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2025年5月30日金曜日

書評『僕には鳥の言葉がわかる』(鈴木俊貴、小学館、2025)ー 日本発の世界的大発見は身近な野鳥の観察から始まった! ひとりでも多くの日本の少年少女に読んでほしい

 


著者の鈴木俊貴氏は、1983年生まれの動物言語学者。そう書いたが、この「動物言語学」(animal linguistics)は鈴木氏の発見が出発点にある、まったくあたらしい学問分野なのだ。  

日本ならどこにでもいる野鳥シジュウカラを対象にした観察と実験が生み出した大発見。鳥の声はたんなる音声ではなく、そこには「単語」があり、「単語」を組み合わせて簡単な「文」をつくっているという大発見。 

その発見にいたるまでの「自分史」を、ユーモアたっぷりに描いたこのエッセイが、ことし1月の発売からすでに7万部!というのは大いに納得だ。 

鈴木俊貴氏とその発見の内容については、ネット記事や YouTube での出演である程度まで知っていたが、本という形で読むと、まらあらたな関心がかき立てられる。  


(シジュウカラ Wikipediaより)


なんといっても、日本に当たり前のようにいるシジュウカラが研究対象なのである。日本をフィールドとした、日本生まれ学問分野としては「サル学」や「知識経営」などがあるが、「動物言語学」があらたに追加されたことになる。 

この本は、中学生でも読めるような平易な文章で書かれているので、ぜひ推薦図書としてひとりでも多くの日本の少年少女に読んでほしい。そして、そのなかからひとりでも多くの研究者が生まれてくることを期待したい。 

「好きこそものの上手なれ」、自然科学にかぎらず、学問というものは本来そういうものであるはずだから。



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著者プロフィール
鈴木俊貴(すずき・としたか)
東京大学准教授。動物言語学者。1983年東京都生まれ。日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学白眉センター特定助教などを経て現職。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本生態学会宮地賞、日本動物行動学会賞、World OMOSIROI Award など受賞多数。シジュウカラに言語能力を発見し、動物たちの言葉を解き明かす新しい学問、「動物言語学」を創設。愛犬の名前はくーちゃん。本書が初の単著。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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2025年5月29日木曜日

「トランプ問題」は「国難」ではない。ほんとの「国難」は自公政権が中国共産党によって骨抜きにされていることだ ー『媚中』と『日中友好侵略史』を読んでその詳細を知るべき

 

国民的議論を行うことなく、ステルスで日本政府が推進している「移民政策」。おそらく、その背景には経済諸団体があるのだろう。 

もちろん、「労働力不足」が背景にあることは、リアルのビジネス現場を知っているわたしも重々承知している。とはいえ、短期的にはメリットがあるものの、中長期的には多大なデメリットが発生することは、火を見るよりも明らかだ。 

いや、すでに問題が多発している。これはX(旧 twitter)などのSNSを見ていれば「常識」といっていいだろう。 問題の具体的な現れについては、いちいちここには書かないが、多発しているのが、いわゆる「外免切換」、つまり外国で取得した自動車免許証を日本の免許証に書き換えることが、あまりにも安易に行われていることが原因となった交通事故である。 

先日も小学生の列にクルマが突っ込んで負傷者が出るという事故が発生したが、さすがにオールドメディアも無視することができなくなった。しかしながら、これは氷山の一角に過ぎない。 

埼玉県川口市を中心とした「クルド人(自称)難民」問題などもあるが、なんといっても量的に多いのが中国人が引き起こす「中国人問題」だ。 現状については、直接の見聞や X(旧 twitter)などの散乱する情報をみているとわかるが、その背景にはなにがあるのか。 




まずは、出版されたばかりの『媚中(びちゅう)ー その驚愕の「真実」』(門田隆将/山上信吾、WAC、2025)を読んでみた。今月初めのことだ。

作家でジャーナリストの門田氏と、元駐オーストラリア大使で現在は外交評論家の山上氏との対談という形をとっている。ともに現在は「反中」の立場に立つ人たちである。 

「元大使が政治家・官僚を実名告発」と帯にあるように、太字ゴチックで筋金入りの「媚中派」や「親中派」の実名が書かれている。 

山上氏が外務省の「中の人」であっただけに具体的であるが、圧倒的大多数が「外の人」人である読者は、一読したあとはあっという間に忘れてしまうことだろう。 だが、それでもいい。外務省が問題であることが明らかにされているからだ。遅きに失したとはいえ、まだ情勢を転換するチャンスはゼロではない。 

