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2019年5月21日火曜日

JBPress連載コラム第52回目は、「現代のストレス社会に古代ローマの人生訓が効く理由-激動の21世紀にこそ読んでほしい『自省録』」(2019年5月21日公開)


激動期には古代のストア派哲学がリバイバルする。そういっても言いすぎではないだろう。 

連載コラム第52回は、激動期には古代のストア派哲学がリバイバルする】 現代のストレス社会に古代ローマの人生訓が効く理由-激動の21世紀にこそ読んでほしい『自省録』と題して書いてみた。 ⇒ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56416

そもそもストア派哲学は、旧来の価値観が崩壊し、価値観が大混乱していた激動期のヘレニズム期に古代ギリシアで生まれた「実践哲学」だ。紀元前3世紀頃である。 

ローマ帝国の皇帝で『自省録』のマルクス・アウレリウスは、「後期ストア派」の最後の哲学者とされている。 

21世紀のストア派哲学のリバイバルは史上2回目のものだ。前回の第1回目のリバイバルは、16世紀後半から17世紀にかけての激動期の西欧社会であった。後者については、「略奪と殺戮の時代に終止符を打ったストイックな女王-『自省録』を座右の書にしてきたトップリーダーたち」で詳しく書いた。

では、なぜいまストア派哲学がリバイバルし、米英アングロサクソン圏(つまりは英語圏)を中心に流行しているのか? 

前回のリバイバルとの違いを押さえたうえで、第2回目のリバイバルの理由について考えてみよう。16世紀後半のリバイバルを「新ストア主義」とよぶのに対し、21世紀のリバイバルは「現代ストア主義」とよんで区別している。

また、欧米人からはしばしば「ストア派的」だと評されることの多い日本人にとっての「現代ストア主義」がもつ意味についても考えてみたい。
⇒ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56416 






<ブログ内関連記事>

JBPress連載コラム第51回目は、「略奪と殺戮の時代に終止符を打ったストイックな女王-『自省録』を座右の書にしてきたトップリーダーたち」(2019年5月7日公開)

JBPress連載コラム第50回目は、「世界のリーダーたちが座右の書としてきた『自省録』(前編・後編)(2019年4月23・24日公開)

『超訳 自省録 よりよく生きる』(マルクス・アウレリウス、佐藤けんいち編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019)が、来る2019年4月27日出版されます-わが人生初のハードカバー!

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?
・・「16世紀メディア革命」の活版印刷後、制度としての大学は衰退した。19世紀に国民国家モデルとともにリバイバルした大学は、「21世紀メディア革命」のインターネット革命のいよって、ふたたび衰退に向かうのか?


 
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2019年5月19日日曜日

書評『水運史から世界の水へ』(徳仁親王、NHK出版、2019)ー 歴史学から世界の水問題へ「文理融合」の実践



水運史から世界の水へ』(徳仁親王、NHK出版、2019を読んだ。水関連の講演8本が収録されている。この本の存在を知ったのは、紀伊國屋書店新宿本店で4月27日に出版された拙著『超訳自省録』と並んで「平積み」されていたから。

帯に「皇太子殿下のご講演の記録」とあるのは、出版が即位前の4月であったためだ。天皇に即位しても、ご本人が徳仁(なるひと)親王であることに変わりない。即位後は帯は新しいバージョンに取り替えたのだろうかしらん?

内容は、もともとの学習院大学の学部時代の専門である「日本中世水運史」関連の講演が3本、英国のオックスフォード大学に留学して研究テーマとした「産業革命時代のテムズ河の水運史」関連が2本、「3・11」の東日本大震災の津波災害を機会にあらたに研究を始めた「水災害とその歴史」、そして「水問題」にかんする講演が2本。「世界の水問題の現状と課題」は、国連での基調講演をもとにしたもの。もともとの英文による講演も収録。

『水運史から世界の水へ』というタイトルにあるように、もともと歴史学から始まった研究が、地球環境問題まで視野が拡大し、視点が増加していった経緯がよく理解できる構成になっている。まさに「文理融合」モデルのお手本ともいうべき内容だ。この講演録を読んでいると、天皇陛下の問題意識のあり方が手に取るようにわかる。

