後」とおなじ意味と考えていただいて、まったく問題ない。混乱状態が40年つづくか50年つづくかわからないが、短期的に終わるものだと考えないほうがいい。 

「ウクライナ戦争」は、グローバリゼーションの帰結というべきだ。ソ連崩壊後にグローバル資本主義の草刈場となったロシアと中東欧。NATOをツールとした米欧はロシアを追い込みすぎたのである。17世紀のドイツは、21世紀のロシアである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、今回の「ウクライナ戦争」に現れている。どうやら、プーチンは「自己隔離期間中」に「独りよがりな妄想」を膨らませたらしい気配が濃厚だ。これは、間接的な影響といえるだろう。 


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2022年4月14日木曜日

映画『隊長ブーリバ』(1962年、米国)をはじめて視聴。全盛期ハリウッドのスペクタクル超大作映画でウクライナとコサックを見る

 

映画『隊長ブーリバ』(1962年、米国)をはじめて視聴。全盛期ハリウッドのスペクタクル超大作映画。142分。  

主演のブーリバ役はユル・ブリンナー、ブーリバの息子はトニー・カーティスと、往年の名優が演じている。 

コサックというと、どうしても日露戦争で秋山好古率いる帝国陸軍の騎兵隊と戦った歴史から、どうしてもロシアというイメージが強いが、じつはウクライナが発祥の地なのだ。だから、ウクライナのコサックは、日本のサムライのようなものである。 




原作は、ロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリの『タラス・ブーリバ』(1835年)だが、ゴーゴリもじつはウクライナ人。ロシア語で作品を書いていたので、ロシアの文豪とみなされがちだが、正確には「ウクライナ人ロシア語作家」というべきだろう。 

『タラス・ブーリバ』は、16世紀ウクライナ史をもとに書かれた小説で、ウクライナの草原の支配をめぐってのポーランド王国との戦いがテーマ。当時は、ロシアよりもポーランドのほうが、はるかに強大だったのだ。 また、黒死病(=ペスト)の時代でもあり、映画の後半はそのシーンが登場。




最初から最後まで、大いに楽しめるエンターテイメント作品であった。さすが、『ベン・ハー』や『スパルタカス』(・・トニー・カーティスはこちらにも出演)など、古代ローマがテーマの歴史超大作映画がさかんに製作されていた頃のハリウッド映画である。 

なんといっても、いまから60年前の作品で、CGなんてない時代だから、すべて実写である。1万人(!)の騎馬シーンも、すべて実写なのである! とにかくロケ地さがしに苦労したらしく、撮影はアルゼンチンで行われたという。

アルゼンチン軍騎兵隊と、エキストラとして牧童のガウチョが撮影に参加したらしい。この規模の映画の製作では、なるほどリメイクが製作されないわけだ

 コサックは、ウクライナ人にとっての誇りなのである。もともとが「尚武の民」なのである。 
  

 




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2022年4月12日火曜日

ウクライナ映画『ウクライナ・クライシス』(2019年)を視聴 ー 2014年のウクライナ東部ドンバス地方での戦闘を描いたドキュメンタリータッチの戦争映画

 
DVDでウクライナ映画『ウクライナ・クライシス』(2019年)を視聴。2014年のウクライナ東部ドンバス地方での戦闘を描いたドキュメンタリータッチの戦争映画。120分。原題は Beshoot 

日本未公開のようだが、amazonで DVD が格安945円になっているので、購入して即視聴。日本での発売日は、2020年11月3日とある。

この映画はもっと早く見ておくべきだった。

 なぜなら、すでに2014年から始まったウクライナ東部での親露派分離主義者とウクライナ政府軍の戦いは、現在に至るまで続いているからだ。2022年2月24日に突然始まったわけではないのだ。 

ウクライナ東部でも広がるひまわり畑。ひまわり畑をかきわけて攻撃を仕掛けるウクライナ軍。正規軍には多くの義勇兵が参加している。 かつて、日中戦争においても丈の高いコウリャン畑をかきわけ退却するシーンがあったことを想起させるものがある。もちろん、戦争映画のシーンであるが・・ 