1980年代のことだったと記憶しているが、当時の最高実力者・鄧小平も欧州のとある政治家を恫喝して、以下のような内容の発言を行っているではないか。中国には余るほど人がいる。中国の言うことを聞かないと、大量に中国人を送り込むぞ!」、と。 

現在の習近平の中国共産党がやっているのは、この「人海戦術」そのものなのである。

「移民」として中国人を日本に送り込み、「帰化」させて日本国籍を取得させ、日本社会を内側から食いつぶすという中国共産党による「工作」。 この動きを阻止しないと、そう遠くない将来、日本は日本でなくなってしまう。

日本国民は、「いま、そこにある危機」であることを認識しなくてはならない。 


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目 次
はじめに 日本侵略を他人事と思っていませんか(門田隆将) 
第1章 致命傷になる中国人ビザ大緩和 
第2章 日本はいかに中国の術中に嵌まったか? 
第3章 中国にひれ伏す日本外務省「驚愕の実態」 
第4章 中国のハンドリングをどこで間違ったか 
第5章 牙をむく中国と倶に天を戴かず! 
第6章 日本の「隷属外交」をどう変えていくか 
おわりに 眠れる日本よ、覚醒せよ(山上信吾) 

著者プロフィール
門田隆将(かどた・りゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。中央大学法学部卒業。『週刊新潮』元デスク。『この命、義に捧ぐ―台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、のちに角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。著書多数

山上信吾(やまがみ・しんご)
1961年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、1984年、外務省入省。コロンビア大学大学院留学を経て、2000年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官、その後、同参事官。北米第二課長、条約課長を務めた後、2007年、茨城県警本部警務部長という異色の経歴を経て、2009年には在英国日本国大使館政務担当公使。国際法局審議官、総合外交政策局審議官(政策企画・国際安全保障担当大使)、日本国際問題研究所所長代行を歴任。その後、2017年、国際情報統括官、2018年、経済局長、2020年、駐オーストラリア日本国特命全権大使に就任、23年12月に退官し、外交評論活動を展開中。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



■中国共産党による「対日工作」は、すでに70年前(!)から始まっていた

『媚中(びちゅう)』のなかでも門田氏が言及していたが、現在の惨状を招いた中国共産党による「対日工作」が始まったのは、最近のことではない。すでに70年前(!)から始まっていたのである。 

そのことをもっと知りたいと思い、門田隆将氏による『日中友好侵略史』(産経新聞出版、2022)を取り寄せ、つづけて読んでみた。 

自民党と公明党がいかに中国共産党によって骨抜きにされていったか、その70年にわたる「工作」の歴史が、徹底的な取材と具体的な証言によって掘り起こされている。現代史ノンフィクションとしてめっぽう面白いが、その内容にはため息をつかざるを得ない。 

帯の裏に書いているコピーを引用しておこう。ここにキーワードがすべて網羅されている。 

対日工作は70年前から始まっていた 
ランの花、有名女流作家、創価学会、日本の権力闘争、贖罪意識、巨大市場・・・あらゆるルート、あらゆる手法を用いた「友好」という名の「侵略」を明らかにする


とくに「日中国交正常化」(1972年)の前史が興味深い。それ以前にかんしては、わたし自身リアルタイムでは経験していないからだが、「日中友好」を積極的に推進したある民間人には、石原莞爾の「東亜連盟」というバックグラウンドがあったことを知る。 

中国共産党の周恩来と創価学会池田大作との橋渡しを行ったのが、著名な作家・有吉佐和子であったことも含め、「善意」の人たちが行った「行為」が、その人たちの「意図」に反する「結果」をもたらすことにつながっていったのである。なんたる皮肉であることか。 

「天安門事件」(1989年6月4日)で世界中から非難された中国共産党。そんな「天安門事件」後の中国共産党に救いの手をさしのべ、対中投資ラッシュの再開の口火を切ったのが日本政府と財界であった。 かれらが習近平体制の中国共産党をのさばらせる原因をつくったことは、日本国民は銘記しておくべきだろう。

安倍晋三氏が暗殺されて以後、自公政権が「売国的な媚中政権」になっていることは言うまでもない。

「トランプ問題」は「国難」ではない。ほんとうの「国難」とは、中国共産党に浸食され骨抜きにされている自公政権が政権を握っていることである。

目覚めよ、日本人! 