このような問題意識を持たれている方が、日本国の「象徴」となられたということは、グローバル時代に生きる日本人にとって、大きなソフトパワーになることは間違いない。ありがたいことだ。

もちろん、いちばん面白かったのは、オックスフォード大学時代の研究と留学生活の回想を語った講演「オックスフォード大における私の研究」。かなり緻密な研究をされていたのだなあという思いとともに、たいへん貴重な経験をなされたのだなあという思いを深くする。

内容的には、かなり専門的な話にも踏み込んでいるが、講演なので読みやすい。天皇陛下のご著書ではなくても、読む価値のある本であると思う。21世紀の現在に生きる人間にとって、「水問題」は避けて通れない問題であるからだ。一読を薦めたい。


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目 次  
はじめに
第1章 平和と繁栄、そして幸福のための水 
第2章 京都と地方を結ぶ水の道-古代・中世の琵琶湖・淀川水運を中心として 
第3章 中世における瀬戸内海水運について-兵庫の港を中心に
第4章 オックスフォードにおける私の研究
第5章 17~18世紀におけるテムズ川の水上交通について
第6章 江戸と水運
第7章 水災害とその歴史-日本における地震による津波災害をふりかえって 
第8章 世界の水問題の現状と課題-UNSGABでの活動を終えて
主な参考文献
参考収録 Quest for Better Relations between People and Water


著者プロフィール
徳仁親王(なるひと・しんのう)
昭和35年(1960)生まれ。昭和57年(1982)、学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程入学。昭和58年(1983)6月から昭和60年(1985)10月まで英国に滞在し、オックスフォード大学大学院に在学。昭和63年(1988)、学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程修了。平成3年(1991)、オックスフォード大学名誉法学博士。平成4年(1992)より学習院大学史料館客員研究員。平成15年(2003)、第3回世界水フォーラム名誉総裁。平成19年(2007)から平成27(2015)まで国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)名誉総裁。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの) 言うまでもなく、2019年5月1日に即位された。



<ブログ内関連記事>

本の紹介 『鶏と人-民族生物学の視点から-』(秋篠宮文仁編著、小学館、2000)-ニワトリはいつ、どこで家禽(かきん=家畜化された鳥類)になったのか?

「城下町・古河」をはじめて歩いてみた(2019年5月5日)-日光街道の街道筋で利根川と渡良瀬川が合流する地域にある古河は、かつて交通の要衝だった

公開講演会 『海のことは森に聞け-コトの本質に迫るには-』(畠山重篤)にいってきた(国際文化会館 2012年11月17日)-「生きた学問」とはまさにこのことだ!

念願かなって「地下宮殿」を見学してきた(2018年8月11日)-世界最大級の「首都圏外郭放水路」がすごい。百聞は一見にしかず!


*******

今年2011年の世相をあらわす漢字は 「水」 に決まり-わたしが勝手に決めました(笑)

かつてバンコクは「東洋のベニス」と呼ばれていた・・


バンコクへの渡航は自粛を!-タイの大洪水と今後の製造業立地の方向性について

『龍と蛇<ナーガ>-権威の象徴と豊かな水の神-』(那谷敏郎、大村次郷=写真、集英社、2000)-龍も蛇もじつは同じナーガである

(2019年6月4日、2024年8月26日 情報追加)


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2019年5月18日土曜日

「松の花」が咲いている(2019年5月18日)


この季節はいろんな花が咲いているが、花といっても美しい花だけが花ではない。

まず匂いでわかるのが栗の花。なんともいえない、独特の匂いですぐにわかる。ああ、栗の花の季節なんだなあと。マロニエも同様。


匂いではないが、目で見てふと気がついたのが松の花。海岸沿いに植えられた赤松だ。

真ん中が雌花、まわりは雄花。そう松もこの時期に花を咲かせ、花粉をまきちらし、そして実をつける。実(み)は松ぼっくり。

美しい花だけが花ではない、ということだ。


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2019年5月11日土曜日

「ノモンハン事件」勃発から80年(2019年5月11日)-末尾が「9」の年に起こったこと

ノモンハンの広大な平原を進軍日本陸軍第23師団の兵士 Wikipediaより

本日(2019年5月11日)は、「ノモンハン事件」の勃発からから80年にあたる。

「ノモンハン」事件とは、モンゴル人民共和国(現在当時)と満洲国(当時)のあいだで発生した国境紛争が武力衝突に発展した事件だ。 モンゴル人民共和国の背後にいたのはソ連(現在はロシア共和国)であり、満洲国の背後にいたのは大日本帝国(当時)だ。つまり、本質はソ連と日本と武力衝突であった。