セリフはウクライナ語とロシア語だが、ロシア語をしゃべる人間がすべて親露派でも、かれらの背後にいるロシア軍の兵士でもないロシア語を話すウクライナ市民にもウクライナ支持派がいる。じつに複雑な状況なのである。 

さきにジョージア映画の『キリングフィールド 極限戦線』(原題:シンディシ、2019年)を視聴したが、それに劣らぬリアルな戦闘シーンに圧倒される。戦闘シーンにはBGMは必要ないという、当たり前の事実を示している映画。 

この映画は、「イロヴァイスクの戦い」を映画化したものだ。wikiによれば以下のとおり。

2014年8月7日、ウクライナ軍と親ウクライナ準軍事組織が、親ロシア派に占領されているイロヴァイスク市の奪回を試みた戦闘である。親ロシア派はドネツク人民共和国(DPR)およびロシア連邦軍と連携していた。ウクライナ軍は2014年8月18日に市内に進入したが、越境したロシア連邦軍の参戦によって8月24日から26日に包囲された[27][28]。包囲から数日後、プーチン大統領の同意の元、ウクライナ軍は親ロシア派と合意し、撤退が許されたが、結局、この合意は守られず、脱出中に多数のウクライナ軍兵士が死亡した」 
この映画でも、停戦協定を結んだあとに「人道回廊」を通って退却するウクライナ政府軍が、ロシア軍によってだまし討ちにあって砲撃されるシーンがある。 

やはり、ロシアは平気でウソをつく国なのだ、その思いをあらたにさせられた。 




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2022年4月11日月曜日

書評『バチカン大使日記』(中村芳夫、小学館新書、2021)ー バチカンについて知るための貴重な記録

 
『バチカン大使日記』(中村芳夫、小学館新書、2021)という本を読んだ。読みやすく面白い本だった。  

民間経済団体の経団連事務総長から、外交官未経験にもかかわらずバチカン大使になった経済人の4年間の記録。読みやすく面白かった。しかも、なかなか重要な記述が、なにげない記述として、250ページ足らずの新書本のなかにちりばめられている。

たとえば、こんな記述だ。ベテランのバチカニストから聞いた話として、「カトリックにはわからないことが3つある」というものだ。具体的にいうと、「1.世界中にいるシスターの数 2. サレジオ会の資金量 3. イエズス会士の思考」。カトリックである中村氏自身も、1と2は謎だという。3については、教皇フランシスコ自身がイエズス会士出身である。 

著者自身がカトリックであるだけに、この仕事に大きな意義を見いだして、自分が定めたミッション遂行のために尽くされたようだ。 

そのミッションとは、①教皇訪日、②空席であった日本からの枢機卿誕生、③日本バチカン国交樹立75周年事業(*)の遂行。この3つをすべてミッション・コンプリートしただけに、感慨ひとしおだという気持ちがダイレクトに伝わってくる。 

(*)バチカンは、米国の強い反対を押し切って、日米戦争中の1942年に日本との国交を樹立反共産主義の観点から満洲国を承認している。バチカンとの関係構築に昭和天皇の深い思慮も背景にあったことは、終戦工作の一環としてバチカンも想定されていたことからもわかる。「日本バチカン国交樹立75周年を迎えて」(駐バチカン日本国特命全権大使 中村 芳夫)も参照。

世界で13億人のカトリックを束ねるのが、巨大官僚機構のバチカンである。

その影響力は計り知れないものがあることは言うまでもない。 そんなバチカン市国との外交の任にあたった本人はもとより、選んだ側も(・・ただし、いかなる経緯や背景があって著者がが選任されたかは、本書からはわからないのが残念)、意義ある仕事をしたというべきだろう。 

資本主義経済のまっただなかにいた著者のような人だからこそ、「資本主義の限界」を説くフランシスコ教皇の姿勢にも共感するところが多いのだろう。それは「反資本主義」ではない。「環境問題」を重視する姿勢の反映でもある。 

異なる視点から感じる目の前の現実への違和感、この違和感が行動の原点になっていることが読んでいてよくわかった。カトリックである中村氏の、日本のカトリック教会への違和感もその一つである。