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目 次
はじめに 
プロローグ 
第1章 始まった「対日工作」 
第2章 自民党工作のスタート 
第3章 公明・創価学会への中国工作 
第4章 権力抗争はこうして始まった 
第5章 世界の流れが変わった 
第6章 もう一人のキーマン 
第7章 「中国」巡って政界大動乱 
第8章 日華断交は可能なのか 
第9章 「椎名特使」をめぐる攻防 
第10章 台北の怒りと混乱 
第11章 ”丸裸” だった日本 
第12章 始まった「日中友好絶対主義」 
第13章 世界を驚愕させた人権弾圧 
第14章 変貌する中国 
第15章 ハニートラップの凄まじさ 
第16章 「破壊者」登場の悲劇 
第17章 不可避だった ”米中激突” 
第18章 「友好」に躍った五十年 
エピローグ 
おわりに 
参考文献


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2025年5月26日月曜日

「令和の米騒動」の渦中にあるいま、107年前の「大正の米騒動」だけでなく、238年前の「天命の打ちこわし」を想起すべきだ(2025年5月26日)

 

 2025年(令和7年)のいま、「米価格の高騰」が消費者の生活を圧迫している。端的にいえば、まず目に付くのは「流通問題」である。 

だが、その真因は、総需要に対する総供給の不足にある。つまり根本には「米不足」がある。「減反政策」を継続してきた「政策の失敗」以外のなにものでもない

 一般には107年前の「大正の米騒動」(1918年)のことが言及されることが多い。現在と違って米が文字通り主食であった大正時代、現在よりもその意味合いは大きかったはずだ。 

だが、さらにさかのぼって、現在から238年前の「天明の打ちこわし」を想起すべきだとわたしは言いたいのである。 

「天明の打ちこわし」(1778年)は、「天明7年」の5月20日(新暦だと7月20日)に発生した大機規模な「米騒動」のことだ。特権的米商人や、それに結託した役人に対する怒りが爆発したのだ。 

将軍様のお膝元である江戸で発生した「打ちこわし」は、米価格の高騰が、その日暮らしの一般庶民を直撃したことが引き金となった。 

その年の正月から、わずか半年で米価格はなんと 3倍(!)に高騰したらしい。いくらなんでも、それでは生きていけないではないか!悲観のあまり、自殺者も多くでたという。 

コメつくりをめぐる外部環境としては、4年前の浅間山の大噴火(1784年)による寒冷化が米栽培に東日本では打撃をあたえたこと(・・ただし、西日本では豊作であった)、田沼時代の末期で政治不信と不満が一般庶民に蓄積していたことなどがあげられる。 

だが、そもそも支配者である武士の生活を維持するため、米価格を高く設定したいのが徳川幕府や諸藩。これに対して、米価格はできるだけ低目に安定していてほしいと願う町民たち。この矛盾が背景にあった。 

2020年代の現在でいえば、JA全農と農水省、そして農政族議員たちの「鉄のトライアングル」が握っている利権と、一般消費者との利害対立を想起させるものがある。問題の基本構造は江戸時代と変わらないのだ。 

本所や深川といった下町から始まった「天明の江戸打ちこわし」は、赤坂、日本橋から京橋へと中心部に波及し、物流拠点である浅草、品川にも拡がった。 

旧暦5月20日から始まって4日間で収束したが、そのインパクトは幕政を大きくゆるがすことになる。その後、老中になった松平定信による「寛政の改革」へとつながっていく。 


しかも、「天明の打ちこわし」は「天明7年」のことであり、奇しくもことしが「令和7年」であることに符合している。なにやら因縁めいたものを感じないわけではない。 

NHKでは大河ドラマ『べらぼう』が放送されているが、蔦重こと蔦屋重三郎が生きた時代は、まさに田沼意次から松平定信への政権移行期の前後にわたっていた。

おそらく、放送の後半には「天明の江戸打ちこわし」が登場することだろう。ドラマの伏線として最初から松平定信が登場していることからも、それは推測される。 

「米不足」による「米価格高騰」問題は、いま目の前で進行しているアクチュアルな問題である。大河ドラマ『べらぼう』でどう描かれることになるのか楽しみにしている。 

ただし、「寛政の改革」のような「緊縮財政」には、個人的には賛成できない。デフレ経済の再来は避けなくてはならないからだ。 



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PS 『天明の江戸打ちこわし』(片倉比佐子、新日本新書、2001)

上掲の写真に掲載した『天明の江戸打ちこわし』(片倉比佐子、新日本新書、2001)は、日本共産党系の新日本出版社からでた本だが、イデオロギー色のない良書である。 著者は、東京都公文書館で東京都の歴史の編纂にかかわっていた人であり、実証史学の立場にたっている。このテーマそのものを描いた一般向けの歴史書が見当たらないので、ぜひ復刊を期待したい。


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2025年5月24日土曜日

いまこの時代に『歎異抄』を読むことの意味とは? ー『超訳シリーズ』の最新刊である『超訳 歎異抄』(安永雄彦、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2025)を読む