モンゴル平原における関東軍(1939年) Wikipediaより

「ノモンハン事件」は、「ハルハ河戦争」ともいう。現地では「ハルハ河」というからだ。現地の正確な情報が、地図作成に反映していなかったことが原因だ。 「ノモンハン事件」は、3ヶ月間つづき、日ソの双方ともに大きな損害を出して終わった。日ソ間で停戦交渉が成立した結果、ソ連は兵力をヨーロッパ側に集中することが可能となり、その翌々年(1941年)の「独ソ戦」につながっていく。

「ノモンハン事件」が「第2次世界大戦」につながっていったのである。 80年前の1939年は、昭和14年であった。

 「令和」に改元されてからまだ11日。お祝いムードに水をさすつもりはないが、「昭和」はいつでもどこでも、ついてまわる。 「過去」を否定し去ることは、できないのである。






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2019年5月7日火曜日

JBPress連載コラム第51回目は、「略奪と殺戮の時代に終止符を打ったストイックな女王-『自省録』を座右の書にしてきたトップリーダーたち」(2019年5月7日公開)

(グレタ・ガルボ主演のハリウッド映画『クリスチナ女王』(1933年)のポスター Wikipediaより)

21世紀の現在、米英の英語圏を中心に「ストア派哲学」のリバイバルにある。だが、リバイバルは今回が初めてのことではない。西欧では、いまから約500年前にもリバイバルした時期があっった。 

21世紀の現在もそうだが、どうも時代が激動期に入ると、周囲の状況にまどわされずに、何ごとにも動じない「強いメンタル」をもつニーズが個人レベルで生まれてくるようだ。「内面」の重視である。「内省」の重視である。 

何ごとにも動じない「強いメンタル」のことを「不動心」(アタラクシア)という。「不動心」はまた「恒心」ともいう。「恒心」は、16世紀から18世紀にかけての「バロック時代」の基本精神でもあった。 

JBPressの連載コラムだが、本日(2019年5月7日)公開のコラムは、略奪と殺戮の時代に終止符を打ったストイックな女王-『自省録』を座右の書にしてきたトップリーダーたちと題して、17世紀スウェーデンの女王クリスティナを取り上げた。 
⇒  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56277


(クリスティナ女王の肖像画 Wikipediaより)

クリスティナ女王は、それほど知名度は高くないが、きわめて重要な役割を果たした人物だ。

ストア派哲学に支えられた強固な意志によって理想を貫き、キリスト教徒同士が血で血を洗う宗教戦争を終結させることに成功した人物だ。 

ぜひお読み頂きたいと思う。
⇒  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56277



■『超訳 自省録 よりよく生きる』について

全12巻で構成されている『自省録』を、編訳者である私が、内容に従って9項目に分類した「目次」を紹介しておこう。


目 次
はじめに
1 「いま」を生きよ
2 運命を愛せ
3 精神を強く保て
4 思い込みを捨てよ
5 人の助けを求めよ
6 他人に振り回されるな
7 毎日を人生最後の日として過ごせ
8 自分の道をまっすぐに進め
9 死を想え


『超訳 自省録 よりよく生きる』(佐藤けんいち編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、4月27日の発売。





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『超訳 自省録 よりよく生きる』(マルクス・アウレリウス、佐藤けんいち編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019)が、来る2019年4月27日出版されます-わが人生初のハードカバー!