とはあれ、ビジネスパーソンのための、問題発見と問題解決の事例集と読むことも可能だろう。 





目 次
まえがき 
1. 大使の一日
2. 私的聖地ガイド
3. 昭和天皇の写真
4. 教皇から手渡された3冊
5. カトリックとの出会い 
6. スイス衛兵への敬意
7. マザー・テレサ列聖式
8. 日本のカトリック界への疑問
9. ビジネス界出身の大使として
10. 世界の宗教指導者が集う
11. スポーツと信仰
12. 日本バチカン国交樹立75周年
13. 教皇フランシスコの訪日
14. 聖職者による性的虐待
15. 中国訪問という「夢」
16. 土光敏夫会長の思い出
17.コロナとともに
あとがき

著者プロフィール
中村芳夫(なかむら・よしお)
1942年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科修士課程修了。1968年経団連に入局し税制を担当。米ジョージタウン大学にフルブライト奨学生として派遣され同大学院博士課程修了。1992年、米国上院財政委員会で日本の税制について証言。2010年経団連副会長・事務総長に就任。2014年第2次安倍内閣・内閣官房参与(産業政策)に。2016年駐バチカン大使(~2020年)。教皇来日を実現。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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2022年4月10日日曜日

書評『ポストプーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(真野森作、東洋書店新社、2021)ー「チェチェン」はプーチン体制のロシアを解くカギである

 
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の行く末は現時点では確実なことは言えないが、来る5月9日の「独ソ戦戦勝記念日」にロシアが「勝利宣言」するであろうことは十分に想定される。 

その日までに、プーチンは、なんらかの形で戦果を「見える化」しなくてはならないのである。 なぜなら、プーチン体制のロシアにとってきわめて重要な記念日だからだ。



■「愛国主義」×「チェチェン化」のプーチン体制

そんなプーチン体制のロシアにとって、「愛国主義」とならんで大きな意味をもつのが「チェチェン」だ。 

『ポストプーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(真野森作、東洋書店新社、2021)は、「チェチェン化」という切り口で「プーチン後」について考えるためのヒントを与えてくれる。  

「第2次チェチェン紛争」(2000年)を武力で鎮圧し、連邦からの離脱を阻止してチェチェンをロシア連邦にとどめることに成功したのがプーチン体制の原点であり、それ以後チェチェンはプーチンにとっては要(かなめ)ともいうべき存在になっている。 

チェチェン共和国は、プーチンに絶対的な忠誠を誓うカディロフによって統治されている。プーチンとカディロフの関係は、父子関係にも似た、きわめて属人的なものである。イスラームのチェチェンは、いわばロシア連邦内で「藩王国」のような形で、治外法権的な存在となっているのである。 


■「チェチェン共和国のいま」と「ロシア連邦におけるチェチェン」の意味

この本を読むと、チェチェン紛争から20年後の「チェチェンのいま」を知ることができると同時に、チェチェンがロシアにおいていかなる意味をもつようになったかが、じつによく理解できるのである。 

ロシア連邦内にとどまりながらも、治外法権的な存在となっているチェチェンは、プーチンに個人的に絶対的忠誠を誓うカディロフによる強権支配が行われており、カディロフはミニ・プーチンとも呼ぶべき存在となっている。 チェチェンにおいては、強権体制は増幅している。

そして、正規軍に属していながらもカディロフの私兵的存在の「カディロフツィ」は、プーチンの別働隊としてロシア国内外で暴れまくっている。「シリア紛争」はもちろん、「ウクライナ戦争」にも投入されていることは報道されているとおりだ。 

メディアをつうじて、暴力的な強権体制が当たり前となっているチェチェンの実態を知ることで、ロシア国民は、ロシアの強権体制はチェチェンよりかはまだましだと思い、強権支配が強まるロシアでは物言わぬ状態となっている。

ロシア国民の多くは、なによりもソ連崩壊後のような混乱状態は避けたいのだ。安定こそ意味をもつのであり、だからこそ、たとえ強権体制であろうとプーチンが支持されているのが実態だ。


■プーチン体制のゆくえとプーチン後はどうなるのか?