 

ビジネスマン出身の異色の僧侶・安永雄彦さまより『超訳 歎異抄』をいただいた。ディスカヴァー・トゥエンティワンの『超訳シリーズ』の最新刊。本日(5月23日)発売の新刊である。 

『歎異抄』と書いて「たんにしょう」と読む。日本最大の宗派である浄土真宗の宗祖で、中世日本に生きた親鸞聖人の言行を、その死後に直弟子の唯円(ゆいえん)が書き残したものだ。「異」説を「歎」くというのが、その本意である。 

「悪人正機」などパラドックスに充ち満ちた表現が多く、とかく誤解を生みやすいのが親鸞の教えだ。唯円は、その親鸞の言葉が語られた背景まで含めて後世に残そうとしたのである。 

そんな『歎異抄』は、名前は聞いたことはあっても、実際に読んだことのある人は、いったいどれくらいいるのだろうか?  現代語訳でわずか50ページほどの短い本だが、もし読んだとしても理解できない、納得がいかないと思った人も少なくないかもしれない。 

わたし自身は、20歳台の終わりに哲学者で日本学の梅原猛の訳で読んで以来、35年ぶりに『歎異抄』をとおしで読んでみた。そんな機会をあたえていただいた安永さまには、この場を借りてその仏縁に感謝したい。 


(留学のため渡米する前の1990年に読んだ梅原猛の2冊)


『歎異抄』の現代語訳や解説本は、それこそ山のように出版されつづけている。ビジネスパーソンを主要な読者層に設定した安永版は、その最新版となる。 

さっそく、「はじめに」に目をとおしたあと、項目別に整理された『歎異抄』の文章を読んでみる。これ以上ないと思われるほど、平易な現代語に訳されている。 

だが、平易な文章だからこそ、いまなお納得できない内容や、違和感を感じるものがあることは否定できない。先にも書いたように、親鸞の教えがパラドックスに充ち満ちたものであり、基本的に信心について説いた内容だからだ。 

親鸞には「絶対他力」という教えもある。だが、信仰の場面はさておき、はたして日常生活のなかで「絶対他力」は成り立つのかどうか? 「自力」で努力することに意味はないのか?  そんな問いがわき上がってくるのは当然だろう。

わたし自身もそうであったが、とかく若いときには自信過剰気味になりがちであり、なんでも「自力」で成し遂げることができると思いがちだ。 

ところが、「自力」だけでは物事が動かないことを知る瞬間が、かならずやってくる。しかも、「自力」に頼らないほうが、かえって物事がスムーズに進行することがある。そんなことを、悟る機会もあるだろう。ミドルエイジ以降の人なら人なら、誰でもそんな経験があるのではないか。 

ビジネスパーソンであれば、いやそうではなくても、そんな気づきを得ることができれば、『歎異抄』に触れることの意味があるというべきだろう。いま読んでも理解できないフレーズ、納得のいかないフレーズが、「ああ、そういうことなのか」とストンと理解できる瞬間が訪れることがあるはずだ。 

基本的に親鸞の教えは浄土真宗の教えであり、阿弥陀仏への絶対的な帰依と、「南無阿弥陀仏」という念仏が強調される。仏教でありながら、限りなくキリスト教に近い印象さえ受けるかもしれない。 

だが、浄土真宗の門徒ではなくても(・・かくいうわたしの場合も、母方の祖母は熱心な門徒であったが、わたし自身は宗門の人ではない)、また仏教徒ではなくても、あるいは宗教には距離を置いている人であっても、親鸞の教えに触れることの意味は大きなものがあるはずだ。 

ぜひこの機会に、安永版『超訳 歎異抄』を手にとって、読んでみてほしいと思う。読んでみて、すんなりと理解できなくてもいいのである。親鸞の教えに対しては、異論や違和感があって当然なのだ。 

いろいろな読み方があると思うが、まずは後半に収録されている「超訳歎異抄 全文」を通しで読んでみてから、前半の104条に整理された項目ごとに読んでみるといいのではないか。

というのは、項目別の文章だけつまみ食いして読むと、誤読しかねないものが多々あるからだ。そもそも現著者の唯円が「異」説を「歎」いていたように、『歎異抄』という本は誤読を生みやすい本なのだ。

AI(=人工知能)がもてはやされ、とかく「知能」や「知性」ばかりが重視される現代社会である。いや、であるからこそ、知性の限界を超えた存在に、自分自身を開いていく必要があるのではないか。 

ビジネスパーソンであろうとなかろうと、いまこんな時代に生きる人が『歎異抄』を読むことの意味は、そんなところにあるのではないか。わたしはそう考えている。 


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