博士号を取得したあと、研究者としてのキャリアと人生をリセットして、さまざまな道に進むことになった若手理系研究者たち、とくに理学部を中心とした21人の人生半ばの自分史だ。
たまたまその存在を知った本だが、電車での移動中の読書に持ち込んで読んでいたら、ひとりひとり異なる具体的なライフストーリーが面白いので、ついつい熱中して読んでしまった。
キャリアチェンジについて語られることも多い今日この頃だが、学部はもとより、修士から博士課程までいってからの転身はきわめて壁が厚い。いわゆる「つぶし」が効きにくくなるからだ。
精神的な壁を超えるというか、キャリアと人生をリセットするためにはマインドセットの切り替えが必要であり、転身を妨げているさまざまなメンタルブロックを解除して、「実社会」に向けて一気に踏み込む必要がある。
登場する21人のほとんどは、1980年前後生まれの若手研究者。ここで「研究者」と書いたのは、アカデミズムの場を離れても、程度の違いはあれ「研究」そのものは不可能ではないことを、21人の事例が示しているからだ。
わたしの場合は、基本的に子どもの頃から「勉強」は嫌いだが「研究」は大好きなので、 「研究」はいまでも自分なりに続けている。論文は書かないが一般書という形で世の中に貢献することにしている。
高校3年になる前に理系から文転し、大学4年になる前には研究者の道には見切りをつけて修士課程には進学せず、学部卒業後はさっさとビジネスパーソンになってしまった人間だが、それでもアカデミズムへの未練や、未練を断ち切ることの意味については十分わかっているつもりだ。
知識社会化がすすみ、科学技術立国が叫ばれている割には、理系研究者への処遇に大きな問題がある現在の日本。そんな状況である以上、自分の道は自分でみつけなくてはならない。
自分の能力と適性をできるだけ早い段階で自覚し、アカデミズムの研究者とは違うオルタナティブな選択もあることを知ることは、これから研究者への道を進む若者には必要不可欠となる。
そして、そんな若手の「研究者」たちを活かすためにも、公的機関だけでなく、民間企業はさらに門戸を開いて、キャリアチェンジの手助けをするべきだとつよく思う。最初から応用を目的とした工学以外の理系分野でも、活躍する場はたくさんあるのだ。
経営者や人事管理関係者も読むべき本だ。若手研究者たちが日々どんなとで悩み、苦闘しているかを知る必要がある。理系人材の採用と活用は、ダイバーシティ&インクルージョンのテーマでもあるからだ。
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目 次はじめに1 企業につとめる2 組織にとらわれずに生きる3 教育・研究をささえる4 組織をおこす5 「越境」をかさねてあとがきー博士号取得者の苦難と希望
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