 「ウクライナ戦争」が長期化するなかでも、プーチンの支持率が落ちないどころか上昇しているのは、「愛国主義」によって培われた「戦時体制」という認識がそのためであろう。

もちろん、「ウクライナ戦争」に対する欧米が主導する経済制裁の影響は、いったん上昇した支持率を、じわじわと低下する方向に影響を与えていくことが予想される。すでに1万人を越える戦死者(!)の影響もまちがいなくでてくるはずだ。

とはいえ、人口爆発で若年人口の多い中東世界と違って、少子高齢化の進むロシアでは「アラブの春」は期待しがたい。著者のこの指摘は重要だ。 

ソ連時代の KGB の後継機関である FSB(=ロシア連邦保安庁) SVR(=ロシア対外情報庁)、ソ連時代以来の軍の情報機関である GRU(=ロシア連邦軍参謀本部情報総局)と複数の組織にまたがるシロヴィキ(=情報機関者)、そしてオリガルヒ(=スーパーリッチ)がプーチン体制を支える支配層だが、かれらのあいだは激しい利害対立がある。

そうでありながらも、なんとか崩壊せずにもっているのは、束ねる力として、求心力としてのプーチンが存在するからだ。
 
もちろん、プーチン自身が。自分が権力の座にとどまり続けないと、自分自身に身の危険が迫ることを懸念しているということもあろうし、利害が対立する支配層もまたプーチンを必要としているという構図が存在する。ある意味では、プーチンとカディロフの関係にも似た「共依存関係」にあるというべきであろう。

だが、プーチンも生身の肉体をもった人間だ。いかなる形であれ、彼が政権中枢から消えることになれば、ロシアは混乱状態に陥ることは避けられない。 

2020年7月には「ロシア憲法改正」によって、プーチン大統領が2024年の任期切れ後にも改めて大統領選に出馬して(・・そのときプーチンは71歳)、最長で2036年までその座に留まることが可能とった(・・そのときプーチンは84歳!)。

とはいえ、たとえ事実上の「終身大統領」だとしても、安定を重視する国内の現状維持政策は、中長期の問題を先送りするに過ぎないのである。問題はマグマのようにたまりつづけている。

問題は、爆発する時期がいつになるのかだけだろう。 今回の「ウクライナへ戦争」がその時期を早めた可能性は高い。

はたしてプーチンは持ちこたえるのか、利害対立がプーチンを権力の座から引きずり下ろすことになるのか、国内外にきわめて大きな問題を抱えていることを前提にして、ロシア情勢を注視していく必要がある。 


ロシアにとっての中東、中東からみるロシア

著者は毎日新聞の記者。現在はカイロに特派員として駐在して、中東・北アフリカ情勢をフォローしながら、中東からの視点でロシア情勢を見ている

コーカサスのチェチェンもまた、広い意味では中東イスラーム圏につらなる存在だ。 中東イスラーム圏の動向に大国ロシアが与える影響は大きい

中東視点で世界をみる著者の次作には大いに期待している。 



目 次
序章 プーチンとチェチェン
第一部 カディロフのチェチェン
 第1章 カディロフの「藩王国」 
 第2章 異境化するチェチェン 
 第3章 紛争からの復興 
第二部 「越境」するチェチェン 
 第4章 やまぬ暗殺とテロ
 第5章 チェチェンの新たな紛争
 第6章 「チェチェン化」するロシ 
終章 ポスト・プーチンと「火薬庫」チェチェン 
あとがき 
主要参考・引用文献

著者プロフィール
真野森作(まの・しんさく)
1979年、東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。2001年、毎日新聞入社。北海道報道部、東京社会部、外信部、ロシア留学を経て、2013~17年にモスクワ特派員。大阪経済部記者などを経て、2020年4月からカイロ特派員として中東・北アフリカを担当。著書に『ルポ プーチンの戦争-「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか』(筑摩選書、2018)-足で稼いだ現地取材で描いた「ウクライナ危機」のルポルタージュは貴重な現代史の証言(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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2022年4月4日月曜日