不動明王の「七誓願」(成田山新勝寺)-「自助努力と助け合いの精神」 がそこにある!
・・「不動心」を説いたストア派。「不動尊」信仰を発展させた真言密教


■初期近代の西欧とバロック

「ルーベンス展-バロックの誕生-」(国立西洋美術館)に行ってきた(2019年1月3日)-南部ネーデルラントが生んだバロックの巨人をイタリア美術史に位置づける試み

エル・グレコ展(東京都美術館)にいってきた(2013年2月26日)-これほどの規模の回顧展は日本ではしばらく開催されることはないだろう

「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」(国立西洋美術館)に行ってきた(2015年3月4日)-忘れられていた17世紀イタリアのバロック画家がいまここ日本でよみがえる!

『バロック・アナトミア』(佐藤 明=写真、トレヴィル、1994)で、「解剖学蝋人形」という視覚芸術(?)に表現されたバロック時代の西欧人の情熱を知る


■略奪と殺戮の時代の西欧近世

「ジャック・カロ-リアリズムと奇想の劇場-」(国立西洋美術館)にいってきた(2014年4月15日)-銅版画の革新者で時代の記録者の作品で17世紀という激動の初期近代を読む

映画 『王妃マルゴ』(フランス・イタリア・ドイツ、1994)-「サン・バルテルミの虐殺」(1572年)前後の「宗教戦争」時代のフランスを描いた歴史ドラマ


■500年単位で繰り返す「激動の時代」

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む

書評 『1492 西欧文明の世界支配 』(ジャック・アタリ、斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、2009 原著1991)-「西欧主導のグローバリゼーション」の「最初の500年」を振り返り、未来を考察するために


 
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2019年5月6日月曜日

「城下町・古河」をはじめて歩いてみた(2019年5月5日)-日光街道の街道筋で利根川と渡良瀬川が合流する地域にある古河は、かつて交通の要衝だった

(古河市の鷹見泉石記念館 筆者撮影)


 昨日(5月5日)、はじめて茨城県古河市にいってきた。訪問したいと思いながら、多忙その他の理由で何度も先送りしてきた、ここ数年の懸案事項がようやく解決した。


■「雪の殿様」土井利位と蘭学者であった家老・鷹見泉石

なぜ古河かというと、とくに古河という土地そのものに強い関心があるわけではないのだが、古河藩主で老中にもなった土井利位(どい・としつら)と、その家老で「ナンバー2」であった鷹見泉石(たかみ・せんせき)に多大な関心があるためだ。


(『雪華図説』(土井利位、1832(天保3)年刊)  wikipediaより)

譜代大名であった土井利位(1789~1848)は、雪の結晶を顕微鏡で観察して、長年の観察結果を『雪華図説』として発表している「殿様学者」。


(渡辺崋山による鷹見泉石の肖像 Wikipediaより)

家老の鷹見泉石(1785~1858)は、渡辺崋山による肖像画(国宝!)で有名で、幕末期の著名な蘭学者でもあった。鷹見泉石の収集品を常設展示しているのが古河歴史博物館なので、展示物を実地に見に行きたかったというのが主な理由。ついでに古河市街を散策。

鷹見泉石が生きた当時の世界情勢は、フランス革命後のナポレオン戦争に最終的に勝利した英国が世界の覇権を握り、英国と対抗するロシアは南下策を実行して日本近海に出没、江戸後期から幕末にかけての日本をめぐる軍事情勢は、厳しいものに変化しつつあった。


(左側下部は鷹見泉石のオランダ名によるサイン 筆者撮影)

譜代大名の家老であった鷹見泉石は、だからこそ、みずからオランダ語を習得して、ありとあらえる海外情報と舶来品を精力的に収集し、政策立案のために分析していた。いわゆる「情報参謀」でもあったわけだ。そして蘭学をつうじて形成されたネットワークは、じつに広くかつ深いものがあった。渡辺崋山もその一人である。

ちなみに、当時大坂所司代であった土井利位は、鷹見泉石の多大な貢献によって「大塩平八郎の乱」を鎮圧し、最終的には老中まで出世している。幕末期は、国内的にも対外的にも、日本は危機的な状況にあったのだ。


(古河市横町の にある鷹見泉石の墓 筆者撮影)