書評『破壊戦 ー 新冷戦時代の秘密工作』(古川英治、角川新書、2020)ー「ダークパワー」で世界を脅かすロシアにかんする濃厚な現場レポート

 
『破壊戦ー新冷戦時代の秘密工作』(古川英治、角川新書、2020)を読んだ。「ウクライナ戦争」でその本質が誰の目にも明らかになったいまこそ、この本を読むべきだと強く思う。

内容は『「ダークパワー」で世界を脅かすロシア』というタイトルにすべきものだ。日経の記者としてモスクワ駐在を2回経験しているジャーナリストの著者は、ロシアを中心にして周辺諸国の取材を行っている。 

この本のテーマは、ロシアによる秘密工作である。情報機関に大きく依存したプーチン体制の悪行の数々である。 「平気でウソをつく国」の実態である。

毒物による暗殺、難民を利用した外交工作、ロシアマネーによる政治家の買収、フェイクニュースによるデマ拡散、サイバー攻撃といった手段でダークパワーを行使するロシアの実態に迫った、徹底した、しかもきわどい取材とその考察の成果である。 

2008年のジョージア侵攻、2014年のクリミア併合と、どんどんエスカレートしていくロシアの強行姿勢と、連動して激化していった秘密工作。2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の爆発で、中国はロシアを模範としたダークパワーを全開させる事態に至っている。

そして、いままさにその渦中にある「ウクライナ戦争」となっているわけだが、この本を読んでいると、長引く戦争と経済制裁によって疲弊していくと、ロシアが弱体化していくことになるが、ますますダークパワーに依存していくことになるのではないか、という懸念を抱くことになる。 

その意味では、『破壊戦』というタイトルで大いに損をしていると思う。この本が新刊で出たとき、わたしはタイトルを見て「読む必要なし」とみなしてしまった。一般に「破壊」とは目に見える、形あるものをイメージするものである。見えないところで行われる「破壊」を「破壊」と認識するのは難しい。

本書の重要性に気がついたのは、つい最近のことだ。そして、遅ればながら読み終えたいま、もっと早く読んでおくべきだったと思っている。 その内容は、まさに『「ダークパワー」で世界を脅かすロシア』そのものだからだ。

新書本だが、じつに中身の濃い1冊である。著者による記事も含めて、断片的な情報はさまざまな媒体で読んでいるが、本書のように深い考察を踏まえたうえでまとめあげたものはそう多くない。読み応えのある本だった。 




目 次 
はじめに 
第1章 工作員たちの「濡れ仕事」 
 1. 3つの猛毒事件
 2. 15万人の工作員
 3. 北極圏での少し怖い体験
 4. 市民インテリジェンス
第2章 ロシアのプレーブック
 1. 美女とカネとポピュリスト
 2. 「シュレーダリゼーション」
 3. マフィア国家の構図
第3章 黒いカネの奔流
 1. ロンドンの赤の広場
 2. パナマに透けたからくり
 3. マネロン銀行の実態
 4. 投資家の闘い
第4章 デマ拡散部隊の暗躍
 1.ネット工作のトロール工場
 2. プーチンの料理長
 3. トランプの勝利に貢献した北マケドニアの街
 4. 大物の正体 
 5. USA Really?
第5章 プロパガンダの論理
 1. ロシア人記者の告発
 2. RT編集長の怒り
 3. 「煙幕、煙幕、煙幕」
第6章 サイバー攻撃の現場
 1. ウクライナが実験場
 2. 元KGB・元ハッカー
 3. カスペルスキーの曇ったガラス
 4. ダークパワーの本領発揮
第7章 コロナ後の世界
 1. 中ロ発インフォでミック
 2. 台湾が恐れるシナリオ
 3. 「超限戦」の開花?
おわりに

著者プロフィール
古川英治(ふるかわ・えいじ)
1967年、茨城県生まれ。日本経済新聞社編集局国際部次長兼編集委員。早稲田大学卒業、ボストン大学大学院修了。1993年、日経新聞入社。商品部、経済部などを経て、モスクワ特派員(2004~09年、2015~19年)。その間、イギリス政府のチーヴニング奨学生としてオックスフォード大学大学院ロシア・東欧研究科修了。世界の大統領から工作員、犯罪者まで幅広く取材。『破壊戦―新冷戦時代の秘密工作』は初の単著となる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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