■「関東の中心」の古河は、利根川と渡良瀬川が合流する交通の要衝

古河は「関東の中心」に位置しているが、徳川家にとってきわめて重要な日光への街道筋にあり、しかも利根川と渡良瀬川が合流する地域にある交通の要衝。当時は水運がメインだったからだ。だが、それだからこそ、洪水になると大被害がもたらされる。



(Google map による古河市周辺)

いわゆる「カスリーン台風」(1947年=昭和22年)で渡良瀬川は決壊し、大被害を出している。利根川が氾濫すると逆して渡良瀬川に流れ込むからだ。こういった立地特性は、実際にその土地を歩いてみて実感できることでもある。

渡良瀬川の上流には、かつて足尾銅山があり、身を挺して谷中村の鉱害を訴えた田中正造の存在を忘れるわけにはいかない。


(渡良瀬川の土手の「カスリーン台風決壊口跡」の碑 筆者撮影)

日光街道の街道筋に立地する古河藩は譜代大名が領地で、16万石の旧城下町であるが、渡良瀬川の改修工事のため、明治時代に水没し、現在では城址の一部しか残っていないのは残念だ。


(古河城跡「獅子が崎」に立つ看板 筆者撮影)

今回は東武鉄道の新古河駅で下車して、渡良瀬川を渡って市街に歩いて入ることで、体感することができた。市街を散策したあと、帰りは市街を東に抜けて、JR古河駅から大宮へ。


(生家が古河にある歴史小説家・永井路子氏の旧宅 筆者撮影)


■『利根川図志』(赤松宗旦)に登場する古河

持参したわけではないが、旅を終えたあとは、まず開いてみる本が2冊ある。それは『利根川図志』と『新・利根川図志』。この2冊で、古河にかんする部分を読んでみるのだ。


(新旧の『利根川図志』 筆者撮影)

『利根川図志』は、江戸時代後期に利根川流域の布川(ふかわ)に住んだ医師・赤松宗旦(あかまつ・そうたん)による好著。子どもの頃、その地で暮らしたことのある日本民俗学の父・柳田國男が校訂している。

布川から利根川をさかのぼって関宿(せきやど)まで、布川から利根川をくだって海への出口である銚子まで、利根川流域の地域(かなり内陸部までカバー)にかんして、名所旧跡や物産、動植物がなんでも書き込まれている百科事典みたいな本。挿絵がまたいい。

必要なところだけ読むので、全部とおしで読んだことはないのだが、高校時代からの愛読書(?)で、これは3冊目。自分が住んでいる地域をこの本で読むと面白い。いわゆる好事家的アプローチではあるが。

もう一冊の『新・利根川図志 上・下』(山本鉱太郎、書房出版、1997)。千葉県流山市にある地方出版社からでている本。赤松宗旦の『利根川図志』の現代バージョン。20年以上前の情報だが、それでも江戸時代後期と平成時代の比較が面白い。

群馬県に発し、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県が流域の大河川である利根川。まだ源流には行ったことがないので、いずれ行ってみたいと思っている。







<参考>

『雪華図説』の研究(中谷宇吉郎)1939年
https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57860_60232.html
雪の結晶の顕微鏡写真あり

『雪華図説』の研究後日譚(中谷宇吉郎)1941年
⇒ https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57861_60233.html






<ブログ内関連記事>

幕末の佐倉藩は「西の長崎、東の佐倉」といわれた蘭学の中心地であった-城下町佐倉を歩き回る ③

書評 『オランダ風説書-「鎖国」日本に語られた「世界」-』(松方冬子、中公新書、2010)-本書の隠れたテーマは17世紀から19世紀までの「東南アジア」

「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」(国立歴史民俗博物館)に行ってきた(2016年8月12日)-江戸時代後期(=19世紀前半)の日本をモノをつうじて捉える

9月になると紫色の実をつけるムラサキシキブの学名(Callicarpa japonica)はツンベルクの命名

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求

書評 『岩倉具視-言葉の皮を剝きながら-』(永井路子、文藝春秋、2008)-政治というものの本質、政治的人間の本質を描き尽くした「一級の書」

念願かなって「地下宮殿」を見学してきた(2018年8月11日)-世界最大級の「首都圏外郭放水路」がすごい。百聞は一見にしかず!

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる


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